1. 企業情報
南総通運株式会社は、1942年設立の千葉県を地盤とする物流中堅企業です。主要な事業は貨物自動車運送と倉庫事業であり、これらが収益の柱となっています。その他、自動車整備などの附帯事業、不動産の賃貸・取引、建設、タクシー事業など多角的に事業を展開しています。2025年3月期の連結事業構成比では、貨物自動車運送が41%、倉庫が27%、附帯事業が23%、不動産事業が5%を占めており、多様な収益源を有していることが特徴です。同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
南総通運は「千葉地盤の物流中堅」として地域に根差した事業展開を行っています。詳細な市場シェアに関するデータは提供されていませんが、物流業界全体としては「物流2024年問題」と呼ばれる人手不足や働き方改革への対応、および燃料費や人件費の高騰といった共通の課題に直面しています。同社はこれらの課題に対し、輸送・倉庫運営の効率化に注力していると見られます。多角的な事業展開は、物流事業の外部環境変化に対するリスク分散に寄与する可能性があります。
3. 経営戦略と重点分野
経営陣が掲げる具体的なビジョンや中期経営計画に関する詳細な記述は提供されていません。しかしながら、決算短信においては、国内貨物輸送量の減少予測や燃料費・人件費の高止まりといった厳しい経営環境を認識し、「物流2024年問題」への対応、輸送および倉庫運営の効率化を重点課題として取り組んでいることが示されています。
4. 事業モデルの持続可能性
南総通運の事業モデルは、貨物自動車運送と倉庫事業を核としつつ、不動産や附帯事業など複数の収入源を持つことで、特定の事業環境の変化に左右されにくい構造を有しています。特に、不動産事業は収益性に貢献しています。国内貨物輸送量の減少傾向や燃料・人件費の上昇といった物流業界特有の課題は事業の持続可能性に影響を与える可能性がありますが、同社が推進する「物流2024年問題」への対応や効率化への取り組みは、これらの課題に対応するための重要な要素と考えられます。高い自己資本比率も財務的な持続性に寄与すると考えられます。
5. 技術革新と主力製品
同社の事業モデルにおいて、具体的な技術革新に関する記述は提供されていません。主力製品およびサービスとしては、収益構成比から貨物自動車運送、倉庫、そして自動車整備を含む附帯事業が収益の主要な牽引役となっています。
6. 株価の評価
現在の株価は1,440.0円です。
各種指標を基に評価します。
– PER（会社予想）: 9.36倍
– 業界平均PER（8.1倍）と比較すると、やや高い水準です。
– PBR（実績）: 0.61倍
– 業界平均PBR（0.5倍）と比較するとやや高いですが、純資産価値である1倍を下回っており、純資産に対する株価の割安感が示唆されます。
– EPS（会社予想）: 153.79円
– BPS（実績）: 2,346.39円
これらの数値に基づくと、現在の株価はPER、PBRともに業界平均と比較して少し高い水準にありますが、PBRが1倍を下回る点は特徴的です。
7. テクニカル分析
現在の株価1,440.0円は、年初来高値1,500円に近く、年初来安値980円からは大きく上昇しています。52週高値1,500円、52週安値970円と比較しても、株価は高値圏に位置しています。
50日移動平均線（1,348.44円）および200日移動平均線（1,150.96円）がいずれも現在の株価を下回っており、短期および中長期的な上昇トレンドが示唆されています。直近の移動平均線との乖離、年初来高値に接近しているという点から、現在の株価は高値圏にあると見られます。
8. 財務諸表分析
| Breakdown | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 (過去12か月) |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 (千円) | 14,299,321 | 14,424,344 | 15,480,209 | 16,106,285 |
| 営業利益 (千円) | 1,480,521 | 1,592,763 | 1,958,132 | 2,018,100 |
| 純利益 (千円) | 1,033,302 | 1,082,125 | 1,583,123 | 1,370,679 |
| ROE (%) | N/A | N/A | 6.28% | 6.11% |
| 自己資本比率 (%) | N/A | N/A | N/A | 65.7% (2025年6月30日) |
- 売上高：過去数年間、概ね堅調な増加傾向を示しています。直近の2025年3月期（過去12か月）の売上高は16,106百万円となっています。
- 利益：営業利益は過去数年間増加傾向にあり、2025年3月期もこれまでの傾向を維持しています。親会社株主に帰属する純利益は2024年3月期に大きく増加しましたが、これは一時的な特殊要因（368百万円の「Total Unusual Items」）の影響があったと見られます。特殊要因を除いた「Normalized Income」ベースでは、利益は着実に増加しています。
- 直近四半期（2026年3月期第1四半期）：営業収入は前年同期比1.7%増の4,109百万円と増収を維持しましたが、営業利益は同4.8%減の540百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同6.7%減の373百万円と減益を記録しており、コスト上昇などの影響が見られます。
- キャッシュフロー：提供された決算短信にはキャッシュフロー計算書の作成がないと記載されています。
- ROE（自己資本利益率）：直近実績（過去12か月）は6.11%で、収益性を確保しています。
- ROA（総資産利益率）：直近実績（過去12か月）は3.61%です。
- 自己資本比率：2025年6月30日時点で65.7%と非常に高い水準にあり、財務の安定性が優れていることを示しています。総負債も比較的低く、財務健全性は高いと評価できます。
9. 株主還元と配当方針
南総通運は、1株当たり配当金（会社予想）60.00円、配当利回り（会社予想）4.17%となっており、比較的高水準の配当利回りです。配当性向は36.16%であり、利益の一定割合を株主還元に回しつつ、事業成長のための内部留保も確保するバランスの取れた方針であると考えられます。
なお、2026年3月期第1四半期決算短信において、期末配当予想と年間配当予想の記載に一部不明瞭な点がありましたが、外部データによる会社予想の年間配当60.00円を基に計算しています。
また、株主情報には「自社(自己株口)」が一定の割合で保有されており、過去に自社株買いが実施された実績が示唆されます。
10. 株価モメンタムと投資家関心
現在の株価は、52週高値に迫る水準であり、50日および200日移動平均線を上回って推移しています。これは株価が強い上昇モメンタムにあることを示唆しています。本日の出来高10,700株は、3ヶ月平均出来高6,160株を上回っており、直近の投資家関心の高まりがうかがえます。信用買残は増加傾向にあり、投資家の買い意欲がある状況です。信用売残は0株となっており、売り方が少ない状況です。
11. 総評
南総通運は、千葉県を地盤とする物流中堅企業であり、貨物自動車運送や倉庫事業を中核に、不動産や建設など多角的な事業展開を行うことで、事業リスクの分散を図っています。高い自己資本比率に裏打ちされた安定した財務基盤は強みであり、比較的高水準の配当利回りも株主還元への姿勢を示しています。
一方で、物流業界特有の「物流2024年問題」や燃料・人件費の高騰といった外部環境の厳しさには直面しており、直近の四半期決算では増収ながら減益となっており、コスト管理や効率化への継続的な取り組みが重要となることが示唆されます。現在の株価は年初来高値圏にあり、上昇トレンドが継続していると見られます。今後の焦点としては、物流業界の課題への対応状況と、その中で収益性をいかに維持・向上させていくかが挙げられます。
企業情報
| 銘柄コード | 9034 |
| 企業名 | 南総通運 |
| URL | http://www.nanso.co.jp/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 運輸・物流 – 陸運業 |
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