1. 企業情報
第一三共は、日本の大手製薬企業です。医療用医薬品の製造・販売を主軸としており、連結事業売上高の95%を占めています。国内だけでなく、北米、欧州、その他国際市場でも事業を展開しており、海外売上比率は約69%(2025.3期実績)とグローバル展開を強みとしています。特に、がん領域の新薬開発に注力しており、英国のアストラゼネカ社と提携し、抗体薬物複合体(ADC)と呼ばれる革新的ながん治療薬の開発を進めています。主要製品としては、HER2陽性乳がん治療薬の「エンハーツ(Enhertu)」や、抗血栓薬の「リクシアナ(Lixiana)」、痛風治療薬の「タリージェ(Tarlige)」など多岐にわたります。設立は2005年9月28日ですが、源流は1899年創業の企業であり、長い歴史と経験を有しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
第一三共は「国内製薬大手」と位置づけられており、日本の製薬業界において主要なプレイヤーの一つです。がん領域における抗体薬物複合体(ADC)技術において、世界的に高い競争優位性を持つと見られます。これは、主力製品「エンハーツ」が複数の適応症で承認を取得し、グローバルでの売上を大きく伸ばしていることからも伺えます。また、今後上市が期待される「ダトロウェイ」も同様のDXd ADC技術を用いた製品であり、がん治療薬市場における存在感をさらに高める可能性があります。具体的な市場シェアの数値は提供されていませんが、革新的な技術とグローバルな提携戦略により、特定の治療領域において優位なポジションを確立しています。
3. 経営戦略と重点分野
第一三共の経営戦略は、がん領域を最重点分野と位置づけ、グローバルでの成長を加速させることにあります。中期経営計画(2021年度-2025年度)においては、以下の点が重点分野として挙げられます。
– DXd ADCの製品価値最大化: 主力製品である「エンハーツ」のさらなる適応拡大と販売強化、そして「ダトロウェイ」のグローバル展開を通じて、DXd ADC技術をがん治療のスタンダード(SOC: Standard of Care)に変革することを目指しています。
– Next Waveの創薬: がん領域における次世代の治療法や、サイエンス&テクノロジーの優位性を活かした新たな疾患領域での治療薬創出にも注力しています。
– グローバル臨床開発の加速化: 世界各国での治験を迅速に進め、新薬を早期に患者に届ける体制を強化しています。
– 株主還元: 利益成長に応じた増配と機動的な自己株式取得により、株主価値の最大化を図る方針を掲げています。
4. 事業モデルの持続可能性
第一三共の事業モデルは、革新的な医薬品の研究開発を基盤とし、グローバル市場で展開することで持続可能性を高めています。特に、がん領域のDXd ADCのような高付加価値医薬品の開発に成功し、これらがグローバルでの売上を牽引していることは、収益モデルの強固さを示しています。市場ニーズへの適応力としては、急速に進展するがん治療のモダリティ(治療法)の変化に対応するため、アストラゼネカとの提携を通じて最先端の技術を取り入れ、新薬パイプラインを充実させています。特許切れリスクや研究開発投資の継続性といった課題は存在するものの、継続的な新薬創出とグローバル展開が事業の成長を支えると考えられます。
5. 技術革新と主力製品
第一三共の最も注目すべき技術革新は、DXd ADC(抗体薬物複合体)技術です。これは、特定の抗体に強力な抗がん剤を結合させ、がん細胞にピンポイントで薬剤を届けることで、副作用を抑えつつ高い治療効果を発揮する技術です。この技術を基盤とした主力製品は以下の通りです。
– Enhertu(エンハーツ): HER2陽性乳がんなど、複数のがん種に対する治療薬としてグローバルで高い評価を得ており、業績を大きく牽引しています。
– DATROWAY(ダトロウェイ): 「エンハーツ」に続くDXd ADCとして期待される製品で、承認申請や承認取得が進められており、今後の売上貢献が見込まれます。
その他にも、多岐にわたる疾患領域で製品を展開しており、「リクシアナ(直接共通因子阻害剤)」、「タリージェ(神経障害性疼痛治療薬)」などが収益に貢献しています。
6. 株価の評価
現在の株価3,658.0円に対し、各種指標は以下の通りです。
– PER(株価収益率): 22.67倍(会社予想EPS 161.52円に基づく)
– 業界平均PER(27.8倍)と比較すると、第一三共のPERは業界平均より低い水準にあります。
– PBR(株価純資産倍率): 4.29倍(実績BPS 852.84円に基づく)
– 業界平均PBR(1.4倍)と比較すると、第一三共のPBRは業界平均よりも大幅に高い水準にあります。これは、同社が持つ革新的なパイプラインや今後の高い成長期待が株価に織り込まれている可能性を示唆しています。
7. テクニカル分析
現在の株価3,658.0円は、
– 年初来高値4,564円、年初来安値3,036円の範囲内で推移しています。
– 52週高値6,257.00円、52週安値3,036.00円と比較すると、現在の株価は52週安値に近い水準で推移しており、昨年の高値からは大きく調整しています。
– 直近10日間の株価推移を見ると、3,620円から3,678円のレンジでやや方向感に欠ける動きが見られますが、本日はやや上昇しています。
– 50日移動平均線(3,474.80円)は上回っていますが、200日移動平均線(3,838.04円)は下回っており、中期的な下落トレンドは継続しているものの、短期的な回復の兆しも見られます。
総合的に見ると、現在の株価は過去1年のレンジで見ると安値圏に近い位置にありますが、短期的な調整は一服し、やや回復傾向にあると言えます。
8. 財務諸表分析
財務諸表(損益計算書)の過去数年間の推移と各種指標から、以下の傾向が読み取れます。
– 売上収益: 2022年3月期から2025年3月期(予想)にかけて、1兆448億円から1兆8,862億円へと継続的に大幅な増収を達成しています。特にグローバル主力品である「エンハーツ」等の伸長が寄与しています。
– 営業利益・純利益: 売上収益の増加に伴い、営業利益、純利益も増加傾向にあります。2022年3月期の営業利益730億円、純利益669億円に対し、2025年3月期(予想)は営業利益3,319億円、純利益2,957億円と大きく成長しています。
– 収益性:
– ROE(自己資本利益率):17.86%(実績)、17.93%(過去12か月)。これは製薬業界の中でも非常に高水準であり、効率的な経営ができていることを示唆しています。
– ROA(総資産利益率):6.08%(過去12か月)。こちらも良好な水準です。
– 売上高営業利益率:20.38%(過去12か月)。収益性の高い事業構造であると言えます。
– 財務安全性:
– 自己資本比率:47.0%(実績)。健全な財務状態を維持しています。
– 流動比率(Current Ratio):2.31(直近四半期)。短期的な支払能力も十分にあることを示しています。
– 有利子負債対自己資本比率(Total Debt/Equity):12.75%(直近四半期)。負債依存度が低く、財務健全性が高いです。
– キャッシュフロー:
– 営業活動によるキャッシュフローは127.32億円(過去12か月)とプラスであり、事業による本源的なキャッシュ創出能力は高いと考えられます。
– フリーキャッシュフローも101.86億円とプラスであり、投資や株主還元に回せる資金余力があることを示唆しています。
全体として、売上・利益ともに高成長を継続しており、高い収益性と健全な財務体質を兼ね備えていると評価できます。
9. 株主還元と配当方針
第一三共は株主還元に積極的な方針を示しており、中期経営計画において「利益成長に応じた増配と機動的な自己株式取得により、株主還元の更なる充実を図り、株主価値を最大化」することを目指しています。
– 配当: 会社予想の1株配当は78.00円であり、配当利回りは2.13%です。これは前年度(60.00円)から18円の増配を計画しており、エンハーツ等の売上拡大による利益成長を背景としています。
– 配当性向: 38.49%(Payout Ratio)であり、利益成長に応じた適度な配当水準であると言えます。
– 自己株式取得: 株価水準等を勘案し、機動的な自己株式取得枠(取得総額2,000億円または取得株数8,000万株を上限)を設定しており、株主還元策として自社株買いも活用しています。
10. 株価モメンタムと投資家関心
直近の株価は、2025年8月1日から本日(8月15日)にかけて、3,635円から3,818円の間で推移しており、本日は3,658.0円で取引を終えています。過去1年間の52週変化率が-40.11%となっていることから、株価は大きく調整した時期がありましたが、直近は比較的底堅く推移しているように見えます。出来高は200万株から600万株台と、活発な取引が行われています。信用取引では、信用買残が信用売残を大きく上回る信用倍率13.24倍となっており、買方に偏りが見られます。これは、今後の株価上昇に期待する投資家がいる一方で、需給面では潜在的な売り圧力が存在する可能性も示唆されます。今後の株価への影響を与える要因としては、主力製品「エンハーツ」や「ダトロウェイ」の売上動向、グローバルでの承認取得状況、そして今後の研究開発パイプラインの進捗が挙げられます。
11. 総評
第一三共は、革新的なDXd ADC技術を基盤としたがん領域の主力製品「エンハーツ」のグローバル展開により、売上・利益ともに高成長を継続している製薬大手です。財務体質は健全であり、高い収益性と効率的な経営が数値にも表れています。株主還元にも積極的で、業績成長に応じた増配と機動的な自己株式取得を方針としています。
株価は過去1年間で大きく調整しましたが、現在は底堅く推移しており、50日移動平均線を上回るなど短期的な回復の兆しも見られます。PERは業界平均より低いものの、PBRは業界平均を大きく上回っており、これは同社の成長性やイノベーションへの期待が株価に織り込まれている可能性があります。
今後の見通しについても、主力品の成長継続と新規パイプラインへの期待から堅調な業績予想が維持されており、グローバルでのがん治療薬市場における存在感をさらに高めることが期待されます。
企業情報
銘柄コード | 4568 |
企業名 | 第一三共 |
URL | http://www.daiichisankyo.co.jp/ |
市場区分 | プライム市場 |
業種 | 医薬品 – 医薬品 |
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