1. 企業情報
ケンコーマヨネーズは、業務用マヨネーズを主力とする食品メーカーです。マヨネーズのほか、ドレッシング、卵加工品（卵サラダ、だし巻き卵など）、サラダ、総菜（惣菜）などの幅広い製品を製造・販売しています。これらの製品は、レストラン、ベーカリー、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、給食など、多岐にわたる顧客に提供されています。また、自社運営のサラダショップ「Salad Café」やウェブストアも展開しています。1958年に設立され、東京都杉並区に本社を置いており、従業員数は997人です。
2. 業界のポジションと市場シェア
同社は「業務用マヨネーズ大手」とされており、プロフェッショナルな顧客向けの市場において強い存在感を示していると考えられます。多岐にわたる製品ラインナップ（マヨネーズ、ドレッシング、卵加工品、サラダ・総菜）は、外食・中食産業が求める多様なニーズに対応できる強みとなっています。コンビニエンスストアや給食市場への拡大は、安定した需要を取り込む戦略の一環です。一方で、直近の決算では原材料価格（鶏卵相場や野菜価格）や物流費、人件費の上昇が利益を圧迫しており、これらの外部要因への対応が課題として挙げられます。
3. 経営戦略と重点分野
ケンコーマヨネーズは、中長期経営計画「KENKO Vision 2035」を推進しています。この計画では、「持続的な成長のための抜本的改革と企業価値の更なる向上」を基本方針とし、以下の4つの基本戦略を重点分野としています。
– 成長戦略: 事業領域の拡大や新たな市場開拓を目指す。
– スマート化: 生産プロセスやサプライチェーンの効率化、デジタル技術の活用を推進する。
– 人材投資: 従業員の育成と多様な働き方を支援し、企業の競争力の源泉とする。
– サステナビリティへの取り組み: 環境負荷低減や社会貢献活動を通じて、持続可能な社会に貢献する。
4. 事業モデルの持続可能性
同社の事業モデルは、業務用食品市場を主要な収益源としており、外食・中食産業の動向に左右される側面があります。しかし、消費者のライフスタイルの変化（共働き世帯の増加や時短ニーズ）に伴う中食需要の増加に対応できる、長期保存可能なサラダや卵加工品、スーパー向け総菜の提供は、市場ニーズへの適応力を示しています。幅広い顧客層（レストラン、コンビニ、給食、スーパー）を持つことで、収益基盤の多様化が図られています。事業を持続させるためには、原材料価格の変動や物流コストの上昇といった外部環境の変化に対して、価格転嫁や生産性向上で対応していくことが重要課題となります。
5. 技術革新と主力製品
具体的な技術革新に関する詳細な情報はありませんが、経営戦略に「スマート化」を掲げていることから、生産プロセスの効率化や品質管理における技術導入が進められていると推測されます。主力製品としては、冒頭で述べた業務用マヨネーズに加えて、ドレッシング、鶏卵を加工したタマゴ加工品、またサラダや総菜類が収益を構成する柱となっています。直近の決算ではタマゴ加工品が好調に推移していると報告されています。
6. 株価の評価
現在の株価1,917.0円に基づき、各種指標を確認します。
– PER（株価収益率）: 連結会社予想EPS 215.59円より、PERは約8.89倍です。食品業界の平均PER19.5倍と比較すると低い水準にあります。
– PBR（株価純資産倍率）: 連結実績BPS 2,685.95円より、PBRは約0.71倍です。業界平均PBR1.3倍と比較しても低い水準であり、株価が1株当たりの純資産を下回っています。
これらの指標から見ると、現在の株価は業界平均と比較して割安に評価されている可能性があります。
7. テクニカル分析
現在の株価1,917.0円は、
– 年初来高値2,030円、年初来安値1,600円の範囲内で推移しています。
– 52週高値2,512.00円、52週安値1,600.00円の範囲で見ると、安値圏からは上昇しているものの、高値圏からは距離がある位置にあります。
– 50日移動平均線（1,824.94円）より上方、200日移動平均線（1,911.72円）付近に位置しています。
直近10日間の株価推移を見ると、1,887円～1,983円の間で変動しており、特に8月12日には出来高を伴って一時的に上昇したものの、その後は小幅な値動きで推移しています。現在の株価は、短期的な移動平均線よりは上に位置していますが、長期的な移動平均線とはほぼ同水準であり、明確な方向感を模索している可能性があります。
8. 財務諸表分析
- 売上高: 過去数年間で堅実に増加傾向にあり、2022年3月期から2025年3月期（過去12ヶ月）にかけて756億円から917億円へと成長しています。しかし、直近の2026年3月期第1四半期では、前年同期比で1.4%の減収となりました。
- 営業利益・純利益: 2023年3月期に一時的に大幅な減益となったものの、2024年3月期、2025年3月期（過去12ヶ月）と大きく回復し、増益を達成しました。しかし、直近の2026年3月期第1四半期では、原材料費や物流費、人件費の増加が影響し、営業利益が前年同期比56.1%減、親会社株主に帰属する四半期純利益が同54.4%減と大幅な減益となりました。
- ROE（自己資本利益率）: 過去12ヶ月の実績は7.07%、2024年3月期実績は8.87%であり、比較的健全な水準にあります。
- ROA（総資産利益率）: 過去12ヶ月の実績は3.69%であり、資産を効率的に活用している状況が見られます。
- 自己資本比率: 直近四半期で63.5%と非常に高く、財務の健全性が強固であることを示しています。
- キャッシュフロー: 四半期連結キャッシュ・フロー計算書は公開されていませんが、豊富な現金及び預金（約146.9億円）に対し、総負債が約36.8億円と、現預金が負債を大幅に上回っており、財務的な安定性が高いと評価できます。
年間の業績は回復基調にありますが、直近の四半期決算の減益傾向は、今後の業績推移を注視する必要がある点です。
9. 株主還元と配当方針
- 配当利回り（会社予想）: 2.46% (1株配当47.00円、株価1917.0円に基づく)
- 配当性向: 会社予想EPS215.59円、会社予想配当47.00円から計算すると約21.8%です。この水準は比較的低く、将来的な業績の伸長や財務状況に応じて、増配の余地があると考えられます。
- 自社株買い: 株主構成を見ると、「自社(自己株口) 9.43%」とあり、過去に自社株買いを行っていることが示唆されます。高い自己資本比率と潤沢な現預金から、今後も配当だけでなく、自社株買いによる株主還元を行う余力があると考えられます。
10. 株価モメンタムと投資家関心
株価の直近の変動傾向は、200日移動平均線付近で推移しており、方向感を見定めている状況と考えられます。出来高は特別に多いわけではありませんが、信用買残が信用売残を上回っており、買い方のポジションが多い状態です。
株価への影響を与える主要な要因としては、第一に原材料価格の高騰やコスト増加への対応と、それによる収益性の動向が挙げられます。中長期的な視点では、中長期経営計画「KENKO Vision 2035」の進捗や、業務用・中食市場での需要変化への適応力が注目されます。直近の第1四半期決算が減益となったことで、市場の警戒感が高まる可能性がありますが、会社が通期業績予想を据え置いているため、今後の回復に期待が集まる可能性もあります。
11. 総評
ケンコーマヨネーズは、業務用食品市場において強固な事業基盤を持つ食品メーカーです。マヨネーズ、ドレッシング、卵加工品、総菜と幅広い製品で多様な顧客ニーズに対応し、中食需要の高まりにも適応しています。
財務状況は、自己資本比率が63.5%と非常に高く、財務の安定性に優れています。株価指標を見ると、PER、PBRともに業界平均と比較して割安な水準に評価されている可能性があります。株主還元についても、配当性向が比較的低く、将来的な増配余力や自社株買いの継続が期待されます。
しかしながら、直近の第1四半期決算では、原材料費や物流費、人件費の高騰が収益を圧迫し、大幅な減益となりました。この減益は短期的な株価の重しとなる可能性があり、今後の四半期ごとの業績動向、特にコスト抑制や価格戦略がどのように進展し、通期予想を達成できるかが注目されます。
中長期的な視点では、経営計画「KENKO Vision 2035」に基づく「スマート化」や「成長戦略」が、外部環境の変化を乗り越え、持続的な企業価値向上につながるかを見守る必要があるでしょう。
企業情報
| 銘柄コード | 2915 |
| 企業名 | ケンコーマヨネーズ |
| URL | http://www.kenkomayo.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 食品 – 食料品 |
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