以下、大日本印刷(証券コード:7912)に関する企業分析レポートです。

1. 企業情報

大日本印刷株式会社(DNP)は、1876年創業の歴史を持つ総合印刷大手企業です。長年培ってきた「印刷と情報(P&I)」を強みとして、情報セキュリティ、高機能材、精密電子部品など、幅広い分野で事業を展開しています。
主な事業は以下の3つのセグメントに分かれています。
スマートコミュニケーション: イメージング、情報セキュリティ(ICカードなど)、マーケティング、出版、コンテンツ・XRなどのサービスを提供しています。
ライフ&ヘルスケア: リチウムイオン電池用パウチ、太陽電池バックシート、機能性包装材、生活空間向け建装材、医療・ヘルスケア関連製品などを製造・販売しています。
エレクトロニクス: 有機EL向けメタルマスク、光学フィルム、半導体関連(フォトマスク、リードフレームなど)の精密電子部品を手掛けています。

同社は、加工技術、マーケティング・プロモーション、精密電子部品に強みを持つことで知られています。

2. 業界のポジションと市場シェア

大日本印刷は、日本の印刷業界において「2強」の一角を占める大手企業として確立されたポジションにあります。従来の印刷技術を基盤としつつも、その応用範囲を広げ、電子部材、高機能包装材、情報事業、デジタル販促など多角的な事業展開を進めています。
各セグメントの市場動向とDNPの対応は以下の通りです。
スマートコミュニケーション: BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の大型案件や写真用資材、IDインクリボンが好調ですが、紙媒体・出版関連市場の縮小に対応するため、デジタル化と新規事業創出が重要となっています。
ライフ&ヘルスケア: EV向け電池用パウチ、太陽電池用封止材、車載向け加飾材料が堅調であり、先端材料や環境対応製品市場での競争優位性を確立している可能性があります。
エレクトロニクス: 有機EL向けメタルマスクや光学フィルムが堅調で、半導体関連も安定した需要があります。精密微細加工技術を背景に、ニッチながらも高成長が見込まれる市場で強みを発揮しています。

同社は「P&I(印刷と情報)」を融合した独自の事業展開と、M&Aを含めたグループ内での技術・資産の結合を通じて、変化する市場環境に対応し、競争力を維持・強化しようと取り組んでいます。

3. 経営戦略と重点分野

大日本印刷は、現在進行中の中期経営計画(2023-2025年度)の最終年度を迎えており、以下の戦略目標を掲げています。
事業ポートフォリオの強化: 成長が見込まれる事業領域への投資を優先し、企業の持続的成長を支える事業構造への転換を図っています。
成長投資と株主還元の両立: 事業成長を通じて企業価値の向上を目指すと同時に、安定的な株主還元も重視する方針です。
人的・知的資本・環境対応の強化: ESG(環境・社会・ガバナンス)への積極的な取り組みを通じて、持続可能な社会への貢献と企業価値の向上を目指しています。

セグメント別の重点分野としては、スマートコミュニケーションにおける情報処理サービスや高付加価値セキュリティ、ライフ&ヘルスケアにおけるEV・再生可能エネルギー関連材料やメディカル・ヘルスケア、エレクトロニクスにおける有機ELディスプレイ用精密部材、半導体関連部材の技術開発と生産能力強化(大型コーティング装置等への投資)が挙げられます。
為替変動、原材料価格高騰、地政学的リスクといった外部環境の変化にも適応しながら、事業の推進を図る方針です。

4. 事業モデルの持続可能性

大日本印刷の事業モデルは、伝統的な印刷技術を基盤としつつ、高機能化・デジタル化によって多角的な収益源を確保しており、持続可能性への高い適応力を持つと評価できます。
収益モデル: 収益は従来の印刷に限定されず、情報処理サービス(BPO)、セキュリティ製品(ICカード)、精密電子部品(有機ELメタルマスク、半導体部材)、環境配慮型包装材、高機能建装材など多岐にわたります。これにより、特定の市場変動リスクを分散し、安定的な収益構造を構築しています。
市場ニーズへの適応力: 紙媒体市場の縮小に対し、情報セキュリティ、デジタルソリューション、XR技術への積極的な進出や、環境対応型製品(エコ包装材、太陽電池関連)といった成長分野へのシフトを進めています。さらに、EVシフトやディスプレイ技術の進化に対応した高機能材料の開発・提供も行っています。M&Aを通じた事業ポートフォリオの最適化も、市場変化への柔軟な対応を可能にしています。
持続可能性への取り組み: 中期経営計画で掲げているESG(環境・社会・ガバナンス)の強化は、企業の社会的責任を果たすとともに、長期的な企業価値向上に資する取り組みと見られます。

5. 技術革新と主力製品

大日本印刷は、長年の歴史で培った印刷技術をコアに、先進技術を融合させることで独自の製品やサービスを生み出しています。
技術開発の動向と独自性:
微細加工技術: 有機ELディスプレイ用メタルマスクや半導体用フォトマスクにおいて、高い精度が求められる微細加工技術を有しており、ディスプレイや半導体産業の進化を支えています。
コーティング技術: 透明バリアフィルム、光学フィルム、リチウムイオン電池用パウチ、太陽電池バックシートなどの高機能材に不可欠な精密コーティング技術に強みを持ち、この分野への継続的な投資も行われています。
情報処理・セキュリティ技術: ICカード、個人情報保護ソリューション、BPOサービスなど、情報社会の基盤を支えるセキュリティ技術と情報処理の効率化を進めています。
コンテンツ・XR技術: デジタルコンテンツ配信やVR/AR/MRといったXR技術を活用したソリューション開発にも注力し、新たな価値創出を目指しています。
収益を牽引している製品やサービス:
エレクトロニクス分野: 有機ELディスプレイ用メタルマスクや光学フィルムは、ディスプレイ市場の成長とともに需要が拡大しており、同社の主要な収益源の一つです。
ライフ&ヘルスケア分野: リチウムイオン電池用パウチ、太陽電池用封止材、車載向け加飾材は、EVや再生可能エネルギー、モビリティ市場の成長に伴い、堅調な需要が継続しています。
スマートコミュニケーション分野: BPOサービスや写真関連資材も、企業の業務効率化やパーソナライゼーション需要に応える形で収益に貢献しています。

6. 株価の評価

現在の株価は2490.5円です。各種指標を用いて株価を評価します。
PER(会社予想): 12.45倍
PBR(実績): 0.98倍
EPS(会社予想): 200.04円
BPS(実績): 2,534.14円
業界平均PER: 14.5倍
業界平均PBR: 1.3倍
PERによる評価:

大日本印刷のPER 12.45倍は、業界平均PER 14.5倍と比較して低い水準にあります。これは、同社の予想利益に対して株価が割安に評価されている可能性を示唆するかもしれません。
  • PBRによる評価:

    PBR 0.98倍は、業界平均PBR 1.3倍を下回っており、かつ1倍を割れる水準です。これは、現在の株価が1株当たり純資産を下回っている状態であり、市場が同社の資産価値に対して十分に評価していない、あるいは将来の成長性に対して慎重な見方をしていることを示唆する可能性があります。
    現在の株価とBPSの比較:

    現在の株価2490.5円は、1株当たり純資産であるBPS 2,534.14円を下回っています。

    7. テクニカル分析

    現在の株価は2490.5円です。
    – 年初来高値: 2498.5円
    – 年初来安値: 1810円
    – 52週高値: 2785.00円
    – 52週安値: 1810.00円
    – 50日移動平均線: 2282.47円
    – 200日移動平均線: 2190.96円
    現在の株価水準:

    現在の株価2490.5円は、年初来高値2498.5円に非常に近く、52週高値2785.00円と比較しても高値圏に位置していると言えます。
    50日移動平均線(2282.47円)および200日移動平均線(2190.96円)を大きく上回っており、短期および中長期のトレンドが上昇基調にあることを示唆しています。
    直近の株価履歴を見ると、2月半ばから3月にかけて株価は上昇しており、高値追いの勢いが続いている可能性があります。
    結論:

    テクニカル分析の観点からは、現在の株価は直近の株価上昇モメンタムに乗って高値圏にあり、上昇トレンドの勢いが継続している状態と見ることができます。

    8. 財務諸表分析

    提供された損益計算書(年度別比較)と企業財務指標に基づいて分析します。
    売上高:

    過去数年間の総売上高は着実に増加傾向にあります。2022年3月期の1,344,147百万円から、2025年3月期(過去12ヶ月)では1,457,609百万円まで伸長しました。直近四半期(2025年4-6月期)の売上高成長率も前年同期比+2.70%と、継続的な成長を示しています。
    利益:

    売上総利益、営業利益ともに過去数年で増加傾向にあり、本業の収益力が向上していることがうかがえます。純利益は2023年3月期に一時減少しましたが、2024年3月期に大きく回復し、高水準を維持しています。
    直近四半期の営業利益と経常利益は前年同期比でそれぞれ+24.6%、+10.2%と増益を達成しており、本業は堅調です。ただし、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比△28.4%と減少しましたが、これは前年に投資有価証券売却益などの特別利益が計上された反動によるものです。
    利益率は、Profit Margin 6.32%、Operating Margin 6.28%であり、堅実な収益性を確保しています。
    キャッシュフロー:

    詳細なキャッシュフロー計算書は提供されていませんが、豊富な現金及び預金(直近四半期で355.05B百万円)を保有しており、事業活動による安定したキャッシュ創出力が推測されます。
    ROE (Return on Equity):

    ROE(過去12ヶ月)は7.75%、実績ROEは9.62%です。自己資本の利用効率を示す指標として、業界平均や市場全体の水準と比較し、効率性向上への取り組みが継続されるか注目されます。
    ROA (Return on Assets):

    ROA(過去12ヶ月)は3.14%です。総資産を効率的に活用して利益を生み出しているかを示す指標であり、こちらも今後の改善に期待が寄せられます。
    自己資本比率:

    実績自己資本比率は59.2%、直近四半期時点でも57.7%と非常に高い水準を維持しています。負債比率も低く、極めて強固な財務基盤を持つ企業であると評価できます。流動比率も233%と高く、短期的な支払い能力も十分です。

    9. 株主還元と配当方針

    • 配当利回り(会社予想): 1.61%
    • 1株配当(会社予想): 40.00円(中間18.00円、期末22.00円の予定)
    • 配当性向(Payout Ratio): 15.91%
    • 分析:

    配当性向15.91%は、企業として事業への再投資や内部留保を重視しつつ、株主への利益還元も考慮していることを示しています。この水準は、成長投資を積極的に進める企業としては妥当な範囲と捉えることもできます。
    中期経営計画では「成長投資と株主還元の両立」を掲げており、今後も安定配当を維持しつつ、業績の進展に応じて株主還元の強化が期待される可能性があります。
    自社株買いについては、上位株主に自社(自己株口)が13.88%を保有しているという記述があり、自己株式の取得が株主還元策の一環として行われている可能性が示唆されます。2024年9月には株式分割も実施されており、投資家の買いやすさに配慮した施策も実施しています。

    10. 株価モメンタムと投資家関心

    • 株価の直近の変動傾向:

    直近10日間の株価は上昇傾向にあり、現在の株価2490.5円は年初来高値に迫る水準です。50日移動平均線、200日移動平均線を大きく上回っており、短期・中長期で強い上昇モメンタムを示しています。
    過去52週間の株価変化率は-6.38%と市場平均(S&P 500の+16.84%)には劣後していますが、直近で高値を更新していることから、価格トレンドが変化し、投資家の関心が高まっている可能性があります。
    株価への影響を与える要因:
    業績見通し: 第1四半期決算で本業の増益が確認されたことはポジティブな材料です。今後の業績進捗や通期予想の達成状況が株価に影響を与えるでしょう。
    成長分野の動向: 有機EL向けメタルマスクやリチウムイオン電池用パウチなど、成長市場におけるDNP製品の需要拡大や技術的優位性の維持は、株価を押し上げる重要な要因です。
    株主還元策: 安定配当に加え、自社株買いなどの追加的な株主還元策は、投資家からの評価を高める可能性があります。
    マクロ経済環境: 為替変動、原材料価格、燃料コストの動向や地政学リスクは、同社の業績および株価に影響を与える外部要因として引き続き注目されます。
    割安感: 業界平均と比較したPER、PBRの割安感が、今後の市場における再評価のきっかけとなる可能性も考えられます。
    投資家関心:

    出来高や売買代金は活発な取引を示しており、投資家の関心は一定水準にあると考えられます。信用倍率は1.64倍ですが、信用売残が増加し信用買残が減少しているため、需給バランスの変動に注意が必要です。

    11. 総評

    大日本印刷は、伝統的な印刷技術を源流としつつ、今日のデジタル社会や環境変化に対応した事業モデルへの転換を着実に進めている企業です。

ポジティブな側面としては、以下の点が挙げられます。

  • 多様な成長事業ポートフォリオ: スマートコミュニケーション、ライフ&ヘルスケア、エレクトロニクスといった各セグメントで、情報社会、EV、再生可能エネルギーといった成長市場に関連する製品・サービスを提供しています。
  • 強固な財務基盤: 高い自己資本比率と潤沢な手元資金は、事業投資や不測の事態への備えとして安定的な経営を可能にしています。
  • 本業の堅調な利益成長: 売上高の増加傾向に加え、直近四半期では特別損益を除いた本業の営業利益・経常利益が増益を達成しており、収益力の改善が見られます。

一方で、注目すべき点も存在します。

  • 市場変化への継続的な適応: 従来の紙媒体市場の縮小に対応し、いかにデジタル化や高機能材、情報サービスへの事業シフトを加速させるかが、今後の成長を左右するポイントとなります。
  • 純利益の変動要因: 有価証券売却益などの特別利益の有無が純利益に与える影響が大きいため、本業からの安定した利益成長がより重要となります。
  • 市場評価: PER、PBRともに業界平均を下回っており、同社の持続的な成長戦略や事業構造の変化が市場に十分に評価されていない、あるいは割安に放置されている可能性も考えられます。

株価の状況:

現在の株価は年初来高値圏にあり、直近の上昇モメンタムが強いことがうかがえます。財務の安定性や成長分野への注力は魅力的であり、今後の業績進捗や、中期経営計画の最終年度における成果、追加的な株主還元策の発表などが、市場からの評価を高める要因となるか注目されます。


企業情報

銘柄コード 7912
企業名 大日本印刷
URL http://www.dnp.co.jp/
市場区分 プライム市場
業種 情報通信・サービスその他 – その他製品

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このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.1)」によって自動生成されました。

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By ジニー

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