科研製薬(4521)企業分析レポート
個人投資家の皆様へ
1. 企業情報
科研製薬は、1948年設立の医薬品を主体とする企業です。旧理研グループにルーツを持つ中堅製薬会社として知られています。主な事業は「薬業」と「不動産」の2つに分かれており、2025年3月期実績(連結)では薬業が売上の97%、不動産が3%を占めています。
薬事業では、関節機能改善剤「アルツ」や爪白癬治療剤「クレナフィン」を主力製品とし、他に創傷治癒剤「フィブラスト」、原発性腋窩多汗症治療剤「エクロック」、歯周組織再生誘導材料「レグロス」、腰椎椎間板ヘルニア治療剤「ヘルニコア」、術後癒着防止材「セプラフィルム」などを提供しています。また、農薬(ポリオキシン、ペントキサゾンなど)や動物用医薬品も手掛けています。
不動産事業では、主に東京都文京区の「文京グリーンコート」関連の賃貸収入を収益源としています。国内外で事業を展開しており、海外売上高は全体の約28%です。
2. 業界のポジションと市場シェア
科研製薬は日本の製薬業界において中堅企業としての地位を確立しています。国内市場では、関節機能改善剤「アルツ」や爪白癬治療剤「クレナフィン」が主力製品であり、特定の領域で存在感を示しています。
競争優位性:
- 多様な製品ポートフォリオ: 自社創製薬と導入品の「2本柱」で事業を展開しており、特に整形外科・皮膚科領域に強みを持っています。
- 豊富な研究開発パイプライン: 固形腫瘍、アトピー性皮膚炎、難治性血管奇形、末梢神経障害など、多様な疾患領域で開発中の新薬候補を有しています。
- 安定した財務基盤: 高い自己資本比率を保ち、財務の安定性が競争環境下での成長を支える可能性があります。
課題:
- 国内市場の厳しさ: 薬価改定や医療費抑制策の継続、長期収載品の選定療養制度導入などにより、国内医薬品市場は厳しい環境にあります。
- 特許切れリスク: 主力製品である「クレナフィン」の特許満了は、売上および収益に影響を与える可能性があります。
- 研究開発投資の増大: 持続的な成長には新薬創出が不可欠であり、研究開発費の増加が短期的な収益を圧迫する可能性があります。
3. 経営戦略と重点分野
科研製薬は「長期経営計画2031」を策定し、2031年ビジョンとして「画期的新薬の創出・提供」や「皮膚科・整形外科を中心としたグローバル展開」などを掲げています。
2025年4月8日には、この長期経営計画の一部見直しを公表し、以下の3点を重点分野としています。
– 研究開発投資の増額: 将来の成長を確実にするため、グローバル展開を見据えた研究開発投資を積極的に行っています。特に、導入新規治療薬の契約一時金支払いなどにより、研究開発費が増加傾向にあります。
– 財務規律の維持: 積極的な投資を行いながらも、高い自己資本比率を維持し、財務健全性を保つ方針です。
– 株主還元強化: 安定的な配当に加え、自社株買いなども含めた株主還元の強化を目指しています。
直近の2026年3月期第1四半期では、研究開発費が前年同期比で大幅に増加しており、この経営戦略がすでに実行されていることがうかがえます。
4. 事業モデルの持続可能性
科研製薬の事業モデルは、主力製品による安定収益を確保しつつ、新薬の研究開発と海外展開によって将来の成長を目指すものです。
* 主力製品の継続: 関節機能改善剤「アルツ」など、既存の長期収載品が一定の収益基盤を提供しています。
* 市場ニーズへの対応: 皮膚科や整形外科といった特定の治療領域に注力し、高ニーズの疾患に対する新薬開発を進めています。
* 海外展開: 農業薬品の海外売上増加や、医薬品・医療機器の海外展開を強化することで、国内市場の縮小リスクを分散し、成長機会を追求しています。新しく導入した製品(例:FYARRO)の海外売上寄与も期待されます。
* 不動産事業: 「文京グリーンコート」からの安定した賃料収入は、医薬品事業の変動リスクを一部吸収しており、安定的な収益源として持続性に貢献しています。
主力製品の特許満了による売上減少や、研究開発投資の増大に伴う一時的な収益圧迫は短期的な課題となりえますが、多様なパイプラインとグローバル戦略、安定した不動産収益が事業の持続可能性を支えると考えられます。
5. 技術革新と主力製品
科研製薬は、自社創製に加え、国内外の企業との提携による新技術・新製品の導入にも積極的です。
主力製品:
- 関節機能改善剤「アルツ」: 変形性膝関節症、肩関節周囲炎、腰痛症などに用いられる主力製品です。
- 爪白癬治療剤「クレナフィン」: 爪水虫の治療に用いられる外用薬で、自社創製品として長く収益を牽引してきました。
- 創傷治癒剤「フィブラスト」: 褥瘡や皮膚潰瘍の治療に用いられる外用薬です。
- 原発性腋窩多汗症治療剤「エクロック」: 原発性腋窩多汗症(脇汗)の治療薬で、新製品として売上貢献が期待されています。
- 農業薬品「ポリオキシン」: 主力農薬として、海外でも利用されています。
技術開発の動向・独自性:
複数の新薬候補が臨床試験段階にあり、技術革新への積極的な姿勢が見られます。
* 後期開発段階:
* 頭部白癬治療剤「KAR」(フェーズIII)
* 難治性血管奇形治療剤「KP-001」(フェーズIII)
* 原発性胆汁性胆管炎治療剤「Seladelpar」(フェーズIII)
* 初期開発段階:
* 固形腫瘍治療剤「KP-483」(フェーズI)
* アトピー性皮膚炎治療剤「NM26-2198」(フェーズI)
* 末梢神経障害治療剤「KP-910」(フェーズI)
* 提携による技術導入: Alumis Inc.との提携により、アトピー性皮膚炎治療薬TYK2阻害剤「ESK-001」を日本で開発・商業化する契約を締結しています。
これらのパイプラインの成功が、将来の収益を牽引する可能性があります。
6. 株価の評価
現在の株価 3,805.0円に対し、各種指標は以下の通りです。
* PER(会社予想): 42.58倍
* 業界平均PER(医薬品)27.8倍と比較すると、現在のPERは業界平均よりも高い水準にあります。これは、将来の成長期待などが株価に織り込まれている可能性を示唆します。
* PBR(実績): 0.98倍
* 業界平均PBR(医薬品)1.4倍と比較すると、現在のPBRは業界平均よりも低い水準にあります。1倍を下回っており、企業の保有する純資産価値に対して株価が低く評価されている状態です。
* EPS(会社予想): 89.37円
* BPS(実績): 3,894.02円
* 株価(3,805.0円)はBPS(3,894.02円)より低い水準にあります。
PERとPBRで評価が分かれる状況であり、収益性(PER)では期待感がある一方で、資産価値(PBR)からは割安感があるとも解釈できます。
7. テクニカル分析
直近の株価推移を見ると、現在の株価3,805円は年初来高値4,901円、年初来安値3,651円の範囲内で、安値圏に近い水準にあります。
* 直近10日間の株価推移: 3,862円から3,805円へと、段階的に下落する傾向が見られます。
* 移動平均線:
* 50日移動平均線: 3,859.72円
* 200日移動平均線: 4,149.95円
現在の株価は、50日移動平均線および200日移動平均線の両方を下回っており、短期的および中期的に下降トレンドにあることが示唆されます。
- 年初来パフォーマンス: 52週変化率は-5.16%であり、市場全体の動き(S&P 500 52週変化率 +16.84%)と比較すると低調です。
これらのデータからは、現在の株価は比較的安値圏にあり、下降トレンドが継続している状態が示唆されます。
8. 財務諸表分析
以下に過去数年間の損益計算書と主な財務指標の傾向をまとめます。
* 売上高:
* 2022年3月期: 76,034百万円
* 2023年3月期: 72,984百万円 (前年比約-4.0%)
* 2024年3月期: 72,044百万円 (前年比約-1.3%)
* 過去12か月(2025年3月期に相当する可能性あり): 94,035百万円 (大幅増)
売上高は2024年3月期まで減少傾向にありましたが、過去12か月では大きく増加しました。しかし、2026年3月期第1四半期では微増(+3.4%)に留まり、通期では88,000百万円と減収が予想されています。
-
営業利益:
- 2022年3月期: 17,067百万円
- 2023年3月期: 8,002百万円 (前年比約-53.1%)
- 2024年3月期: 9,517百万円 (前年比約+18.9%)
- 過去12か月: 21,038百万円 (大幅増)
営業利益は2023年3月期に大きく減少しましたが、その後は回復傾向にありました。しかし、2026年3月期第1四半期では、研究開発費の大幅増(前年同期比約+79.5%)により、わずか14百万円と大幅な減益(前年同期比△99.5%)となりました。通期予想も5,200百万円と、過去12か月の実績から大幅な減益が見込まれています。
* 純利益(親会社株主帰属):
* 2022年3月期: 9,549百万円
* 2023年3月期: 5,440百万円 (前年比約-43.0%)
* 2024年3月期: 8,025百万円 (前年比約+47.5%)
* 過去12か月: 13,945百万円 (大幅増)純利益も営業利益と同様の傾向を示し、直近の第1四半期では271百万円と大幅な減益(前年同期比△84.5%)でした。通期予想も3,400百万円と、過去12か月の実績から大幅な減益が見込まれています。
* ROE (Return on Equity):
* 実績: 9.41% (過去12か月: 8.60%)自己資本を効率的に活用して利益を生み出す能力を示す指標であり、一般的に健全な水準です。
* ROA (Return on Assets):
* 実績 (過去12か月): 6.52%総資産に対する利益の割合を示す指標です。
* 自己資本比率:
* 実績: 80.2% (直近四半期末: 83.6%)非常に高い水準を維持しており、財務基盤の安定性が強みです。有利子負債も少なく、借入依存度が低いことがうかがえます。
* キャッシュフロー:
* 直近四半期の現金及び預金は43,411百万円と、前期末の54,093百万円から減少しています。これは、主に前述の研究開発費(契約一時金)の支払い等の影響と考えられます。
全体として、科研製薬は堅固な財務基盤を持つ一方で、主力製品の状況や積極的な研究開発投資により、収益性が変動しやすい傾向にあることが示唆されます。
9. 株主還元と配当方針
科研製薬は、株主還元を重要な経営戦略の一つと位置付けています。
* 配当利回り(会社予想): 4.99% (現在の株価水準から見て高い水準です)
* 1株配当(会社予想): 190.00円
* 配当性向 (Payout Ratio): 41.05% (安定的な配当維持に無理のない範囲と考えられます)
* 配当実績: 2025年3月期は年間190円(普通配当150円+特別配当40円)の実績があり、2026年3月期も年間190円の配当予想が公表されています。
* 自社株買い: 2026年3月期第1四半期には、取締役会決議に基づき538,800株を約23.4億円で取得し、1,800,000株の自己株式を消却するなど、自社株買いにも積極的です。
「長期経営計画2031」の一部見直しにおいても株主還元強化を掲げており、安定配当と自社株買いを組み合わせた還元策を継続していく方針がうかがえます。
10. 株価モメンタムと投資家関心
- 株価モメンタム:
- 直近10日間の株価は下落傾向にあり、50日移動平均線(3,859.72円)および200日移動平均線(4,149.95円)を下回っています。これは、短期・中期的に株価に下降の勢いがあることを示唆しています。
- 現在の株価(3,805円)は年初来安値(3,651円)に近い水準にあり、年初来高値(4,901円)からは大きく下落しています。
- 投資家関心:
- 信用買残は増加傾向にあり(+5,300株増)、信用売残は減少傾向にあります(-1,200株減)。信用倍率は2.23倍です。これは、個人投資家が買い増しに動いている可能性があり、一方で空売りが手仕舞われている状況と見ることができます。
- 直近の四半期決算で営業利益、純利益が大幅な減益となったこと(前年同期比それぞれ-99.5%、-84.5%)は、短期的な投資家心理にネガティブな影響を与える可能性があります。
- 今後の株価に影響を与える要因としては、研究開発パイプラインの進捗状況(特に開発後期段階の発表)、新規導入品の商業化状況、主力品の特許満了後の売上動向、および会社が掲げる通期業績予想の達成度合いなどが挙げられます。積極的な株主還元策は、一定の株価下支え要因となる可能性があります。
11. 総評
科研製薬は、関節機能改善剤や爪白癬症薬を主力とする中堅製薬企業であり、医薬品・医療機器、農業薬品、不動産という多角的な事業構成が特徴です。特に薬業が売上の大半を占めます。
財務面では、自己資本比率が80%を超える非常に高い水準にあり、財務基盤は強固です。株主還元にも積極的で、高い配当利回りと自社株買いを実施しています。
業績面では、過去12か月間で売上高・利益ともに拡大しましたが、直近の2026年3月期第1四半期決算では、将来の成長に向けた研究開発投資(契約一時金を含む)が大幅に増加したことにより、大幅な減益となりました。会社は通期で減収減益を予想しており、短期的な収益は圧迫される見込みです。これは、主力品の特許満了や薬価改定といった国内市場の厳しい環境と、新たな収益源を確立するための先行投資が重なった結果と見られます。
株価は、年初来安値圏に近い水準で推移しており、テクニカル分析では短期・中期的に下降トレンドにあることが示唆されます。PERは業界平均より高いものの、PBRは1倍を割り込み業界平均より低い水準です。
今後の焦点は、研究開発投資が将来的にどれだけの新薬候補の承認と商業化に繋がり、新たな収益の柱を確立できるか、そして海外事業の成長が国内市場の課題を補完できるかにあります。長期経営計画で掲げた「画期的新薬の創出」と「グローバル展開」の実現が、持続的な成長と株価の評価に大きく影響すると考えられます。
本レポートは、提供された情報に基づいて客観的な分析を行ったものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任と判断で行ってください。
企業情報
銘柄コード | 4521 |
企業名 | 科研製薬 |
URL | http://www.kaken.co.jp/ |
市場区分 | プライム市場 |
業種 | 医薬品 – 医薬品 |
関連情報
証券会社
このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.1)」によって自動生成されました。
本レポートは、不特定多数の投資家に向けた一般的な情報提供を目的としており、個別の投資ニーズや状況に基づく助言を行うものではありません。記載されている情報は、AIによる分析や公開データに基づいて作成されたものであり、その正確性、完全性、適時性について保証するものではありません。また、これらの情報は予告なく変更または削除される場合があります。
本レポートに含まれる内容は、過去のデータや公開情報を基にしたものであり、主観的な価値判断や将来の結果を保証するものではありません。特定の金融商品の購入、売却、保有、またはその他の投資行動を推奨する意図は一切ありません。
投資には元本割れのリスクがあり、市場状況や経済環境の変化により損失が発生する可能性があります。最終的な投資判断は、すべてご自身の責任で行ってください。当サイト運営者は、本レポートの情報を利用した結果発生したいかなる損失や損害についても一切責任を負いません。
なお、本レポートは、金融商品取引法に基づく投資助言を行うものではなく、参考資料としてのみご利用ください。特定の銘柄や投資行動についての判断は、個別の専門家や金融機関にご相談されることを強くお勧めします。