1. 企業情報

第一稀元素化学工業は、ジルコニウム化合物やその他の無機化合物に特化した研究開発、製造、販売を手掛ける化学メーカーです。特に自動車の排ガス浄化触媒に使われるジルコニウム化合物では国内最大手の地位を確立しています。その他にも、半導体・エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケアといった幅広い分野のニーズに対応する製品を提供しています。燃料電池向けの材料開発にも注力しており、将来の成長分野への取り組みも強化しています。本社は大阪にあり、1956年に設立され、現在ではグローバルに事業を展開しています。

2. 業界のポジションと市場シェア

同社は、自動車排ガス浄化用ジルコニウム化合物の国内最大手であり、自動車排ガス浄化触媒および電材向けジルコニウム化合物で首位メーカーとしての地位を確立しています。これは、長年にわたる独自の技術と高品質な製品供給によって築かれた競争優位性であると考えられます。
一方で、世界経済の緩やかな回復基調にあるものの、通商環境の不透明さ、地政学リスク、中国の戦略物資輸出管理強化などが供給網に影響を与える可能性があり、これらの外部環境が事業展開上の課題となることが、直近の決算短信で言及されています。また、主要顧客、特に戦略分野における需要変動もリスク要因として挙げられています。

3. 経営戦略と重点分野

同社は、既存の主力事業である「自動車排ガス浄化触媒分野」に加え、「戦略分野(半導体・エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケア等)」を今後の成長を牽引する重点分野として位置づけています。特に、燃料電池向けの材料開発に注力しており、次世代エネルギー技術への貢献を目指しています。直近の第1四半期決算では、戦略分野の売上高は需要減により大幅に減少しましたが、このような外部環境の変化がある中でも、これらの成長分野への投資や開発を継続していく方針であることがうかがえます。
今期の決算短信には、具体的な中期経営計画の施策やビジョンに関する詳細な記載はありませんが、製品用途別の売上構成において「戦略分野」が示されており、これらが高付加価値を提供する領域として重視されていることが考えられます。

4. 事業モデルの持続可能性

同社の事業モデルは、多岐にわたる産業分野で不可欠なジルコニウム化合物を供給することで成り立っています。自動車排ガス浄化触媒、電子材料、構造材料、燃料電池、医療用材料など、幅広い用途に対応できることが強みであり、特定の市場の変動リスクを分散させています。
燃料電池など、環境に配慮した次世代技術への開発注力は、市場ニーズの変化に適応し、事業の持続可能性を高めるための取り組みと評価できます。しかし、世界経済の動化、自動車市場のEVシフト、地政学リスク、原材料価格の変動などが収益に影響を与える可能性もあり、これらの変化に柔軟に対応することが求められます。直近の第1四半期決算では、戦略分野で需要減が見られましたが、主力である自動車排ガス浄化触媒分野はハイブリッド車の需要増に支えられています。

5. 技術革新と主力製品

同社の技術革新は、ジルコニウムを核とした無機化学合成技術にあります。ジルコニアは優れた耐熱性・強度・化学安定性を持ち、自動車排ガス浄化触媒、酸素センサー、構造・電子材料、燃料電池(SOFC)などに幅広く応用されています。特に、自動車排ガス浄化触媒や電材向けジルコニウム化合物は同社の主要な収益源です。
また、燃料電池向けジルコニウム化合物の開発は、将来のエネルギー分野における需要増を見越した技術開発の方向性を示しています。セシウム化合物や希土類化合物など、幅広い製品群とそれらを応用する技術開発が同社の独自性を支えています。

6. 株価の評価

現在の株価は695.0円です。
各種指標を基に評価します。
* PER(株価収益率):
* 会社予想EPS(連)6.19円に基づくPERは、約112.28倍です。
* 過去12ヶ月のDiluted EPS 32.67円に基づくPERは、約21.27倍です。
* 業界平均PER(20.4倍)と比較すると、過去12ヶ月実績EPSに基づくPERは業界平均に近い水準ですが、会社予想EPSに基づくPERは非常に高い水準にあります。これは、直近の業績(特に第1四半期の純損失)を反映した会社予想EPSが低く設定されているためと考えられます。
* PBR(株価純資産倍率):
* 実績BPS(連)1,549.75円に基づくPBRは、約0.45倍です。
* 業界平均PBR(1.1倍)と比較すると、PBRは業界平均を大きく下回っています。これは、企業の持つ純資産価値に対して、現在の株価が割安に評価されている可能性を示唆しています。

現在の株価は、低PBRである一方で、会社予想EPSに基づくPERは高水準にあり、足元の業績悪化が株価評価に影響を与えている状況がうかがえます。

7. テクニカル分析

現在の株価695.0円は、年初来高値742円から約6.3%低い水準であり、年初来安値570円からは約21.9%高い水準にあります。
50日移動平均線(679.50円)と200日移動平均線(677.46円)と比較すると、現在の株価はこれら両移動平均線をわずかに上回っています。
直近10日間の株価推移を見ると、685円から716円のレンジで取引されており、700円前後での攻防が見られます。大きな上昇トレンドや下降トレンドは明確には見られず、現状はレンジ相場の中にあると考えられます。高値圏にあるとは言えず、安値圏からのやや上昇した水準で推移している状況です。

8. 財務諸表分析

過去数年間の損益計算書と直近の財務指標を評価します。
* 売上高:
* 2022年3月期の29,365百万円から2023年3月期には35,748百万円まで増加しましたが、2024年3月期は35,220百万円、直近12か月(2025年3月期予想)は33,641百万円と緩やかに減少傾向にあります。
* 直近の2026年3月期第1四半期決算では、売上高は8,100百万円で前年同期比3.9%減となり、売上減少傾向が続いています。
* 利益:
* 営業利益は2023年3月期に5,391百万円とピークを迎えましたが、2024年3月期には2,423百万円、直近12か月(2025年3月期予想)は2,283百万円と大きく減少しています。
* 親会社株主に帰属する純利益も同様に、2023年3月期の4,020百万円から、2024年3月期には1,140百万円、直近12か月(2025年3月期予想)は792百万円と大幅に減少しています。
* 2026年3月期第1四半期決算では、営業利益は525百万円(前年同期比30.7%減)と減益となり、為替差損の影響も伴い、親会社株主に帰属する四半期純利益は△1百万円と純損失を計上しています。
* 収益性指標:
* ROE(実績:過去12か月)は1.07%と、過去数年と比較して低い水準にあります。企業の自己資本に対する利益創出能力が課題となっています。
* ROA(実績:過去12か月)は2.43%と、こちらも低い水準です。総資産を効率的に活用して利益を生み出す力が低迷していることを示します。
* 財務健全性:
* 自己資本比率は実績で58.6%、直近の第1四半期で60.7%と高水準を維持しており、財務の安定性は高いと言えます。
* 流動比率(Current Ratio)は3.77と高く、短期的な支払い能力に余裕がある良好な状態です。
* 総負債/自己資本比率(Total Debt/Equity)は51.40%と、過度な負債に依存していないバランスの取れた財務構造です。

全体として、売上高と利益はここ数年減少傾向にあり、特に直近の第1四半期では純損失を計上するなど、業績に厳しさがうかがえます。一方で、財務健全性は非常に高い水準を維持しており、経営基盤は安定していると考えられます。

9. 株主還元と配当方針

同社は、1株配当(会社予想)を28.00円としており、現在の株価に対する配当利回り(会社予想)は4.03%と、比較的高い水準にあります。
配当性向は79.66%と高めです。直近の業績(2026年3月期第1四半期で純損失)を考慮すると、今後の利益水準によっては、この高い配当水準を維持することが課題となる可能性もあると考えられます。
直近のデータには、大々的な自社株買いの発表に関する記載はありませんが、株主構成に自己株口(0.74%)の保有が示されています。

10. 株価モメンタムと投資家関心

直近10日間の株価は、685円から716円での推移であり、顕著な上昇または下降のモメンタムは確認できません。出来高も平均で3万株程度と比較的少なく、活発な取引が行われているとは言えない状況です。
信用取引については、信用買残が201,000株と前週比で増加し、信用売残は9,700株と前週比で減少しています。これにより信用倍率は20.72倍と高い水準にあり、株価上昇を期待する買い方が優勢であるものの、買いが積み上がっている状態でもあります。
52週間の株価変動率が-13.92%と、S&P 500の同時期の変化率+16.73%と比べて大きく下回っており、市場全体の好調な動きから取り残されている状況です。これは、直近の業績悪化や戦略分野における需要減、為替変動(ベトナム子会社に関連する為替差損)などの要因が、投資家の株価への関心および評価に影響を与えている可能性を示唆しています。

11. 総評

第一稀元素化学工業は、自動車排ガス浄化触媒用ジルコニウム化合物において国内で強固な地位を築いている化学メーカーです。燃料電池や半導体などの「戦略分野」を成長領域と位置付け、将来の市場ニーズへの対応を目指しています。
財務基盤は自己資本比率が60%を超え、流動比率も高いことから極めて安定しています。一方で、ここ数年の売上高および利益は減少傾向にあり、特に直近の第1四半期決算では純損失を計上しています。収益性を示すROEやROAも低い水準にあります。
株価はPBRが業界平均を下回る水準で、純資産価値に比べて割安感が見られます。しかし、会社予想EPSに基づくPERは非常に高く、足元の業績低迷が株価評価に影響を与えている状況です。配当利回りは比較的高めですが、高水BRと今後の利益動向が注視されます。
テクニカル面では、直近はレンジ相場であり、大きなモメンタムは見られません。過去1年の株価は市場平均を下回っており、投資家の関心も限定的である可能性があります。
今後の注目点としては、戦略分野における需要の回復と成長、燃料電池向けなどの新技術開発の進捗、そして為替変動を含む外部環境リスクへの対応が挙げられます。業績の回復基調が確認できれば、PBRの割安感が再評価される可能性も考えられます。


企業情報

銘柄コード 4082
企業名 第一稀元素化学工業
URL http://www.dkkk.co.jp/
市場区分 プライム市場
業種 素材・化学 – 化学

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