1. 企業情報
ユー・エム・シー・エレクトロニクス株式会社は、電子機器受託製造サービス（EMS）を主力事業とする企業です。電子回路基板の設計・製造から完成品の組立までを一貫して手掛け、特に車載機器、産業機器、OA機器の分野で製品を提供しています。また、クレジット/デビットカード決済端末やセキュリティコード入力キーパッドなどの金融関連デバイスも手掛けています。過去にトヨタ系の支援を受け、事業再生ADRを終了しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
同社の主要な事業分野は車載機器が53%、OA機器が31%、産業機器が16%を占めています。EMS業界は多岐にわたる顧客を抱え、競争が激しい市場です。同社は、トヨタ系企業からの支援を受け再建を果たした経緯があり、車載向け事業に強みを持っていると考えられます。しかし、特定の顧客への依存度や、中国市場の需要変動、為替の影響を受けやすいという課題も抱えています。市場シェアに関する具体的なデータは開示されていません。
3. 経営戦略と重点分野
提示された情報からは、具体的な中期経営計画や経営陣のビジョンに関する詳細な記載は確認できません。現在の事業構成ではEMS事業がほぼ全体を占めており、特に車載機器が収益の柱となっています。2026年3月期の連結業績予想では、売上高、営業利益、経常利益ともに前期比で減少を見込んでおり、厳しい事業環境を認識しているものと推測されます。
4. 事業モデルの持続可能性
EMS事業は顧客からの受託生産に依存するため、景気変動や顧客の生産計画に影響を受けやすい性質があります。同社は車載、産業機器、OA機器といった複数の分野に展開することで、事業ポートフォリオの分散を図っています。しかし、直近の決算短信では中国市場の自動車需要低迷や円高が売上減少の要因として挙げられており、外部環境の変化への適応力が問われます。事業再生ADRを終え、トヨタ系を主要株主としている点は、事業継続の上で一定の安定要因となる可能性があります。
5. 技術革新と主力製品
同社は、パチンコ・パチスロ関連機器、液晶ディスプレイ用電子回路基板、電源基板などの開発・製造に加え、クレジット/デビットカード関連デバイスや車載電子機器部品（ACインバーター、モータードライバー、電動ステアリングロックなど）を主力としています。特に車載機器は売上の半分以上を占める主要分野です。技術開発の独自性に関する具体的な説明は乏しいですが、多岐にわたる電子機器の受託製造で培ったノウハウが強みと考えられます。
6. 株価の評価
現在の株価は296.0円です。
会社予想EPSは35.54円であり、PER（会社予想）は8.33倍です。これは業界平均PER24.2倍と比較して低い水準です。
実績BPSは534.44円であり、PBR（実績）は0.55倍です。これは業界平均PBR1.6倍と比較して低い水準です。
過去12ヶ月の純利益は赤字であり、LTM EPSも-90.49円ですが、会社は2026年3月期での黒字回復（EPS33.96円）を予想しています。この予想が実現すれば、現在の株価は割安に見える可能性があります。また、PBRが1倍を下回っており、純資産価値に比べて株価が低い状態です。
7. テクニカル分析
現在の株価296.0円は、年初来高値395.0円と年初来安値220.0円の中間よりやや下寄りの水準にあります。
直近10日間の株価は295円から305円の範囲で推移しており、明確な上昇または下降トレンドは見られません。
50日移動平均線（294.20円）をわずかに上回っていますが、200日移動平均線（299.20円）を下回っており、短期と長期の方向性は混在しています。出来高は直近で減少傾向にあり、投資家の関心はやや低調な可能性があります。
8. 財務諸表分析
- 売上高: 2023年3月期に一時的に増加したものの、2024年3月期は減少し、2026年3月期はさらに減少する見込みです。LTM（過去12ヶ月）売上も前年同期比で減少しており、売上成長には課題が見られます。
- 粗利益: 過去数年間はおおむね70〜80億円台で推移しており、売上変動に伴い増減が見られます。
- 営業利益: 過去数年間は20億円前後の水準で推移していますが、2026年3月期の会社予想では18億円への減少が見込まれています。
- 純利益: 過去12ヶ月では多額の税金費用が計上されたため、連結で-2,508百万円の赤字となっています。しかし、2026年3月期は1,000百万円の黒字に回復するとの会社予想が出ています。この赤字は一過性の要因による可能性があります。
- ROE: LTM実績は-16.03%となっており、純利益の赤字により収益性が低い状況です。
- ROA: LTM実績は1.66%と低水準です。
- 自己資本比率: 直近四半期で20.8%と低く、一般的に財務の健全性を示す目安とされる40%を下回っています。
- 流動比率: 直近四半期で0.98と100%を下回っており、短期的な負債の返済能力には懸念が残ります。
- D/Eレシオ: 直近四半期で218.64%と高い水準であり、負債依存度が高い状況です。
- キャッシュフロー: 第1四半期決算短信ではキャッシュ・フロー計算書が作成されていないため、詳細な分析は困難です。
9. 株主還元と配当方針
会社予想の年間1株配当は10.00円であり、現在の株価に基づく配当利回りは3.38%です。LTM EPSがマイナスであるため配当性向は計算できませんが、会社予想EPS（35.54円）に基づくと約28.1%となります。直近の純利益が赤字となった年度においても、会社は10円の配当を維持する方針を示しており、株主還元への意識は高いと見られます。自社株買いに関する情報は開示されていません。
10. 株価モメンタムと投資家関心
過去52週間の株価変化率は-23.12%と、S&P500の動向に対し下回っています。直近の株価は年初来高値から乖離しており、下降傾向にあるとは言えませんが、明確な上昇モメンタムも確認できません。1日の平均出来高も低水準であり、市場の注目度はそれほど高くないと推測されます。信用買残が信用売残を大幅に上回る信用倍率114.43倍となっており、短期的な需給は拮抗している可能性があります。今後の株価に影響を与える要因としては、連結業績予想の達成状況、車載機器市場の動向、為替変動、原材料価格の安定化などが挙げられます。
11. 総評
ユー・エム・シー・エレクトロニクスは、車載機器を主力とするEMS企業として再建を完了しましたが、直近の業績は売上減少と、一過性の要因を含む純損失を計上し、厳しい事業環境にあります。会社は翌期の黒字回復を予想していますが、その実現が今後の重要な焦点となります。
財務面では、自己資本比率、流動比率ともに低く、D/Eレシオが高いなど、健全性に課題を抱えています。株価は予想PER、PBRともに業界平均と比較して割安水準にありますが、これは直近の業績不安や財務体質を反映している可能性もあります。配当は安定して支払われる方針ですが、純利益の動向を注視する必要があります。株価は年初来レンジの中間付近で推移し、明確な方向性は見られず、需給面では信用倍率が高い状況です。
12. 企業スコア
- 成長性: C
- 直近四半期および2026年3月期の会社予想売上高は前年比で減少傾向にあり、売上成長は停滞しています。
- 収益性: C
- 過去12ヶ月の営業利益率は0.46%と低水準であり、LTM ROEも-16.03%と収益性は低いと評価されます。
- 財務健全性: C
- 自己資本比率20.8%、流動比率0.98、D/Eレシオ218.64%と、主要な財務健全性指標が一般的な目安を下回っており、財務基盤は弱いと評価されます。
企業情報
| 銘柄コード | 6615 |
| 企業名 | ユー・エム・シー・エレクトロニクス |
| URL | http://www.umc.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 電機・精密 – 電気機器 |
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