1. 企業情報
株式会社トーエネックは、1944年に設立された電気工事大手企業です。中部電力の子会社であり、同社への売上高依存度が約4割を占めています。主な事業は設備工事で、電力インフラの構築・改善、屋内電気設備、通信ネットワーク（モバイル基地局設置、光ケーブル敷設など）、情報通信技術ソリューションなどを手掛けています。また、空調、換気、給排水設備工事や、太陽光発電工事、その他土木・建築工事など幅広い分野で事業を展開しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
トーエネックは電気工事業界の大手企業として位置付けられています。中部電力グループの一員であることから、安定した基盤と中部地方における強固な顧客基盤を有していると考えられます。特に配電工事においては強みを持つとされています。一方で、中部電力への依存度が約4割とされており、事業の多角化として一般顧客向けの工事（特に太陽光発電工事など）の強化を進めているとみられます。具体的な市場シェアの数値は提示されていませんが、業界大手として一定のシェアを確保していると推測されます。
3. 経営戦略と重点分野
同社は「中期経営計画2027（2023年度～2027年度）」を策定し、持続的な成長に向けた4つの基本方針を掲げています。
– 成長分野への挑戦: 太陽光発電などの再生可能エネルギー関連工事や情報通信技術ソリューションといった分野への積極的な取り組みを通じて、事業領域の拡大を目指しています。
– 既存事業の深化: 電力供給を支える配電線工事や、公共施設・商業施設向けの屋内線工事など、同社が強みを持つ既存事業の競争力強化を図ります。
– 人材投資の更なる拡充: 従業員の平均年齢が41.7歳と示されており、技術継承や新たな技術への対応を見据えた人材育成に注力すると考えられます。
– 経営基盤の強化: 事業を支える組織体制や財務体質のさらなる安定化・強化を目指します。
これらの戦略を通じて、中部電力への依存度を低減し、多様な市場ニーズに対応できる企業体質への転換を図ることが重点分野と見受けられます。
4. 事業モデルの持続可能性
同社の主な収益源は設備工事業（連結事業の93%）です。中部電力グループからの安定的な受注基盤に加え、一般顧客向け工事の強化により、収益源の多角化を進めています。社会インフラの老朽化対策、脱炭素社会に向けた再生可能エネルギーの導入拡大、情報通信ネットワークの高度化といった長期的な市場ニーズは継続的に存在するため、事業環境は比較的安定していると考えられます。
しかし、原材料価格の高止まりや供給面での制約、国内外の景気変動（米国経済の減速懸念、中国経済の成長鈍化、中東地域の不安定化など）が事業リスク要因として挙げられており、これらの外部環境の変化への適応力が事業モデルの持続性を左右する可能性があります。
5. 技術革新と主力製品
提供された情報からは、具体的な画期的な技術革新や個別の主力製品に関する詳細なデータは確認できません。ですが、事業内容から以下の分野が収益を牽引していると考えられます。
* 電気設備工事: 配電線工事、屋内電気設備工事など、電力インフラの中核を担うサービス。
* 情報通信ネットワーク構築: モバイル通信基地局設備、光ケーブル敷設、ネットワークシステム構築など、情報化社会の基盤を支えるサービス。
* 再生可能エネルギー関連工事: 太陽光発電設備の設置工事など、脱炭素化の流れを捉えたサービス。
「情報通信技術ソリューション」の展開は、デジタル化の進展に対応する技術開発を行っている可能性を示唆しています。
6. 株価の評価
- 株価: 1413.0円
- EPS（会社予想）: (連)129.29円
- PER（会社予想）: (連)10.93倍
- PBR（実績）: (連)0.97倍
- 業界平均PER: 14.0倍
- 業界平均PBR: 1.1倍
現在のPER（10.93倍）は業界平均（14.0倍）と比較して低く、またPBR（0.97倍）も業界平均（1.1倍）および1倍を下回っています。このことから、現在の株価は類似企業や純資産と比較して相対的に低い評価を受けている可能性があります。
7. テクニカル分析
現在の株価は1413.0円です。
* 年初来高値: 1476.00円
* 年初来安値: 796.00円
* 50日移動平均: 1383.30円
* 200日移動平均: 1122.73円
現在の株価は年初来高値に比較的近い水準で推移しており、年初来安値からは大きく上昇しています。50日移動平均線（1383.30円）および200日移動平均線（1122.73円）の両方を上回っており、短期および中期的に上昇トレンドにあると見ることができます。
8. 財務諸表分析
以下に過去数年の業績を比較し、主要な財務指標を評価します。
| 指標 (単位: 百万円) | 2025年3月期 (過去12ヶ月実績) | 2024年3月期 | 2023年3月期 | 2022年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 (Total Revenue) | 270,966 | 252,863 | 232,052 | 219,616 |
| 営業利益 (Operating Income) | 16,042 | 15,910 | 10,287 | 14,072 |
| 純利益 (Net Income C.S.) | 10,765 | 9,345 | -5,548 | 8,283 |
- 売上高: 過去数年間で一貫して増加傾向にあり、2025年3月期（過去12ヶ月実績）も前年比で約7.16%の増収を達成しています。事業が堅調に推移していることが示されます。
- 営業利益: 2023年3月期に一時的に減少したものの、2024年3月期には大きく回復し、2025年3月期（過去12ヶ月実績）も高水準を維持しています。工事採算性の向上などが寄与しているとみられます。
- 純利益: 2023年3月期に大幅な赤字を計上していますが、これは「Total Unusual Items」として記載されている一時的な要因（-13,027百万円）によるものと考えられます。この一時的な要因を除けば、利益は安定的に推移しており、2024年3月期に黒字回復し、2025年3月期（過去12ヶ月実績）も堅調に推移しています。
- ROE（実績）: (連)8.04%。資本効率を示す指標として、一定の水準を維持しています。
- 自己資本比率（実績）: (連)44.0%。財務基盤の安定性を示す自己資本比率は40%を超えており、健全な水準にあります。
- 流動比率（直近四半期）: 1.62。短期的な支払い能力を示す指標として、1.0を上回るため、問題のない水準です。
- D/Eレシオ（直近四半期）: 60.08%。負債比率は100%を下回っており、過度な負債に依存していない健全な状態です。
- 営業利益率（過去12ヶ月）: 5.61%。建設業の業界平均と比較して、良好な収益性を確保しているとみられます。
9. 株主還元と配当方針
- 配当利回り（会社予想）: 3.68%
- 1株配当（会社予想）: 52.00円
- 配当性向（Payout Ratio 4）: 39.77%
- 2024年10月1日付で株式5分割を実施しており、それに伴う配当予想の変更が行われています。
- 2025年3月期の中間配当では、創立80周年を記念した特別配当20円（分割前）が実施されています（「2025年3月期第2四半期末配当金の内訳 普通配当 80円00銭 記念配当 20円00銭(創立80周年記念配当)」）。
会社予想の配当利回りは3%台後半と比較的高い水準にあり、配当性向も約40%と健全な範囲です。記念配当の実施実績もあり、株主還元への意識が見られます。
10. 株価モメンタムと投資家関心
- 52週変動率: 48.79% (S&P 500と比較しても高い上昇率)
- 50日移動平均線は200日移動平均線を上回っており、株価自体も両移動平均線を上回る水準で推移しており、株価のモメンタムは強いと判断できます。
- 直近の出来高は9万株前後で推移しており、極端な変動は見られません。
- 信用倍率が33.77倍と高く、信用買残が信用売残を大きく上回っていることから、市場では買いが優勢であり、株価の上昇に対する投資家の関心が高いことが推測されます。
11. 総評
トーエネックは中部電力グループに属し、電力インフラ工事を基盤とした安定的な事業を展開しています。売上高は堅調に増加し、利益も2023年3月期の一過性損失を除けば安定的に推移しています。財務健全性は自己資本比率44.0%、流動比率1.62と高く、安定した経営基盤を確立しています。現在の株価は、PERおよびPBRともに業界平均を下回っており、相対的な割安感がある可能性があります。配当利回りは3%台後半と魅力的で、株主還元にも積極的とみられます。中期経営計画では成長分野への挑戦や既存事業の深化を掲げており、今後の事業成長に対する期待も伺えます。テクニカル的には上昇モメンタムが見られ、投資家からの関心も高い傾向です。
12. 企業スコア
- 成長性: A
- LTM売上成長率（YoY）: 7.16%
- 3年CAGR（売上高）: 7.23%
- 売上高は過去数年にわたり堅実な成長を継続しており、建設業としては良好な成長率であると評価できます。
- 収益性: A
- 営業利益率（過去12ヶ月）: 5.92% (業界平均を上回る水準)
- ROE（実績）: 8.04% (堅実な水準)
- 2023年3月期の一過性損失を除くと、継続的な利益創出力は高いと判断できます。
- 財務健全性: S
- 自己資本比率（実績）: 44.0% (基準値40%を優に上回る)
- 流動比率（直近四半期）: 1.62 (短期的な支払い能力に問題なし)
- Total Debt/Equity（直近四半期）: 60.08% (負債依存度は低い)
- 主要な財務指標は全て健全な水準にあり、非常に強固な財務体質であると評価できます。
企業情報
| 銘柄コード | 1946 |
| 企業名 | トーエネック |
| URL | http://www.toenec.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 建設・資材 – 建設業 |
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