1. 企業情報
株式会社アイリッジは、スマートフォンを活用した集客・販促支援を主軸とするインターネットサービス企業です。主な事業内容はアプリの企画・開発・運用支援、アプリマーケティングツールの提供、企業のDX戦略支援、フィンテックソリューションの提供など多岐にわたります。特に、アプリビジネスにおいては「FANSHIP」などのマーケティングツールを展開し、顧客のオンラインとオフラインを連携するデジタル販促を支援しています。近年はデジタル地域通貨事業から撤退するなど、事業ポートフォリオの見直しを進めています。
2. 業界のポジションと市場シェア
アイリッジは、スマートフォンアプリ開発とそれを通じたデジタル販促、DX支援といった領域で事業を展開しています。この分野は国内外のIT企業やマーケティング支援会社、システムインテグレーターなど多くのプレイヤーが参入しており、競争が激しい市場です。同社はSaaS型アプリプラットフォーム「APPBOX」やアプリマーケティングツール「FANSHIP」といった独自のソリューションを持つことで競争優位性を構築しようとしていますが、特定の製品での市場シェアを示すデータは提供されていません。デジタル地域通貨事業からの撤退は、事業環境の変化に対応する取り組みと見られます。
3. 経営戦略と重点分野
同社は、2024年5月に2027年3月期を最終年度とする3カ年中期経営計画を策定しています。この計画のテーマは、「開発力とビジネス創出力を活かした顧客企業のTech & Innovation Partnerへの成長」です。具体的には、アプリビジネスとビジネスプロデュースの2つの領域に経営資源を集中させる方針を掲げています。
中期経営計画の一環として、デジタル地域通貨プラットフォームを提供する連結子会社である株式会社フィノバレーの株式をTIS株式会社へ譲渡しました（2025年7月1日完了）。これにより、2026年3月期第2四半期に約9億円の特別利益を計上する見込みであり、この資金を主要事業の強化に活用する方針を示しています。
4. 事業モデルの持続可能性
アイリッジの収益モデルは、主に法人顧客向けのアプリ開発・運用支援、SaaS型アプリマーケティングツールの提供、およびDXコンサルティング・サービス開発支援です。これらのサービスは、企業のデジタル変革（DX）推進ニーズや、顧客エンゲージメント強化のためのモバイル活用需要が背景にあり、市場ニーズは継続的に存在すると考えられます。
デジタル地域通貨事業からの撤退は、選択と集中による経営資源の最適化であり、主力のアプリビジネスとDX支援分野における競争力強化と収益性改善を目指すものです。これにより、市場ニーズの変化への適応力を高め、事業モデルの持続可能性を向上させる可能性があります。
5. 技術革新と主力製品
同社の主要な技術は、スマートフォンアプリ開発技術と、それに付随する顧客データ分析やマーケティングオートメーションの技術です。主力製品・サービスとしては以下のものがあります。
* FANSHIP: 顧客の行動履歴に基づいたパーソナライズされた情報配信やクーポン配布などを行うアプリマーケティングツール。
* APPBOX: アプリビジネスを支援するSaaS型プラットフォーム。
* MoneyEasy（フィンテック事業）: デジタル地域通貨プラットフォーム。ただし、この事業は子会社譲渡によりグループ外となります。
* NOID: 音声AIアシスタントソリューションなど。
同社はこれらの技術と製品を通じて、顧客企業のデジタル変革を支援し、収益を牽引することを目指しています。特に「FANSHIP」などのアプリマーケティングツールが、安定収益源として拡大を目指しています。
6. 株価の評価
アイリッジの現在の株価は531.0円です。
* PER（会社予想）: 5.15倍
* PBR（実績）: 1.80倍
* EPS（会社予想）: 102.61円
* BPS（実績）: 293.09円
業界平均と比較すると、PERは業界平均（66.2倍）を大幅に下回り、PBRも業界平均（3.5倍）を下回っています。これは、会社予想EPSに連結子会社株式譲渡に伴う特別利益（約9億円）が大きく寄与しているため、一時的にEPSが押し上げられている可能性があります。特別利益を除外した長期的な収益力に基づいた評価をする場合は、PERはより高くなる可能性があります。現在の株価水準は、これらの会計上の影響を考慮する必要があるかもしれません。
7. テクニカル分析
現在の株価は531.0円です。
* 年初来高値: 702円
* 年初来安値: 401円
* 52週高値: 702円
* 52週安値: 396円
* 50日移動平均線: 525.76円
* 200日移動平均線: 545.51円
現在の株価は50日移動平均線をわずかに上回っていますが、200日移動平均線は下回っています。年初来高値（702円）や52週高値（702円）と比較すると、現在の株価はこれまでの高値圏から調整局面に入り、比較的安値圏に近い水準にあると言えるでしょう。直近10日間の株価推移を見ても、517円から542円のレンジで推移しており、大きな方向感は見られず、横ばいからやや軟調な動きとなっています。
8. 財務諸表分析
- 売上高: 過去数年で売上高は増加傾向にあります。
- 2022年3月期: 5,423百万円
- 2023年3月期: 5,418百万円
- 2024年3月期: 5,712百万円
- 過去12か月: 6,708百万円
- 直近四半期売上高：1,575百万円（前年同期比+18.3%）
- 営業利益: 2024年3月期に一時的に営業損失（△91百万円）を計上しましたが、過去12か月および2025年3月期予想では黒字転換を見込んでいます。ただし、直近の2026年3月期第1四半期では営業損失（△69百万円）を計上しています。
- 純利益: 2024年3月期は特別損失の影響で大幅な純損失（△1,156百万円）を計上しましたが、過去12か月では黒字転換（13百万円）、2025年3月期予想では大幅な黒字（800百万円）を見込んでいます。この大幅な黒字予想には、前述の特別利益が大きく寄与しています。
- ROE（実績）: 0.56%（2024年3月期）、過去12か月では-0.17%。利益率の低さおよび2024年3月期の損失が影響しており、資本効率は低い水準にあります。
- ROA（過去12か月）: 2.11%。ROEと同様に低い水準です。
- 自己資本比率: 41.7%（実績）。健全性の目安とされる40%を上回っており、財務基盤は比較的安定していると言えます。
- 流動比率: 1.65（直近四半期）。短期的な支払い能力は十分に確保されています。
- 総負債/自己資本比率（D/E）: 62.17%（直近四半期）。負債比率も比較的低く、財務の健全性を示しています。
- キャッシュフロー: 第1四半期のキャッシュフロー計算書は未作成です。ただし、現金及び預金は2,626百万円と潤沢です。
9. 株主還元と配当方針
同社は現在のところ、配当を実施していません。2025年3月期および2026年3月期の会社予想配当利回り、1株配当ともに0.00%となっています。これは、事業への投資を優先する経営方針を反映していると考えられます。自社株買いに関する情報は提供データにはありません。
10. 株価モメンタムと投資家関心
現在の株価は直近の移動平均線を下回る水準で推移しており、モメンタムは停滞していると言えます。直近10日間の出来高は平均出来高（3ヶ月、10日間）と比較して少なく、投資家の関心は一時的に低下している可能性があります。
信用倍率は10.46倍と信用買い残が信用売り残を大きく上回っており、需給面では将来的な売りの重しとなり得る点に注意が必要です。
今後の株価に影響を与える要因としては、中期経営計画における重点分野への投資の進捗、フィノバレー売却による特別利益の計上、そして中長期的な収益性の改善が挙げられます。特に特別利益の織り込みと、それによる一過性の業績上方修正に対する市場の評価が注目されます。
11. 総評
アイリッジはスマートフォンアプリ開発とDX支援を核とする事業を展開しており、売上高は増加傾向にあります。特に主力のアプリビジネスは堅調に推移しています。2024年3月期は大幅な損失を計上したものの、事業ポートフォリオの見直し（フィンテック事業の一部売却）と経営資源の重点分野への集中により、2025年3月期は特別利益を伴う大幅な黒字転換を見込んでいます。
財務健全性は自己資本比率が41.7%と安定しており、流動比率や負債比率も良好です。現在の株価はPER、PBRともに業界平均から見て低い水準にありますが、これは特別利益による一時的なEPS押し上げを考慮する必要があります。株主還元は現時点では行っておらず、成長投資を優先する姿勢がうかがえます。株価は高値圏から調整し、モメンタムは停滞気味であり、今後の業績改善と成長戦略の成果が市場で評価されるかどうかが焦点となります。
12. 企業スコア
- 成長性: A
- LTM売上成長率（YoY）は17.43%、3年CAGRは7.36%であり、売上が堅調に成長していることを示しています。直近四半期の売上成長率も18.20%と高く、売上拡大の傾向が見られます。
- 収益性: C
- 過去12か月の営業利益率は3.27%、EBITDA率は6.59%であり、SaaS/Software業界の平均的な水準と比較すると低めです。特に2026年3月期第1四半期に営業損失を計上しており、継続的な収益性改善が課題と見られます。
- 財務健全性: A
- 自己資本比率41.7%は、健全性の目安とされる40%を上回っています。流動比率165%も短期的な支払い能力の高さを示し、総負債/自己資本比率（D/E）も62.17%と低い水準であり、財務状況は非常に良好と評価できます。
企業情報
| 銘柄コード | 3917 |
| 企業名 | アイリッジ |
| URL | http://iridge.jp/ |
| 市場区分 | グロース市場 |
| 業種 | 情報通信・サービスその他 – 情報・通信業 |
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