1. 企業情報
川崎重工業株式会社は、1896年設立の歴史ある総合重機大手です。航空宇宙、鉄道車両、エネルギー・マリン、精密機械・ロボット、モーターサイクル・エンジンといった多岐にわたる事業を展開しています。特に、航空機、航空機エンジン、鉄道車両、大型二輪車、産業用ロボット、そして防衛関連の潜水艦や航空機、水素関連設備などに強みを持っています。
2025年3月期の事業別売上構成比は、モーターサイクルが29%、航空宇宙が27%、エネルギーマリンが19%、精密・ロボットが11%、車両が10%です。海外売上比率は59%を占め、グローバルに事業を展開しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
同社は様々な重工業分野で事業を展開しており、「総合重機大手」としての地位を確立しています。航空宇宙分野では航空機エンジンや機体部品の製造、防衛関連では潜水艦や航空機の製造、鉄道車両分野では国内外で実績を持つなど、高い技術力と実績を背景に競争優位性を築いています。また、産業用ロボットや水素関連技術といった成長分野にも注力しており、今後の市場におけるポジション強化が期待されます。具体的な市場シェアのデータは提供されていません。
3. 経営戦略と重点分野
経営陣が掲げるビジョンや戦略について、提供された決算短信には詳細な記述は限定的です。しかしながら、近年、水素関連設備の開発など、将来のエネルギーソリューションに向けた取り組みを進めていることがうかがえます。また、多様な事業ポートフォリオを持つことで、特定の市場変動リスクを分散し、安定的な経営を目指していると考えられます。中期経営計画の詳細については別途情報が必要となります。
4. 事業モデルの持続可能性
川崎重工業の事業モデルは、航空宇宙、車両、エネルギー、精密機械、モーターサイクルといった多角的な事業構成により特徴づけられています。これにより、特定の市場の変動リスクを分散し、安定的な収益基盤を目指しています。特に、水素関連設備のような次世代技術への投資は、将来の市場ニーズの変化への適応と持続的な成長に向けた取り組みと評価できます。一方で、重工業の特性上、大型プロジェクトの受注や原材料価格の変動などが業績に与える影響は大きいと考えられます。
5. 技術革新と主力製品
同社は、長年にわたる多様な重工業分野での実績を通じて培われた高い技術力を保持しています。航空機エンジン部品、鉄道車両、大型二輪車は国際的な競争力を持ち、産業用ロボットは幅広い製造業の自動化に貢献しています。特に、潜水艦や航空機といった防衛製品や、水素エネルギー関連技術の開発は、同社の高度な技術力と独自性を示すものです。収益を牽引する主力製品は多岐にわたりますが、モーターサイクル、航空宇宙、エネルギー関連が売上上位を占めています。
6. 株価の評価
現在の株価は9,513.0円です。
会社予想EPS 490.62円に基づくPERは19.39倍です。業界平均PERが13.3倍であることを考慮すると、現在のPERは業界平均と比較して高めの水準にあります。
実績BPS 4,403.07円に基づくPBRは2.16倍です。業界平均PBRが0.8倍であることを考慮すると、現在のPBRは業界平均と比較して高めの水準にあります。
7. テクニカル分析
現在の株価9,513.0円は、年初来高値11,540円からは下落していますが、年初来安値5,980円からは大きく上昇した水準にあります。
50日移動平均線9,933.40円を下回っており、短期的な上昇トレンドは勢いを失っている可能性があります。一方で、200日移動平均線8,765.16円を上回っており、中長期的には上昇基調を維持していると見ることができます。直近10日間の株価推移を見ると、9月19日に9,457円まで上昇した後、数日間調整し、本日9,513円で終えています。現在の株価は、高値圏からやや調整された水準と判断できます。
売上収益
過去12ヶ月の売上収益は2兆1,293億2,100万円で、過去5年間（2022年3月期1兆5,008億7,900万円から）一貫して増加傾向にあります。直近の2026年3月期第1四半期も前年同期比10.0%増の4,884億4,000万円と堅調に推移しています。
利益
粗利率は過去12ヶ月で約20.27%と、年度によって変動しながらも改善傾向が見られます。営業利益（実績）は、2024年3月期に348億4,400万円まで落ち込みましたが、過去12ヶ月では1,199億5,000万円と大幅に回復しています。営業利益率（過去12ヶ月）は2.93%です。
純利益については、2024年3月期に253億7,700万円と一時的に減少しましたが、過去12ヶ月では880億100万円と大きく増加しました。しかし、2026年3月期第1四半期では、金融収益の減少が影響し、親会社所有者に帰属する四半期利益が42億4,400万円と前年同期比で大幅に減少しています。
キャッシュフロー
過去12ヶ月の営業活動によるキャッシュフローは1,175億7,000万円のプラスですが、2026年3月期第1四半期では、法人所得税等の支払増や運転資金の増加により、77億5,300万円のマイナスに転じています。投資活動によるキャッシュフローも継続的にマイナスであり、財務活動によるキャッシュフローも社債償還等によりマイナスとなっています。これにより、現金及び現金同等物の残高は、この四半期で約588億円減少しました。
収益性指標
ROE（実績）は13.16%、過去12ヶ月では11.10%です。ROA（過去12ヶ月）は2.68%です。これらの数値は、資本を効率的に活用している度合いを示しますが、変動が見られます。
財務健全性
自己資本比率（実績）は23.3%であり、直近2025年6月30日時点でも24.8%と、一般的に健全とされる水準（40%以上）と比較して低い状況です。
流動比率（直近四半期）は1.14（114%）であり、短期的債務の支払能力は確保されていますが、より高い安全性を確保するには、さらなる改善が望ましいでしょう。
有利子負債は相対的に高く、Total Debt/Equity（直近四半期）は103.31%です。短信記載の負債/自己資本は約296%と比較的高水準であり、財務レバレッジが高い状態にあります。
9. 株主還元と配当方針
会社予想の1株配当は150.00円であり、現在の株価に基づく配当利回りは1.58%です。配当性向は28.55%と、利益に対する配当の割合は比較的低く、内部留保による事業投資や財務体質改善の余地があると考えられます。2025年3月期、2026年3月期ともに年間配当は150円を予想しており、安定的な配当を維持する方針がうかがえます。自社株買いなどの追加的な株主還元策に関する情報は提供されていません。次回の配当落ち日は2025年9月29日です。
10. 株価モメンタムと投資家関心
この銘柄の52週変化率は70.85%と、S&P500の16.76%を大きく上回るパフォーマンスを見せており、比較的に強い上昇モメンタムがありました。しかし、現在の株価は年初来高値からは調整されており、直近のモメンタムはやや落ち着いています。
信用買残が598万株と多く、信用倍率が8.96倍であることから、買い方の需給が積み上がっている状況は今後の株価の上値の重さにつながる可能性も考えられます。
潜水艦修繕事業および舶用エンジン事業に関する不正事案の調査が進行中であり、その調査結果や今後の動向が株価へ影響を与える可能性があります。
11. 総評
川崎重工業は、航空宇宙、鉄道車両、エネルギー・マリン、精密機械・ロボット、モーターサイクル・エンジンといった多岐にわたる事業を展開する総合重機大手です。売上高は過去数年にわたり堅調な成長を続けており、特に過去12ヶ月では大幅な増収を達成しています。多様な事業ポートフォリオと高い技術力は同社の強みであり、水素エネルギーといった成長分野への取り組みも評価できます。
一方で、利益の変動が大きく、特に直近の第1四半期では金融収益の大幅減少により純利益が減少しました。また、自己資本比率が20%台と低く、負債比率が高い水準にあり、財務健全性には課題が見られます。キャッシュフローも最新四半期では営業CFがマイナスとなるなど不安定さも散見されます。
株価は過去1年で大きく上昇しましたが、最近は年初来高値から調整局面に入っています。信用取引における買い残の多さや、進行中の不正事案の調査結果が、今後の株価に影響を与える可能性があります。
12. 企業スコア
- 成長性: S
- LTM売上成長率は約15.14%、3年間の売上CAGRは約12.01%と、売上は堅調に伸びており高く評価できます。
- 収益性: B
- 粗利率は20%前後で推移し、LTMの営業利益率は2.93%、直近第1四半期の事業利益率は4.20%です。重工業という事業特性を考慮しても、利益率は中立的な水準と評価されます。変動が大きい点も考慮しました。
- 財務健全性: C
- 自己資本比率は24.8%と一般的に健全とされる水準（40%以上）と比較して低い状況にあります。負債比率やTotal Debt/Equityも高い水準であり、財務健全性は慎重な評価が必要です。
企業情報
| 銘柄コード | 7012 |
| 企業名 | 川崎重工業 |
| URL | http://www.khi.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 自動車・輸送機 – 輸送用機器 |
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