1. 企業情報
ＳＵＢＡＲＵは自動車事業を主軸とし、航空宇宙事業なども手掛ける日本の企業です。特に自動車事業では、独自の水平対向エンジンやシンメトリカルAWD（全輪駆動）技術、および先進運転支援システム「アイサイト」に代表される優れた安全技術に強みを持っています。主な市場は北米で、そこで高い販売比率を占めています。近年はトヨタ自動車と提携関係にあり、トヨタが筆頭株主となっています。連結事業の売上構成比は自動車事業が98%を占め、航空宇宙事業が2%を占めます。
2. 業界のポジションと市場シェア
ＳＵＢＡＲＵは、水平対向エンジンや独自のAWD技術、そして安全技術を特徴としたニッチかつプレミアムなブランドポジションを確立しています。これにより、競合他社との差別化を図り、特定の顧客層から高い支持を得ています。特に北米市場でのブランド力と販売台数は強みとなっています。
課題としては、事業の北米依存度が高いことによる為替変動リスクや、米国の追加関税が利益を圧迫する要因となっている点が挙げられます。また、自動車業界全体がEV（電気自動車）シフトへと向かう中、研究開発費の増加や生産体制の変革が求められており、これらに対応していく必要があります。提供データには具体的な市場シェアの記載はありません。
3. 経営戦略と重点分野
経営陣は、独自の技術を活かした商品開発と市場ニーズへの対応を重視しています。中長期的な戦略としては、バッテリーEVの自社生産に向けた投資と体制整備を重点分野としています。これに伴い、短期的には生産制約が発生する可能性を認識しています。また、売上構成の改善、原価低減、および台数減少の影響最小化を図ることを目標としています。株主還元については、DOE（親会社所有者帰属持分配当率）3.5%を目標とし、総還元性向の目安を40%以上とする方針を掲げています。
4. 事業モデルの持続可能性
ＳＵＢＡＲＵの事業モデルは、独自の技術力とブランド力に支えられた自動車販売が主要な収益源です。特定の技術とブランドイメージを確立している点が強みである一方、自動車市場の電動化への大きな流れに対応することが持続性の鍵となります。バッテリーEVへの自社生産投資は、この市場ニーズの変化への適応に向けた重要な取り組みです。航空宇宙事業も手掛けており、事業ポートフォリオの分散性を有しています。しかし、現在の収益の大部分を自動車事業、特に北米市場に依存しているため、市場環境の大きな変化や規制動向への対応力が問われます。
5. 技術革新と主力製品
ＳＵＢＡＲＵは、特徴的な水平対向エンジン、シンメトリカルAWDシステム、そして先進運転支援技術「アイサイト」を中核とした安全技術の開発に注力しています。これらの技術は企業の独自性を高め、顧客ロイヤルティの向上に貢献しています。主力製品としては自動車事業全般であり、特に米国市場においてはSUVモデルの「フォレスター」や「クロストレック」が好調に推移しています。また、航空宇宙事業では民間機向けの「中央翼」の製造・販売も手掛けており、増収に貢献しています。
6. 株価の評価
現在の株価3,098.0円に対し、PER（会社予想）は14.15倍、PBR（実績）は0.84倍です。
業界平均PERが13.3倍、PBRが0.8倍であることと比較すると、ＳＵＢＡＲＵのPERおよびPBRは業界平均をわずかに上回る水準にあります。EPS（会社予想）218.87円、BPS（実績）3,685.37円から算出される株価評価は、現在の株価が業界と比較してややプレミアムをつけて評価されている可能性を示しています。
7. テクニカル分析
現在の株価3,098.0円は、年初来高値3,175円に近接しており、52週高値とも同水準です。年初来安値2,174円からは大きく上昇しています。また、50日移動平均線（2,903.68円）および200日移動平均線（2,713.10円）を大きく上回って推移しており、これらの指標からは現在の株価が高値圏にある状況と推察されます。直近10日間の株価は高値圏で推移しつつ、上下の動きが見られ、9月19日に一時下落しましたが、本日終値ではやや持ち直しています。
8. 財務諸表分析
- 売上高: 過去数年間は順調に増加傾向にありました。2022年3月期から2024年3月期にかけて大きく伸長しましたが、2025年3月期（予想と過去12か月の数値）では前年比でほぼ横ばいまたは微減となる見込みです。2026年3月期の通期予想では売上収益が前期比で△2.3%と減少する予想です。
- 利益: 売上高の増加に伴い、2022年3月期から2024年3月期にかけて営業利益および純利益は大幅に増加しました。しかし、過去12か月および2026年3月期の通期予想では、米国追加関税、研究開発費増加、原材料価格上昇、為替影響などにより、営業利益および純利益は大幅な減益が予測されており、利益水準は一時的に下降トレンドです。直近の2026年3月期第1四半期決算では、売上は増加したものの、営業利益は前年同期比で△16.2%、親会社所有者帰属純利益は△34.7%の減益となりました。
- キャッシュフロー: 過去12か月の営業活動によるキャッシュフローは5,994億円と潤沢であり、安定した事業運営を示しています。直近四半期もプラスを維持しています。
- ROE: 実績ROEは12.81%、過去12か月では11.60%と、効率的な資本活用が示されています。
- ROA: 過去12か月で4.90%であり、資産を効率的に活用し収益を上げている状況です。
- 自己資本比率: 53.3%（実績）と非常に高く、財務健全性が極めて高いことが示されています。
- 流動比率: 2.52（直近四半期）と高く、短期的な支払い能力も十分です。
- D/Eレシオ (Total Debt/Equity): 14.51%（直近四半期）と低く、負債依存度が低い健全な財務構造です。
全体として、過去数年は成長期にありましたが、足元では増収ながら利益は減益傾向にあり、今後の先行投資フェーズでの費用増加が課題として顕在化しています。しかし、財務基盤は非常に強固で健全性を保っています。
9. 株主還元と配当方針
ＳＵＢＡＲＵは株主還元に積極的な姿勢を示しており、配当利回り（会社予想）は3.71%です。1株配当（会社予想）は115.00円。配当性向は25.11%と比較的小さく、利益の内部留保も行いつつ配当を実施しています。
同社はDOE（親会社所有者帰属持分配当率）3.5%を目標とし、総還元性向40%以上を目安とする株主還元方針を掲げています。この方針に基づき、直近では自己株式の取得と消却を発表しており、2025年8月8日から2025年12月23日までの期間に最大20,840,000株（発行済株式総数の約2.8%）、総額500億円を上限とする自社株買いを実施し、2026年1月20日に全数を消却する予定です。これは配当だけでなく自社株買いも活用し、株主総還元性向40%以上を達成しようとする意向の表れであると考えられます。
10. 株価モメンタムと投資家関心
株価は直近一年間で24.82%の上昇を示しており、S&P500の同時期の上昇率16.76%を上回るパフォーマンスです。年初来高値圏で推移していることから、中長期的な上昇モメンタムは強いと言えます。
直近10日間の株価は高値圏でのもみ合いが見られ、一時的な下落もありましたが、底堅さも見られます。今後の株価に影響を与える要因としては、米国市場の動向、為替レートの変動（特に円高は減益要因）、原材料価格の推移、バッテリーEV化に向けた先行投資の進捗とその影響、そして新たな安全技術やEVモデルの開発発表などが挙げられます。直近の減益予想が市場にどう評価されるか、投資家の関心が集まると考えられます。信用倍率が0.40倍と売り長であることも、今後の株価に影響を与える可能性があります。
11. 総評
ＳＵＢＡＲＵは独自の技術力と北米市場でのブランド力を強みに、安定した収益基盤を築いてきた自動車メーカーです。過去数年間は順調な成長を遂げてきましたが、直近ではバッテリーEV化への移行に伴う研究開発費の増加、米国追加関税、原材料価格の高騰、為替の変動（円高）などが複合的に影響し、利益面では一時的な下押し圧力がかかる状況にあります。
しかし、自己資本比率53.3%をはじめとする財務指標は非常に健全であり、強固な財務基盤を有しています。また、株主還元にも積極的に取り組んでおり、配当と自社株買いを組み合わせた還元策を推進しています。
株価は年初来高値圏で推移しており、市場からの期待も一定程度あると見られますが、今後の利益動向とEV戦略の具体的な成果が、さらなる評価の鍵となると考えられます。足元では先行投資フェーズによる利益の減益予想が示されており、中長期的な成長への転換期にあると言えます。
12. 企業スコア
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成長性： B
直近四半期の売上成長率はプラスであるものの、過去12か月および2026年3月期の通期予想売上は前年比で横ばい〜微減と見込まれています。過去数年間の高い成長からは一時的に鈍化しており、EV化に向けた移行期にあると判断されます。
* 収益性： B過去数年の営業利益率や純利益率は向上傾向にありましたが、過去12か月および2026年3月期の通期予想では、米国追加関税や研究開発費の増加などにより、利益率が低下する見込みです。足元の営業利益率（過去12か月）6.29%は業界平均レベルですが、通期予想（4.36%）は下回るため、現時点では中立的な評価としました。
* 財務健全性： S自己資本比率53.3%、流動比率2.52、Total Debt/Equity比率14.51%と、全ての主要な財務健全性指標が非常に優れており、極めて強固な財務基盤を維持しています。
企業情報
| 銘柄コード | 7270 |
| 企業名 | SUBARU |
| URL | https://www.subaru.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 自動車・輸送機 – 輸送用機器 |
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証券会社
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