1. 企業情報
ＫｅｙＨｏｌｄｅｒは、総合エンターテインメント事業を中核とし、映像制作、広告代理店、物流、飲食事業などを多角的に展開する企業です。芸能プロダクションとしてタレントやアイドル（「乃木坂46」プロデュース、SKE48物販など）のマネジメントを行い、ライブイベントの企画・運営、ゲームアプリの提供なども手掛けています。また、テレビ番組や映画の制作、広告代理店、物流サービス、さらには飲食店の運営まで幅広い分野で事業を行っています。
2. 業界のポジションと市場シェア
同社は、人気アイドルグループのプロデュースに関わることで、エンターテインメント業界の一部において強い存在感を示しています。芸能プロダクション、映像制作、広告、イベント運営といった事業を垂直・水平統合的に展開しており、各事業間でのシナジー創出を強みとしています。積極的なM&A（例：Red List、アオイコーポレーションの子会社化）により、事業領域とIPポートフォリオの拡大を図っています。一方で、エンターテインメント業界は競合が激しく、消費者嗜好の変化が速いため、常に新しいコンテンツやサービスを提供し続けることが課題となります。具体的な市場シェアを示すデータは提供されていません。
3. 経営戦略と重点分野
経営陣は、M&Aを通じた事業拡大と、事業横断的な連携によるシナジー強化を経営戦略として掲げています。特に、デジタル領域での存在感を高めるため、縦型ショート動画制作やSNS配信の強化、デジタル広告事業の拡大に注力しています。中期経営計画としては、物流事業（TPO）の開始と安定稼働、映像制作におけるCM制作参入やスタジオ開設、配給事業への投資などが挙げられます。これらの施策を通じて、多角的な収益基盤の構築と成長を目指しています。
4. 事業モデルの持続可能性
同社の収益モデルは、芸能・イベント、映像制作、広告、物流、飲食など多様な事業セグメントにわたっています。これにより、特定の事業への依存リスクを分散し、幅広い市場ニーズに対応しようとしています。スマートフォンやSNSの普及に伴う縦型ショート動画やデジタル広告の需要増に対応する戦略は、市場の変化に適応する姿勢を示しています。しかし、エンタメ業界の流行サイクルは早く、常に魅力的なコンテンツやサービスを生み出す能力が持続可能性の鍵となります。M&A後のグループ全体の統治・シナジー創出も重要です。
5. 技術革新と主力製品
具体的な技術革新に関する詳細な記述は少ないですが、市場トレンドである縦型ショート動画制作やデジタル広告事業の強化は、デジタル技術の活用を前提とした動きと推察されます。同社の収益を牽引している主力は、「乃木坂46」や「SKE48」といった人気アイドルグループに関連するライブ、イベント、グッズ販売、およびゲームアプリ「乃木恋」などのエンターテインメントコンテンツです。また、2025年に開始した物流事業（TPO）も安定稼働し、収益に貢献しています。
6. 株価の評価
現在の株価は731.0円です。会社予想に基づくPERは10.55倍、実績PBRは0.62倍であり、業界平均PER15.0倍、業界平均PBR1.2倍と比較すると、割安な水準にあると評価できます。
会社予想EPS 69.08円と会社予想PER 10.55倍から算出される株価は728.89円、実績BPS 1,170.46円と実績PBR 0.62倍から算出される株価は725.68円であり、現在の株価はこれらの計算値に近い水準で推移しています。
7. テクニカル分析
現在の株価731.0円は、年初来高値842円から約13%安、年初来安値634円から約15%高の水準にあります。直近10日間の株価は730円台から740円台後半の間で推移し、やや下降傾向が見られます。50日移動平均線（736.38円）および200日移動平均線（737.68円）を下回っており、短期・中期的に売り圧力が優勢の兆候が見られます。現在の株価は、高値圏にあるとは言えず、レンジの中間付近で軟調な動きを継続している状態です。
8. 財務諸表分析
- 売上収益: 過去数年にわたり継続的に成長しており、2021年の16,786百万円から2024年（LTM）には31,090百万円へと着実に増加しています。直近の2025年上半期も前年同期比19.0%増と好調です。
- 利益:
- 売上総利益率は、2023年16.6%から2025年上半期は約17.9%とやや改善傾向にあります。
- 営業利益は、2021年の赤字から2024年（LTM）には1,857百万円と大幅に改善し、営業利益率は約6.0%となっています。しかし、2025年上半期は628百万円（営業利益率約3.7%）に留まり、期初予想から純利益が減益となる見通しです。これは主に金融費用の増加や、一部事業における先行投資、2024年度に計上された負ののれん発生益の反動によるものです。
- キャッシュフロー: 過去12か月の営業活動によるキャッシュフローは2,840百万円と、事業から安定したキャッシュを生み出しています。
- 効率性指標: ROE（実績）は11.94%、過去12か月では10.38%と、一般的な適切な水準（8%以上）を上回っています。ROAは過去12か月で4.26%（提供データから再計算）と妥当な水準です。
- 財務健全性: 自己資本比率は直近で40.4%〜41.0%と健全な水準を維持しています。流動比率も約128%であり、短期的な支払い能力に問題はありません。有利子負債比率を示すTotal Debt/Equityは20.31%と非常に低く、財務の安定性を示唆しています。ただし、負債合計/資本合計は約144%であり、総負債を加味すると注意が必要です。
9. 株主還元と配当方針
会社予想の配当利回りは1.37%であり、1株配当は10.00円です。配当性向は過去12か月で8.15%と低く、現状の利益水準に対して配当余地は大きいと考えられます。中間配当は実施せず、期末配当のみの予定です。自社株買いに関する情報は提供されていません。現在の配当方針は成長への投資を優先する姿勢を示している可能性も考えられます。
10. 株価モメンタムと投資家関心
過去12か月の株価は-2.63%と、市場平均（S&P 500の17.15%）に比べて劣後しています。直近の株価は移動平均線を下回っており、短期的な下降トレンドにあると見られます。直近の出来高は特段高水準ではなく、市場の大きな関心を集めている状況ではありません。信用取引では信用買残が226,000株に対し、信用売残は0株となっており、信用倍率は計算上0.00倍です。機関投資家の保有割合は0.62%と低く、個人投資家が主な取引主体である可能性が高いです。インサイダー保有割合は57.10%と高く、筆頭株主Jトラストや秋元康氏が大株主として名を連ねています。株価は、今後の大型イベントの成功、新規IPの獲得、M&Aによるシナジー効果の実現、および金融費用などのコストマネジメントが主要な変動要因となると想定されます。
11. 総評
ＫｅｙＨｏｌｄｅｒは、エンターテインメント業界における多角的な事業展開とM&Aを駆使した成長戦略を進めています。売上高は順調に成長しており、財務健全性も良好な水準を保っています。しかし、2025年上半期は金融費用の増加等により純利益が一時的に減少しており、通期目標達成に向けて下半期での挽回が焦点となります。株価指標では、PER・PBRともに業界平均と比較して割安感があり、配当性向も低く今後の株主還元余地も考えられます。足元の株価は軟調な動きを見せており、今後の業績回復と成長戦略の実現が市場からの評価を高める鍵となるでしょう。
12. 企業スコア
- 成長性: S
- LTM売上成長率は13.0%、直近四半期売上成長率は21.30%(YoY)、過去3年間の売上CAGRは約22.8%と、高い成長を維持しています。
- 収益性: B
- 過去12か月の営業利益率は約6.0%に改善していますが、2025年上半期は約3.7%に低下しており、通期予想も減益見込みです。絶対水準として非常に高いとは言えず、今後の安定性が課題です。
- 財務健全性: A
- 自己資本比率は40.4%〜41.0%、流動比率は128%と、健全な水準を維持しています。有利子負債比率も低く、財務基盤は安定していると評価できます。
- 株価バリュエーション: S
- 予想PER10.55倍、実績PBR0.62倍は、業界平均PER15.0倍、PBR1.2倍と比較して明らかに割安な水準にあります。
企業情報
| 銘柄コード | 4712 |
| 企業名 | KeyHolder |
| URL | http://www.keyholder.co.jp/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 情報通信・サービスその他 – サービス業 |
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