1. 企業情報
王子ホールディングスは1873年創業の日本の大手製紙会社です。パルプ・紙事業を中核とし、日本国内では製紙業界のトップに位置し、特に板紙で1位、洋紙で2位のシェアを占めています。グループ全体で多角的な事業を展開しており、段ボール原紙、白板紙、包装用紙などの「生活産業資材」、特殊紙、感熱紙、粘着材などの「機能材」、パルプ、エネルギー、植林・木材加工などの「資源環境ビジネス」、新聞用紙、印刷・情報用紙などの「印刷情報メディア」の4つのセ主要セグメントに加えて、商事、物流、エンジニアリング、不動産といった「その他」事業も手掛けています。中国やアジア、南米など、海外市場への展開も積極的に行っています。
2. 業界のポジションと市場シェア
同社は国内製紙業界トップであり、板紙で1位、洋紙で2位の市場シェアを持つリーディングカンパニーです。多岐にわたる製品ポートフォリオと、中国をはじめとするアジア、南米などへの積極的な海外展開が強みとなっています。近年では、サステナブルパッケージング分野へのM&A(例:Walki社買収)を通じて、環境配慮型製品の強化を進めています。一方で、新聞用紙や印刷用紙といった伝統的な事業分野では国内需要の減少が続き、またパルプ市況の変動や原燃料価格・物流費・人件費の高騰が収益を圧迫する課題も抱えています。
3. 経営戦略と重点分野
王子ホールディングスは、長期ビジョン2035の下で、2025年から2027年を「中期経営計画2027(準備期)」と位置付けています。この中期経営計画の重点項目は以下の通りです。
* 資本効率向上: 政策保有株式の売却(450億円規模)、退職給付信託見直しによる縮減(210億円規模)、自己株式取得(1,200億円規模)などを計画しています。
* ポートフォリオ転換: 事業再編や成長投資を通じて、事業構造の転換を図っています。特にサステナブルパッケージング事業や液体紙容器事業などの成長分野に注力しています。
* サステナビリティ促進: 環境問題への対応や持続可能な社会への貢献を目指しています。
2027年度の連結営業利益1,200億円、親会社株主帰属当期純利益800億円、ROE 8%を目標に掲げています。財務面では、ネットD/Eレシオ1.0倍以内を維持しつつ、配当性向50%への引き上げを方針としています。
4. 事業モデルの持続可能性
同社の事業モデルは、多様な製品ラインナップと積極的な海外展開によって維持されています。成長分野である「生活産業資材」(段ボール、紙器、サステナブルパッケージング、液体紙容器、ホームケア、ウェルネスケア製品など)や「機能材」(特殊紙、感熱紙、粘着材、フィルムなど)への注力は、持続的な収益源の確保に寄与すると考えられます。特にサステナブルパッケージングは、Walki社買収を通じて欧州市場でのプレゼンスを強化しています。一方、需要減が続く「印刷情報メディア」事業など、一部の成熟事業の構造改革も継続しています。原材料市況や為替変動に影響を受けやすい側面も持ち合わせています。
5. 技術革新と主力製品
同社は、従来の紙製品だけでなく、高機能な特殊紙、感熱紙、粘着製品、不織布、フィルムといった「機能材」領域で技術開発を進めています。特に、産業資材としての重包装用段ボールや、サステナブルパッケージングといった環境配慮型製品は、市場ニーズに応じた新たな収益源となることが期待されます。ホームケア・ウェルネスケア分野のティッシュ、トイレットロール、ウェットワイプ、紙おむつなどの製品も安定した収益を牽引しています。具体的な最新の技術革新に関する詳細は、提供された情報からは読み取れません。
6. 株価の評価
現在の株価788.4円に対し、以下の指標が示されています。
* PER(会社予想、連結): 11.20倍
* EPS(会社予想、連結): 70.16円
* PBR(実績、連結): 0.70倍
* BPS(実績、連結): 1,126.67円
業界平均PER 9.5倍、業界平均PBR 0.5倍と比較すると、現在のPERは業界平均より高く、PBRも業界平均より高い水準にあります。EPS 70.16円を基に計算すると、株価に対する利益水準は平均よりやや割高感があるように見えます。PBRが1倍を下回っており、純資産価値から見ると割安と評価されることもありますが、業界平均との比較では相対的な割高感も指摘できます。
7. テクニカル分析
現在の株価788.4円は、年初来高値854円に対し、高値圏に位置しています。年初来安値572円からは大きく上昇しています。
50日移動平均線が789.07円、200日移動平均線が681.46円であることから、現在の株価は50日移動平均線付近で推移しており、中長期的な上昇トレンドを示唆する200日移動平均線を大きく上回っています。
直近10日間の株価推移を見ると、785円から837.7円のレンジで推移し、直近はやや下落傾向にあります。
8. 財務諸表分析
売上高:
過去数年間の売上高は増加傾向にあります。
* 2022年3月期: 1,470,161百万円
* 2023年3月期: 1,706,641百万円 (+16.1%)
* 2024年3月期: 1,696,268百万円 (-0.6%)
* 2025年3月期(予想、過去12ヶ月): 1,849,264百万円 (+9.0%)
直近の通期業績予想では売上高の増加を見込んでいますが、直近四半期の売上高成長率は前年同期比+4.4%です。
利益:
営業利益、親会社株主に帰属する純利益は過去数年間で減少傾向にありました。
* 営業利益: 2022年3月期 120,120百万円 → 2023年3月期 84,820百万円 → 2024年3月期 72,604百万円 → 2025年3月期(予想) 67,687百万円。
* 純利益: 2022年3月期 87,509百万円 → 2023年3月期 56,483百万円 → 2024年3月期 50,812百万円 → 2025年3月期(予想) 46,171百万円。
しかし、2026年3月期通期業績予想では、営業利益75,000百万円(2025年3月期予想比+10.8%)、親会社株主に帰属する当期純利益65,000百万円(同+40.8%)と回復を見込んでいます。
直近四半期(2026年3月期 第1四半期)の状況:
売上高は前年同期比+4.4%の457,442百万円でしたが、営業利益は3,703百万円と前年同期比△74.5%と大きく減益となりました。経常利益と親会社株主に帰属する四半期純利益は損失を計上しています。これは主に、海外パルプ市況の悪化、原燃料価格・物流費・人件費等のコスト上昇、為替差損の発生などが影響したためと説明されています。特別利益(投資有価証券売却益)と特別損失(事業構造改善費用)も計上されています。
キャッシュフロー(LTM):
EBITDAは199,474百万円(LTM)で、過去数年と比較して堅調な水準ですが、営業利益の減少傾向から、事業活動による収益力には課題がみられます。
収益性・効率性指標:
* ROE(実績): 4.26% (連結) / LTM: 2.25%。中期経営計画で目標とする8%には届いていません。
* ROA(LTM): 1.34%。
* 粗利率(LTM): 18.9%。
* 営業利益率(LTM): 3.66%。直近四半期の営業利益率は0.81%と低水準です。
財務健全性:
* 自己資本比率(実績): 41.8% (連結) / 直近四半期: 40.0% (連結)。財務健全性の目安とされる40%を維持しています。
* 流動比率(直近四半期): 1.07。健全な水準ですが、特段高いわけではありません。
* Total Debt/Equity(直近四半期): 88.92%。ネットD/Eレシオは0.8倍であり、経営目標である1.0倍以内を維持しており、財務基盤は比較的安定していると考えられます。
9. 株主還元と配当方針
同社は、2026年3月期の配当予想を年間36.00円としており、現在の株価788.4円に対する配当利回りは4.58%と高水準です。これは前年実績の24.00円から増配の予想です。
配当性向は、会社予想ESPS 70.16円に基づくと約51.3%となります。中期経営計画2027では、配当性向を50%へ引き上げる方針を明確に示しています。
また、株主還元策として、中期経営計画において1,200億円規模の自己株式取得を計画しており、資本効率の向上と株主還元への積極的な姿勢が見られます。
10. 株価モメンタムと投資家関心
株価は、52週高値854.30円、52週安値540.90円に対し、年初来では大きく上昇しています(52 Week Change: 45.22%)。直近の50日移動平均線789.07円、200日移動平均線681.46円を上回って推移しており、中期の勢いは強い状態です。
しかし、直近10日間の株価は一時高値を付けましたが、やや調整局面に入り、785円から837.7円の範囲で推移し、本日788.4円で終えています。
信用取引においては、信用買残が直近で減少しているものの、信用売残は大幅に増加しており、信用倍率は2.59倍です。信用売残の増加は、短期的な株価上昇に対する警戒感や売りの積み上がりを示唆する可能性があります。
株価への影響を与える要因としては、パルプ市況や原材料価格の動向、為替変動、海外事業の進捗(特に買収したWalki社や再稼働したPan Pac)、および中期経営計画における構造改革の進捗が挙げられます。直近の第1四半期決算が大幅減益となったことも、短期的な株価の重しとなっている可能性があります。
11. 総評
王子ホールディングスは、国内製紙業界のリーディングカンパニーとして、多角的な事業展開と積極的な海外戦略を推進しています。生活産業資材や機能材、サステナブルパッケージングといった成長分野への事業転換を進める一方で、新聞用紙などの需要減少事業の構造改革も課題です。直近の業績は原材料高騰や市況変動、為替影響により低調でしたが、通期では回復を見込んでおり、中期経営計画には資本効率向上や株主還元強化を掲げるなど、今後の企業価値向上に向けた取り組みが見られます。現在の株価はPER、PBRともに業界平均と比較してやや割高感があるものの、高配当利回りと積極的な自社株買い方針は魅力的です。中長期的な視点では事業構造改革の成功と収益性の改善が株価を左右する主要なポイントとなるでしょう。
12. 企業スコア
- 成長性: B
- LTM売上成長率(YoY)は8.9%、3年CAGRも7.9%と比較的好調で、売上高は増加傾向にあります。しかし、直近四半期の売上高成長率は4.4%と穏やかで、通期予想も+2.7%と堅調な伸びとは言えません。
- 収益性: D
- LTM営業利益率は3.66%と低く、直近四半期(2026年3月期 第1四半期)の営業利益率は0.81%と大幅に悪化し、親会社株主に帰属する四半期純利益は損失を計上しています。過去数年の営業利益、純利益も減少傾向にあり、収益性には課題が見られます。
- 財務健全性: B
- 自己資本比率は40.0%を維持しており、ネットD/Eレシオも0.8倍と経営目標(1.0倍以内)を満たしています。流動比率も1.07と100%を超えていますが、特段優れているわけではなく、概ね健全な水準です。
- 株価バリュエーション: C
- PER(会社予想)11.20倍は業界平均9.5倍より高く、PBR(実績)0.70倍も業界平均0.5倍より高い水準にあります。業界平均と比較すると、やや割高感があると言えます。
企業情報
銘柄コード | 3861 |
企業名 | 王子ホールディングス |
URL | http://www.ojiholdings.co.jp/ |
市場区分 | プライム市場 |
業種 | 素材・化学 – パルプ・紙 |
関連情報
証券会社
このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.3)」によって自動生成されました。
本レポートは、不特定多数の投資家に向けた一般的な情報提供を目的としており、個別の投資ニーズや状況に基づく助言を行うものではありません。記載されている情報は、AIによる分析や公開データに基づいて作成されたものであり、その正確性、完全性、適時性について保証するものではありません。また、これらの情報は予告なく変更または削除される場合があります。
本レポートに含まれる内容は、過去のデータや公開情報を基にしたものであり、主観的な価値判断や将来の結果を保証するものではありません。特定の金融商品の購入、売却、保有、またはその他の投資行動を推奨する意図は一切ありません。
投資には元本割れのリスクがあり、市場状況や経済環境の変化により損失が発生する可能性があります。最終的な投資判断は、すべてご自身の責任で行ってください。当サイト運営者は、本レポートの情報を利用した結果発生したいかなる損失や損害についても一切責任を負いません。
なお、本レポートは、金融商品取引法に基づく投資助言を行うものではなく、参考資料としてのみご利用ください。特定の銘柄や投資行動についての判断は、個別の専門家や金融機関にご相談されることを強くお勧めします。
企業スコアは、AIによる財務・業績データの分析をもとに試験的に算出した指標です。評価方法は現在も検討・改善を重ねており、確立した標準的な指標ではありません。投資判断の唯一の基準ではなく、あくまで参考情報としてご利用ください。