1. 企業情報
わかもと製薬株式会社は、1929年創業の老舗製薬会社です。主力製品として健胃消化薬「強力わかもと」などの一般用医薬品(ヘルスケア事業)を製造・販売しています。また、眼科領域に強みを持ち、点眼液などの医家向け医療用医薬品(医薬事業)が収益の柱の一つとなっています。その他、アジア地域でのグローバル事業展開や、乳酸菌事業の育成、不動産賃貸事業も行っています。
事業セグメント別の売上構成比(2025年3月期予想)は、医薬事業が45%、ヘルスケア事業が30%、グローバル事業が23%、不動産事業が2%です。
2. 業界のポジションと市場シェア
わかもと製薬は、医薬品業界において、一般用医薬品の「強力わかもと」で高い知名度を有しています。一方で、医薬事業では眼科分野に特化した医療用医薬品を提供しており、ニッチな市場で存在感を示しています。
業界内での競争優位性としては、長年のブランド力と特定分野(眼科)における専門性が挙げられます。しかし、医薬品業界全体では大手製薬会社との競争が激しく、新薬開発や研究開発費の規模では限界がある可能性があります。決算短信によると、医薬事業においては薬価改定や長期収載品に関する制度変更、ヘルスケア事業ではインバウンド需要の変化(「モノ」から「コト」への消費の変化)などが課題として認識されています。具体的な市場シェアは開示されていませんが、主要株主にロート製薬、キッセイ薬品工業といった同業他社が名を連ねている点も特徴です。
3. 経営戦略と重点分野
経営陣は、強みである眼科領域の医薬品事業を基盤としつつ、一般用医薬品のヘルスケア事業、そしてグローバル事業の拡大を重点分野としています。
中期経営計画における具体的な施策として、以下の点が挙げられます。
* 医薬事業: 供給を停止していた医療用医薬品「マキュエイド眼注用40mg」の供給再開や、テノン嚢下投与針、眼内レンズといった新製品の発売を進めています。MR(医薬情報担当者)活動の強化や卸との連携を通じた販売促進体制の構築を図っています。
* ヘルスケア事業: 「強力わかもと」などの主力製品のパッケージ刷新や商品リニューアル、販促・広告活動の強化を実施しています。
* グローバル事業: 台湾をはじめとするアジア地域での販売強化、ライセンス活動、中国越境ECの推進、乳酸菌事業の拡大に注力しています。
* その他: 不動産賃貸事業は安定的な収益源として寄与しています。
4. 事業モデルの持続可能性
同社の事業モデルは、医療用医薬品(医薬)、一般用医薬品(ヘルスケア)、海外展開(グローバル)、不動産賃貸の4つの柱で構成されています。
* 医薬事業: 安定的な需要が見込める眼科領域に注力し、新製品導入や供給体制の安定化を図ることで収益基盤の強化を目指しています。薬価改定の影響など外部環境の変化へ適応していく必要があります。
* ヘルスケア事業: 「強力わかもと」のような長年のブランド力を持つ製品は安定的な需要を確保しやすいですが、消費者ニーズの変化(インバウンド需要の動向など)への対応が求められます。パッケージ刷新やリニューアルで市場ニーズへの適応を図っています。
* グローバル事業: アジア市場への展開や乳酸菌事業の育成は、国内市場の成熟に対応し、新たな成長ドライバーを創出する可能性を秘めています。為替変動リスクも内包します。
* 不動産賃貸業: 安定した賃貸収入は、他の事業の変動リスクをある程度吸収する役割を担い、事業全体の持続可能性に貢献しています。
複数セグメントを持つことで、特定事業に依存しない収益構造を目指しており、市場ニーズや外部環境の変化への適応力は一定程度確保されていると言えます。
5. 技術革新と主力製品
技術革新に関する具体的な詳細情報は提供されていませんが、医薬事業においては眼科領域の新製品(テノン嚢下投与針、眼内レンズ)を上市しており、この分野での開発・導入に注力していることがうかがえます。
現在の収益を牽引している製品やサービスとしては、以下のものが挙げられます。
* 「強力わかもと」: 長年にわたり広く認知されている一般用医薬品の看板商品です。
* 眼科用医薬品: 医薬事業の主力であり、点眼液などが収益に貢献しています。特に供給再開した「マキュエイド眼注用40mg」などが、今後の医薬事業の売上を支えることが期待されます。
* 乳酸菌事業: グローバル事業の一環として、乳酸菌に関する製品・サービスの育成にも力を入れています。
6. 株価の評価
わかもと製薬の株価は現在291.0円です。
* PER(株価収益率): 会社予想EPS 5.76円に対し、現在の株価291.0円で計算するとPERは約50.52倍です。業界平均PERが13.6倍であることを考慮すると、現在の株価はPER基準では割高に評価されていると見受けられます。
* PBR(株価純資産倍率): 実績BPS 329.06円に対し、現在の株価291.0円で計算するとPBRは約0.88倍です。業界平均PBRが0.8倍と提示されており、PBR基準では業界平均とほぼ同水準かやや割高な水準にあります。
PERで見ると大幅に割高感があるものの、PBRで見ると妥当な水準に近いと言えます。これは、過去の収益性が低迷している一方で、高い自己資本を保有している財務状況を示唆している可能性があります。
7. テクニカル分析
現在の株価291.0円は、年初来高値377円と比較すると安値圏に近く、年初来安値209円からは回復しています。
直近10日間の株価推移を見ると、299円から288円の間で推移しており、本日は291円で引けています。緩やかな下降傾向が見られます。
50日移動平均線が302.68円、200日移動平均線が288.48円であるため、現在の株価は50日移動平均線を下回り、200日移動平均線よりやや高い位置にあります。短期的には下落トレンドにあるものの、長期的なサポートライン付近での推移と言えます。出来高は直近で減少し、投資家の関心度が低下している可能性も考えられます。
8. 財務諸表分析
売上高:
過去数年間の総売上高は80億円台で推移していましたが、2025年3月期(過去12か月)は77.89億円とやや減少傾向にありました。しかし、2026年3月期第1四半期(2025年4月~6月)の売上高は21.68億円で、前年同期比+15.1%と増加しており、医薬事業の回復が貢献している可能性があります。
利益:
営業利益は過去数年間で赤字または低水準で推移しており、2025年3月期(過去12か月)は-4.57億円の営業損失を計上しています。2026年3月期第1四半期も-1.43億円の営業損失であり、収益性に課題があることが示されています。純利益も過去数年で減少傾向にあり、2025年3月期は0.64億円、第1四半期は-1.08億円の純損失となっています。販売費及び一般管理費が増加傾向にあることが、利益を圧迫する要因の一つです。
キャッシュフロー:
データにキャッシュフロー計算書の詳細は記載されていませんが、営業キャッシュフロー(過去12か月)は5.89億円のプラスであり、事業活動自体では資金を生み出しています。しかし、レバードフリーキャッシュフロー(過去12か月)は-2.41億円となっており、投資活動などを含めると資金が流出している状況です。
収益性指標:
* ROE(自己資本利益率): 実績0.54%、過去12か月で-1.83%と非常に低い水準であり、自己資本を効率的に活用して収益を生み出す能力に課題があることを示しています。
* ROA(総資産利益率): 過去12か月で-1.84%と低い水準です。
* 粗利率: 2026年3月期第1四半期は約47.1%であり、まずまずの水準ですが、販管費が利益を圧迫しています。
* 営業利益率: 過去12か月で-5.83%、第1四半期で-6.6%と赤字であり、本業での収益力に大きな課題を抱えています。
安全性指標:
* 自己資本比率: 実績77.4%、直近四半期で77.6%と非常に高く、財務基盤は強固です。
* 流動比率: 直近四半期で4.30倍(444%)と非常に高く、短期的な支払能力に問題はありません。
* D/E比率(有利子負債倍率): 直近四半期で13.69%と低く、負債負担は小さいです。
総じて、財務健全性は極めて高い一方で、収益性は近年低迷しており、特に営業利益は赤字が続いています。
9. 株主還元と配当方針
会社予想の1株配当は3.00円であり、現在の株価291.0円に対する配当利回りは1.03%です。
会社予想EPS 5.76円に対する配当性向は、約162.16%と100%を大きく超えており、純利益の大部分、あるいはそれを超える金額を配当に回している状況です。これは、現時点での利益水準では配当の持続可能性に疑問符がつく水準と言えます。ただし、潤沢な自己資本があるため、一時的にこの方針が維持されている可能性もあります。
自社株買いに関する情報は提供されていません。
10. 株価モメンタムと投資家関心
直近の株価は、ここ10日間で一時299円を付けた後、288円まで下落し、現在は291円とやや下落基調にあります。出来高も平均より少なく、投資家の関心は落ち着いている状態と見られます。
信用取引の状況を見ると、信用買残が974,400株、信用売残が99,700株で、信用倍率は9.77倍となっており、買い残高が売残高を大きく上回っています。これは、株価が上昇した場合に売り圧力となる可能性があることを示唆しています。
今後の株価に影響を与える要因としては、2025年7月31日に予定されている決算発表(Wakamoto Pharmaceutical Co.,Ltd. Earnings Date)や、医薬事業の新製品の動向、ヘルスケア事業の販促効果、グローバル事業の拡大成果などが注目されます。第1四半期決算では営業損失でしたが、通期予想は据え置かれているため、今後の進捗が注目されます。
11. 総評
わかもと製薬は、「強力わかもと」のブランドを持つ老舗製薬会社であり、医薬、ヘルスケア、グローバル、不動産の4事業を展開しています。特に眼科領域の医薬事業を成長ドライバーとし、グローバル展開や乳酸菌事業の育成にも注力しています。
財務基盤は非常に強固で、極めて高い自己資本比率と流動比率を維持しており、財務健全性は優れています。しかし、肝心の収益性については近年営業損失を計上するなど低迷しており、自己資本を効率的に活用できていません。2026年3月期第1四半期は売上高が増加しましたが、販管費増により営業損失となっています。
株価バリュエーションでは、PERが業界平均を大きく上回る水準にあり、企業収益と比較すると割高感が見られます。PBRは業界平均と同水準です。配当利回りは1.03%ですが、配当性向が162.16%と純利益を大幅に上回っており、現在の利益水準での配当の持続性には注意が必要です。
直近の株価はやや下落傾向にあり、投資家の関心は落ち着いているように見えます。今後の株価は、医薬事業の供給再開や新製品の効果、ヘルスケア事業の回復、グローバル事業の拡大が通期業績予想にどのように反映されるかが重要な要素となるでしょう。
12. 企業スコア
- 成長性:B(中立)
- 2025年3月期のTotal Revenueは前年比で微減傾向にありましたが、2026年3月期第1四半期の売上高は前年同期比+15.1%と増加に転じました。過去数年の売上高は横ばい〜微減、直近では回復の兆しが見えるため、中立と評価します。
- 収益性:D(低い)
- 過去12か月(2025年3月期)の営業利益率は-5.83%と赤字であり、2026年3月期第1四半期も営業損失を計上しています。ROE、ROAも低水準であり、収益性に課題があります。
- 財務健全性:S(非常に高い)
- 自己資本比率77.4%、流動比率4.30倍、総負債/純資産比率13.69%と、いずれの指標も極めて高い水準で、非常に健全な財務体質を保っています。
- 株価バリュエーション:D(割高)
- 会社予想PER50.52倍は業界平均PER13.6倍を大幅に上回っており、PBR0.88倍も業界平均PBR0.8倍と比べてやや高い水準です。収益性に対して株価が割高と評価されます。
企業情報
銘柄コード | 4512 |
企業名 | わかもと製薬 |
URL | http://www.wakamoto-pharm.co.jp/ |
市場区分 | スタンダード市場 |
業種 | 医薬品 – 医薬品 |
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