1. 企業情報
ＴＯＡ株式会社は、放送・音響システムの大手企業です。主に構内放送設備やプロフェッショナル音響システム、会議システム、ワイヤレスシステムなどの「音響」関連事業と、防犯カメラシステムなどの「映像」関連事業を二本柱として展開しています。鉄道車両向けの製品も手掛けており、国内外の多様な施設や用途にソリューションを提供しています。2025年3月期の実績では、音響事業が売上構成比の85%、映像事業が13%、鉄道車両事業が2%を占めており、特に海外売上比率が43%とグローバル展開を進めています。本社は神戸にあり、東京証券取引所プライム市場に上場しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
ＴＯＡは「放送・音響システム大手」とされており、業界内での確固たる地位を築いています。構内放送設備やセキュリティシステムを主力とすることで、公共施設、商業施設、オフィス、交通機関など、幅広い顧客層に対し製品・サービスを提供しています。海外地域での事業体制を強化しており、商品企画から販売までを現地で手掛けることで、各国市場のニーズに応じた展開を進めています。市場シェアに関する具体的な数値データはありませんが、その事業規模や国内外での展開から、一定の競争優位性を持つと考えられます。
3. 経営戦略と重点分野
経営陣が掲げるビジョンや戦略に関して、具体的な中期経営計画の詳細は提供データにはありませんが、企業概要から「海外地域体制を拡充」し、「海外は商品企画から販売まで行う地域体制強化」を進めていることが示唆されています。これは、グローバル市場での競争力強化と事業拡大を重点分野としていることを意味すると考えられます。提供データでは、直近の第1四半期決算において、通期業績予想に変更はないとされています。
4. 事業モデルの持続可能性
ＴＯＡの事業モデルは、多様な音響・映像ソリューションを法人顧客向けに提供することで、安定した収益源を確保しています。公共施設や交通インフラ、商業施設といった比較的景気変動の影響を受けにくい分野にも強みを持つと考えられます。収益の大部分を占める音響事業は、インフラとしての需要が見込まれるほか、映像（セキュリティカメラ）事業は防犯意識の高まりとともに成長が見込まれます。市場ニーズの変化への適応力としては、インバウンド需要の増加や国内需要回復の傾向を好機と捉える一方で、原材料価格や為替、金融市場の不安定化、地政学的リスクといった外部環境の変化への対応が課題として認識されています。
5. 技術革新と主力製品
ＴＯＡは、音響・映像機器の開発・製造・販売を手掛けており、技術開発に関する具体的な記載は提供データにはありませんが、「放送・音響システム大手」であることから、同分野での技術力は高いと考えられます。収益を牽引している主力製品は、構内放送設備や業務用音響システム、会議システムといった音響関連製品と、セキュリティカメラシステムを含む映像関連製品です。特に海外市場向けの商品企画から販売まで行う体制を強化しており、現地ニーズに合わせた製品開発、提供に注力していると推察されます。
6. 株価の評価
現在の株価1,250.0円に対し、会社予想PERは13.67倍、実績PBRは0.79倍です。これらの指標を業界平均と比較すると、業界平均PERが24.2倍、業界平均PBRが1.6倍であるため、ＴＯＡのPERおよびPBRは業界平均を下回っており、割安感がある状態です。予想EPS91.45円、実績BPS1,587.76円に基づいています。
7. テクニカル分析
現在の株価は1,250.0円であり、年初来高値および52週高値と一致しています。年初来安値は797.0円であるため、株価は高値圏で推移していると言えます。50日移動平均線が1,140.92円、200日移動平均線が1,010.41円であり、現在の株価は両移動平均線を上回っています。これは短期および中期の株価が上昇傾向にあることを示唆しています。直近10日間の株価推移も全体として上昇傾向を示しています。
8. 財務諸表分析
- 売上高: 過去数年間で堅調に増加しており、2022年3月期の40,864百万円から2025年3月期（過去12ヶ月）の50,626百万円まで成長しています。2026年3月期の通期売上高は54,500百万円が予想されています。直近四半期（2026年3月期 第1四半期）の売上高は11,179百万円（前年同期比+1.8%）でした。
- 利益: 営業利益は2023年3月期に一時減少したものの、2024年3月期以降は増加傾向にあります。2025年3月期（過去12ヶ月）の営業利益は3,589百万円、純利益は2,364百万円でした。直近四半期は前年同期の営業損失から黒字化し、営業利益363百万円を計上しました。
- キャッシュフロー: 四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されていません。
- 収益性指標: 過去12ヶ月の粗利率は約44.4%、営業利益率は約7.09%（損益計算書ベース）、ROEは6.04%、ROAは3.90%です。営業利益率はセグメントによって異なり、特にアジア・パシフィック地域は高い収益性を示しています。
- 財務健全性: 自己資本比率は約72.1%（直近四半期末で約72.7%）と非常に高く、流動比率も471%と極めて高く、財務基盤は非常に強固であると評価できます。負債比率も2.87%と低水準です。
9. 株主還元と配当方針
会社予想の一株配当は年間42.00円であり、現在の株価に基づく配当利回りは3.36%です。配当性向は50.85%と、利益の約半分を配当に回す方針を示しています。2025年3月期の実績配当は年間40円（安定配当）で、2026年3月期は年間42円への増配が予想されており、安定的な株主還元に加えて増配トレンドが見られます。5年平均配当利回りは3.37%です。自己株口として11.91%の株式を保有していますが、直近の自社株買いに関する明確な情報は提供されていません。
10. 株価モメンタムと投資家関心
株価は直近で上昇傾向にあり、年初来高値を更新しています。短期および中期の移動平均線も上回っており、上昇モメンタムが働いている可能性があります。信用買残が多いものの、信用倍率は極端な高水準ではありません。直近の第1四半期決算における営業利益の黒字化は、株価上昇の要因の一つと考えられます。今後、決算発表や海外事業の進捗、原材料価格や為替の動向などが株価に影響を与える要因として注目されます。
11. 総評
ＴＯＡは、音響・映像システムを中核事業とし、グローバル市場での展開を強化している企業です。過去数年間で堅実な売上成長と利益の改善を実現しており、特に直近四半期での営業利益黒字化は好材料です。財務基盤は非常に強固であり、高い自己資本比率と流動比率から盤石な経営体質がうかがえます。株価は年初来高値圏で推移しており上昇モメンタムを示していますが、PERやPBRといったバリュエーション指標は業界平均と比較して割安な水準にあります。安定した株主還元策も魅力です。ただし、原材料価格や為替の変動、地政学的リスクといった外部要因は引き続き事業に影響を与える可能性があります。
12. 企業スコア
- 成長性: A (売上は過去数年で堅実な成長を継続しており、直近年度も増加傾向。)
- 収益性: B (売上総利益率は堅調だが、全体の営業利益率は改善傾向にあるものの、業界平均と比較するための情報が不足しており中間の評価。セグメント別の高収益性が一部で見られる。)
- 財務健全性: S (自己資本比率70%超、流動比率400%超、低負債比率と、極めて高い財務健全性。)
- 株価バリュエーション: S (PER、PBRともに業界平均と比較して明確に割安水準にある。)
企業情報
| 銘柄コード | 6809 |
| 企業名 | TOA |
| URL | http://www.toa.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 電機・精密 – 電気機器 |
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