1. 企業情報
ＮＩＴＴＡＮは、主に自動車、オートバイ、トラック、バスなどのエンジンに使用されるエンジンバルブを製造・販売している独立系の部品メーカーです。小型エンジンバルブが売上全体の約87%を占める主力事業で、特に二輪車向けでは高いシェアを持っています。その他に、船舶や建設機械向けのバルブ、精密鍛造歯車、自動変速機部品なども手掛けています。2022年4月に社名を「Nittan Valve Co., Ltd.」から「NITTAN Corporation」へ変更し、多角化を進めています。
2. 業界のポジションと市場シェア
同社は独立系のエンジンバルブメーカーとして、国内外の様々なエンジン製造顧客に製品を供給しています。四輪車向けが主要な柱ですが、二輪車、建機、船舶といった多様な分野のエンジンにも対応しており、特定の顧客や用途に依存しすぎない事業構造を持っています。市場シェアの具体的な数値は開示されていませんが、独立性を保ちつつグローバルに生産拠点を展開することで、特定の完成車メーカーグループに属さない強みがあります。しかし、内燃機関（ICE）のEV（電気自動車）へのシフトという自動車業界全体の大きな変化に直面しており、事業構造の変化への適応が今後の主要な課題となります。
3. 経営戦略と重点分野
ＮＩＴＴＡＮは中期経営VISIONとして「NITTAN Challenge 10」を掲げています。これは、内燃機関（ICE）の有効活用領域での事業拡大に加え、xEV（電動車）関連や異業種領域における新製品・新技術の開発と事業化を推進することを重点目標としています。直近の決算では、国内外での生産効率化や北米拠点の黒字化など、既存事業の収益性改善が進んでいます。
4. 事業モデルの持続可能性
同社の収益モデルは主にエンジンバルブの製造・販売に依存しており、自動車業界の動向に大きく左右されます。世界的なEVシフトの流れは内燃機関部品メーカーにとって逆風となる可能性がありますが、同社は中期経営戦略でxEV・異業種領域への展開を推進しており、新たな市場ニーズへの適応を図っています。主力製品である中空エンジンバルブの販売増や、舶用部品の生産回復などが直近の売上を牽引しており、一時的な回復基調にあります。ただし、長期的な事業の持続可能性は、多角化戦略の成功とEV関連技術への移行の進捗にかかっています。
5. 技術革新と主力製品
主力製品は自動車や二輪車向けのエンジンバルブであり、特に中空エンジンバルブの販売を強化しています。これは、エンジンの軽量化や高効率化に貢献する技術であり、内燃機関の高機能化ニーズに対応しています。また、可変動弁やバルブリフターなどの関連部品も手掛け、エンジンシステム全体の技術開発にも携わっています。決算短信によると、新機種の量産開始なども進んでおり、技術開発への投資を継続していることがうかがえます。
6. 株価の評価
現在の株価555.0円に対し、会社予想EPS51.78円に基づくPERは10.72倍です。これは同業種の業界平均PER7.3倍と比較すると割高な水準にあります。また、実績BPS997.77円に基づくPBRは0.56倍であり、業界平均PBR0.5倍と比較するとほぼ同水準かやや割高です。これらの指標を見る限り、中立からやや割高と評価できます。
7. テクニカル分析
現在の株価555.0円は、年初来高値635.0円、年初来安値225.0円の間に位置しています。50日移動平均線530.94円、200日移動平均線350.77円をともに上回っており、株価は上昇トレンドにあると考えられます。直近10日間の株価推移では、一時下落したものの555円まで回復しており、年初来高値圏に向けての動きが見られます。
8. 財務諸表分析
過去数年間の連結売上高は着実に増加傾向にあります。2022年3月期から2024年3月期にかけて386億円から494億円へと伸長し、過去12か月では514億円を記録しています。営業利益は2023年3月期に一時減少しましたが、2024年3月期には20億円に回復。過去12か月では15億円と変動が見られますが、直近の2026年3月期第1四半期では前年同期の営業損失から925百万円の営業利益へと大幅な改善を達成しています。親会社株主に帰属する純利益も2023年を底に回復傾向にあります。
収益性を示す指標では、過去12か月のROEは6.55%、ROAは2.46%で、直近で改善が見られます。自己資本比率は直近四半期で44.9%と、健全な財務状況を維持しており、流動比率も2.02倍と短期的な支払い能力も高い水準です。借入に対する自己資本のバランスも良好です。
9. 株主還元と配当方針
会社予想の1株配当は14.00円であり、現在の株価555.0円に基づく配当利回りは2.52%です。配当性向は54.77%であり、利益の半分以上を株主還元に充てる方針を示しています。2025年3月期の実績配当12.00円から増配予想となっており、株主還元に前向きな姿勢がうかがえます。直近で自社株買いの情報は開示されていませんが、譲渡制限付株式報酬としての自己株式処分は決議されています。
10. 株価モメンタムと投資家関心
直近の株価は、一時的な調整局面を経て再び上昇基調に戻ろうとしている動きが見られます。52週変化率が106.39%と市場平均を大きく上回っており、同社への投資家関心が高いことが示唆されます。しかし、信用買残が多く、信用売残が0であるため、将来の買い圧力に注意が必要です。出来高は変動がありますが、平均的に活発な取引が行われています。なお、連結子会社のNITTAN恵那金属における土壌汚染問題は、今後の推移によっては株価に影響を与える可能性があります。
11. 総評
ＮＩＴＴＡＮは、内燃機関部品の老舗メーカーとして堅実な事業基盤を持ち、売上高は着実に成長しています。直近の四半期決算では、国内外の生産効率化や特別利益により収益性も大幅に改善しました。財務健全性も高く評価できます。しかし、主力事業が内燃機関部品であるため、自動車業界のEVシフトは中長期的な課題です。同社はxEV・異業種領域への事業拡大を経営戦略として掲げていますが、その進捗が今後の成長を左右するでしょう。現在の株価はPER、PBRともに業界平均と比較して、やや割高な水準にあります。
12. 企業スコア
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成長性：A
LTM売上成長率（YoY）2.90%、3年CAGR約9.2%と堅調な売上成長が見られ、直近の通期業績予想でも増加が見込まれるため。
– 収益性：B過去12か月の営業利益率7.45%は悪くはないものの、自動車部品業界の激しい競争環境において、特筆すべき高水準とは言えず、今後の更なる改善が期待されます。
– 財務健全性：A自己資本比率44.9%、流動比率2.02倍、D/E比率31.65%と、いずれの指標も非常に健全な水準を維持しており、財務基盤は強固であると評価できます。
– 株価バリュエーション：C会社予想PER10.72倍は業界平均7.3倍と比較して割高であり、PBR0.56倍も業界平均0.5倍と比較してやや割高感があるため。
企業情報
| 銘柄コード | 6493 |
| 企業名 | NITTAN |
| URL | https://www.niv.co.jp/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 自動車・輸送機 – 輸送用機器 |
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