1. 企業情報
長瀬産業は1832年創業の歴史ある専門商社で、化学品を中核とした幅広い事業を展開しています。主要な事業領域は、染料、合成樹脂化学、電子材料、医薬品原料、食品原料、化粧品原料など多岐にわたります。特に染料、合成樹脂化学の分野では国内最大手級の地位を確立しており、医薬品原料や電子材料にも強みを持っています。グローバルな事業展開を積極的に進めており、海外売上比率は71%に達する見込み(2025年3月期計画)。近年はバイオ関連事業(旧林原)も傘下に収め、事業ポートフォリオの拡充を図っています。
2. 業界のポジションと市場シェア
長瀬産業は、化学品専門商社として国内トップクラスの規模と実績を誇ります。染料、合成樹脂化学の分野では大手として確立された地位にあり、多岐にわたる化学品・素材を提供する存在です。特に、電子材料部門では半導体材料やデジタルプリント加工材料など先端分野に注力し、医薬品中間体・原料分野でも強みを持っています。
競争優位性:
- 多角的な事業ポートフォリオ: 機能素材、加工材料、電子・エネルギー、モビリティ、生活関連と幅広い産業をカバーすることで、特定の市場変動リスクを分散しています。
- グローバルネットワーク: 海外売上比率が高く、国内外に強力なサプライヤー・顧客基盤と広範なネットワークを持っています。
- 付加価値提供: 単なる商社機能に留まらず、研究開発機能や製造機能も一部持ち、技術提案やソリューション提供を通じて付加価値を生み出しています。
- M&A戦略: Prinovaグループの統合など、M&Aを通じて成長領域への投資を積極的に行い、事業基盤を強化しています。
課題:
- 需要変動: 自動車・建築用途の塗料原料需要の減少や、特定産業(モバイル、半導体など)の需給変動が一部セグメントの収益に影響を与えています。
- 為替変動: 海外売上の比率が高いため、円高の進行は海外収益の円換算額を減少させ、業績に下押し圧力となる可能性があります。
- 市況変動: 原材料や商品市況の変動(特にPrinovaグループの食品素材における市況下落)が収益性に影響を与えることがあります。
3. 経営戦略と重点分野
決算短信からは具体的な中期経営計画に関する直接の記載はありませんが、事業ポートフォリオの最適化と成長分野への戦略的な注力がうかがえます。
経営の重点分野:
- 電子・エネルギー事業の強化: 半導体材料、特にAIサーバー向けといった高成長分野での販売増を継続。
- 生活関連事業の拡大: 医薬品中間体・医薬品原料、食品・香粧品素材の販売を強化。M&Aによって統合したPrinovaグループを通じた事業基盤の強化とシナジー創出。
- グローバル展開の推進: 海外市場での事業拡大を継続し、収益の多様化と成長機会の追求。
- ポートフォリオの最適化: 需給変動の影響を受けやすい事業においては、プロダクトミックスの改善やコスト効率化を進め、収益性の安定化を図る。
経営においては、グローバルな需給変動や為替変動、原材料市況変動など外部環境の変化に柔軟に対応しながら、持続的な成長を実現するための事業変革が重要な戦略課題として位置付けられていると考えられます。
4. 事業モデルの持続可能性
長瀬産業の事業モデルは、多種多様な化学品を扱う専門商社として、リスク分散と市場ニーズへの柔軟な適応力を特徴としており、持続可能性が高いと考えられます。
* 多角化によるリスク分散: 機能素材、加工材料、電子・エネルギー、モビリティ、生活関連と幅広い産業分野をカバーしているため、特定の市場の低迷が全体業績に与える影響を緩和する構造です。
* 成長分野への投資: 電子材料(特に半導体材料、AIサーバー向け)、医薬品原料、食品・化粧品原料といった成長市場への積極的な投資(M&Aを含む)を通じて、時代の変化に対応した事業ポートフォリオを構築しています。
* グローバル展開: 海外売上比率が高いことは、特定の地域経済のリスクを分散し、多様な市場ニーズに対応する能力を高めます。
* 安定した収益モデル: 幅広い顧客層とサプライヤーとの強固な関係により、安定的な商流を確保しています。
一方で、原材料市況の変動や為替変動、主要産業(自動車、建築、半導体など)の需要動向に収益が左右される側面もあります。これらの外部環境変化への継続的なモニタリングと適応が、事業モデルの持続可能性をさらに高める鍵となります。国際的なサプライチェーンの強靭化や、研究開発機能を通じて新たなソリューションを提供していく能力が重要です。
5. 技術革新と主力製品
長瀬産業は、商社機能が中心でありながらも、自社グループで研究開発や製造機能も持ち、技術革新への対応を図っています。
* 技術開発の動向と独自性:
* 電子材料分野: 半導体材料、デジタルプリント加工材料、有機透明導電材料、機能性シート・フィルムなど、先端技術を要する分野に注力しています。特にAIサーバー向け半導体材料の販売が好調であり、最新の技術トレンドに対応した製品供給力を有していることがうかがえます。
* ライフサイエンス分野: 医薬品中間体、医薬品原料に強みを持つほか、バイオ関連技術を持つ旧林原を傘下に収めることで、独自の技術的基盤を強化しています。
* 環境対応: 環境負荷低減に貢献する素材や技術の開発・供給にも取り組んでいます。
* 収益を牽引している製品やサービス:
* 直近の2026年3月期第1四半期決算短信によると、「電子・エネルギー」セグメントの半導体材料やAIサーバー向け製品、および「生活関連」セグメントの医薬品中間体・医薬品原料、食品・香粧品素材などが連結営業利益を牽引しています。これらの分野は、今後の成長が期待される市場であり、長瀬産業の主力製品群となっています。
6. 株価の評価
現在の株価3298.0円に対し、各種指標は以下の通りです。
* EPS(会社予想): 292.11円
* BPS(実績): 3,663.94円
* PER(会社予想): 11.29倍
* PBR(実績): 0.90倍
業界平均と比較すると、以下の点が挙げられます。
* PER: 長瀬産業のPERは11.29倍であり、卸売業の業界平均PER12.1倍と比較するとやや割安な水準にあります。
* PBR: 長瀬産業のPBRは0.90倍であり、卸売業の業界平均PBR1.0倍を下回っています。これは、企業の純資産価値と比較して株価に割安感があることを示唆しています。
これらのバリュエーション指標から判断すると、現在の株価は業界平均と比較して割安な水準にあると評価できます。
7. テクニカル分析
現在の株価は3298.0円です。
* 年初来高値・安値: 年初来高値は3,366円、年初来安値は2,228円です。現在の株価は年初来高値に近い水準で推移しており、比較的高値圏にあると言えます。
* 移動平均線: 50日移動平均線(3162.47円)および200日移動平均線(2860.76円)を大きく上回って推移しており、中長期的に上昇トレンドにあることを示唆しています。
* 直近の株価推移: 直近10日間の株価は3150円から本日高値3299円の範囲で推移し、直近は上昇基調を強めています。
これらのテクニカル指標からは、株価が上昇トレンドにあり、比較的高い水準にあることが読み取れます。
8. 財務諸表分析
長瀬産業の過去数年間の財務諸表は以下の傾向を示しています。
* 売上高:
* 2022年3月期: 780,557百万円
* 2023年3月期: 912,896百万円
* 2024年3月期: 900,149百万円
* 過去12か月: 944,961百万円
* 総売上高は2022年から2023年にかけて大きく増加し、2024年に微減した後、過去12か月では再び増加に転じています。ただし、直近の2026年3月期第1四半期売上高は前年同期比で0.8%の微減となりました。
* 利益:
* 営業利益は2022年3月期の35,266百万円から2024年3月期の30,623百万円まで減少傾向にありましたが、過去12か月では39,083百万円と大きく回復しています。純利益も同様に回復傾向にあり、過去12か月は25,521百万円となりました。
* 直近の2026年3月期第1四半期営業利益は前年同期比4.5%減の10,249百万円でしたが、親会社株主に帰属する四半期純利益は1.2%増の7,507百万円と微増しました。
* 会計方針の変更により、Prinovaグループ製造原価の区分見直しが行われましたが、営業利益以下への影響はありません。
* キャッシュフロー:
* 直近の2026年3月期第1四半期において、営業活動によるキャッシュフローは+703百万円とプラスに転換しました(前年同期は△3,074百万円)。
* 投資活動によるキャッシュフローは△18,941百万円と大きなマイナスで、連結範囲の変更を伴う子会社株式取得(M&A)や設備投資に積極的な支出があったことを示しています。これにより固定資産(のれんを含む)が増加しています。
* 財務活動によるキャッシュフローは+6,138百万円で、これは主に短期借入金やコマーシャル・ペーパーの増加によるもので、配当支払いと自己株式取得による支出も行われました。
* ROE:
* ROE(実績)は6.44%です。資本効率は非常に高いとは言えないものの、安定した水準を維持しています。
* 財務健全性:
* 自己資本比率は49.4%と40%を大きく上回っており、財務基盤は非常に安定しています。
* 流動比率は1.96倍(196%)と短期的な支払い能力も高い水準にあります。
* 総負債を自己資本で割ったTotal Debt/Equity比率は47.06%と低く、借入依存度も健全な範囲にあります。
全体として、収益面には一部変動があるものの、安定した事業基盤と極めて健全な財務体質を維持していると言えます。
9. 株主還元と配当方針
長瀬産業は、安定的な配当と状況に応じた自己株式取得により、株主還元を実施する方針です。
* 配当利回り: 会社予想の配当利回りは2.88%であり、市場平均と比較しても妥当な水準です。Forward Annual Dividend Yieldは3.11%。
* 1株配当: 会社予想の1株配当は95.00円です(中間45円、期末50円)。
* 配当性向: Payout Ratioは39.06%と、利益の一部を着実に株主へ還元する姿勢がうかがえます。5年平均配当利回りも2.87%で安定しています。
* 自社株買い: 決算短信には、当第1四半期中に自己株式の取得・消却の動きがあったと記載されており、自己株式買いを通じて株主価値向上を図る施策も実施しています。
これらの情報から、長瀬産業は安定配当を志向しつつ、必要に応じて自己株式取得も活用することで、株主還元に積極的な姿勢を示していると評価できます。
10. 株価モメンタムと投資家関心
- 株価の変動傾向: 直近10日間の株価は3150円から3299円の範囲で推移し、本日高値を付けました。50日移動平均線、200日移動平均線を上回って推移していることから、短期・中期的に買いが優勢であり、株価モメンタムは強い状態です。
- 出来高: 直近の出来高は増加傾向にあり、投資家の関心が高まっていることが示唆されます。特に本日(239,100株)は直近10日間で高い出来高を記録しました。
- 信用取引: 信用買残は33,900株、信用売残は18,900株で、信用倍率は1.79倍です。信用売残が前週比で大きく減少しており、売り方の手仕舞いによる買い戻しが株価上昇に寄与している可能性があります。
- 株価への影響を与える要因:
- 業績進捗: 電子・エネルギー事業(半導体関連など)や生活関連事業の好調な業績進捗は、株価上昇の主要因となりえます。
- 為替動向: 海外売上高の割合が高いため、円安は収益増加要因となり株価に好影響を与えますが、円高はネガティブ要因となります。
- 市況変動: 原材料市況の安定化や、主要産業の需要回復も株価を押し上げる要因となりえます。
- 株主還元策: 安定的な配当や自社株買いの継続は、投資家の安心感を高め、株価をサポートするでしょう。
11. 総評
長瀬産業は、化学品を中核に多角的な事業展開とグローバルなネットワークを持つ、創業から長い歴史を持つ専門商社です。機能素材から生活関連まで幅広い産業をカバーし、特に電子材料(半導体向け)や医薬品原料、食品素材といった成長分野に注力しています。
財務面では、自己資本比率が約50%、流動比率が約2倍、D/E比率も低い水準にあり、非常に健全な財務基盤を維持しています。業績は過去数年間で変動があったものの、直近12か月では売上高・利益ともに回復傾向を示しており、特に電子・エネルギー並びに生活関連セグメントが牽引役となっています。ただし、直近の2026年3月期第1四半期決算では、売上高と営業利益は前年同期比で微減となりました。
株価は年初来高値圏で推移しており、中長期的な上昇トレンドを示唆しています。PER、PBRともに業界平均と比較して割安感があり、バリュエーション面では魅力があります。株主還元策として、安定配当に加え、自己株式取得も実施されており、株主還元への意識も高いと言えます。
今後のリスク要因としては、為替変動、原材料市況の変動、主要産業(自動車、建築、半導体など)の需要動向が挙げられます。しかし、成長分野への戦略的な投資とM&Aを通じて、持続的な成長を実現していくことが期待されます。
12. 企業スコア
- 成長性: B
- 過去12ヶ月の売上高成長率は約5%と増加基調にあるものの、直近四半期売上高は前年同期比で微減を示しています。全体としては緩やかな成長が見られると判断されます。
- 収益性: B
- 粗利率は約19%、営業利益率は約4.3%であり、卸売業としては安定した水準と考えられます。過去12ヶ月では利益も回復基調にありますが、業界平均との具体的な比較データがないため、中立的な評価とします。
- 財務健全性: A
- 自己資本比率49.4%、流動比率1.96倍、D/E比率47.06%と、いずれの指標も非常に健全な水準であり、強固な財務体質を保持しています。
- 株価バリュエーション: A
- PER11.29倍、PBR0.90倍ともに業界平均(PER12.1倍、PBR1.0倍)を下回っており、現在の株価に割安感があるため高評価とします。
企業情報
銘柄コード | 8012 |
企業名 | 長瀬産業 |
URL | http://www.nagase.co.jp/ |
市場区分 | プライム市場 |
業種 | 商社・卸売 – 卸売業 |
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このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.3)」によって自動生成されました。
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