1. 企業情報
十六フィナンシャルグループは、岐阜県を拠点とする地域最大手の金融持ち株会社です。中核事業は「十六銀行」が担う銀行業であり、預金、貸付、有価証券運用、為替取引、信託業務、金融デリバティブ取引、法人向け債券受託などの幅広い金融サービスを提供しています。また、地域金融パートナーとしての役割も果たし、信用保証業務も行っています。その他、リース事業やクレジットカード、金融商品取引、コンサルティングサービス、各種保険商品の提供など、多角的な金融サービスを展開しています。1877年創業の歴史を持ち、2021年10月に持株会社体制へ移行しました。岐阜県内では資金量、貸出シェアともに首位であり、近年は愛知県への事業拡大も推進しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
十六フィナンシャルグループは、岐阜県において県内首位の資金量を誇り、貸出シェアも約3割に達するなど、地域金融市場で圧倒的な競争優位性を持っています。地域に根差した強固な顧客基盤と長年の信頼が強みです。
業界内での課題としては、日本全体の人口減少、地域の高齢化、超低金利環境（足元で変化の兆しあり）による収益性の制約、異業種からの参入による競争激化、デジタル化への対応などが挙げられます。しかし、岐阜県内での高い市場シェアと地域に密着したサービス展開により、一定の競争優位性を維持していると考えられます。
3. 経営戦略と重点分野
提供された情報からは、経営陣が掲げるビジョンや中期経営計画の具体的な内容は詳細に読み取れません。しかし、決算短信には「コア業務粗利の改善（資金利益、役務利益の増加）を重視」している旨の記載があり、これが主要な経営戦略の一つと考えられます。金利の上昇局面においては、貸出金利息の増加による資金利益の拡大が期待され、役務利益の増加は非金利収入の強化を図るものです。これらの施策を通じて、収益力の向上を目指していると推察されます。
4. 事業モデルの持続可能性
十六フィナンシャルグループの事業モデルは、預貸業務を中心とする銀行業に支えられています。地域密着型であるため、地域の経済動向と密接に連動しますが、岐阜県内での強い地盤により安定的な顧客基盤を確保しています。市場ニーズとしては、少子高齢化、事業承継、DX推進支援、資産運用ニーズの多様化などへの対応が求められます。金利環境の変化は資金運用収益と資金調達費用の両面に影響を及ぼし、収益構造に大きな影響を与える可能性があります。直近の金利上昇は銀行にとって追い風となる可能性を秘めています。
5. 技術革新と主力製品
技術革新に関する具体的な情報は提供されていませんが、地域金融機関として、オンラインバンキングやスマートフォンアプリの提供、FinTech連携などを通じたデジタル化への対応は進められていると推察されます。
収益を牽引する主力製品・サービスは、預金、貸出金、有価証券運用などの銀行業における基本的な金融サービスです。特に貸出金利息の増加は、足元の資金運用収益をけん引している要因の一つであり、強みとなるサービスです。リース事業や各種保険、金融商品取引なども収益の多角化に貢献しています。
6. 株価の評価
現在の株価は5,390円です。
* PER（会社予想）: 9.00倍
* 会社の予想EPS 599.10円に基づくとPERは 5,390円 ÷ 599.10円 ＝ 約8.99倍。提供データと一致しています。
* 業界平均PER 10.7倍と比較して、現在のPERは割安な水準にあります。
* PBR（実績）: 0.45倍
* 実績BPS 12,004.07円に基づくとPBRは 5,390円 ÷ 12,004.07円 ＝ 約0.45倍。提供データと一致しています。
* 業界平均PBR 0.4倍と比較すると、ほぼ同水準かやや割高な水準にあります。
総合的に見ると、PERは業界平均より割安感がありますが、PBRは平均水準です。
7. テクニカル分析
現在の株価5,390円は、
* 年初来高値5,700円、年初来安値3,560円と比較すると、年初来高値に近い水準で推移しています。
* 50日移動平均線5,459円と比較して、現在の株価はやや下回っています。
* 200日移動平均線4,879.58円と比較して、現在の株価は上回っています。
直近10日間の株価推移を見ると、5,320円から5,550円のレンジで変動しており、現在はレンジの中盤からやや下値近辺に位置します。年初来高値を更新する勢いは一旦落ち着き、直近はやや調整局面にある可能性があるものの、中長期的には上昇基調を維持していると見ることができます。
8. 財務諸表分析
- 売上 (Total Revenue):
- 過去数年間で変動が見られますが、2022年以降は増加傾向にあり、2025年3月期（予想）に向けても堅調な推移を示しています。
- LTM（過去12ヶ月）の経常収益は128,160百万円を計上しています。
- 直近四半期（2025年4月1日～6月30日）の経常収益は35,936百万円で、前年同期比+17.0%と大幅に増加しています。
- 利益 (Net Income Common Stockholders):
- 2022年3月期から2025年3月期（予想）にかけて、親会社株主に帰属する純利益は一貫して増加傾向にあります。
- LTM（過去12ヶ月）の純利益は20,620百万円です。
- 直近四半期（2025年4月1日～6月30日）の親会社株主に帰属する四半期純利益は6,077百万円で、前年同期比△3.5%と減少しました。これは前期に生じた株式等関係損益の反動などが影響している可能性があります。
- キャッシュフロー:
- 提供データには四半期連結キャッシュフロー計算書は作成されていないと記載されており、具体的なキャッシュフロー情報はありません。
- ROE（実績）: 4.81%
- 銀行セクターの特性を考慮する必要があるものの、一般的な水準と比較すると高水準ではありません。
- ROA（過去12ヶ月）: 0.27%
- これも銀行の総資産の大きさを考慮すると一般的な水準と言えます。
- 自己資本比率（実績）: 簡易表示では5.5%ですが、国内基準の連結自己資本比率（2025年6月末）は11.42%です。これは銀行の健全性を測る上で十分な水準であり、財務の安定性を示しています。
9. 株主還元と配当方針
- 配当利回り（会社予想）: 3.34%
- 1株配当（会社予想）: 180.00円
- 2025年3月期の年間配当実績も180円であり、2026年3月期（予想）も同額を維持する計画です。安定した配当方針が見られます。
- 配当性向（Payout Ratio）: 31.18%
- 利益の約3割を配当に回しており、比較的健全な水準と言えます。
- 自社株買いに関する直接的な情報は提供されていません。
10. 株価モメンタムと投資家関心
- 株価の52週変化率は+29.81%と、S&P500の+13.03%を大きく上回るパフォーマンスです。中長期的に株価は上昇トレンドにあると言えます。
- 信用買残は増加傾向にあり（前週比+5,800株）、一方で信用売残は減少傾向（前週比-900株）です。信用倍率92.56倍は、買い方のポジションが非常に大きく、売り方に比べて圧倒的に多い状態を示しており、市場の関心は買いに向いていると言えます。
- 株価への影響を与える要因としては、日本銀行の金融政策の動向（特にマイナス金利解除後の金利上昇）、地域経済の活性化、有価証券の評価損益、貸倒費用の増減などが挙げられます。足元の金利正常化期待は銀行株全体にとって好材料となる可能性があります。
11. 総評
十六フィナンシャルグループは、岐阜県内で強固な地盤を持つ地域金融機関であり、堅調な収益成長と安定した財務基盤が特徴です。特に連結自己資本比率は11.42%（国内基準）と健全な水準を保っています。金利上昇局面においては、銀行収益の改善期待が高まり、PERは業界平均と比較して割安感があります。中期的な株価は上昇トレンドを維持しており、株主還元も安定しています。一方で、地域金融機関としての市場ニーズへの対応や、金利変動、有価証券の評価損益など外部環境の変化が業績に与える影響は注視する必要があります。直近四半期は純利益が減少しましたが、これは一過性の要素によるところも大きく、今後のコア業務の進捗が注目されます。
12. 企業スコア
- 成長性: A
- LTM売上成長率は10.90%、直近四半期の経常収益は前年同期比+17.0%と好調。純利益も過去数年増加傾向にあります。
- 収益性: B
- Profit Margin 16.09%、Operating Margin 27.60%は一定の水準ですが、ROE 4.81%、ROA 0.27%は銀行業の特性による部分も大きく、特段高水準とは言い難いため、中立的な評価としました。
- 財務健全性: A
- 国内基準の連結自己資本比率は11.42%と、銀行の財務健全性を示す基準として十分な水準であり、高い評価が可能です。
- 株価バリュエーション: A
- PER（予想）9.00倍は業界平均10.7倍と比較して割安水準にあります。PBR（実績）0.45倍は業界平均0.4倍と同水準かやや高めですが、PERの割安感を考慮し、全体として割安感があると判断しました。
企業情報
| 銘柄コード | 7380 |
| 企業名 | 十六フィナンシャルグループ |
| URL | https://www.16fg.co.jp |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 銀行 – 銀行業 |
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