1. 企業情報
極東開発工業株式会社は、特殊な用途を持つ自動車「特装車」の製造・販売を主力事業とする大手企業です。特に、ごみ収集車、コンクリートポンプ車、粉粒体運搬車などに強みを持っています。事業は大きく3つに分かれており、売上全体の約85%を占める「特装車事業」のほか、ごみ処理・リサイクルプラント等の「環境事業」（約10%）、立体駐車装置やコインパーキング運営の「パーキング事業」（約5%）を展開しています（2025年3月期計画）。1955年に設立され、大阪市に本社を構えています。
2. 業界のポジションと市場シェア
同社は特装車分野において「総合首位」を自負しており、特にコンクリートポンプ車や粉粒体運搬車といった特定の製品群で高い競争優位性を持っていると認識されています。幅広い種類の特装車を提供することで、建設、物流、環境といった多様な産業ニーズに対応しています。業界内での具体的な市場シェアの数値は開示されていません。
現在の課題としては、公正取引委員会による独占禁止法に関する手続きが進められており、その結果が今後の事業運営に影響を与える可能性があります。
3. 経営戦略と重点分野
同社は中期経営計画「Creating The Future As One (Ⅱ)」（2025-27年度）を推進しており、2031年の目標達成に向けた施策を実行しています。主な重点分野は以下の通りです。
* 高付加価値化と生産性向上: 製品価格の適正化や部品センターの再編などを通じて収益構造を強化。
* BEV（バッテリーEV）向け製品の開発・投入: 次世代モビリティへの対応として、BEV向けごみ収集車「eパッカー」などの製品開発を進めています。
* 研究開発の強化: 新たな研究開発拠点として「テクニカルセンター」の建設に着手し、技術革新を推進。
* 海外展開の強化: 海外子会社の整備など、グローバル市場での事業拡大を図っています。
* ストックビジネスの強化: 環境事業におけるプラントメンテナンスや、パーキング事業における保守・リニューアル、EV充電サービス「Charge‑mo®」の展開により、安定収益源の確立を目指しています。
4. 事業モデルの持続可能性
極東開発工業の事業モデルは、特装車、環境、パーキングという異なる市場ニーズに対応する多角的な構成が特徴です。特装車事業は景気動向に左右される面もありますが、環境事業やパーキング事業ではプラントのメンテナンスや立体駐車装置の保守など、継続的な収益が見込めるストック型ビジネスも展開しています。また、EV向け製品やEV充電サービスの開発・提供は、脱炭素化社会への移行という大きな市場ニーズの変化に対応しようとする姿勢を示しており、事業の適応力と持続可能性を高める可能性があります。
5. 技術革新と主力製品
同社の技術開発は、従来の特装車における機能性向上に加え、環境変化への対応を重視しています。
* 主力製品: ダンプ、スプリンクラー、コンクリートミキサー、コンクリートポンプといった建設分野向け車両のほか、テールゲートリフター、各種ごみ収集車、タンク車などの物流・環境分野向け車両が収益を牽引しています。
* 技術開発の動向: BEV向けごみ収集車の開発やEV充電サービスの展開など、電動化・環境対応技術に注力しています。また、研究開発拠点「テクニカルセンター」の建設により、将来に向けた技術革新を目指しています。
6. 株価の評価
現在の株価は2636.0円です。各種指標を用いて評価します。
* EPS（会社予想）: 68.85円
* BPS（実績）: 2,791.41円
* PER（会社予想）: 38.29倍
* PBR（実績）: 0.94倍
業界平均と比較すると、
* 業界平均PER：13.3倍
* 業界平均PBR：0.8倍
PER（38.29倍）は業界平均（13.3倍）と比較して高い水準にあります。PBR（0.94倍）も業界平均（0.8倍）と比較してやや高い水準です。これは、現在の株価が業界平均と比較して割高と評価される可能性があります。ただし、直近で独占禁止法関連の特別損失を計上したことによるEPSの変動がPERに影響を与えている可能性も考慮する必要があります。
7. テクニカル分析
現在の株価2636.0円は、年初来高値2,835円、年初来安値1,954円の中間よりやや高値圏に位置しています。
直近10日間の株価推移を見ると、2700円台から2600円台前半への下落傾向が見られます。
50日移動平均線（2718.48円）を下回っており、短期的な下降圧力が見られます。一方、200日移動平均線（2546.39円）は上回っており、中長期的には安定した推移を示唆しています。現在は短期的な調整局面にあると見ることができます。
8. 財務諸表分析
| 指標 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期（予想/LTM） |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 (百万円) | 116,910 | 113,089 | 128,026 | 140,449（LTM） |
| 純利益 (百万円) | 14,274 | 3,580 | 3,501 | 5,820（LTM） |
| 自己資本比率 (%) | — | — | 61.8 | 59.4（直近1Q） |
| ROE (%) | — | — | 4.99 | 0.04（LTM） |
| ROA (%) | — | — | — | 2.40（LTM） |
売上高は、2023年3月期に一時的な減少が見られたものの、その後は回復し、2024年3月期、そして2025年3月期予想（過去12ヶ月実績）では成長を続けています。
純利益は、2022年3月期に一時的な特別利益により大幅に計上されていますが、その後の年度では35億円前後で推移していました。しかし、直近の2026年3月期第1四半期では、独占禁止法関連の損失引当金5,924百万円を特別損失として計上したことにより、親会社株主に帰属する四半期純損失△4,984百万円となりました。これにより通期の純利益予想も2,645百万円と大幅な減益が見込まれています。
自己資本比率は約60%と高く、財務の健全性は維持されています。流動比率も1.68倍と安定しており、短期的な支払い能力も問題ないと見られます。LTMのROE0.04%やROA2.40%は、直近の特別損失計上が影響していると見られます。
9. 株主還元と配当方針
同社の配当利回り（会社予想）は5.31%と高水準です。1株配当（会社予想）は140.00円で、2025年3月期の実績158.00円からは減配予想となります。
配当性向は、直近12ヶ月で104.13%となっており、純利益に対する配当額の比率が高い状態です。これは、直近の純利益が特別損失の計上により大きく減少したことが影響している可能性があります。会社は、2026年3月期の配当予想を現時点では修正しない方針を示しています。
自社株買いに関する直近の情報は提供されていませんが、株主構成に「自社(自己株口)」が含まれるため、過去に実施された実績がある場合があります。
10. 株価モメンタムと投資家関心
株価は直近でやや下降傾向にあり、50日移動平均線を下回っています。一方で、信用倍率は31.37倍と買い残が多く、需給面では将来的に売り圧力となる可能性を秘めています。
投資家関心に影響を与える主な要因としては、
* 業績動向: 特装車の需要変動、環境・パーキング事業の成長性。
* 独占禁止法関連のリスク: 公正取引委員会による手続きの最終的な結論や課徴金等の具体的な金額が、株価に大きな影響を与える可能性があります。
* 経営戦略の進捗: 中期経営計画で掲げているBEV対応や海外展開がどの程度進むか。
* 原材料価格やシャシー供給: 製造業であるため、これらの変動が業績に影響を与えます。
11. 総評
極東開発工業は、特装車業界における確固たる地位を築き、環境・パーキング事業を通じて多角化を進めています。財務基盤は強固であり、将来の成長を見据えたBEV対応や海外展開、技術開発への投資も積極的に行っています。一方で、直近の決算では公正取引委員会関連の独占禁止法に係る特別損失計上により大幅な純損失を計上しており、通期予想も減益の見込みです。これにより、EPSやROEなどの収益性指標は一時的に悪化しています。株価評価の面では、業界平均と比較してPER、PBRともに割高な水準にあります。独占禁止法関連のリスクが解消され、本業の収益が安定的に成長できるかどうかが、今後の投資家関心を左右する重要な要素と考えられます。
12. 企業スコア
- 成長性: A
- 過去数年の売上高は堅調に増加しており、直近の売上高成長率（YoY +16.90%）も高水準です。
- 収益性: B
- 過去12ヶ月の営業利益率は2.89%と、製造業として突出して高い水準ではありません。環境・パーキング事業は高収益ですが、売上の大半を占める特装車事業の利益率が全体を押し下げています。
- 財務健全性: S
- 自己資本比率59.4%、流動比率167.6%、有利子負債比率27.58%と、非常に健全な財務体質を維持しています。
- 株価バリュエーション: D
- 現在のPER（38.29倍）は業界平均（13.3倍）と比較して大幅に割高、PBR（0.94倍）も業界平均（0.8倍）よりやや割高です。直近の特別損失計上が影響し、利益に対して株価が高く評価されている状態です。
企業情報
| 銘柄コード | 7226 |
| 企業名 | 極東開発工業 |
| URL | http://www.kyokuto.com/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 自動車・輸送機 – 輸送用機器 |
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