イーレックス(9517)企業分析レポート
東京証券取引所プライム市場に上場しているイーレックス(9517)について、個人投資家の皆様向けに企業分析レポートを作成しました。提供されたデータに基づき、分かりやすく整理・分析を行います。
1. 企業情報
イーレックス株式会社は、日本の電力事業を主軸とする企業です。主な事業内容は、工場や家庭向けの電力を買い取り、小売・販売する「電力小売事業」と、卸売市場での電力取引を行う「電力卸売事業」です。特に、地球環境に配慮した「再生可能エネルギー」の普及に力を入れており、自社でバイオマス発電所の開発・運営を行っています。国内外でウッドペレットなどのバイオマス燃料の調達・生産も手掛けており、ベトナムでのバイオマス発電所やペレット工場といった海外事業にも積極的に進出しています。連結事業の内訳(2025年3月期)は、電力小売が57%、電力卸売が31%、その他が12%となっています。
2. 業界のポジションと市場シェア
イーレックスは、電力小売自由化を背景に成長してきた「新電力」の一角を占めます。エネルギー関連企業の中でも、特に再生可能エネルギー、その中でもバイオマス発電に注力している点が特徴です。代理店を通じた電力小売が主力であり、広範な顧客基盤の構築を図っています。
競争優位性としては、自社でバイオマス発電所を持つことで、電力の安定供給と燃料調達のサプライチェーンを確立している点が挙げられます。また、再エネ電力の拡販に注力している点は、脱炭素社会への移行という市場ニーズを捉えています。
一方で、電力・ガス業界全体は、燃料価格や電力市場価格の変動、地政学リスク、規制・制度変更といった外部環境の大きな影響を受けやすい特性を持っています。特に、電力調達コストが大幅に上昇した場合、収益を圧迫するリスクがあります。2024年3月期に大幅な赤字を計上したことは、この市場変動リスクが顕在化した事例と言えます。
3. 経営戦略と重点分野
経営陣は、再生可能エネルギーを基軸とした事業展開を推進しています。決算短信からは、以下の重点分野が読み取れます。
* 電力小売事業の強化: 高圧電力販売の堅調な推移に加え、低圧においても新規顧客獲得を進め、通期計画達成を目指しています。
* トレーディング事業の安定化: JEPX(日本卸電力取引所)取引だけでなく、相対取引を増やすことで収益の安定化を図り、小売事業の安定供給にも貢献しています。
* バイオマス発電事業の推進: 国内のバイオマス発電所は概ね計画通り稼働しており、安定的な電力供給源として位置づけられています。将来的には、水素発電の実証プロジェクトにも取り組むなど、次世代エネルギー技術の開発にも関心を持っています。
* 燃料事業と海外展開: バイオマス燃料(ウッドペレット等)の調達価格低下や他社への販売増により、燃料事業の売上・利益を伸ばしています。ベトナムでのバイオマス発電所が運転を開始し、売電収入を計上するなど、海外での事業拡大も積極的に進められています。
中期経営計画の具体的な数値目標や施策の詳細は、提供されたデータからは判明しませんが、脱炭素化という大きな潮流に乗った事業展開を進めていると見られます。
4. 事業モデルの持続可能性
イーレックスの事業モデルは、電力小売、電力卸売、自社発電、燃料調達・販売、海外事業という多角的な収益源から構成されています。特に、再生可能エネルギーであるバイオマス発電に強みを持つ点は、持続可能性の観点から市場ニーズとの整合性が高いと言えます。
また、バイオマス燃料の調達・販売を自社で行うことで、発電コストの安定化やサプライチェーンの最適化を図っています。海外での発電所建設や燃料工場運営は、収益源の多様化と同時に、グローバルなサプライチェーン構築による安定性向上に寄与する可能性があります。
しかし、電力市場価格や燃料価格の変動、為替変動(2026年3月期第1四半期には為替差損が利益を圧迫)といった外部要因による収益への影響を受けやすい点は、事業モデル上の課題となる可能性があります。これらのリスクを管理し、安定的な供給体制と価格競争力を維持することが、今後の持続可能性を高める上で重要となります。
5. 技術革新と主力製品
イーレックスの技術的独自性は、主に安定したバイオマス発電技術の運用と、その燃料となるウッドペレットなどの調達・供給に係るノウハウにあると考えられます。
主力製品・サービスは、法人および個人消費者向けの「電力小売サービス」と、これらの顧客に供給される「バイオマス発電によるクリーンな電力」であると言えます。電力卸売も重要な収益源の一つです。
さらに、水素発電の実現に向けた実証プロジェクトへの参画など、将来的な技術革新と新エネルギー領域への挑戦も見られます。これは、長期的な成長ドライバーとなりうる可能性があります。
6. 株価の評価
現在の株価は717.0円です。
* PER(株価収益率): 会社予想EPS 43.82円に基づくと、PERは16.36倍です。業界平均PERが7.0倍であることと比較すると、会社予想では業界平均よりも割高な水準にあります。
* PBR(株価純資産倍率): 直近のBPS 792.11円に基づくと、PBRは0.91倍です。業界平均PBRが0.7倍であることと比較すると、業界平均よりもやや割高な水準にあります。
これらの指標から見ると、現在の株価は業界平均と比較して割高と評価されます。ただし、過去の業績変動が大きく、今後の業績回復への期待が反映されている可能性も考慮されるべきです。
7. テクニカル分析
現在の株価は717.0円です。
* 年初来高値は886円、年初来安値は697円です。現在の株価は年初来安値に近い水準で推移しており、年初来のレンジでは下限寄りに位置しています。
* 52週高値は886円、52週安値は562円です。52週レンジで見ても、中程度からやや安値寄りの水準です。
* 50日移動平均線(727.84円)と200日移動平均線(769.82円)をいずれも下回っており、短期および中期の移動平均線から見ると、現在の株価は安値圏にあると判断されます。過去10日間の株価推移を見ても、継続的な下落傾向が見られます。
8. 財務諸表分析
売上高:
* 2022年3月期から2023年3月期にかけては増加しましたが、2024年3月期には大幅な減収となりました(前年比24.0%減)。これは主に電力調達コストの高騰とそれに伴う販売価格調整の影響と推測されます。
* 2025年3月期はさらに減収(前年比29.9%減)したが、2026年3月期第1四半期は前年同期比で10.8%増と、回復の兆しを見せています。2026年3月期通期予想も増収計画です。
利益:
* 2022年3月期、2023年3月期は安定した営業利益・純利益を計上していましたが、2024年3月期には電力市場価格の暴騰等により大幅な赤字を計上しました(売上総利益、営業利益、純利益が全てマイナス)。
* 2025年3月期には黒字に転換したものの、売上高は減少したため利益水準は低めでした。
* 2026年3月期第1四半期は、売上高は増加しましたが、売上総利益は前年同期比で減少、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は24.0%減益となりました。為替差損の影響で税引前利益、四半期利益も大幅に減少しています。ただし、会社は通期業績予想(大幅増益計画)に変更はなく、第1四半期の進捗は社内計画を上回るとコメントしています。
収益性指標:
* 粗利率は、2023年3月期8.68%、2024年3月期-3.55%(赤字)、2025年3月期11.97%と大きく変動しています。2026年3月期第1四半期は10.47%です。
* 営業利益率は、2023年3月期5.00%、2024年3月期-8.96%(赤字)、2025年3月期4.17%と変動。2026年3月期第1四半期は3.92%です。
* ROE(実績:2025年3月期)は3.79%、ROA(過去12か月)は3.14%です。2024年3月期の赤字を経験し、収益性には市場変動リスクが大きく影響することが示されています。
キャッシュフロー:
* 直近の決算短信では四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されていませんが、現金及び現金同等物は前期末の33,613百万円から25,546百万円へ減少しています。
財務健全性指標:
* 自己資本比率(実績:2025年3月期)は41.8%、2026年3月期第1四半期末で41.4%です。40%を維持しており、健全な水準と言えます。
* 流動比率(直近四半期)は1.72(172%)であり、短期的な支払い能力に問題はないと見られます。
* 総負債対自己資本比率(Total Debt/Equity、直近四半期)は66.76%と比較低い水準であり、財務の健全性が保たれています。
9. 株主還元と配当方針
- 配当利回り(会社予想)は1.53%です。
- 1株配当(会社予想)は11.00円です。2026年3月期の配当予想は前期実績と同額が維持されています。
- 配当性向は38.39%であり、利益に対する配当の割合は安定した水準にあります。
提供されたデータには自社株買いに関する情報は含まれていません。
10. 株価モメンタムと投資家関心
過去10日間の株価は、744円から717円へと緩やかな下降トレンドにあります。年初来の株価変動率(52 Week Change)は12.46%の上昇ですが、S&P 500の同時期の上昇率15.31%を下回っています。
信用取引の状況では、信用買残が908,900株と信用売残68,800株に比べて多く、信用倍率は13.21倍です。直近週では買残、売残ともに微減しています。
株価変動の要因としては、電力市場価格の動向、燃料価格の変動、為替レートの変動、バイオマス発電所の稼働状況、海外事業の進捗、そして再生可能エネルギー政策の動向などが挙げられます。特に、直近の決算で為替差損が利益を圧迫した点は、今後の為替動向への関心を高める可能性があります。
11. 総評
イーレックスは、再生可能エネルギーであるバイオマス発電を核とした電力事業を展開しており、脱炭素社会への移行という時代の要請に応える事業モデルを持つ企業です。電力小売と卸売、自社発電、燃料事業、海外展開と多角的な収益源を持つ一方、電力市場価格や燃料価格の変動、為替変動といった外部環境の影響を受けやすい特性も持っています。
過去には電力市場の高騰により一時的に大幅な赤字を計上しましたが、2025年3月期には黒字に転換し、2026年3月期の通期業績予想では増収増益を見込んでいます。特に、電力小売事業の堅調な推移や、ベトナムでのバイオマス発電所の稼働開始など、各事業における進捗は中長期的な成長戦略に沿ったものです。
財務健全性は自己資本比率40%以上、流動比率172%、低いD/E比率と良好な水準を維持しています。配当性向も安定しており、株主還元への意識も見て取れます。
現在の株価は、年初来安値に近く、短期および中期移動平均線を下回る安値圏にありますが、PERやPBRは業界平均と比較すると割高な水準にあります。今後の株価は、電力市場の安定化、バイオマス発電所の安定稼働、海外事業の収益貢献、そして為替変動の管理といった要素に左右されると考えられます。
12. 企業スコア
-
成長性:B
2025年3月期は大幅な減収でしたが、2026年3月期第1四半期は前年同期比10.8%増収、通期予想も2.9%増収と回復傾向にあります。過去の業績に大きな変動があるものの、直近では増収を見込んでいるため、中立的な評価としました。
* 収益性:B2024年3月期に大幅な赤字を計上した経験があり、収益性は市場変動リスクに大きく左右される傾向があります。2025年3月期の営業利益率は4.17%、2026年3月期第1四半期は3.92%と、回復傾向にあるものの、以前の水準には届いておらず、業界平均を大きく上回る水準ではないため、中立的な評価としました。
* 財務健全性:A自己資本比率41.4%(2026年3月期1Q末)、流動比率1.72倍、Total Debt/Equity比率66.76%と、いずれの指標も健全な水準を維持しており、財務基盤は安定していると評価できます。
* 株価バリュエーション:CPER(会社予想)16.36倍、PBR(実績)0.91倍は、それぞれ業界平均PER7.0倍、業界平均PBR0.7倍と比較して割高な水準にあります。
企業情報
| 銘柄コード | 9517 |
| 企業名 | イーレックス |
| URL | http://www.erex.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 電力・ガス – 電気・ガス業 |
関連情報
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このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.3)」によって自動生成されました。
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