1. 企業情報

兼房は、1896年創業の工業用機械刃物の専業メーカーです。木材加工、金属加工、製紙・印刷、プラスチック、セラミック、リサイクルなどの幅広い産業向けに、さまざまな種類の刃物(丸鋸刃、平刃、精密刃具など)を開発、製造、販売しています。特に木工用刃物や丸のこに強みを持ち、国内外で事業を展開しています。2025年3月時点での事業別売上構成は、丸鋸類が47%、平刃類が33%、精密刃具類が19%となっており、海外売上比率は52%とグローバルに展開しています。

2. 業界のポジションと市場シェア

兼房は「工業用機械刃物最大手」と位置づけられており、このニッチで専門性の高い市場において主導的な地位を確立しています。長年にわたる歴史と技術蓄積により、特定の分野(特に木工用、住宅関連、丸のこ)で高い競争優位性を持っていると考えられます。
業界内での課題としては、決算短信で「地政学リスク、中国経済の低迷、人件費やエネルギー・原材料高などのコスト上昇」が継続すると言及されており、これらの外部環境要因が収益に影響を与える可能性があります。また、為替変動も業績に大きく影響することが直近の決算で示されています。

3. 経営戦略と重点分野

提供された情報からは、具体的な中期経営計画の詳細までは読み取れませんが、「非住宅向けに注力」「金属用の拡大を推進」という記述があり、既存の強みである木工分野だけでなく、新たな市場分野への拡大と多角化を図っていることがうかがえます。これは、特定の市場変動リスクを抑制し、収益基盤の強化を目指す戦略と考えられます。直近の決算短信では、中国営業拠点閉鎖などによる「販管費抑制」が営業利益増に寄与したとあり、事業効率化や不採算事業の見直しを進めていることが示唆されます。

4. 事業モデルの持続可能性

兼房の事業モデルは、木工、金属、紙、プラスチック、セラミック、リサイクルといった多岐にわたる産業に製品を提供することで、特定産業への依存リスクを分散しています。また、海外売上比率が52%と高く、グローバルな需要を取り込む体制が整っており、地域経済の変動リスクを緩和する可能性があります。
一方で、高機能な工業用刃物を提供するためには、安定した品質と供給が不可欠であり、原材料価格の変動、エネルギーコスト、人件費の上昇、さらには為替レートの変動が収益に直接影響を与えるリスク要因となります。これらの外部環境への適応力は、事業モデルの持続可能性を左右する重要な要素です。

5. 技術革新と主力製品

「工業用機械刃物の専業メーカー最大手」という記述は、兼房が長年にわたり独自の技術開発力とノウハウを蓄積してきたことを示唆しています。高精度・高耐久性を持つ刃物の開発には、素材技術、加工技術、表面処理技術などが不可欠であり、これらを独自に発展させてきたと考えられます。
現在の収益を牽引している主力製品は、事業内容の比率から「丸鋸類」(売上構成比47%)が最も大きく、次いで「平刃類」(33%)となっています。これらの製品群が国内外の幅広い産業ニーズに応え、兼房の売上を支えています。

6. 株価の評価

  • 現在の株価: 678.0円
  • 会社予想EPS: 50.36円
  • 実績BPS: 2,130.86円

現在の株価に基づくと、以下の評価となります。
* PER(会社予想): 678.0円 ÷ 50.36円 = 13.46倍
* PBR(実績): 678.0円 ÷ 2,130.86円 = 0.32倍

業界平均PER11.3倍と比較すると、兼房のPER13.46倍はやや割高な水準です。
一方、業界平均PBR0.5倍と比較すると、兼房のPBR0.32倍は大幅に割安な水準です。特にPBRが1倍を大きく下回っている点は、会社の純資産価値に対し、株価が低く評価されている可能性を示唆しています。この差は、現在の収益性(ROE 2.72%)や成長期待が市場で十分に評価されていないことに関連している可能性も考えられます。

7. テクニカル分析

現在の株価678.0円は、年初来高値725円、52週高値739円に対し、約7.8%〜9.8%低い水準にあります。年初来安値624円からは約8.7%高い水準です。直近10日間の株価は664円から685円の範囲で推移しており、現在の株価はこのレンジの中位からやや上です。
50日移動平均線(674.02円)と200日移動平均線(670.34円)をわずかに上回っていますが、これらの移動平均線は接近しており、明確な上昇トレンドや下降トレンドは確認できません。したがって、現在の株価は、年初来のレンジの中では高値圏でも安値圏でもない中間の水準にあると判断できます。

8. 財務諸表分析

  • 売上高: 過去12ヶ月の売上高は20,160百万円で、過去数年間は200億円前後で推移しており、安定的な水準ながらも、大きな成長は見られていません。直近四半期(2026年3月期第1四半期)の売上高は前年同期比1.5%減の4,888百万円でした。
  • 利益:
    • 営業利益は、2022年3月期の1,776百万円をピークに減少傾向にあり、過去12ヶ月では748百万円、営業利益率3.72%となっています。2026年3月期の会社予想では営業利益1,000百万円を見込んでおり、改善を期待する動きです。
    • 純利益も同様に減少傾向で、過去12ヶ月では797百万円でした。直近四半期は為替差損の影響が大きく、純利益は前年同期比73.9%減の65.9百万円と大幅な減少となっています。
  • キャッシュフロー: 第1四半期決算短信ではキャッシュ・フロー計算書は作成されていません。しかし、現金及び預金は7,527百万円と、潤沢な水準を維持しています。
  • 収益性指標:
    • ROE (LTM): 2.72%、ROA (LTM): 1.32% と、純資産および総資産に対する利益の効率性は低い水準にあります。
    • 粗利率 (LTM): 29.4%、営業利益率 (LTM): 3.72% と、収益力は特別高いとは言えません。
  • 財務安全性:
    • 自己資本比率は、直近四半期末で80.1%と極めて高い水準を維持しており、財務基盤は非常に強固です。
    • 流動比率も581%と非常に高く、短期的な支払い能力に優れています。
    • 総負債対純資産比率 (Total Debt/Equity) は10.66%と低く、借入依存度が非常に低い健全な財務状態です。総負債3,160百万円に対し、総現金7,530百万円と、現金が負債を大きく上回る実質無借金経営に近い状態です。
    • 要約: 売上高は安定しているものの、利益は近年減少傾向にあり、収益性は課題を抱えています。しかし、自己資本比率や流動比率などが非常に高く、財務の安全性は極めて優れています。

9. 株主還元と配当方針

兼房は「配当性向35%メド」を株主還元の方針としています。
* 配当利回り(会社予想): 2.58% (現在の株価678.0円、会社予想1株配当17.50円に基づくと適正)
* 1株配当(会社予想): 17.50円 (2026年3月期)
* 配当性向(LTM): 35.30%

直近の2025年3月期の実績配当は25.00円でしたが、2026年3月期の会社予想は17.50円と減配を予想しています。これは、会社予想EPS50.36円に対し、配当性向35%メドに則ったものといえます。提供された情報では、自社株買いなどの追加的な株主還元策に関する記述はありません。

10. 株価モメンタムと投資家関心

直近10日間の株価は狭いレンジで推移しており、大きな方向性は見られません。出来高は直近数日間で2,200〜3,100株と低く、市場における投資家の関心は限定的であると考えられます。信用買残はありますが、信用売残がなく、信用倍率も0.00倍であることから、機関投資家などの大きな動きは見られていません。
株価への影響を与える要因としては、極めて高い財務健全性とPBRの割安感はポジティブ要因となる可能性があります。一方で、売上・利益の成長鈍化傾向、直近四半期の大幅な純利益減少(為替差損含む)、今期の減配予想、そして低い流動性(出来高の少なさ)は、投資家から見たネガティブ要因となり得ます。今後の株価は、非住宅向け・金属用といった成長分野への戦略的進捗や、収益性改善への具体的な取り組みが示されるかに左右されるでしょう。

11. 総評

兼房は、長きにわたる歴史と強固な財務基盤を持つ工業用機械刃物メーカーです。国内外にわたる事業展開と多岐にわたる製品ラインナップにより、安定した事業基盤を築いています。特に自己資本比率80%超、流動比率581%と極めて高い財務健全性は大きな強みです。
しかし、近年は売上高が横ばい圏で推移し、営業利益および純利益は減少傾向にあります。これは、原材料高騰や為替変動などの外部環境要因に加え、収益性向上に向けた取り組みが求められる状況を示唆しています。結果として、ROEやROAなどの収益性指標は低い水準にあります。
株価評価では、PBRが業界平均と比較して大幅に割安である一方、PERはやや割高感があります。強固な資産基盤を持つものの、現在の収益力や成長性への期待が市場で十分に評価されていない可能性が考えられます。株主還元は配当性向35%の方針を掲げていますが、今期は減配予想であり、株価モメンタムや投資家関心は限定的です。
今後、非住宅向け・金属用といった成長分野への戦略の具体化と成果、コストコントロールによる収益性の改善、そして為替変動リスクへの対応策などが、兼房の企業価値向上と株価の動向に大きく影響すると考えられます。

12. 企業スコア

  • 成長性: C
    • LTM売上成長率は微増(0.39% Yo Y)で、3年CAGRも約0.9%と横ばい傾向。直近四半期売上高は減少(-1.5% YoY)。利益は過去数年減少傾向にあり、総合的に成長性は鈍化していると判断。
  • 収益性: C
    • 過去12ヶ月の営業利益率は3.72%と、製造業としては特段高い水準ではなく、過去数年で低下傾向にあります。ROEも2.72%と低い水準です。
  • 財務健全性: S
    • 自己資本比率80.1%、流動比率581%、総負債対純資産比率10.66%と、全ての指標で極めて高い水準を維持しており、非常に健全な財務状況です。
  • 株価バリュエーション: A
    • PERは業界平均よりやや割高であるものの、PBR0.32倍は業界平均0.5倍と比較して大幅に割安です。会社が持つ資産価値に対して株価が低く評価されていることから、割安感が高いと判断します。

企業情報

銘柄コード 5984
企業名 兼房
URL http://www.kanefusa.co.jp/
市場区分 スタンダード市場
業種 建設・資材 – 金属製品

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By ジニー

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