1. 企業情報
横浜冷凍は、冷蔵倉庫事業を主力とする大手の企業です。冷蔵倉庫事業は国内ではニチレイに次ぐ業界第2位の規模を誇ります。事業内容としては、冷蔵倉庫の保管・流通・管理などのサービスを提供する「冷蔵倉庫事業」が全体の売上構成比で約29%を占め、利益の柱となっています。また、「食品販売事業」では水産品を中心に、畜産品や農産品の加工・販売を手掛けており、売上構成比の約71%を占めています。海外事業も展開しています（2024年9月期時点で5%）。
2. 業界のポジションと市場シェア
冷蔵倉庫業界において、横浜冷凍は最大手の一角であり、ニチレイに次ぐ業界第2位のポジションを確立しています。国内では広範な拠点網を持ち、物流センターの拡張にも積極的です。この規模とネットワークは、中小企業が乱立する冷蔵倉庫業界において明確な競争優位性となっています。食品販売事業においても、水産品を中心に多様な商材を扱うことで、市場ニーズへの対応力を高めています。
一方で、課題としては、近年の原材料価格の高騰、物流コスト（運賃・保管料）の上昇、エネルギー費の高止まり、人件費の増加などが収益性に影響を与える可能性があります。特に食品販売事業はこれらのコスト増を吸収しきれない傾向が見られます。
3. 経営戦略と重点分野
同社は中期経営計画（第Ⅱ期「繋ぐ力」、最終年度2026年9月期）を策定し、企業価値向上に向けた戦略を推進しています。
主な定量目標は以下の通りです（最終年度2026年9月期）：
* 連結売上高：1,500億円
* 連結営業利益：65億円
* EBITDA：130億円
* ROE：5%以上
* 自己資本比率：40%台維持
これらの目標達成に向け、引き続き冷蔵倉庫事業での拠点網拡大や効率化、食品販売事業での商品戦略の強化などが重点施策として考えられます。
4. 事業モデルの持続可能性
冷蔵倉庫事業は、食品の安定供給に不可欠なインフラであり、長期的な需要が見込まれる安定性の高い事業モデルです。物流センターの拡張は、増大する低温物流ニーズへの対応と競争力強化に繋がります。食品販売事業は、食のトレンドや国際的な漁獲量・貿易条件（関税など）に影響されやすい側面がありますが、多様な水産品、畜産品、農産品を取り扱うことでリスク分散を図っています。持続可能性の維持には、コストコントロールと、変化する消費者ニーズや流通環境（EC拡大など）への適応が重要となります。
5. 技術革新と主力製品
特段の技術革新に関する具体的な情報はこのデータからは読み取れませんが、冷蔵倉庫事業においては、省エネ技術の導入や倉庫管理システムの改善などによる効率化が進められている可能性があります。
現在の収益を牽引している主力事業は「冷蔵倉庫事業」です。入出庫量の増加や倉庫の回転率向上により、セグメント利益は過去最高益を更新しています。食品販売事業は、マグロやイワシなどの水産品が主力であり、売上高においては大きい割合を占めています。
6. 株価の評価
現在の株価1225.0円に対し、以下の指標が示されています。
* PER（会社予想）: 25.79倍
* PBR（実績）: 0.91倍
* EPS（会社予想）: 47.49円
* BPS（実績）: 1,349.68円
業界平均と比較すると、PER (25.79倍) は業界平均 (12.1倍) を大きく上回っており、PER基準では割高と判断される可能性があります。一方、PBR (0.91倍) は業界平均 (1.0倍) を下回っており、PBR基準では割安感があると言えます。両指標で評価が異なるため、投資家の判断基準によって見方が分かれることがあります。
7. テクニカル分析
現在の株価1225.0円は、年初来高値1,310円と年初来安値737円の間にあります。
直近10日間の株価推移を見ると、1218円から1254円の間で変動しています。現時点の株価は直近の変動幅の中央よりやや下方に位置しています。
移動平均線を見ると、50日移動平均線（1201.86円）および200日移動平均線（972.91円）をいずれも上回っており、中長期的な上昇トレンドにあることが示唆されます。しかし、直近の出来高は3ヶ月平均を下回っており、取引の勢いはやや低下している可能性があります。
8. 財務諸表分析
- 売上高: 過去数年間で増加傾向にあります。2021年度の1,107億8,200万円から、過去12か月で1,257億1,000万円と拡大しています。直近の2025年9月期第3四半期累計でも、前年同期比4.5%増の952億6,600万円と増収を継続しており、通期予想も増収見込みです。
- 利益:
- 売上総利益は概ね安定していますが、2023年度の純利益は、特別損失（トータルアンユージュアルアイテムズ）-136億5,500万円の計上により-107億3,100万円の大幅な赤字となりました。これは一過性の要因によるものと推測されます。
- この一過性要因を除いた営業利益は、2021年度の25億6,300万円から回復し、過去12か月では49億7,000万円となっています。
- 2025年9月期第3四半期累計では、営業利益は前年同期比8.3%減の37億900万円となりましたが、経常利益は同13.1%増、親会社株主に帰属する四半期純利益は同37.4%増となっています。
- キャッシュフロー: 過去12ヶ月の営業キャッシュフローは80億6,000万円でプラスでした。しかし、積極的な設備投資（有形固定資産取得が過去12ヶ月で109億5,200万円）により、フリーキャッシュフローはマイナスとなっています。
- ROE: 過去12ヶ月で5.76%と、中期経営計画の目標（5%以上）を概ね達成しています。
- ROA: 過去12ヶ月で1.40%です。
- 自己資本比率: 実績で38.5%、直近第3四半期末で37.2%と、中期経営計画の目標（40%台維持）にはわずかに届いていません。
- 流動比率: 直近四半期で1.00と、短期的な支払い能力は確保されていますが、余裕は限定的です。
- 負債: 現金38億1,000万円に対して、総負債が1,097億1,000万円、負債資本比率（Total Debt/Equity）が134.96%と、やや負債依存度が高い状況です。
9. 株主還元と配当方針
配当利回り（会社予想）は1.96%であり、1株配当（会社予想）は24.00円です。配当性向は31.41%です。
過去の配当実績も安定しており、持続的な配当を重視する方針が伺えます。直近の配当予想に修正はありませんでした。自社株買い（自己株口0.18%）も実施していますが、大規模なものではありません。
10. 株価モメンタムと投資家関心
直近1年間の株価は32.39%の上昇を示しており、S&P 500の同時期の上昇率18.53%を上回っています。これは、市場全体と比較して強い株価モメンタムを示しています。
しかし、直近10日間の平均出来高が3ヶ月平均を下回っていることから、短期的な投資家の関心や取引の勢いはやや落ち着いている可能性があります。
信用取引においては、信用倍率が0.95倍と1倍を下回っており、売り残が買い残を上回る状態です。これは将来的な買い戻し圧力に繋がる可能性も示唆します。
株価に影響を与える要因としては、冷蔵倉庫の需要動向、食品販売事業における仕入価格の変動、物流コストやエネルギー価格の上昇、そして積極的な設備投資の進捗などが考えられます。
11. 総評
横浜冷凍は、冷蔵倉庫業界での確固たる地位を築き、安定した事業基盤を持つ企業です。利益の柱である冷蔵倉庫事業は堅調に推移し、積極的な拠点網拡大により、今後の成長を目指しています。食品販売事業は売上貢献が大きいものの、コスト増の影響を受けやすい構造上の課題も抱えています。
財務面では、2023年度に一過性の特別損失を計上しましたが、事業活動自体は回復傾向にあります。積極的な設備投資によりフリーキャッシュフローはマイナスですが、ROEは中期経営計画の目標を概ね達成しています。一方で、自己資本比率は目標値にわずかに届かず、負債比率もやや高い水準にあります。
株価バリュエーションについては、PERでは業界平均より割高ですが、PBRでは割安感があり、評価は分かれる可能性があります。株主還元は安定的な配当を継続しています。
12. 企業スコア
- 成長性: A
- LTM売上成長率（YoY）は2.10%、直近四半期累計の売上高は前年同期比4.5%増と堅調に推移しており、通期予想も増収を見込んでいます。中期経営計画での売上高目標設定も積極的です。
- 収益性: B
- 過去12ヶ月の営業利益率は2.13%であり、卸売業という業態を考慮すると極端に高いとは言えませんが、安定的な利益を確保しています。冷蔵倉庫事業は高収益ですが、食品販売事業のコスト増が全体収益を圧迫する傾向が見られます。一過性損失を除けば、事業活動による収益力は確保されています。
- 財務健全性: B
- 自己資本比率は38.5%（直近3Q末37.2%）と中期経営計画の目標40%台にはわずかに届いていません。流動比率は1.00と健全性を保っていますが、積極的な投資による負債比率はやや高めです。
- 株価バリュエーション: B
- PER（25.79倍）は業界平均（12.1倍）と比較して割高ですが、PBR（0.91倍）は業界平均（1.0倍）より割安です。両指標で異なる評価となるため、総合的に中立と判断します。
- ただし、PERの割高感は、成長期待や事業の安定性を示す可能性もあります。
企業情報
| 銘柄コード | 2874 |
| 企業名 | 横浜冷凍 |
| URL | http://www.yokorei.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 商社・卸売 – 卸売業 |
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