1. 企業情報
東海カーボンは、1918年設立の老舗炭素製品メーカーです。多岐にわたる炭素関連製品を手がけており、特にタイヤ向けカーボンブラックでは国内トップクラスのシェアを誇ります。その他、電炉に使用される黒鉛電極、半導体製造装置などに使われるファインカーボン、産業機械のブレーキやクラッチに使われる摩擦材、さらにはリチウムイオン二次電池の負極材なども製造・販売しています。事業ポートフォリオは、カーボンブラックが連結売上高の約45%を占め、ファインカーボンが約15%、スメルティング&ライニング(S&L)が約18%、黒鉛電極が約14%と多角的に展開しています(2024.12実績)。海外売上比率も高く、グローバルに事業を展開しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
東海カーボンは、タイヤ向けカーボンブラックで国内首位の地位を確立しており、この分野で強い競争優位性を持っています。黒鉛電極やファインカーボン、摩擦材といった各事業においても専門性の高い技術と製品を提供しています。
業界全体としては、黒鉛電極事業では中国の過剰供給により国際市況が低迷し、価格競争が激化しています。カーボンブラック事業ではタイヤメーカーの生産調整による需要の変動が見られます。ファインカーボン事業では、メモリ向け製品の需要は増加しているものの、パワー半導体市場の成長鈍化が影響を与えています。スメルティング&ライニング事業ではアルミ精錬炉改修需要の回復遅れが課題となっています。
3. 経営戦略と重点分野
経営陣は、2025年2月に長期ビジョン「Vision 2030」を公表しており、2030年の目標として「売上高5,000億円、EBITDAマージン20%、ROIC12%」を掲げています。
この目標達成に向けた重点施策として、「抜本的構造改革」「成長市場へのコミット」「サステナブルな価値創出」の3点を推進しています。具体的な施策には、黒鉛電極の国内生産拠点統合、欧州子会社の売却による連結除外(黒鉛電極事業)、スメルティング&ライニング事業の構造改革検討、タイのカーボンブラック工場移転、使用済タイヤ由来のカーボンブラック共同プロジェクトへの参画などが挙げられます。これらの取り組みを通じて、収益構造の改善と成長分野への投資を進めています。
4. 事業モデルの持続可能性
東海カーボンの事業モデルは、多様な炭素製品を幅広い産業(自動車、鉄鋼、半導体、建機、エネルギーなど)に提供することで、特定の市場変動リスクを分散させています。収益源は複数あり、これにより安定的な事業運営を目指しています。
市場ニーズの変化への適応としては、EV(電気自動車)向けの負極材開発や、SDGsに対応したリサイクル技術(使用済タイヤ由来のカーボンブラック)への取り組みを進めており、持続可能性の高い事業ポートフォリオへの転換を図っています。また、2024年12月期に実施した減損処理により、2025年期以降の償却費等の固定費負担が軽減される見込みであり、収益性の改善に寄与すると考えられます。
5. 技術革新と主力製品
同社は長年にわたり培ってきた炭素材料に関する高度な技術とノウハウを強みとしています。技術開発では、高機能な負極材の開発や、SiCフォーカスリングなどの次世代半導体製造に不可欠な精密炭素製品に力を入れています。
収益を牽引している主力製品・サービスは以下の通りです。
* カーボンブラック: タイヤの性能向上に寄与する補強材として世界中で幅広く使用されています。
* 黒鉛電極: 電炉での鉄鋼生産に不可欠であり、社会インフラを支える製品です。
* ファインカーボン: SiCフォーカスリングを含む特殊グラファイト製品は、半導体製造プロセスにおいて高い品質と信頼性が求められる重要部品です。
6. 株価の評価
現在の株価は1033.5円です。
* 会社予想PER(連結): 20.06倍 (EPS 51.53円に基づく)
* 実績PBR(連結): 0.80倍 (BPS 1,285.97円に基づく)
業界平均と比較すると、PERは業界平均(18.3倍)よりもやや割高ですが、PBRは業界平均(1.4倍)よりも割安な水準にあります。2024年12月期は一過性の減損損失により大幅な赤字を計上しましたが、2025年12月期には黒字転換が予想されており、現在のPERはその回復期待を織り込んでいると見られます。PBRが1倍を割り込んでいる点は、純資産価値から見て割安感があるとも評価できます。
7. テクニカル分析
直近10日間の株価は、10月27日の1104.5円をピークに、足元では1033.5円まで下落傾向にあります。特に10月28日には大きく値を下げました。
現在の株価(1033.5円)は、年初来高値(1,120円)からは下落していますが、年初来安値(765円)からは大きく上昇した位置にあります。
50日移動平均線(1042.98円)を下回っており、短期的な下落トレンドを示唆しています。一方で200日移動平均線(975.80円)は上回っており、中長期的なトレンドは維持されている可能性があります。現在の株価は、高値圏からやや調整局面に入っていると見られます。
8. 財務諸表分析
- 売上高: 2021年から2023年まで増加傾向にありましたが、2024年12月期は減少し、過去12か月では337,268百万円となっています。直近四半期売上成長率も前年比で-12.40%と減少傾向です。2025年12月期通期では、前期比▲2.6%の341,000百万円が予想されています。
- 利益: 2024年12月期は、主に減損損失計上により、営業利益が19,387百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が-56,736百万円と大幅な減益・赤字となりました。しかし、2025年12月期中間期では営業利益13,956百万円(前年同期比+65.7%)、親会社株主に帰属する中間純利益8,538百万円(前年同期比+133.2%)と大幅に改善しています。通期予想でも営業利益23,300百万円、純利益11,000百万円と黒字転換を見込んでいます。これは構造改革や償却費負担軽減の効果と考えられます。
- キャッシュフロー: 過去12か月の営業キャッシュフローは68,810百万円と継続してプラスであり、レバードフリーキャッシュフローも26,990百万円と潤沢です。これは、事業活動による安定的な資金創出能力を示しています。
- 収益性: 過去12か月のROEは-13.65%、ROAは2.39%と、2024年の大幅な赤字により収益性が悪化していますが、2025年度の黒字転換予想により改善が見込まれます。
- 財務健全性: 自己資本比率は45.2%(直近決算短信では45.3%)と健全性の目安とされる40%を上回っています。流動比率は1.87倍と短期的な支払い能力も高く、総負債/自己資本比率(Total Debt/Equity)は64.45%(D/Eレシオ約0.64倍)と負債負担も過度ではありません。全般的に財務健全性は高いと評価できます。
9. 株主還元と配当方針
同社の配当利回り(会社予想)は2.90%であり、1株配当(会社予想)は30.00円です。配当性向は過去12か月の赤字決算を基準にすると非常に高くなりますが、2025年12月期の予想純利益51.53円に対して計算すると約58.2%となり、利益の一定割合を株主に還元する方針がうかがえます。
株主構成には自社(自己株口)が5.08%含まれており、過去に自社株買いを実施していることが確認できます。これは株主還元策の一つとして評価できます。
10. 株価モメンタムと投資家関心
直近の株価は下落傾向にあり、短期的にはネガティブなモメンタムが見られます。ただし、出来高は日によって変動があり、特に下落時に増加する傾向が見られました。
信用取引においては、信用買残が信用売残を大きく上回っており、信用倍率は3.74倍です。これは、今後株価が上昇した場合に売却圧力となる可能性があり、需給面ではやや重い状況にあると言えます。
直近の株価変動は、市場全体のセンチメントや個別事業(特に黒鉛電極やカーボンブラック)の市況動向、そして先般発表された中間決算の内容などが影響している可能性があります。
11. 総評
東海カーボンは、カーボンブラックで国内最大手、黒鉛電極やファインカーボンなど多角的な事業を展開する炭素製品メーカーです。2024年12月期は一過性の減損損失により大幅赤字となりましたが、2025年中間期には利益が大きく改善し、通期でも黒字転換を予想しています。これは、長期ビジョン「Vision 2030」に基づいた構造改革や固定費負担の軽減が寄与していると考えられます。
財務基盤は自己資本比率や流動比率から見て健全であり、営業キャッシュフローも安定しています。株価はPBRで見て割安感がある一方、予想PERはやや割高ですが、これは回復期待を反映している可能性があります。短期的には株価が調整局面にあるものの、中長期的な成長戦略と財務健全性は評価できる点です。
12. 企業スコア
- 成長性: C
- LTM売上成長率(YoY)は-12.40%と減少傾向。2025年通期予想も対前期▲2.6%。過去数年の売上成長はあったものの、足元の売上減少が評価を下げる要因。ただし、構造改革後の回復が期待される。
- 収益性: B
- 粗利率は約24%と一定水準を維持。営業利益率は過去12ヶ月で8.77%だが、2025年中間期および通期予想では大幅な改善が見込まれる。EBITDAマージン(過去12ヶ月ノーマライズド)は約19%とVision 2030の目標20%に近づいており、一過性損益を除けば一定の収益力を持つと判断。
- 財務健全性: A
- 自己資本比率45.2%、流動比率1.87倍、D/E(Total Debt/Equity)64.45%といずれも健全な水準を大きく上回り、非常に良好な財務基盤を有しています。
- 株価バリュエーション: B
- 予想PER20.06倍は業界平均(18.3倍)よりやや高いものの、PBR0.80倍は業界平均(1.4倍)より割安。2024年の赤字からの回復局面であることを考慮すると、PERの割高感は限定的と評価し、PBRの割安感を加味して中立的な評価とします。
企業情報
| 銘柄コード | 5301 |
| 企業名 | 東海カーボン |
| URL | http://www.tokaicarbon.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 建設・資材 – ガラス・土石製品 |
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