1. 企業情報
Olympicグループは、1973年設立の独立系小売業中堅企業です。主に首都圏を中心に、食品スーパーマーケット、ディスカウントストア、ペット用品、DIY・ガーデニング、住宅設備、自転車など、多様な業態の店舗を幅広く展開しています。連結事業においては、食品部門が売上高の約66%を占め、非食品部門が約34%を占めています。その他、惣菜の製造・卸・小売、ペットホテル、獣医クリニック、住設工事、物流センター運営、システム開発、保険代理店業など多角的な事業を手掛けています。
2. 業界のポジションと市場シェア
同社は独立系の小売業中堅として、首都圏に広範な店舗網を持つことを強みとしています。食品スーパー、ディスカウントストア、専門店という多様な事業形態を展開し、顧客の幅広いニーズに対応しようとしていますが、小売業界は競争が激しく、特に価格競争が常態化しています。大手競合チェーンとの差別化や収益性確保が課題です。市場シェアに関する具体的なデータは提供されていません。
3. 経営戦略と重点分野
決算短信および企業情報からは、以下の経営戦略と重点分野が見て取れます。
* 顧客体験の向上と獲得: モバイルアプリ「トコポン」の導入による顧客接点の強化と囲い込み、EDLP（常時低価格）戦略の継続、チラシやSNSを活用した販売促進。
* 店舗ポートフォリオの最適化: 顧客満足度向上を目的とした店舗の改装やレイアウト変更。一方で、採算性の低い非食品部門の5店舗を閉鎖するなど、不採算店舗の整理も進めています。事業用定期借地権の再契約不成立による店舗閉鎖リスクも認識されています。
* 業務効率化とコストコントロール: 自動発注システムの導入などによる業務効率の改善。人件費、光熱費、物流費といったコスト上昇への対応策が求められています。
* 商品力・販売力の強化: 在庫の最適化や、値下げ・マークダウンによる滞留在庫の圧縮。
具体的な中期経営計画の数値目標やその進捗については、決算短信内では詳細な記載はありません。
4. 事業モデルの持続可能性
Olympicグループの事業モデルは、消費者の生活に不可欠な食品を主力としつつ、非食品や専門店で付加価値を提供するものです。食品部門は景気変動に比較的安定している一方、価格競争が激しい特性があります。
物価上昇による消費者の生活防衛意識が高まる中、EDLP戦略やモバイルアプリ導入などで顧客ニーズへの適応を図っています。しかし、競合激化による主力商品の値下げや、供給コストの上昇（人件費、光熱費、物流費など）が収益を圧迫しており、これらの課題への継続的な対応が事業モデルの持続可能性において重要です。不採算店舗の閉鎖など事業構造改革も進行中ですが、その効果の発現が注目されます。
5. 技術革新と主力製品
技術革新に関しては、具体的な研究開発投資に関する言及は見られませんが、顧客接点強化のためモバイルアプリ「トコポン」を導入し、業務効率化のために自動発注システムを進めている点が挙げられます。
主力製品としては、食品（生鮮品、加工品、惣菜など）、日用雑貨、ペット用品、DIY・ガーデニング用品、自転車といった幅広いカテゴリーの商品が挙げられます。これらの製品は、同社の多様な店舗業態を通じて提供されています。
6. 株価の評価
現在の株価は387.0円です。
* EPS（会社予想）: -63.12円と通期で純損失が予想されており、PER（株価収益率）は算出できません。
* BPS（実績）: 1,002.10円。
* PBR（実績）: 0.39倍。業界平均PBRが1.3倍であることと比較すると、現在のPBRは業界平均を大幅に下回っており、理論上は割安な水準にあります。これは、同社の低い収益性や将来の不透明感が市場に織り込まれている可能性を示唆していると考えられます。
7. テクニカル分析
現在の株価387.0円は、年初来高値465円、年初来安値383円と比較すると、安値圏に位置しています。また、52週高値466.00円、52週安値383.00円と比較しても、安値圏です。
50日移動平均線（407.24円）および200日移動平均線（419.98円）をいずれも下回っており、株価は下降トレンドにあると判断できます。直近10日間の株価推移もやや軟調で、下落モメンタムが見られます。
8. 財務諸表分析
過去数年間の損益計算書及び主要財務指標を評価します。
* 売上高: 過去12か月では98,637百万円を計上、2024年2月期の90,937百万円から増加していますが、2023年2月期と比較すると微減。直近四半期の売上高成長率は前年同期比で-2.00%と減少傾向にあります。
* 利益: 営業利益は2022年2月期の1,928百万円から、2024年2月期191百万円、過去12か月51百万円と大幅に減少。直近の2026年2月期中間期では964百万円の営業損失を計上しており、通期でも営業損失を予想しています。親会社株主に帰属する当期純利益も、2024年2月期は477百万円の純損失、過去12か月は67百万円の純損失と赤字が続いており、中間期では1,716百万円の純損失と損失幅がさらに拡大しています。収益性が著しく悪化している状況です。
* キャッシュフロー: 過去12か月の営業キャッシュフローは2.02B円とプラスを維持しています。具体的なキャッシュフロー計算書の詳細情報は提供されていません。
* ROE: 過去12か月で-7.40%（実績は-0.26%）とマイナスであり、株主資本を効率的に活用できていない状況を示しています。
* ROA: 過去12か月で-1.03%とマイナスであり、総資産に対する収益性が低いことを示しています。
* 自己資本比率: 2025年8月末時点で33.2%（前年度末36.1%）と、小売業としては平均的な水準に見えますが、健全性の目安とされる40%を下回っています。純損失の継続により自己資本は減少傾向にあります。
* 流動比率: 直近四半期で0.67と、短期的な負債の返済能力に懸念がある可能性を示唆しています。
* D/E比率: 直近四半期のTotal Debt/Equityは127.55%と、負債が自己資本を上回る水準であり、財務レバレッジが高い状態です。
全体的に、収益性の著しい悪化と財務健全性の低下が見られ、経営状況は厳しいと言えます。
9. 株主還元と配当方針
Olympicグループは、2025年2月期に年間20.00円の配当を実施しています。これを基にした実績配当利回りは約5.17%になりますが、配当性向が881.06%と非常に高く、収益に対して過大な配当であったことを示唆しています。
2026年2月期の中間配当は0.00円であり、期末配当予想も「未定」とされています。これは、通期で純損失が予想されている現在の経営状況を反映したものであり、当面は安定的な株主還元が困難な状況にあると考えられます。自社株買いなどの追加的な株主還元策に関する情報は提供されていません。
10. 株価モメンタムと投資家関心
現在の株価は直近の10日間で下落しており、下降モメンタムが見られます。50日および200日移動平均線を下回っており、トレンドは軟調です。
出来高は比較的少なく、売買代金も限定的です。信用取引においては、信用買残が信用売残を大きく上回り、信用倍率が16.84倍と高い水準にあるため、将来的な株価上昇時の売り圧力となる可能性があります。
通期の純損失見込みや配当予想の未定が投資家の関心を低下させ、株価にネガティブな影響を与えている要因と考えられます。収益改善の兆しや事業構造改革の進展が、株価モメンタム転換の鍵となるでしょう。
11. 総評
Olympicグループは、首都圏を地盤とする独立系小売業中堅企業であり、多様な業態で食品と非食品の小売事業を展開しています。PBR0.39倍という水準は業界平均に対し著しく割安であり、現在の株価は年初来安値圏にあり、テクニカル的には弱含みです。
しかし、財務状況を見ると、売上高は変動するものの、収益性の悪化が深刻です。営業利益は近年大幅に減少し、直近及び通期予想では純損失を計上し、利益創出力が低い状況です。自己資本比率の低下、流動比率の低さ、高いD/E比率など、財務健全性にも懸念が見られます。株主還元についても、過去は高配当性向でしたが、足元の業績悪化を受けて配当は未定となっており、安定的な還元が困難な状況です。
経営陣は、EDLP戦略、モバイルアプリ導入、店舗改装、業務効率化などで事業改善を図っていますが、これらの施策が収益回復につながるか、またコスト増圧力を吸収できるかが今後の焦点となります。不採算店舗の整理など事業構造改革も進められていますが、その効果の発現と持続的な成長に向けた道筋が市場から評価されるには時間を要する可能性があります。
12. 企業スコア
- 成長性: C
- LTM売上成長率（YoY）は-2.00%と減少傾向。過去数年の売上も安定的な成長は見られず、現状は成長性に課題があります。
- 収益性: D
- 過去12か月の営業利益率は0.05%、EBITDA率は2.9%と低水準。直近の中間期および通期予想では営業損失・経常損失・純損失を計上しており、収益性は極めて低いと評価されます。
- 財務健全性: C
- 自己資本比率33.2%（40%未満）、流動比率0.67（1.0未満）、Total Debt/Equity比率127.55%と、総じて健全性の目安を下回る指標が見られ、財務健全性には懸念があります。
- 株価バリュエーション: S
- PBR 0.39倍は業界平均PBR 1.3倍を大幅に下回っており、純粋な数値評価では非常に割安な水準です。ただし、この割安感は同社の低収益性や厳しい事業環境を反映している可能性が高いと考えられます。
企業情報
| 銘柄コード | 8289 |
| 企業名 | Olympicグループ |
| URL | http://www.olympic-corp.co.jp/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 小売 – 小売業 |
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