1. 企業情報
栗林商船は、1894年創業、1919年設立の歴史ある海運会社です。主要な事業は海運事業(内航・近海)で、特に北海道と東京・大阪を結ぶ航路で新聞用紙を中心とした紙製品、中古紙原料、鋳鍛鋼品、澱粉、車両、一般消費財などの貨物輸送を主力としています。その他、青函フェリーを運営するホテル事業、不動産賃貸事業、青果物卸売事業なども手掛けており、多角的な事業展開を行っています。
* 事業内容比率 (2025年3月期連結予想): 海運92%、ホテル5%、不動産1%、その他2%
2. 業界のポジションと市場シェア
同社は「内航大手」として、国内海運市場において一定の地位を確立しています。特に新聞用紙輸送に強みを持ち、主要株主には王子ホールディングスや日本製紙といった大手荷主が名を連ねていることから、主要顧客との強固な関係性が見受けられます。
市場シェアに関する具体的な数値は開示されていませんが、安定した荷主との取引や多角化された事業ポートフォリオが競争優位性となっています。一方で、海運業界全体としては、景気変動、燃料価格(重油価格)の変動、傭船市況の動向、人件費を含む物価上昇などが収益に影響を与える可能性があります。
3. 経営戦略と重点分野
決算短信によると、同社は売上高の主要部分を占める海運事業において、紙製品等の輸送量増や雑貨・商品車両の堅調な荷動きに対応し、増収を達成しています。近海航路では傭船市況の低迷が見られるものの、効率配船により採算の維持・改善に努めています。
中期経営計画に関する具体的な数値目標や施策の詳細は、公開資料からは限定的ですが、株式会社鈴木商店の買収による青果物卸売事業への参入など、M&Aを通じた新たな事業領域への展開や事業ポートフォリオの多様化を図ることで、環境変化への対応力強化を目指していると考えられます。ホテル事業においては、国内需要が堅調な一方で、原価や人件費の上昇が利益を圧迫しており、これらのコストコントロールが今後の課題となるでしょう。
4. 事業モデルの持続可能性
同社の事業モデルは、主力である内航海運事業の安定的な貨物輸送需要に支えられています。特に新聞用紙輸送は特定の顧客に依存する部分もありますが、長年の実績と信頼関係が強みです。また、フェリー、ホテル、不動産、青果物卸といった多角的な事業展開は、海運市況の変動リスクを分散し、事業全体の安定性を高めることに寄与しています。
一方で、海運事業は燃料価格の変動や国内景気の影響を受けやすく、ホテル事業はパンデミックのような外部要因や人件費・原材料費の高騰に対する適応力が求められます。M&Aによる事業拡大は新たな収益機会をもたらす反面、事業統合リスクも伴います。
5. 技術革新と主力製品
同社の開示情報からは、特定の画期的な技術革新に関する具体的な記述は見られません。海運事業における主力製品(サービス)は、新聞用紙、紙製品、中古紙原料、鋳鍛鋼品、澱粉、車両、一般消費財などの海上輸送です。
これらの輸送サービス基盤の上に、青函フェリー航路の提供、ホテル運営、不動産賃貸、そして新たに加わった青果物卸売事業など、多様な収益源を確保しています。船舶の更新や環境規制への対応など、海運業界固有の技術課題への取り組みは継続的に行われていると推測されます。
6. 株価の評価
現在の株価1,940.0円に対し、以下の指標を用いて評価します。
* EPS(会社予想): 304.41円
* PER(会社予想): 6.38倍
* BPS(実績): 2,668.01円
* PBR(実績): 0.78倍
業界平均と比較すると:
* 予想PERに基づく適正株価: 304.41円 × 業界平均PER 17.2倍 = 5,235.85円
現在の株価1,940.0円は、この基準から見ると割安な水準にあります。
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実績PBRに基づく適正株価: 2,668.01円 × 業界平均PBR 0.5倍 = 1,334.00円
現在の株価1,940.0円は、この基準から見るとやや割高な水準にあります。
純資産価値を示すBPSが現在の株価を上回っており、PBRも1倍を下回ることから、企業が持つ純資産に比べて株価は割安感があるとも言えます。PERは業界平均を大きく下回っており、収益性に対して株価は低い評価を受けている可能性があります。7. テクニカル分析
現在の株価1,940.0円は、年初来安値877円から大きく上昇しており、年初来高値2,175円に迫る水準にあります。52週高値2,175.00円、52週安値877.00円と比較しても、株価は高値圏に位置していると言えます。
移動平均線を見ると、50日移動平均線1,623.02円、200日移動平均線1,240.72円を大きく上回っており、強い上昇トレンドが示唆されます。直近10日間の株価推移では、一時2,175円の高値を付けた後、1,900円台まで調整する動きが見られましたが、比較的高い水準を維持しています。全体としては、上昇相場の高値圏にあり、短期的な調整を経ている可能性があります。8. 財務諸表分析
過去数年間の損益計算書と最新の財務指標から、以下の傾向が読み取れます。
* 売上高: 過去数年間で概ね増加傾向にあります。2024年3月期は微減でしたが、直近12か月(LTM)では53,071百万円と大きく伸長しています。直近の中間期(2025年4月~9月)売上高も前年同期比で増収を記録しており、事業の堅調さを示しています。
* 粗利率: 2022年3月期の15.21%からLTMの20.93%まで改善傾向にあり、収益構造の効率化が進んでいることがうかがえます。
* 営業利益: 2022年3月期は低水準でしたが、2023年3月期以降は回復基調にあり、LTMでは2,705百万円を計上しています。中間期営業利益も前年同期比で微増となりました。
* 純利益: LTMで2,013百万円、中間期で1,807百万円と堅調に推移しています。ただし、直近の中間期純利益には、投資有価証券売却益(約10億円)や負ののれん発生益(約1.2億円)など、約11.5億円の特別利益が含まれており、これら一過性の要因が利益を押し上げている点には留意が必要です。
* ROE(実績): 7.13%(LTM: 7.09%)は資本効率の面で健全な水準にあります。
* ROA(過去12か月): 2.12% となっており、総資産が収益にどの程度寄与しているかを示す指標としては標準的です。
* 自己資本比率(実績): 37.4%(中間期末では39.0%)と、40%を下回る水準ですが、海運業としては許容範囲内と見られます。
* 流動比率(直近四半期): 1.52(152%)であり、短期的な支払能力は十分に確保されています。
* D/E (Total Debt/Equity)(直近四半期): 49.86%と、負債が純資産に対して低い水準にあり、財務の健全性が高いことを示しています。
9. 株主還元と配当方針
同社の1株配当(会社予想)は25.00円であり、現在の株価に基づく配当利回りは1.29%です。配当性向は15.64%と低めに抑えられており、利益に対する配当の安定性や、将来的な増配余地を示唆しているとも考えられます。現在の情報からは、積極的な自社株買いなどの追加的な株主還元策に関する明確な発表は確認できません。
10. 株価モメンタムと投資家関心
過去52週間の株価変化率は98.16%と大幅な上昇を見せており、強い上昇モメンタムにあることが示されています。S&P 500の同時期の変化率12.12%と比較しても、非常に良好なパフォーマンスです。
直近10日間の出来高は日によって変動がありますが、Avg Vol (10 day)が15.36kとAvg Vol (3 month) 47.73kを下回っており、短期的に取引量が減少傾向にある点は注目されます。信用買残は355,800株と積み上がっていますが、信用売残は0株であり、売り圧力がほとんどない状態です。
主要株主構成を見ると、インサイダー保有比率が46.52%と高く、経営陣や創業家による安定的な保有がなされています。機関投資家保有比率も20.57%あり、一部専門家からの関心も集めているようです。強い上昇モメンタムは投資家の関心の高まりを反映していますが、出来高の減少傾向や信用買残の状況は今後の株価動向に影響を与える可能性があります。
11. 総評
栗林商船は、内航海運事業を基盤としつつ、ホテルや不動産、青果物卸など多角的な事業展開をする企業です。主力海運事業は紙製品等の安定輸送を強みとし、LTM売上高・営業利益は堅調に推移しています。財務面では、流動比率やD/Eレシオで高い健全性を示しますが、自己資本比率は改善余地があります。直近の純利益には特別利益の貢献が大きいため、実力値を図る上ではその点を除外して評価する必要があります。株価は年初来で大きく上昇し高値圏にありますが、予想PERは業界平均と比較して割安水準にあります。堅実な配当方針も評価できます。既存事業の収益性維持・向上と、新たな事業機会の創出が今後の成長の鍵となるでしょう。
12. 企業スコア
- 成長性: A
- LTM売上成長率(YoY)は8.56%、3年CAGRは5.48%と堅調な売上成長を示しており、今後の事業拡大への期待も持てます。
- 収益性: B
- LTM粗利率は20.93%、営業利益率は5.10%であり、海運業としては標準的な水準と判断されます。ホテル事業など一部事業でコスト増の課題が見られ、利益率のさらなる向上には課題もあります。
- 財務健全性: B
- 自己資本比率37.4%(中間期末39.0%)は40%を下回るものの、流動比率152%やTotal Debt/Equity比率49.86%は健全な水準を維持しており、全体としては中立的な評価です。
- 株価バリュエーション: A
- 予想PER 6.38倍は業界平均17.2倍と比較して非常に割安であり、収益力に対する株価の割安感は大きいと評価できます。PBRは業界平均0.5倍に対して0.78倍とやや上回るものの、PERの割安感が目立ちます。
企業情報
| 銘柄コード | 9171 |
| 企業名 | 栗林商船 |
| URL | http://www.kuribayashishosen.com/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 運輸・物流 – 海運業 |
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このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.3)」によって自動生成されました。
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