1. 企業情報
株式会社ムサシは、1946年設立の老舗企業で、多岐にわたる事業を展開する複合企業です。主な事業内容は以下の4つのセグメントに分けられます。
* 情報・印刷・産業システム機材: 富士フイルムの特約店として、スキャナーや電子化システム、印刷機器・材料、工業用検査機材、業務用ろ過フィルターなどを提供しています。文書のデジタル化やデータ入力サービスも手掛けています。
* 金融汎用・選挙システム機材: 貨幣処理機器(紙幣計数機、硬貨選別機など)や金融機関向けシステムを提供。特に選挙システム機材においては、投票用紙分類・計数機器で国内市場において圧倒的なシェアを誇ります。
* 紙・紙加工品: 印刷用紙、情報用紙、特殊紙、オフィス用紙、段ボール、加工紙製品などを扱っています。
* 不動産賃貸・リース等: 不動産賃貸やオートリース、保険仲介などの事業を行っています。
本社は東京都中央区に位置し、多様な分野で顧客にサービスを提供しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
ムサシは多様な事業ポートフォリオを持つことで、特定の市場変動リスクを分散しています。特に、以下の分野で強力な市場ポジションを確立しています。
* 選挙システム機材: 投票用紙分類・計数機器において、国内市場で圧倒的なシェアを誇ります。選挙は定期的に実施されるため、安定的な需要が見込める特性があります。この市場での強固な地位は、高い参入障壁と競争優位性をもたらしています。
* 貨幣処理機器: 金融機関や小売、運輸、娯楽産業向けに貨幣処理機を提供し、業界で2位のポジションを保持しています。これは技術力と顧客基盤の厚さを示唆しています。
* 情報・印刷・産業システム機材: 富士フイルムの特約店として、幅広い製品とサービスを提供しています。
課題としては、印刷用紙や情報用紙の需要減といった市場構造の変化に適応していく必要があります。また、選挙システム機材は高いシェアを持つものの、選挙の周期性によって売上が変動する可能性があります。
3. 経営戦略と重点分野
提供データからは中期経営計画に関する具体的な記述は限られています。しかし、事業セグメントごとの状況から以下の点が重点分野として推測できます。
* 高シェア分野の維持強化: 選挙システム機材や貨幣処理機器といった、既に高い競争優位性を持つ分野の顧客基盤・技術力の維持および強化が重要と考えられます。特に選挙関連は、安定した需要を見込みながら、次期選挙に向けた準備を着実に進めることが求められます。
* 情報・産業システム分野の成長: 工業用検査機材、業務用ろ過フィルター、スキャナー、文書デジタル化事業などが好調であることから、この分野への投資や強化が継続される可能性があります。デジタル化の進展は中長期的な需要を創出する機会となります。
* 多様な事業ポートフォリオによるリスク分散: 情報・印刷、金融汎用・選挙、紙、不動産賃貸・リースといった事業はそれぞれ異なる市場特性を持つため、全体として事業リスクの分散を図り、安定的な収益確保を目指す戦略と考えられます。
直近の第1四半期決算では、金融汎用・選挙システム機材が最も利益に貢献しており、ここでの積極的な事業展開が見られます。
4. 事業モデルの持続可能性
ムサシの事業モデルは、多様なセグメントを持つことで持続可能性を高めています。
* 収益モデルの多角化: 選挙機材のように周期性のある事業と、貨幣処理機のように安定したメンテナンス需要が見込める事業、さらに不動産賃貸のような安定収益源を組み合わせることで、特定の市場変動に左右されにくい構造を構築しています。
* 市場ニーズの変化への適応: 文書デジタル化事業や工業用検査機材などの分野は、デジタルトランスフォーメーション (DX) や産業の変化に対応するものであり、今後の成長が期待されます。一方で、印刷用紙のような需要減少傾向にある分野に対しては、ポートフォリオの最適化が課題となるでしょう。
* 安定した顧客基盤: 金融機関や官公庁、幅広い産業分野にわたる顧客基盤は、安定した収益源となっています。
マクロ経済の不透明さ(物価上昇、為替変動、地政学リスク等)は事業環境に影響を及ぼしますが、これまでに培った技術力と市場シェア、そして多角的な事業展開が、変化に対応していく上での強みとなります。
5. 技術革新と主力製品
ムサシの技術力と主力製品は、主に以下の点で際立っています。
* 選挙システム機材: 自社開発による投票用紙分類・計数機器は国内で圧倒的なシェアを誇り、高い技術力と信頼性を持っています。これは、選挙という極めて厳密な精度とセキュリティが求められる分野での実績であり、同社の技術力の証です。
* 貨幣処理機器: 金融機関向けにTellacブランドで展開される貨幣処理機は、高い処理能力と信頼性が評価されています。
* 情報・産業システム: 工業用非破壊検査システム等の産業用機材や、文書のデジタル化を支えるスキャナーおよび関連ソフトウェアの開発は、情報処理技術への投資と独自性を示しています。
主力製品は、安定した需要のある公共性の高い分野(選挙、金融)と、IT化・産業高度化のニーズに応える分野(情報・産業システム)に及び、これらが収益を牽引しています。
6. 株価の評価**
現在の株価2,347.0円に基づき、以下の指標で評価します。
* PER(株価収益率):
* 会社予想EPS(連結): 215.43円
* PER = 2,347.0円 ÷ 215.43円 = 10.89倍
* 業界平均PER: 10.1倍
* 会社予想PERは業界平均と比較してやや割高な水準です。
* しかし、直近12ヶ月(LTM)のDiluted EPS 503.66円で計算すると、PER = 2,347.0円 ÷ 503.66円 = 4.66倍となり、大幅に割安な水準となります。これは2026年3月期の会社予想が大幅減益を見込んでいるため、この乖離が生じています。投資家はどちらの収益を重視するかで評価が分かれる可能性があります。
* PBR(株価純資産倍率):
* 実績BPS(連結): 5,073.12円
* PBR = 2,347.0円 ÷ 5,073.12円 = 0.46倍
* 業界平均PBR: 0.7倍
* PBRは業界平均と比較して割安な水準にあります。株価が純資産の下で評価されており、資産面から見ると割安感があります。
仮に会社予想EPSではなく、直近12ヶ月実績のEPSを重視する場合、株価は非常に割安と判断できます。一方、会社予想EPSを重視する場合、PERは業界平均よりやや高い状況です。しかしPBRが大幅に割安である点は注目に値します。
7. テクニカル分析
現在の株価は2,347.0円です。
* 年初来高値: 2,425円
* 年初来安値: 1,461円
* 52週高値: 2,425.00円
* 52週安値: 1,461.00円
* 50日移動平均: 2,330.98円
* 200日移動平均: 1,895.73円
現在の株価2,347.0円は、年初来高値および52週高値(2,425円)に近い水準にあります。直近10日間の株価推移を見ると、概ね2,300円台で推移しており、本日高値の2,352円は直近では高値圏であることが伺えます。50日移動平均線(2,330.98円)を上回り、200日移動平均線(1,895.73円)を大きく上回っていることから、中長期的な上昇トレンドにあると言えます。しかし、短期的な過熱感には留意が必要な水準です。
売上高・利益の推移(連結)
| Breakdown | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 過去12ヶ月(LTM) | 2026年3月期 第1四半期 | 2026年3月期 通期予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Total Revenue (百万円) | 36,213 | 37,072 | 33,140 | 37,391 | 9,966 | 37,364 |
| Gross Profit (百万円) | 8,763 | 9,444 | 8,087 | 10,677 | 2,898 | — |
| Operating Income (百万円) | 1,746 | 2,620 | 1,077 | 3,354 | 1,187 | 1,905 |
| Net Income (百万円) | 981 | 1,762 | 767 | 3,432 | 785 | 1,147 |
- 売上高: 2022年3月期から2023年3月期にかけて増加しましたが、2024年3月期は減少しました。しかし、直近12ヶ月(LTM)では37,391百万円と大きく回復しており、2024年3月期を上回っています。2026年3月期第1四半期も前年同期比27.9%増と好調です。通期予想では前期比0.1%減を見込んでいますが、これは過去12ヶ月の実績が大きく伸長していることの反動か、保守的な見通しと考えられます。
- 利益: 営業利益、純利益ともに2023年3月期に増加後、2024年3月期に大きく減少しました。しかし、直近12ヶ月(LTM)では大幅に改善し、過去数年で最も高い水準を達成しています。2026年3月期第1四半期も営業利益が前年同期比299.7%増、純利益が337.3%増と非常に好調でした。ただし、通期予想では営業利益43.2%減、純利益66.6%減と大きく減少を見込んでおり、第2四半期以降の進捗に注目が必要です。
収益性指標
- Gross Profit Margin(売上総利益率):
- 過去12ヶ月(LTM): 10,677百万円 / 37,391百万円 = 28.56%
- 2026年3月期 第1四半期: 2,898百万円 / 9,966百万円 = 29.08%
- 安定して30%前後の高い粗利率を維持しており、卸売業としては健全な水準です。
- Operating Margin(営業利益率):
- 過去12ヶ月(LTM): 3,354百万円 / 37,391百万円 = 8.97%
- 2026年3月期 第1四半期: 1,187百万円 / 9,966百万円 = 11.91%
- 提供データでは「Operating Margin (過去12ヶ月): 11.92%」とあり、堅調な収益性を示しています。2024年3月期は低かったものの、LTMと第1四半期で大きく改善しています。
- Profit Margin(純利益率):
- 過去12ヶ月(LTM): 3,432百万円 / 37,391百万円 = 9.18%
- 提供データでは「Profit Margin: 10.21%」と示されており、収益性が高いことが伺えます。
- ROE(自己資本利益率):
- 実績(連結): 10.70% (FY2024)
- 過去12ヶ月(LTM): 12.44%
- 自己資本を効率的に活用して利益を生み出していると言えます。
- ROA(総資産利益率):
- 過去12ヶ月(LTM): 5.66%
- 総資産に対する利益の創出効率も良好な水準です。
財務健全性
- 自己資本比率:
- 実績(連結): 68.2% (FY2024)
- 直近四半期(2025年6月末): 70.1%
- 70%を超える非常に高い水準で、極めて財務が健全であることが示されます。
- 流動比率:
- 直近四半期: 2.93倍
- 短期的な支払い能力を示す流動比率は2倍を大きく上回っており、資金繰りに問題がないことを示しています。
- Total Debt/Equity(D/Eレシオ):
- 直近四半期: 10.17%
- 負債比率が非常に低く、借入金に依存しない強固な財務体質を構築しています。
- 現金及び預金: 約219億円を保有しており、手元資金が潤沢です。
総じて、ムサシの財務状況は非常に健全で、高い収益性を確保しつつ、資本効率も良好であることが評価できます。
9. 株主還元と配当方針
ムサシの株主還元については、以下のデータが示されています。
* 1株配当(会社予想): 46.00円 (2026年3月期通期予想)
* 配当利回り(会社予想): 1.96%
* Payout Ratio(配当性向): 7.15% (過去12ヶ月)
決算短信によると、2025年3月期の実績配当は年間60.00円(中間30.00円、期末30.00円)でした。これに対し、2026年3月期の年間配当予想は36.00円(中間18.00円、期末18.00円)と、大幅な減配を予定しています。これは、2026年3月期の通期業績予想が前期比で減益を見込んでいることに伴うものと考えられます。
過去12ヶ月の配当性向7.15%を見ると、配当余力は非常に高いことが分かります。減配予想は残念なものの、現在の財務健全性や潤沢なキャッシュフローを考慮すると、今後の業績回復次第で配当水準が改善する可能性はあります。自社株買いなどの追加的な株主還元策についての言及は提供データからは確認できません。
10. 株価モメンタムと投資家関心
- 株価の直近の変動傾向: 直近10日間の株価は2,300円台で推移しており、本日は2,347円と、年初来高値2,425円に近い水準にあります。50日移動平均線(2,330.98円)を上回り、200日移動平均線(1,895.73円)を大きく上回っていることから、上昇モメンタムが継続していると言えます。
- 出来高と流動性: 直近10日間の出来高は900株~36,200株と変動が大きく、平均出来高(3ヶ月: 15.74千株、10日: 10.96千株)は比較的低い水準です。これは流動性が限定的であることを示唆し、大口の取引が株価に影響を与えやすい可能性があります。
- 投資家関心: 信用倍率が0.00倍であり、信用売残が0株であることから、空売り勢の関心は低いと言えます。信用買残が112,600株あり、直近で若干増加していることから、個人投資家を中心に買いの関心がある程度存在すると考えられます。
- ベータ値: 0.16と非常に低い値を示しており、市場全体の変動に対する株価の連動性が低い(非市場リスクが高い)銘柄であると言えます。これは市場全体の変動から独立した独自の要因で株価が動く傾向にあることを示します。
直近の株価は堅調に推移しているものの、出来高が限定的であるため、大きなニュースや決算発表時には株価が大きく変動する可能性があります。
11. 総評
株式会社ムサシは、選挙システム機材や貨幣処理機器で高い市場シェアと競争優位性を持つとともに、情報・印刷・産業システム機材や不動産賃貸・リースなど多角的な事業を展開しています。これにより、事業リスクを分散し、安定的な収益基盤を確立しています。
財務状況は極めて健全であり、自己資本比率は70%を超え、手元資金も潤沢です。収益性も、特に直近12ヶ月(LTM)と2026年3月期第1四半期では、売上高・利益ともに大きく改善し、高水準の利益率を達成しています。
株価評価については、PBRが業界平均を大幅に下回る0.46倍と割安感があります。一方、PERは会社予想EPS(2026年3月期通期)に基づくと業界平均よりやや高いですが、直近12ヶ月(LTM)のEPSを基準とすると大幅に割安となります。これは、会社が2026年3月期通期で大幅な減益を予想しており、それが配当減額にもつながっているため、今後の業績見通しが株価評価の重要なポイントとなります。
テクニカル的には、株価は年初来高値圏にあり、中長期的な上昇トレンドに乗っています。しかし、出来高は限定的であり流動性には留意が必要です。
総じて、高い財務健全性と特定のニッチ市場での強固な地位は評価できる一方、今後の業績予想と、それが配当方針に与える影響は注意深く見守る必要があるでしょう。
12. 企業スコア
| 評価項目 | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| 成長性 | A | 直近12ヶ月(LTM)の売上高成長率は対前期比で12.83%と高く、2026年3月期第1四半期の売上高も前年同期比で27.9%増と非常に好調。過去数年に変動はあるものの、直近の力強い成長が見られます。<br>直近のLTM売上: 37,391百万円 (対2024年3月期 33,140百万円: 約+12.83%)。<br>2026年3月期 第1四半期売上高:9,966百万円 (対前年同期比 +27.9%)。 |
| 収益性 | A | 過去12ヶ月(LTM)の粗利率28.56%、営業利益率8.97%(提供データでは11.92%)、純利益率9.18%(提供データでは10.21%)と、卸売業としては高い水準を保っています。ROE(LTM 12.44%)、ROA(LTM 5.66%)も良好です。特に第1四半期の営業利益率・純利益率はさらに改善しています。<br> Operating Margin (過去12か月): 11.92%。 |
| 財務健全性 | S | 自己資本比率70.1%(直近四半期)、流動比率2.93倍、Total Debt/Equity比率10.17%と、いずれの指標も極めて高い水準で、非常に健全な財務体質を示しています。手元資金も潤沢です。 |
| 株価バリュエーション | B | PER(会社予想)10.89倍は業界平均PER10.1倍と比較してやや割高ですが、PBR(実績)0.46倍は業界平均PBR0.7倍を大幅に下回っており割安感があります。また、直近12ヶ月実績EPSに基づくPERは大幅に割安となるため、予想される収益減益の見通しが株価に織り込まれていると解釈できます。株価に対する純資産の評価は低いと判断されます。総合すると中立的な評価とします。 |
企業情報
| 銘柄コード | 7521 |
| 企業名 | ムサシ |
| URL | https://www.musashinet.co.jp/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 商社・卸売 – 卸売業 |
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このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.3)」によって自動生成されました。
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