1. 企業情報
住友ベークライト株式会社は、1932年に設立された総合樹脂加工の大手企業です。主に「半導体関連材料」「高機能プラスチック」「QOL(Quality of Life)関連製品」の3つの事業セグメントを展開しており、幅広い産業分野に製品を提供しています。特に半導体封止材では世界トップクラスのシェアを誇り、高機能プラスチックや医療関連製品も手掛けています。
2025年3月期のセグメント構成(売上収益に対する比率)は以下の通りです。
– 半導体関連材料:30%
– 高機能プラスチック:35%
– QOL関連製品:35%
海外売上比率も高く、連結売上収益の約64%が海外からのものです(2025年3月期予想)。
2. 業界のポジションと市場シェア
住友ベークライトは、半導体封止材分野で世界トップのポジションを確立しており、この分野における高い競争優位性を持っています。半導体の進化と共に、高機能な材料への需要が高まる中で、同社の技術力は強みとなります。
競争優位性:
- 半導体封止材における世界首位のシェア: 半導体の重要性が増す中で、安定的な需要と技術革新への対応力が強み。AI向け半導体などの成長分野にも対応。
- 多角的な事業ポートフォリオ: 半導体、自動車、医療といった異なる市場で事業を展開しており、特定市場の変動リスクを分散しています。
- 先進技術と研究開発力: 長年の実績と研究開発により培われた高機能樹脂の技術は、製品の高付加価値化に貢献しています。
課題:
- 市場変動への依存: 半導体市場のサイクルや自動車市場の景気変動の影響を受けやすい側面があります。特に高機能プラスチックでは、北米自動車市場の停滞が売上減の一因となっています。
- 原材料価格の変動: 石油化学製品を主要な原材料とするため、原油価格や為替変動がコストに影響を及ぼす可能性があります。
- グローバル競争: 各事業分野でグローバルな競合他社との競争に常に晒されています。
3. 経営戦略と重点分野
同社は、継続的な収益構造改善を経営戦略の柱としています。
具体的な施策:
- 高付加価値製品へのシフト: 各事業セグメントにおいて、高機能や高性能を売りにした製品開発と販売に注力し、収益性の向上を目指しています。半導体分野ではAI向けなどの先端需要に対応する材料、QOL関連では医療機器やバイオ関連製品の育成が挙げられます。
- 販売価格への転嫁: 原材料価格の上昇などに対応するため、適切な販売価格への改定を進めています。
- 構造改革の推進: 不採算事業や製品の撤退などにより、事業ポートフォリオの最適化と効率化を図っています。高機能プラスチック事業での不採算品撤退などがその具体例です。
これらの取り組みを通じて、各事業セグメントの収益性改善と企業価値向上を目指す方針です。
4. 事業モデルの持続可能性
住友ベークライトの事業モデルは、多様な産業セクターに高機能材料や製品を提供することで、持続可能性を高めています。
収益モデル:
- 材料ソリューション提供型: 半導体、自動車、医療など最先端の技術を必要とする分野に対し、独自の樹脂加工技術を応用した材料や部品を提供し、収益を得ています。これにより、顧客との長期的な関係構築と高い参入障壁が期待できます。
- グローバル展開: 海外売上比率が高く、特定の地域に依存しないグローバルな供給体制は、地域経済のリスク分散に寄与します。
市場ニーズの変化への適応力:
- 半導体分野への強み: AIやIoTの進展に伴う半導体需要の拡大は、同社の主要事業である半導体関連材料分野にとって追い風となります。感光性材料や基板材料など、幅広い半導体関連製品を提供することで、進化するニーズへの対応力が高いと考えられます。
- 医療・バイオ分野の育成: クオリティオブライフ関連製品における医療機器や診断薬、バイオ関連製品は、高齢化社会の進展やヘルスケア意識の高まりを受け、中長期的な成長が期待される分野です。
- 環境・脱炭素への対応: 高機能材料の開発は、自動車の軽量化や電子機器の省エネ化など、環境負荷低減に貢献する可能性も持ち合わせています。
ただし、自動車市場の停滞や一部医療・バイオ分野での需要減など、個別の市場変動には引き続き適応が求められます。
5. 技術革新と主力製品
同社は、長年培ってきた樹脂加工技術と研究開発力を基盤に、各事業分野で独自性の高い技術革新を進めています。
技術開発の動向と独自性:
- 多様な樹脂技術の融合: フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ビニル樹脂など、多様な樹脂に対する深い知見と加工技術が強みです。これらの材料を複合化することで、新たな機能を持つ製品を生み出しています。
- 半導体材料の高機能化: 特に半導体封止材や感光性材料、LαZ®等の基板材料では、半導体の微細化、高集積化、放熱性向上といった技術課題に対応するための材料開発に注力しています。AI向け半導体需要の回復は、これらの高機能材料の需要増に直結します。
収益を牽引している製品・サービス:
- 半導体封止エポキシ樹脂成形材料: 半導体パッケージを保護する主要材料であり、同社の売上・収益を牽引する中核製品です。
- 感光性材料、ボンディングペースト、半導体基板材料: 半導体製造プロセスに不可欠な精密材料であり、半導体関連材料事業の成長を支えています。
- 医療機器・医薬品: クオリティオブライフ関連製品の中核であり、安定した収益源となっています。
6. 株価の評価
現在の株価5,220.0円について、主要な指標を用いて評価します。
– EPS(会社予想): 268.13円
– 会社予想PER: 19.47倍
– 業界平均PER: 20.4倍
– 実績PBR: 1.48倍
– 業界平均PBR: 1.1倍
– BPS(実績): 3,519.50円
PERは19.47倍と、業界平均の20.4倍と比較するとやや割安な水準にあります。一方で、PBRは1.48倍と、業界平均の1.1倍と比較するとやや割高な水準です。
PERは企業が将来生み出すと予想される利益に対して現在の株価がどの程度であるかを示すため、利益成長への期待が織り込まれている可能性があります。PBRは企業の純資産価値に対する株価の指標であり、実績ベースの純資産価値からはやや上振れている状況です。
両方の指標を総合すると、現在の株価は平均的な評価か、若干の割高感と割安感が混在している状態といえます。
7. テクニカル分析
現在の株価5,220.0円は、直近の株価推移および年初来高値・安値と比較して高値圏にあると考えられます。
– 年初来高値: 5,489円
– 年初来安値: 2,750円
– 50日移動平均線: 5,026.80円
– 200日移動平均線: 4,113.77円
現在の株価は年初来高値に迫る水準であり、50日移動平均線、200日移動平均線を大きく上回っています。これは直近で株価が上昇基調にあることを示しており、特に200日移動平均線からの乖離率は、中長期的な上昇トレンドを示唆しています。
直近の決算短信発表(11月4日)後も株価は大きく変動し、一時的に下落したものの、その後は持ち直しています。高値圏にあるものの、直近の出来高も増加傾向にあり、市場の関心が高い状態です。
8. 財務諸表分析
売上収益と利益の推移(連結)
| Breakdown | 3/31/2022 (実績) | 3/31/2023 (実績) | 3/31/2024 (実績) | 3/31/2025 (予想) | 過去12か月 (LTM) | 2026年3月期通期 (予想) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Total Revenue (百万円) | 263,114 | 284,939 | 287,267 | 304,773 | 304,773 | 310,000 |
| Gross Profit (百万円) | 80,406 | 81,353 | 85,710 | 93,550 | 93,550 | – |
| Operating Income (百万円) | 24,886 | 24,823 | 27,200 | 24,792 | 24,792 | 31,000 |
| Net Income (百万円) | 18,299 | 20,289 | 21,831 | 19,281 | 19,281 | 23,500 |
売上と利益の傾向:
- 売上収益: 過去数年間で着実に増加傾向にあります。2026年3月期も増収が予想されており、安定した成長を見せています。
- 営業利益: 2025年3月期(予想およびLTM)では一旦減少していますが、2026年3月期通期予想では31,000百万円と大幅な回復を見込んでおり、収益構造改善の成果が期待されます。
- 純利益: 売上収益と概ね連動して増加傾向にありましたが、2025年3月期(予想およびLTM)で一時的な減少が見られます。しかし、2026年3月期通期予想では23,500百万円と、過去最高水準を更新する見込みです。
主要指標 (直近):
- 粗利率 (過去12か月): 30.69% (=93,550千円 / 304,773千円)
- 営業利益率 (過去12か月): 9.98%
- 純利益率 (過去12か月): 6.44%
- ROE (過去12か月): 6.50%
- ROA (過去12か月): 4.45%
- 自己資本比率 (実績): 69.6%
- 流動比率 (直近四半期): 2.82倍
- D/Eレシオ (直近四半期): 10.20%
評価:
- 収益性: 営業利益率約10%は、素材・化学業界の中では比較的良好な水準と考えられます。粗利率も30%を超えており、製品の高付加価値化が進んでいることを示唆しています。
- 資本効率: ROE 6.50%、ROA 4.45%は、日本の製造業としては平均的な水準ですが、一層の資本効率改善の余地もあると考えられます。
- 財務健全性: 自己資本比率69.6%は非常に高く、財務基盤が極めて安定していることを示しています。流動比率2.82倍も高く、短期的な支払い能力に全く問題ありません。D/Eレシオ10.20%も非常に低く、借入金への依存度が低い強固な財務体質です。
キャッシュフロー (中間期: 2025年4月1日〜2025年9月30日):
- 営業活動によるCF: +18,228百万円(前年同期比では減少)
- 投資活動によるCF: -6,539百万円(前年同期比で支出は減少)
- 財務活動によるCF: -4,146百万円(配当支払いや借入金返済等)
- 現金及び現金同等物 (期末): 112,015百万円
営業CFは堅調にプラスを維持しており、主力事業でキャッシュを生み出す力があります。投資CFは積極的に設備投資を行っていることを示していますが、前年同期からは支出額が減少しています。財務CFは主に株主還元や債務返済に充てられており、潤沢な現金を背景に健全な財務運営が行われていると考えられます。
9. 株主還元と配当方針
住友ベークライトは、着実な株主還元を実施する方針です。
– 1株当たり配当(会社予想): 105.00円 (年間)
– 配当利回り(会社予想): 2.01%
– 配当性向: 42.46% (過去12か月の実績EPS 223.91円に対するフォワード配当110円で計算すると、約49.1%)
2026年3月期の年間配当は1株当たり105円を予想しており、これは2025年3月期の実績95円(記念配当5円含む)からの増配となります。配当性向も40%台と、利益成長と株主還元のバランスを考慮した水準といえます。
安定的に利益を確保しつつ、配当を増額している点は、株主への還元意欲を示すものと評価できます。
自社株買いに関する直近の情報は提供されていませんが、「自社(自己株口)」として6.51%の株式を保有していることから、過去に自社株買いを実施した実績があると考えられます。
10. 株価モメンタムと投資家関心
株価は直近で上昇傾向にあります。
2025年11月4日の決算短信発表後、一時的に変動が見られましたが、その後の数日で徐々に値を戻し、現在は5,220円と年初来高値に近い水準で推移しています。
50日移動平均線(5,026.80円)および200日移動平均線(4,113.77円)を大きく上回っており、特に200日移動平均線との乖離は、強い上昇モメンタムを示しています。
出来高は決算発表後の11月5日や11月4日に大きく増加しており(それぞれ101万株、150万株)、投資家の関心が高いことが伺えます。その後の出来高は落ち着いていますが、それでも安定した取引が行われています。
信用倍率3.03倍は、信用買い残が信用売り残の3倍程度あることを示し、買い方の勢いが優勢ですが、過熱感があるほどではないでしょう。
Quarterly Revenue Growth (前年比3.10%) や Quarterly Earnings Growth (前年比1.80%) といった直近の成長率も、投資家の期待を支える要因になる可能性があります。特に、半導体関連材料事業の好調な中間期決算は、今後の株価にポジティブな影響を与える要因となり得ます。
11. 総評
住友ベークライトは、半導体関連材料を中心に安定した事業基盤と高い技術力を持つ総合樹脂加工メーカーです。半導体封止材で世界トップクラスのシェアを誇り、AI関連用途の拡大は同社の成長を後押しすると予想されます。高機能プラスチック事業では構造改革を進め、QOL関連事業も展開することで、事業ポートフォリオの多角化とリスク分散を図っています。
財務基盤は非常に強固であり、自己資本比率の高さやD/Eレシオの低さは特筆すべき点です。売上は過去数年にわたり着実に増加しており、2026年3月期は大幅な増益を予想しており、収益性の改善に期待が持てます。
株価は年初来高値圏で推移しており、PERは業界平均よりやや割安、PBRはやや割高という評価です。しかし、半導体市場の回復や同社の収益改善期待が株価に織り込まれてきていると見られます。株主還元にも積極的で、安定的な配当を実施しています。
全体として、堅実な事業運営と強固な財務体質に裏打ちされた企業であり、半導体市場の成長を背景とした今後の収益拡大が期待される企業です。
12. 企業スコア
- 成長性: A
- 過去数年間の売上収益は着実に増加傾向にあり、2026年3月期も増収増益予想と堅調な成長が期待されます。直近の四半期売上成長率もプラスを維持しています。
- 収益性: A
- 過去12か月の営業利益率は約10%であり、2026年3月期通期予想では10%を超え、素材・化学業界の中では良好な水準にあります。高付加価値製品へのシフトが収益性向上に寄与しています。
- 財務健全性: S
- 自己資本比率69.6%、流動比率2.82倍、D/E比率10.20%と、いずれの指標も非常に優れており、極めて強固な財務基盤を有しています。
- 株価バリュエーション: B
- PER(会社予想)19.47倍は業界平均20.4倍よりやや割安ですが、PBR(実績)1.48倍は業界平均1.1倍よりやや割高です。業績の見通しや財務健全性を考慮すると、全体として平均的な評価と見込まれます。
企業情報
| 銘柄コード | 4203 |
| 企業名 | 住友ベークライト |
| URL | http://www.sumibe.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 素材・化学 – 化学 |
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