1. 企業情報
ペプチドリームは2006年に設立された、東京大学発のバイオ医薬品企業です。主な事業は、独自の「Peptide Discovery Platform System (PDPS®)」を用いたペプチド医薬品、ペプチド薬物複合体(PDC)、多機能ペプチド複合体(MPC)などの創薬開発(創薬開発事業)と、2018年に買収したPDRファーマ株式会社を中心とした放射性医薬品の研究開発、製造、販売(放射性医薬品事業)です。国内外の大手製薬企業との共同開発・提携を多数行っており、日本を代表する創薬ベンチャーの一つとして知られています。
2. 業界のポジションと市場シェア
同社は、独自の創薬プラットフォームPDPS®が大きな競争優位性です。PDPS®は、従来の医薬品では難しかった多様なターゲットに対する候補化合物の探索を可能にし、短期間で高品質な非標準ペプチドを創出できます。この技術力により、ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)、ノバルティス、イーライ・リリー、MSDなど、世界の主要な製薬企業と共同研究・技術ライセンス契約を締立しています。
放射性医薬品事業では、国内での開発・製造・販売の一貫体制を確立しており、診断薬から治療薬まで幅広い製品ラインナップを展開しています。新規の放射性医薬品市場(例:PSMA、FAPを標的とする診断薬・治療薬)の拡大が見込まれる中で、国内市場におけるプレゼンスを確立しています。具体的な市場シェアの数値は不明ですが、独自の技術と国内外での提携関係により、特定のニッチ市場で強い競争力を有しています。
3. 経営戦略と重点分野
同社の経営戦略は、以下の2つの事業を通して医薬品の創出を目指すことにあります。
– 創薬開発事業の強化と拡大:
* PDPS®プラットフォームの活用による新規プログラムの創出と、大手製薬企業との共同研究開発・技術ライセンス契約の推進。
* 前臨床段階から臨床開発段階へのプログラムを拡充し、将来のロイヤルティ収入の基盤を構築。
– 放射性医薬品事業の垂直統合と成長:
* PDRファーマを通じ、研究開発から製造、販売までを一貫して行う体制を強化。
* 診断用・治療用放射性医薬品の開発を加速し、市場投入を促進。新規製品の導入や臨床開発プログラムの推進(例: PSMA、FAP関連薬剤)。
* 千葉県かずさアカデミアパークに臨床開発・商用生産設備、川崎市殿町に新研究棟を建設する大規模な設備投資計画を進めており、製造・供給能力の強化と研究開発体制の拡充を図ります。
これらの戦略を通じて、ペプチドリームは中長期的な成長と持続的な収益基盤の確立を目指しています。
4. 事業モデルの持続可能性
ペプチドリームの事業モデルは、創薬開発事業における成功報酬型と、放射性医薬品事業における製品販売型のハイブリッドです。
* 創薬開発事業: 契約一時金、マイルストーン支払い、ロイヤルティ収入が主な収益源となります。このモデルは、大型契約の獲得や臨床試験の進捗によって多額の収入を得られる可能性がある一方で、それらのタイミングに依存するため、短期間での収益の変動性が高いという特性があります。2025年第3四半期累計の決算では、創薬開発事業の契約一時金やマイルストーン収入の減少が、全体の減収減益(損失計上)の主要因となりました。
* 放射性医薬品事業: 診断薬・治療薬の製造・販売による安定した収益が期待されます。M&Aにより獲得したこの事業は、創薬開発事業の収益変動を補完する役割を担う可能性があります。
両事業が有機的に連携し、グローバル市場でのニーズに対応する医薬品を提供し続けることで、事業モデルの持続可能性を高めています。ただし、創薬開発の長期性と不確実性、放射性医薬品市場における競合環境の変化への適応力が重要な要素となります。
5. 技術革新と主力製品
技術革新:
同社の核となる技術革新は、独自のPeptide Discovery Platform System (PDPS®)です。このプラットフォームは、膨大な数の非天然型のアミノ酸を取り込んだ特殊なペプチドライブラリから、特定のターゲットに高い親和性を持つペプチド候補化合物を高速かつ効率的に探索することを可能にします。これにより、従来の技術では困難だった標的タンパク質の細胞内結合部位や膜タンパク質へのアクセスを可能にし、経口投与可能なペプチド、ペプチド薬物複合体(PDC)、多機能ペプチド複合体(MPC)など多様なモダリティの開発を推進しています。
主力製品・開発パイプライン:
現時点では、創薬開発事業における多くのパイプラインが臨床試験段階または前臨床段階にあり、将来の大型製品の創出を目指しています。
* 放射性医薬品の開発パイプライン:
* 悪性神経膠腫向け「64Cu-ATSM」(臨床第3相試験中)
* 前立腺がん向け「177Lu/64Cu-PSMA I&T」(臨床試験開始へ)
* 肝細胞がん向け「225Ac/68Ga-GPC3」(前臨床〜臨床開発検討)
* FAPを標的とした診断・治療薬「177Lu/68Ga-FAP」(ノバルティスが全世界権利)
* その他、国内では既存の診断薬・治療薬を多数販売。
* 非放射性医薬品(創薬)の開発パイプライン:
* 先端巨大症向け「ALXN2420」(アストラゼネカが第1相完了、第2相へ)
* 多発性骨髄腫向け「BHV-1100」(バイオヘイブンと共同開発、第1相完了)
* COVID-19関連向け「PA-001」(ペプチエイドが第1相完了)
* 肥満・筋疾患向けマイオスタチン阻害薬(経口ペプチド、前臨床段階)
* アレルギー疾患向けKIT阻害薬(アリヴェクシスと共同、候補化合物同定)
これらのパイプラインの成功が、将来の収益を牽引する重要な要素となります。
6. 株価の評価
現在の株価1,630円(2025年11月13日終値)に対して、主要な指標は以下の通りです。
* PER(会社予想): 13.96倍
* EPS(会社予想): 116.75円
* PBR(実績): 4.00倍
* BPS(実績): 407.05円
同社のPER(会社予想13.96倍)は、医薬品業界の平均PER(27.8倍)と比較して低い水準にあります。これは一見割安に見えますが、2025年12月期通期予想のEPS(116.75円)が、直近の過去12ヶ月(LTM)のEPS(-38.85円)や2025年第3四半期累計のEPS(-24.88円)から大きく回復することを前提としているため、この通期予想の達成には第4四半期での大幅な収益計上が必要であり、そこに不確実性があることを市場が織り込んでいる可能性も考えられます。
一方、PBR(実績4.00倍)は、業界平均PBR(1.4倍)を大きく上回っています。これは、同社が持つ独自の技術力や数多くの開発パイプラインによる将来の成長期待が、資産価値に対して高く評価されていることを示唆している可能性があります。
7. テクニカル分析
直近の株価推移を見ると、本日(2025年11月13日)の終値は1,630円であり、年初来高値2,629円、年初来安値1,452円のレンジ内で推移しています。現在の株価は年初来安値に近い水準であり、高値圏にあるとは言えません。
過去10日間の株価は1,500円台を中心に変動しており、本日急騰したものの、全体的な傾向としては比較的低水準で推移していると考えられます。大量の出来高を伴って上昇するため、短期的な注目度は高いですが、中期的なトレンドの転換には、今後の業績や具体的なニュースが必要となる可能性があります。
8. 財務諸表分析
| 指標 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年予想 | LTM (過去12ヶ月) | 2025年第3四半期累計 | 2025年通期予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 (百万円) | 9,422 | 26,852 | 28,712 | 46,676 | 19,086 | 12,857 | 49,000 |
| 営業利益 (百万円) | 4,066 | 8,980 | 6,773 | 21,113 | -6,161 | -4,058 | 21,600 |
| 純利益 (百万円) | 2,573 | 7,554 | 3,035 | 15,014 | -5,032 | -3,217 | 15,100 |
| 営業利益率 | 43.1% | 33.4% | 23.6% | 45.3% | -32.3% | -31.6% | 44.1% |
| ROE(実績) | — | — | 30.92% | — | — | — | — |
| 自己資本比率(実績) | — | — | 61.2% | — | — | 67.8% | — |
- 売上収益: 創薬開発事業の契約一時金やマイルストーン収入のタイミングに大きく左右され、変動幅が大きいです。2022年、2024年(予想)は大幅な増収が見込まれていますが、2025年第3四半期累計では前年同期比で大幅な減収となりました。ただし、2025年通期では49,000百万円の売上収益を予想しており、第4四半期に大幅な収益計上が見込まれています。
- 利益: 売上収益と同様に、利益水準も大きく変動します。直近の過去12ヶ月および2025年第3四半期累計では損失を計上していますが、2025年通期では大幅な黒字転換を予想しています。これは、創薬ビジネス特有の収益計上タイミングの影響が大きいと言えます。
- キャッシュフロー: 2025年第3四半期累計では、営業活動によるキャッシュフローは△12,544百万円とマイナスで、現金及び現金同等物は減少しています。これは、主に税金支払いや研究開発投資によるものです。しかし、期末の現金及び現金同等物は30,530百万円と潤沢であり、財務の安定性を示しています。
- 収益性分析(ROE, 営業利益率): ROEは実績で30.92%と非常に高く、効率的な資本活用ができていることを示唆しています。営業利益率は、変動が大きいものの、通期予想では44.1%と高い水準を見込んでいます。
- 財務健全性分析(自己資本比率): 自己資本比率は2025年9月末時点で67.8%と非常に高く、財務基盤は極めて健全です。流動比率も約473%と高く、短期的な資金繰りにも問題がないことを示しています。
9. 株主還元と配当方針
同社は現在、配当を実施していません(配当利回り0.00%、1株配当0.00円)。これは、創薬開発企業としての特性上、事業の成長に必要な研究開発投資や設備投資(かずさアカデミアパーク、殿町新研究棟など)を優先しているためと考えられます。自社株買いなどの株主還元策についても、現時点での開示情報からは確認できません。
10. 株価モメンタムと投資家関心
株価は、本日(2025年11月13日)大幅高となりましたが、直近では年初来安値圏での推移が続いていました。出来高は増加傾向にあり、投資家の関心が高まっている可能性があります。
株価に影響を与える主な要因としては、以下の点が挙げられます。
* 創薬開発の進捗: 新規の共同研究契約締結や、開発パイプラインにおける臨床試験の成功、主要なマイルストーン達成などのニュースは、株価にポジティブな影響を与えやすいです。
* 決算発表: 特に創薬開発事業の契約一時金やマイルストーン収入の計上タイミングにより、四半期ごとの業績が大きく変動するため、決算内容に対する投資家の反応が株価に直結します。2025年通期予想の達成状況に注目が集まります。
* 放射性医薬品事業の成長: 買収した放射性医薬品事業の収益貢献度が高まることや、新たな診断薬・治療薬の導入・開発進捗も注目されます。
* 信用取引動向: 信用買残が信用売残を大幅に上回っており(信用倍率21.75倍)、将来の株価上昇期待に基づく買いが多い状況ですが、同時に需給面での潜在的な重圧となる可能性もあります。
11. 総評
ペプチドリームは、世界トップレベルのペプチド創薬プラットフォーム(PDPS®)と、国内の放射性医薬品事業を両輪として成長を目指すバイオファーマ企業です。独自の技術を強みに大手製薬企業との提携を通じて多数の開発パイプラインを有しており、中長期的な成長ポテンシャルは高いと考えられます。
直近の2025年第3四半期累計決算では、創薬開発事業の収益変動により大幅な減収・損失を計上しましたが、通期の会社予想では大幅な増収増益を見込んでおり、第4四半期での挽回が焦点となります。財務基盤は非常に健全であり、大規模な設備投資計画も手元資金で賄う方針であることから、資金面での懸念は低いと言えます。
株価は年初来安値圏にありますが、通期予想PERは業界平均を下回っており、予想通りの業績達成の場合には割安感が生じる可能性があります。ただし、事業特性上、収益の変動性が高く、臨床開発の不確実性や予想達成へのリスクには留意が必要です。無配当であり、株主還元よりも成長投資を優先するフェーズにあります。
12. 企業スコア
-
成長性: B
(LTM売上成長率はマイナスですが、2025年通期予想では増収を見込んでいます。ただし、第3四半期累計実績が前年同期比で大幅な減収となっており、業績の変動が大きいため、中立的な評価とします。)
* 収益性: B(直近の営業利益率はマイナスですが、2025年通期予想では高い営業利益率およびEBITDA率を見込んでいます。創薬事業の収益計上タイミングにより大きく変動する性質があり、中立的な評価とします。)
* 財務健全性: S(自己資本比率67.8%、流動比率約473%と非常に高く、潤沢な現金も確保されており、財務基盤は極めて健全です。)
* 株価バリュエーション: B(PERは業界平均と比較して割安水準ですが、PBRは業界平均と比較して割高です。また、2025年通期予想EPSの未達リスクを考慮すると、現在のPERが完全に割安と一概に判断することはできません。)
企業情報
| 銘柄コード | 4587 |
| 企業名 | ペプチドリーム |
| URL | http://www.peptidream.com/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 医薬品 – 医薬品 |
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このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.3)」によって自動生成されました。
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