1. 企業情報
那須電機鉄工株式会社は1929年創業の東京都新宿区に本社を置く企業です。主な事業は、電力・通信、交通インフラに関わる資材の設計、製造、販売、および工事施工です。同社は特に電力鉄塔の分野で大手であり、架線金物やメッキ技術にも強みを持っています。
事業セグメントとしては、「電力・通信インフラ事業」が売上構成比の82%を占め、次に「交通インフラ事業」が18%を占めています（2025年3月期実績）。
2. 業界のポジションと市場シェア
那須電機鉄工は「電力鉄塔の大手」「電力鉄塔代表格」と称されるように、電力インフラ分野において主要な地位を確立しています。特に、高腐食性めっき、溶融亜鉛アルミニウム合金めっき、溶融亜鉛めっきといった高度な表面処理技術に強みがあり、これが競争優位性となっています。
しかし、同社を取り巻く市場環境としては、異常気象の頻発化、地政学的リスク、原材料価格の高騰、人手不足によるコスト上昇といった課題があります。特に通信業界では設備投資が縮小傾向にあり、これが受注に影響を与える可能性があります。具体的な市場シェアデータは提供されていませんが、電力鉄塔における長年の実績と技術力は強固な基盤と言えます。
3. 経営戦略と重点分野
同社は2029年の創立100周年に向けて「2027中期経営計画」を策定し、現在、その初年度として取り組みを進めています。中期経営計画の詳細な内容は提供情報からは不明ですが、社会インフラの整備・維持・更新という安定的な需要を背景に、強みである電力・通信関連事業と交通インフラ事業の強化を図っていくものと推測されます。また、水素貯蔵合金システムなどの新技術開発も行っており、将来の成長分野への投資も視野に入れているものと考えられます。
4. 事業モデルの持続可能性
同社の事業は、電力・通信・交通といった社会インフラに不可欠な基盤資材の提供と施工であり、安定した需要が見込まれます。特に電力鉄塔や架線金物、高速道路関連設備などは、国の政策や地域経済に強く結びついており、景気変動の影響を受けにくい特性があります。独自のメッキ技術は製品の長寿命化に貢献し、メンテナンス需要の取り込みにもつながります。
一方で、原材料価格の高騰や熟練技術者の不足といった外部要因が収益性を圧迫する可能性があり、持続的な成長のためにはこれらへの対応が重要となります。また、通信業界における設備投資の縮小傾向も注視すべき点です。水素関連事業のような次世代技術への投資は、将来の事業の多角化と持続可能性を高める要素となり得ます。
5. 技術革新と主力製品
同社の主力製品は、電力鉄塔、通信鉄塔、送電線や通信線に用いられる架線金物、高速道路の標識や防音壁支持構造物、鉄道架線金具など多岐にわたります。
技術革新の側面では、特に表面処理技術に定評があります。高腐食性めっき、溶融亜鉛アルミニウム合金めっき、溶融亜鉛めっき、低光沢処理、リン酸亜鉛処理、各種塗装など、厳しい環境下での耐久性を高めるための技術を有しています。
また、将来のエネルギー分野を見据え、空気加熱型水素貯蔵合金システムや水素貯蔵合金タンクといった水素関連製品の開発も進めており、新たな収益源への可能性も探っています。
6. 株価の評価
現在の株価15,900.0円に対し、各種指標は以下の通りです。
– PER（会社予想）: 12.47倍
– 業界平均PER: 11.3倍
– PBR（実績）: 0.61倍
– 業界平均PBR: 0.5倍
– EPS（会社予想）: 1,274.99円
– BPS（実績）: 26,273.62円
現在の株価は、会社予想EPSに基づくPERでは業界平均をやや上回り、実績PBRも業界平均よりやや高い水準にあります。このことから、現在の株価は業界平均と比較して若干割高な評価を受けている可能性があります。ただし、PBRが1倍を下回っていることから、純資産価値と比較すると割安感があるとも言えます。
7. テクニカル分析
現在の株価15,900.0円は、年初来高値および52週高値の15,900円と同一であり、高値圏で推移しています。
– 年初来安値: 10,480円
– 50日移動平均: 15,150円
– 200日移動平均: 13,698.25円
株価は50日移動平均線、200日移動平均線をともに上回っており、短期・中期的に上昇トレンドを示唆しています。直近10日間の株価推移を見ても、堅調に推移しており、強い上昇モメンタムが感じられます。
8. 財務諸表分析
- 売上高: 過去数年間は220億円〜230億円台で概ね横ばい傾向でしたが、直近12か月は約238億円と前期比で緩やかな成長を見せています（Quarterly Revenue Growth +4.10%）。しかし、2026年3月期の通期連結業績予想では、売上高210億円（前期比△8.3%）と減収を予想しています。
- 利益:
- 営業利益: 過去数年の24億円〜28億円で推移した後、直近12か月では27.8億円と堅調です。営業利益率（過去12か月）は15.25%と高水準です。
- 純利益: 過去数年は18億円〜25億円台で推移。直近12か月は18.8億円。直近四半期の純利益成長率が前年比42.60%と大きく伸びており、利益面での回復基調がうかがえます。
- キャッシュフロー: データなし。
- ROE: 直近12か月で6.99%と、着実に資本を効率的に活用し収益を上げていると言えます。
- ROA: 直近12か月で4.24%です。
- 財務健全性:
- 自己資本比率: 直近四半期で68.3%（前期末66.1%から改善）と非常に高く、財務基盤が極めて安定していることを示します。
- 流動比率: 直近四半期で3.50倍（349%）と非常に高く、短期的な支払い能力に優れています。
- D/E（負債資本倍率）: 直近四半期で10.60%と低く、負債依存度が非常に低い健全な財務状態です。
9. 株主還元と配当方針
那須電機鉄工は、安定的な株主還元策を実施しています。
– 配当利回り（会社予想）: 2.83%
– 1株配当（会社予想）: 450.00円
– 配当性向: 27.84%
配当性向が比較的低く抑えられており、内部留保による事業投資や財務基盤の強化にも配慮した安定的な配当方針であると見られます。5年平均配当利回り2.04%と比較しても、現在の利回りは高い水準にあります。直近の自社株買いについては明確な記載はありませんが、自己株式を保有しています。
10. 株価モメンタムと投資家関心
過去52週間の株価変動率は+35.79%で、S&P500の変動率13.81%を大きく上回っています。これは、同社の株価に対して市場の期待が高まっていることを示唆しています。
現在の株価は年初来高値を更新しており、50日移動平均線、200日移動平均線を明確に上回って推移していることから、強い上昇モメンタムの中にあります。出来高は500株程度と比較的少ないものの、信用買残が4,600株に対して信用売残が0株という状況は、買い圧力が優勢であることを示します。
直近の好決算（直近四半期の前年比増収増益）が株価を押し上げる要因となった可能性があり、今後もインフラ投資の動向や原材料価格の安定化、中期経営計画の進捗などが株価に影響を与える主要な要因となるでしょう。
11. 総評
那須電機鉄工は、電力・通信、交通といった社会インフラを支える基盤事業を核とし、安定した需要と独自の高いメッキ技術によって堅固な事業基盤を築いています。非常に強固な財務体質（高い自己資本比率と流動比率、低い負債比率）を誇り、収益性も直近で改善傾向にあります。株価は年初来高値を更新し、強い上昇モメンタムを示すなど、市場からの評価は高まっています。一方で、通期業績予想では減収減益を見込んでおり、今後の事業環境の変化や中期経営計画の進捗には引き続き注目が必要です。配当性向も安定しており、株主還元への意識も高い企業と言えます。
12. 企業スコア
| 観点 | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| 成長性 | C | LTM売上は横ばい〜微減傾向にあり、2026年3月期通期連結業績予想では売上高△8.3%と減収を見込んでいるため。 |
| 収益性 | A | 粗利率約21%、過去12か月の営業利益率15.25%と、一般的な製造業と比較して高い水準であり、直近の利益率改善も見られるため。 |
| 財務健全性 | S | 自己資本比率68.3%、流動比率3.50倍、Total Debt/Equity比率10.60%と、極めて健全な財務体質であるため。 |
| 株価バリュエーション | C | PER12.47倍、PBR0.61倍ともに業界平均（PER11.3倍、PBR0.5倍）をやや上回っており、割安感は低いと判断されるため。 |
企業情報
| 銘柄コード | 5922 |
| 企業名 | 那須電機鉄工 |
| URL | http://www.nasudenki.co.jp/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 建設・資材 – 金属製品 |
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