1. 企業情報
リニカルは、製薬会社から新薬開発業務を受託するCRO(Contract Research Organization)専業企業です。特に、臨床試験におけるフェーズ2(少人数での有効性・安全性確認)とフェーズ3(大規模治験による最終確認)に強みを持っています。がん、中枢神経系、免疫系といった専門性の高い疾患領域や再生医療分野にも事業を展開しています。グローバルに事業を展開しており、海外売上比率が約68%(2025年3月期)と高く、米国、欧州、アジアなどに拠点を持ち、国際共同治験も手掛けています。2025年4月より、報告セグメントをCRO事業の単一セグメントに変更しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
CRO業界は、製薬会社による新薬開発のアウトソーシングニーズを背景に、堅調な成長が見込まれる市場です。リニカルは、がんや中枢神経系などの特定疾患領域における専門性の高さと、国際共同治験に対応できるグローバルネットワークを強みとしています。これにより、一般的なCROと比較して、専門性の高い案件の獲得において競争優位性を有していると考えられます。
しかし、国内外に競合企業が多数存在し、特に大手CROは規模の経済で優位に立っています。直近では、米国での大型案件終了や新規受注の遅延により売上が減少する傾向にあり、競争環境下での安定的な案件獲得が課題となっています。
3. 経営戦略と重点分野
決算短信からは具体的な数値目標を含む中期経営計画は明示されていませんが、以下の点が経営戦略の重点分野として示されています。
* グローバル事業の強化: 米国市場を中心に既存顧客の拡大とバイオテック企業からの新規案件獲得に注力し、グローバル営業を強化する方針です。
* 経営資源配分の最適化: 2025年4月からの単一セグメント化により、経営資源の効率的な配分と業績評価のプロセスを整備し、中期目標達成に向けた意思決定の迅速化を図ります。
* 受注残高の積み上げ: 今後の売上高の基礎となる受注残高は11,900百万円とされており、これを着実に売上に繋げ、さらに積み上げることを目指しています。
* 地域別戦略の最適化: 日本市場では稼働率向上と費用管理、米国では新規顧客開拓、欧州では米国等との連携による案件拡大、アジアでは成長国での深耕など、各地域の特性に応じた戦略を展開しています。
4. 事業モデルの持続可能性
CRO事業は、新薬開発の複雑化、長期化、コスト増といった製薬会社の課題解決に貢献する点で、中長期的な市場ニーズが存在します。リニカルの専門性の高い疾患領域への特化やグローバル展開は、市場の変化への適応力とリスク分散に寄与すると考えられます。
しかし、収益モデルは大型案件の獲得に依存する側面があり、案件の獲得状況や進行状況が業績に大きく影響します。直近の業績悪化は、主要案件終了後の新規受注不足が主要因であり、安定的な案件のパイプライン確保と、売上計上までのリードタイム管理が課題です。また、繰延税金資産の取り崩しは、将来の収益見込みに対する慎重な見方を示唆しており、収益力の回復と安定化が持続可能性向上の鍵となります。
5. 技術革新と主力製品
リニカルの事業は特定の「製品」ではなく、新薬開発プロセス全般を支援する「サービス」が主力です。その中核となる「技術」は、がんや中枢神経系など専門性の高い領域における臨床開発の深い知見と経験、および国際共同治験を円滑に進めるためのグローバルなオペレーション能力です。
具体的には、治験計画の立案、モニタリング、データ管理、統計解析、薬事申請支援など、多岐にわたる専門サービスを提供しています。これらのサービスを通じて、製薬会社の開発期間短縮と効率化に貢献しています。主力サービスを通じて得られる収益は、主にフェーズ2・3の臨床開発受託費用です。
6. 株価の評価
- 株価: 301.0円 (2025年11月18日終値)
- PER(会社予想): 会社予想EPSが-75.27円(赤字予想)のため、算出できません。
- PBR(実績): 1.12倍
- 業界平均PBR(1.2倍)と比較すると、やや割安な水準にありますが、現在の赤字予想を考慮すると、PBRのみで割安と判断することは困難です。
- BPS(実績): 267.76円
- 現在の株価301.0円は、一株当たり純資産(BPS)の約1.12倍の水準です。
7. テクニカル分析
2025年11月18日時点の株価301.0円は、直近の株価推移において下降トレンドにあります。
* 年初来高値367円、年初来安値258円に対し、現在の株価は年初来安値に近い水準にあります。
* 50日移動平均線(343.12円)と200日移動平均線(327.63円)をともに大きく下回っており、短期的・中期的にも株価は軟調な推移を示しています。
* 直近の11月17日、18日には、それぞれ160,600株、52,700株と比較的大規模な出来高を伴い株価が急落しており、これは2025年11月14日に発表された下方修正を含む決算内容が嫌気されたものと推測されます。
8. 財務諸表分析
- 売上高: 2023年3月期に12,517百万円を計上した後、減少傾向にあります。過去12か月間で10,437百万円、2026年3月期の通期予想では9,350百万円と大幅な減収を見込んでおり、成長性、特に米国での大型案件終了の影響が顕著です。
- 利益: 2023年3月期をピークに大幅な悪化傾向にあります。
- 営業利益: 2023年3月期1,257百万円から、2024年3月期726百万円に減少し、過去12か月で-584百万円の営業損失、2026年3月期通期予想では-1,350百万円の営業損失と大幅な赤字転落となっています。
- 純利益: 同様に、2023年3月期1,004百万円から、2024年3月期338百万円に減少し、過去12か月で-539百万円の純損失、2026年3月期通期予想では-1,700百万円の純損失と、収益性が急激に悪化しています。
- キャッシュフロー(2025年9月30日中間期末):
- 営業活動によるCFは△1,071百万円と、本業で資金を創出できておらず、悪化が目立ちます。
- 現金及び現金同等物の期末残高は5,400百万円と前期末から減少しています。
- 収益性指標: ROE(過去12か月)-17.67%、ROA(過去12か月)-3.56%、営業利益率(過去12か月)-18.22%と、いずれも大幅なマイナスであり、収益性は非常に低い状況です。
- 財務健全性:
- 自己資本比率: 41.9%(2025年9月30日)と、比較的健全な水準を維持しています。
- 流動比率: 1.51倍(2025年9月30日)であり、短期的な支払い能力に一定の余裕があります。
- Total Debt/Equity: 34.83%(2025年9月30日)と、負債比率は低く、財務健全性は比較的高いと言えます。ただし、営業キャッシュフローの悪化が継続する場合、将来的には流動性や健全性の懸念に繋がる可能性もあります。
- 繰延税金資産の408百万円取り崩しは、将来の課税所得見込みに関する財務上の懸念を示唆しています。
9. 株主還元と配当方針
- 配当利回り(会社予想): 5.32%
- 1株配当(会社予想): 16.00円
- 配当性向(過去12か月): 100.13%
- 2026年3月期の中間配当は0.00円ですが、期末配当予想として16.00円を維持する方針です。しかし、通期業績予想が大幅な赤字であるため、予想配当性向は計算上100%を大幅に超えることとなります。これは理論上、過去の利益剰余金や自己資本を取り崩して配当を支払うことを意味しており、現在の配当水準の持続性には不透明感があります。自社株買いに関する言及は今回の情報にはありませんでした。
10. 株価モメンタムと投資家関心
決算発表後の株価は急落しており、下降トレンドが鮮明です。株価の直近の変動は、下落の勢いが強いことを示唆しています。
信用買残が103,600株と買い越しであり、信用売残が0であるため信用倍率は0.00倍です。信用買い残が累積している状況で株価が下落しているため、将来的な信用整理による売り圧力が加わる可能性も考えられます。
投資家の関心は、業績の急激な悪化と配当の持続可能性に集中していると推測されます。
11. 総評
リニカルは、専門性の高いCROサービスをグローバルに提供する企業ですが、直近の業績は非常に厳しい状況にあります。米国での大型案件終了と新規受注の遅延により売上が大幅に減少し、2026年3月期は大幅な営業損失および純損失を計上する見込みです。収益性は急激に悪化しており、営業キャッシュフローもマイナスに転じています。一方、自己資本比率などの財務健全性指標は現時点では比較的維持されていますが、継続的な赤字は将来的な資金繰りにも影響を及ぼす可能性があります。高水準の配当を維持する方針は示されていますが、赤字経営の中での配当継続の持続性には懸念が残ります。株価は決算発表を受けて急落し、下降トレンドにあります。今後の焦点は、グローバルでの新規案件獲得、特に米国市場での顧客基盤回復と、早期の収益改善および安定した黒字化への道筋に集約されるでしょう。
12. 企業スコア
- 成長性: C
- LTM売上成長率(YoY)が大きく減少しており、2026年3月期の通期予想では売上が大幅に減少する見込みであるため。
- 収益性: D
- 営業利益率、ROE、ROAがいずれも大幅なマイナスであり、過去12か月および通期予想で大幅な赤字を計上しているため。
- 財務健全性: A
- 自己資本比率41.9%、流動比率1.51倍、D/Eレシオ34.83%と、主要な財務健全性指標は一般的に健全とされる水準を維持しているため。ただし、営業キャッシュフローのマイナスや繰延税金資産の取り崩しは留意が必要です。
- 株価バリュエーション: C
- PERは赤字のため評価不能。PBR1.12倍は業界平均とほぼ同水準ですが、現状の大幅な赤字と将来の不確実性を考慮すると、割安とは判断しにくい水準であるため。
企業情報
| 銘柄コード | 2183 |
| 企業名 | リニカル |
| URL | http://www.linical.co.jp/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 情報通信・サービスその他 – サービス業 |
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