1. 企業情報
ダイナミックマッププラットフォーム株式会社は、自動運転や先進運転支援システム（ADAS）向けに高精度3次元地図データ（HDマップ）を提供する企業です。現実世界をデジタル空間に再現する高精度3Dデータプラットフォームの開発・提供を日本と北米を中心に展開しています。政府主導のもと、国内自動車メーカーの出資を受けて設立されました。用途は自動車分野のHDマップに留まらず、スマートシティ、MaaS（Mobility as a Service）、物流、インフラ管理、防災・減災、研究機関、エンターテイメントなど多岐にわたります。事業構成はプロジェクト型が約84%、ライセンス型が約16%で、海外売上比率が約52%（2025年3月期計画）とグローバル展開を進めています。
2. 業界のポジションと市場シェア
自動運転車の普及に伴い、高精度3次元地図データは不可欠な基盤技術として需要が拡大しています。同社は日本国内の高速道路や幹線道路のHDマップデータにおいて、国内自動車メーカーが出資する形で設立された経緯があり、高い市場ポジションを確立しています。北米市場での展開も進めており、世界の主要地域でのカバレッジ拡大を目指しています。競争優位性としては、政府や大手自動車メーカーとの連携による強固な基盤と、高精度データの継続的な更新・提供能力が挙げられます。課題としては、高精度マップデータ作成には膨大な投資と技術力が必要であり、先行投資による費用負担が課題となっています。
3. 経営戦略と重点分野
経営陣は、高精度3次元データの構築・提供をコア事業とし、自動運転・ADAS向けHDマップの国内外での展開を加速しています。中期経営計画においては、以下の点が重点分野として挙げられます。
– HDマップの搭載拡大: 自動車メーカーへのHDマップ搭載台数の増加を目指します。
– 非自動車分野への展開: スマートシティやMaaS、インフラ管理など、非自動車向けアプリケーションでの高精度3Dデータ活用を推進し、新たな収益源を確立します。
– ロールアップ型M&Aの推進: 国内外で測量ネットワーク構築のためのM&Aを積極的に行い、データ収集能力とカバレッジを強化します。直近では2025年10月に日本海測量設計株式会社を子会社化しています。
– 先行投資の継続: 技術開発投資や事業拡大に向けた先行投資を継続し、将来の成長への布石を打ちます。
4. 事業モデルの持続可能性
同社の事業モデルは、プロジェクトベースでのデータ提供（プロジェクト型）と、継続的なデータ利用によるライセンス収入（ライセンス型）の組み合わせです。自動運転やADAS、スマートシティの市場ニーズは今後も拡大が予想されるため、高精度3次元データへの需要は持続的に高まる見込みです。特に自動車業界は安全規制強化と自動化技術の進展が需要を後押しし、非自動車分野への応用も広がりを見せています。一方で、現時点では先行投資フェーズにあり、収益が費用を上回る体制を早期に確立することが持続可能性を高める上での重要な課題です。
5. 技術革新と主力製品
同社は高精度3次元データの開発において先進的な技術を有しています。
– 高精度3次元地図データ（HDマップ）: 自動運転やADAS車両の自車位置特定や走行パス生成に不可欠なデータで、主力製品です。
– 3Dmapspocket: 全国規模の高速道路・自動車道・主要幹線道路の高精度3次元点群データを閲覧・分析できるデータプラットフォームです。
– Spatial ID: 3次元位置情報に基づいて動的な情報と静的な情報を統合し、位置情報サービスを提供するプラットフォームです。
技術開発の独自性としては、大規模な測量データを効率的に収集・処理し、高品質なHDマップを生成する技術、そしてそれを様々なアプリケーションに展開できるプラットフォーム技術が挙げられます。
6. 株価の評価
- BPS（実績）: (連結) 315.77円
- PBR（実績）: (連結) 2.63倍
- 現在の株価: 831.0円
現在の株価831.0円に対し、PBRは2.63倍です。業界平均PBRが3.5倍であるため、業界平均と比較すると割安な水準にあります。ただし、同社は現状赤字であり、PERは算出されていません（EPSもマイナス）。そのため、PBRのみでの評価となります。
7. テクニカル分析
現在の株価は831.0円です。
– 年初来高値: 1,706円
– 年初来安値: 828円
– 直近10日間の株価: 960円台から830円台へと下降傾向にあり、本日828円の安値を記録しています。
– 50日移動平均: 1001.14円
– 200日移動平均: 1121.01円
現在の株価は年初来安値圏にあり、50日および200日移動平均線を大きく下回っています。直近の株価推移も下降トレンドを示しており、全体的には安値圏で推移していると判断できます。
8. 財務諸表分析
- 売上高:
- 2023年3月期: 3,681百万円
- 2024年3月期: 5,567百万円 (+51.2% YoY)
- 2025年3月期 (過去12ヶ月実績): 7,465百万円 (+34.1% YoY)
- 2026年3月期 第2四半期 (中間期実績): 2,451百万円 (+9.0% YoY)
売上高は着実に増加傾向にありますが、2026年3月期の通期予想では7,000百万円と前期比で減少を見込んでいます。
– 利益:
* 営業利益は過去3期および過去12ヶ月すべて大きく赤字です（2025年3月期 LTM: -1,139百万円）。
* 当期中間期も営業損失△1,142百万円、親会社株主に帰属する中間純損失△1,163百万円と赤字が続いていますが、前年同期と比べると損失幅は縮小傾向にあります。
– キャッシュフロー:
* 営業活動によるCFは、当期中間期で△592百万円とマイナスです。
* 投資活動によるCFは、無形固定資産の取得等で△882百万円とマイナスです。
* 財務活動によるCFは、長期借入金返済等で△1,942百万円とマイナスです。
* 結果として、現金及び現金同等物は期首から3,447百万円減少し、期末残高は4,936百万円となっています。事業拡大のための先行投資が継続しており、現金残高は減少傾向にあります。
– ROE（実績）: (連結) -22.44%
* 赤字が続いているため、ROEもマイナスとなっています。
– 自己資本比率（実績）: (連結) 55.9% (直近四半期では61.6%)
* 非常に高い水準を維持しており、財務健全性は良好です。
– 流動比率（直近四半期）: 197%
* 流動資産が流動負債の約2倍あり、短期的な支払い能力も問題ありません。
– 有利子負債: 総負債/自己資本比率 (D/E) は31.07%と比較的低く、負債負担は大きくありません。
全体的に、売上は伸びているものの、先行投資や事業拡大のための費用が大きく、依然として赤字の状態が続いています。キャッシュフローもマイナスですが、自己資本比率や流動比率といった財務健全性指標は高い水準にあります。
9. 株主還元と配当方針
同社は、配当利回り0.00%、1株配当（会社予想）0.00円であり、配当は実施していません。現状は事業拡大と成長のための再投資を優先する方針であると推測されます。自社株買いなどの株主還元策についても、開示情報からは見当たりません。
10. 株価モメンタムと投資家関心
直近の株価は下降トレンドにあり、52週高値から大きく下落しています。年初来安値を更新する水準で推移しており、株価の勢いは弱い状態です。
– 出来高: 直近10日間では、20万～70万株程度で推移しており、特に下降局面では出来高が増加する傾向が見られます。
– 信用買残: 1,352,300株と大きい一方、信用売残は0株であり、信用倍率も0.00倍です。信用買い残が高い水準にあるため、売り圧力が潜在的に存在している可能性があります。
– 機関投資家保有割合: 13.87%（インサイダー保有66.03%）と比較的高水準の機関投資家が関心を示していますが、直近の株価軟調を鑑みると、投資家の関心は低下、もしくは様子見の状況にある可能性があります。
株価に影響を与える要因としては、自動運転市場の動向、非自動車分野における新規案件獲得状況、M&Aの進捗と統合効果、そして何よりも黒字化への進捗が挙げられます。
11. 総評
ダイナミックマッププラットフォームは、自動運転やスマートシティの進展を背景に、高精度3次元地図データという将来性のあるニッチ市場で独自の地位を築いています。政府や大手自動車メーカーからの出資を受けている点は競争優位性であり、売上も着実に成長しています。一方で、事業拡大のための先行投資が大きく、依然として赤字が続いており、早期の黒字化が喫緊の課題です。財務基盤は自己資本比率が高く健全ですが、キャッシュフローはマイナスで、現金残高の推移には注意が必要です。株価は年初来安値圏で軟調に推移しており、市場は事業の収益化を注視していると考えられます。
12. 企業スコア
- 成長性: A
- LTM売上成長率（YoY）は34.1%と高い伸びを示しており、評価は高い。ただし、2026年3月期の通期予想は減収を見込んでいる点は留意が必要。
- 収益性: D
- 粗利率は17.68%ですが、営業利益率が-15.26%、EBITDA率が-9.35%と全ての主要な利益指標がマイナスであるため、収益性は弱いと評価。
- 財務健全性: A
- 自己資本比率55.9%（直近四半期61.6%）、流動比率197%、D/E比率31.07%と、いずれも健全性の基準を大きく上回るため、高く評価。
- 株価バリュエーション: A
- PERは赤字のため算出不可。PBRは2.63倍で、業界平均3.5倍と比較すると割安な水準にあります。
企業情報
| 銘柄コード | 336A |
| 企業名 | ダイナミックマッププラットフォーム |
| URL | https://www.dynamic-maps.co.jp/ |
| 市場区分 | グロース市場 |
| 業種 | 情報通信・サービスその他 – 情報・通信業 |
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