1. 企業情報
名古屋鉄道は、中部地方を地盤とする大手私鉄グループであり、鉄道事業を中核に多角的な事業展開をしています。主な事業には、旅客輸送を行う交通事業、物流等を担う運送事業、マンション開発や賃貸運営を行う不動産事業、ホテルやレジャー施設（明治村など）を運営するレジャー・サービス事業、百貨店や商業施設を運営する流通事業、および航空関連サービス事業などがあります。各事業を通じて、地域の生活基盤を支え、活性化に貢献しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
名古屋鉄道は「中部最大の私鉄」と評価されており、中部地方における交通インフラの中核を担う企業として強固な地域基盤を持っています。鉄道事業においては、この地域での圧倒的なシェアを背景に安定した収益基盤を確立しています。
多角化された事業ポートフォリオは、交通事業の需要変動リスクを分散する競争優位性となります。一方で、地域経済の動向に業績が左右されやすい点や、運送事業・流通事業の一部に赤字セグメントがある点は課題として挙げられます。
3. 経営戦略と重点分野
提供された情報からは、具体的な経営戦略や中期経営計画の詳細は読み取れません。なお、同社は2026年3月期通期で増収を見込むものの、営業利益、経常利益、純利益では減益を予想しており、事業構造改革やコスト管理が今後の経営における重要課題となる可能性があります。
4. 事業モデルの持続可能性
名古屋鉄道の事業モデルは、交通事業による安定したストック収益と、不動産開発やレジャー施設運営によるフロー収益を組み合わせたものです。地域密着型であるため、人口減少やリモートワークの普及など、社会構造の変化に対する適応力が重要となります。不動産事業は収益貢献度が高く、都市開発と連携した事業展開は持続可能性を高める要因です。しかし、運送事業や流通事業の収益改善や、コロナ禍からの回復後の新たな成長戦略が今後の持続可能性を左右する可能性があります。
5. 技術革新と主力製品
提供された情報からは、具体的な技術革新や独自性の高い技術開発に関する情報は読み取れません。主力事業は交通事業であり、旅客輸送サービスが主な収益源となっています。
6. 株価の評価
現在の株価1,582.5円を各種指標で評価します。
* PERによる評価:
* 会社予想EPS: 107.10円
* 会社予想PER: 14.78倍
* 業界平均PER: 13.9倍
* 現在の株価1,582.5円は、会社予想PER14.78倍となり、業界平均PER13.9倍と比較すると、やや割高な水準にあると言えます。
* PBRによる評価:
* 実績BPS: 2,390.27円
* 実績PBR: 0.66倍
* 業界平均PBR: 1.0倍
* 現在の株価1,582.5円は、実績PBR0.66倍となり、業界平均PBR1.0倍と比較すると、割安な水準にあると言えます。
PERではやや割高、PBRでは割安と評価が分かれる状況です。
7. テクニカル分析
直近の株価推移を見ると、本日高値1,597円、本日安値1,582.5円であり、直近10日間で1,665円から1,582.5円へと下落傾向にあります。
年初来高値が1,851円、年初来安値が1,575円であることから、現在の株価1,582.5円は年初来安値に近い水準に位置しています。また、50日移動平均線（1,712.10円）および200日移動平均線（1,701.52円）を大きく下回っており、短期的には下降トレンドにあることを示唆しています。
8. 財務諸表分析
名古屋鉄道の過去数年間の財務諸表は以下の傾向を示しています。（記載の金額は百万単位）
* 売上高（Total Revenue）:
* 2022年3月期: 490,919
* 2023年3月期: 551,504
* 2024年3月期: 601,121
* 過去12ヶ月/2025年3月期予想: 690,720
コロナ禍からの回復期には継続的に増加傾向にありました。しかし、直近の2026年3月期第2四半期の中間期連結営業収益は前年同期比+0.3%と横ばいであり、通期予想も前期比+0.6%と売上成長の鈍化が見られます。
- 利益:
- 営業利益は2022年3月期の2,932から2024年3月期の34,751へと大幅に改善していましたが、過去12ヶ月では42,077と引き続き増加しています。ただし、2026年3月期中間期は17,167（前年同期比△29.0%）、通期予想も34,000（前期比△19.2%）と減益を見込んでいます。親会社株主に帰属する中間純利益も47.8%減と大幅な減少となりました。
- 利益率:
- 過去12ヶ月の粗利率は15.12%、営業利益率は6.09%です。利益率は改善傾向にありましたが、直近の中間期においては、営業利益率が5.12%に低下しています。
- ROE（実績）: 8.39% (過去12ヶ月で5.14%)。直近中間期実績では、親会社株主に帰属する中間純利益11,263百万円と期末純資産503,468百万円を基にした年換算ROEは約4.4%（単純に中間純利益を2倍して純資産で割った場合）となり、低下傾向にあります。
- ROA（実績）: 1.51% (過去12ヶ月)。
- 自己資本比率: 実績で31.9%、直近四半期で30.8%であり、一般的に健全とされる40%以上と比較するとやや低い水準にあります。
- 流動比率: 直近四半期で0.70（70%）であり、短期的な支払い能力に留意が必要です。
- 負債資本倍率（Total Debt/Equity）: 直近四半期で129.49%と高水準であり、借入金が自己資本に対して多い状況です。
- キャッシュフロー: 過去12ヶ月の営業活動によるキャッシュフローは65.47Bとプラスですが、投資活動によるキャッシュフローは-138.25Bと大幅なマイナスであり、結果としてレバードフリーキャッシュフローも-138.25Bと大きくマイナスとなっています。これは大規模な設備投資が背景にあると考えられます。
9. 株主還元と配当方針
名古屋鉄道の配当利回り（会社予想）は2.53%、1株配当（会社予想）は40.00円です。配当性向は22.96%と、利益に対する配当の割合は比較的小さい水準です。これにより、内部留保による事業投資や財務体質の強化に資金を充てる方針である可能性があります。直近の配当予想では、中間配当なし、期末配当40円を予定しています。自社株買いに関する具体的な情報はありません。
10. 株価モメンタムと投資家関心
直近の株価は下落傾向にあります。年初来高値1,851円に対し、現在の株価は1,582.5円と安値圏にあります。信用取引を見ると、信用買残が前週比で大きく増加し、信用倍率も6.74倍と高い水準にあります。これは、将来の株価上昇を期待する買い方が増えていることを示唆していますが、同時に、将来の売り圧力となる可能性も秘めています。直近の業績予想の下方修正や利益の減少傾向が、株価への影響要因となっている可能性があります。
11. 総評
名古屋鉄道は、中部地方を基盤とする私鉄を核に、不動産、レジャー、流通など多岐にわたる事業を展開する企業です。コロナ禍からの経済活動再開に伴い、売上高は順調に回復・成長してきましたが、直近の2026年3月期中間期決算では、営業利益、経常利益、純利益がいずれも前年同期比で大幅な減益となり、通期予想も減益見通しとなっています。これは、運送事業などの一部セグメントの赤字、減価償却費の増加、支払利息の増加などが影響していると考えられます。
財務面では、自己資本比率が30%台、流動比率が0.70と、財務健全性には課題が見られます。多額の設備投資を継続しており、フリーキャッシュフローはマイナスの状態です。株価はPBRで業界平均を下回る割安感がありますが、PERではやや割高水準にあります。直近の株価は安値圏で推移しており、投資家の関心は今後の業績回復と利益構造の改善、財務体質の強化に向けられると推測されます。
12. 企業スコア
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成長性: C
LTM売上成長率（YoY）は14.9%、3年CAGRは11.9%と過去の回復基調は良好でしたが、2026年3月期の通期売上高予想は前期比+0.6%と成長が鈍化傾向にあります。さらに、中間期の実績および通期予想の営業利益・純利益が前年同期比で大幅な減益となる見込みであり、利益面での成長は停滞していると判断されるため。
* 収益性: B過去12ヶ月の営業利益率は6.09%ですが、直近の中間期で5.12%に低下しています。運輸・物流業界の平均的な水準と比較可能データはありませんが、一部事業での赤字計上があるものの、全体の粗利率は改善傾向にありました。現時点での利益率水準は中程度として評価します。
* 財務健全性: D自己資本比率が30.8%〜31.9%と、一般的に健全とされる水準（40%以上）を下回っています。流動比率も0.70と短期的な支払能力に課題が見られ、Total Debt/Equity比率も129.49%と高水準であるため、財務面には懸念があると判断されます。
* 株価バリュエーション: BPER（会社予想14.78倍）は業界平均（13.9倍）と比較してやや割高ですが、PBR（実績0.66倍）は業界平均（1.0倍）と比較して割安です。PBRの割安感が目立ちますが、利益の停滞と財務健全性の課題を考慮すると、平均的な水準と評価します。
企業情報
| 銘柄コード | 9048 |
| 企業名 | 名古屋鉄道 |
| URL | http://www.meitetsu.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 運輸・物流 – 陸運業 |
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