以下、内海造船(7018)の企業分析レポートを個人投資家向けにまとめました。
1. 企業情報
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事業内容などのわかりやすい説明
内海造船は、広島県尾道市に本社を置く造船会社です。旧日立造船系の因島工場をルーツに持ち、現在はカナデビア系の企業グループに属しています。主な事業は船舶の建造、修繕、改造で、フェリー、コンテナ船、プロダクトタンカー、バルクキャリア(ばら積み船)など、さまざまな種類の船舶を手掛けています。日本だけでなく、パナマやシンガポールなど海外でも事業を展開しています。船舶事業が連結売上高の99%を占め、その他に土木、建設、ホテル経営なども行っています。
* 主力製品・サービスの特徴中型ばら積み船、フェリー、RORO船(貨物フェリー)、LNG燃料フェリー、輸送船などが主力製品です。顧客の多様なニーズに応じた船舶を建造できる技術力と生産体制が特徴であり、特に環境規制強化に対応したLNG燃料船といった高付加価値船の開発・建造にも積極的に取り組んでいます。
2. 業界のポジションと市場シェア
- 業界内での競争優位性や課題について
多種多様な船舶の建造実績を持つことが強みです。特にフェリーやRORO船などの旅客船・特殊船建造には定評があります。一方で、造船業界全体は景気変動、為替変動、国際競争に常に晒されています。資機材価格や人件費の高騰は、同社の収益を圧迫する主要な課題となっています。特定の市場シェアに関するデータはありませんが、多様な船種への対応力で競争力を維持しています。
* 市場動向と企業の対応状況決算短信によると、新造船市場は様子見の状況にあり、資機材価格や人件費の値上がりが継続しています。改修船事業は反動減が見られます。これに対し、同社は効率的な生産性向上とコストダウンに注力し、LNG燃料フェリーや輸送船といった新分野の船舶建造を進めることで、市場の変化や環境規制強化に対応しようとしています。
3. 経営戦略と重点分野
- 経営陣が掲げるビジョンや戦略
直接的なビジョンステートメントはデータにありませんが、決算短信からは効率的な生産性向上、コストダウン、そしてLNG燃料フェリーなどの新分野への積極的な対応が主要な戦略であることが読み取れます。
* 中期経営計画の具体的な施策や重点分野データなし
* 新製品・新サービスの展開状況(決算短信参照)環境規制に対応したLNG燃料フェリーや輸送船などの「新分野」の船舶を5隻引き渡した実績があります。これは、環境負荷低減へのニーズが高まる市場において、同社が高付加価値船へのシフトを進めていることを示しています。
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力
同社の収益モデルは受注生産が主体であり、顧客ニーズや環境規制(EEXI、CIIなど)への対応が重要です。LNG燃料船への取り組みは、世界の低・脱炭素化トレンドに対応するためのものであり、高い適応力を持つことを示唆します。多様な船種を取り扱うことで、特定分野の需要変動リスクを分散しています。
* 売上計上時期の偏りとその影響造船業の特性上、船舶の建造には長期間を要し、売上は主に引き渡し時に計上されます。このため、特定の会計年度に売上が集中したり、逆に少ない時期が生じたりする可能性があります。単年度の業績だけで事業全体の健全性を判断するのが難しい場合がありますが、提供データからは具体的な売上計上時期の偏りに関する詳細な情報は確認できません。
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発の動向や独自性
詳細な技術開発に関する記述はありませんが、LNG燃料フェリーなどの建造実績は、環境技術への対応力と持続可能な船舶の提供に向けた技術開発を行っていることを示唆します。これは舶用燃料の低炭素化という世界的なトレンドに合わせた動きと見られます。
* 収益を牽引している製品やサービス連結売上高の99%を占める船舶事業が主要な収益源です。主力製品として、中型ばら積み船、フェリー、RORO船、そして環境対応型のLNG燃料フェリーなどが収益を牽引しています。
6. 株価の評価
- EPSやBPSに基づく計算等を用いて、現在の株価との比較
- 現在の株価: 16,800円
- EPS(会社予想 2025年3月期): 1,180.09円
- BPS(実績 2025年3月期): 7,047.49円
- PER(会社予想ベース): 14.24倍
- PBR(実績ベース): 2.38倍
- 業界平均PER/PBRとの比較
- 業界平均PER: 7.3倍
- 業界平均PBR: 0.5倍
同社のPER 14.24倍は業界平均の7.3倍を大きく上回り、PBR 2.38倍も業界平均の0.5倍を大幅に上回っており、数値上は割高な水準にあります。
7. テクニカル分析
- 直近の株価推移を参照して、現在の株価が高値圏か安値圏か
現在の株価16,800円は、直近10日間の株価レンジ(14,700円~17,170円)の上位に位置しており、本日高値17,170円は直近の期間では高値水準です。
* 年初来高値・安値との位置関係年初来高値: 20,540円、年初来安値: 4,090円。現在の株価は年初来安値から約4倍に上昇しており、年初来高値に近づく水準(約18%低い)にあるため、相対的に高値圏と言えます。
* 出来高・売買代金から見る市場関心度本日の出来高は202,500株、売買代金は約33.5億円です。直近10日間の平均出来高が約10.9万株であることと比較すると、本日の出来高は大幅に増加しており、市場の関心度が高いと考えられます。
8. 財務諸表分析
- 売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価
- 売上高: 2022年3月期の330億円から2024年3月期の463億円まで順調に増加しましたが、2025年3月期は446億円の減少予想です。ただし、過去12ヶ月の実績は435億円となっています。
- 営業利益: 2022年3月期の4億円台から2024年3月期には31億円まで大きく改善しましたが、2025年3月期は14億円の減益予想です。過去12ヶ月の実績は21億円です。
- 純利益: 2022年3月期の1億円台から2024年3月期には22億円まで大きく改善しましたが、2025年3月期は10億円の減益予想です。過去12ヶ月の実績は17億円です。
- ROE(過去12ヶ月): 15.92% (実績)
- ROA(過去12ヶ月): 3.19% (実績)
- 過去数年分の傾向を比較
2022年3月期から2024年3月期にかけて、売上高・利益ともに大幅な成長を遂げ、収益性が大きく改善しました。しかし、2025年3月期の会社予想では減収減益を見込んでいます。
* 四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)提供データには、2025年3月期通期予想に対する直近四半期(9/30/2025)の実績は記載されていません。しかし、「過去12ヶ月」の純利益17.43億円は2025年3月期の会社予想純利益10.17億円を既に上回っており、会社予想が保守的である可能性を示唆しています。
9. 財務健全性分析
- 自己資本比率、流動比率、負債比率の評価
- 自己資本比率(2025年3月期実績): 25.6% (一般的な目安である40%を下回り、やや低い水準です。)
- 流動比率(直近四半期): 1.11 (一般的な目安である200%を下回り、短期的な財務安全性にやや懸念があります。)
- Total Debt/Equity(直近四半期): 29.39% (D/Eレシオが100%未満であり、負債依存度は高くないと考えられます。)
- 財務安全性と資金繰りの状況
自己資本比率と流動比率は一般的な目安を下回っており、財務安全性にはやや注意が必要です。しかし、過去12ヶ月の営業キャッシュフローは63.9億円、フリーキャッシュフローは38.3億円とプラスであり、資金繰り自体は良好な状況です。
* 借入金の動向と金利負担総負債は約35.1億円で、約72百万円の金利費用がありますが、EBITDAと比較しても、金利負担が経営を圧迫する水準ではありません。
10. 収益性分析
- ROE、ROA、各種利益率の評価
- ROE(過去12ヶ月): 15.92%
- ROA(過去12ヶ月): 3.19%
- 営業利益率(過去12ヶ月): 8.41%
- 粗利率(過去12ヶ月): 8.00%
- 純利益率(過去12ヶ月): 4.01%
- 一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%等)との比較
ROE 15.92%は、一般的なベンチマークである10%を大きく上回っており、株主資本を効率的に活用していると評価できます。ROA 3.19%はベンチマーク5%を下回りますが、資本集約型の造船業としては許容範囲内です。
* 収益性の推移と改善余地2022年3月期から2024年3月期にかけて収益性は大きく改善しました。資機材価格高騰や人件費上昇が課題ですが、コストコントロールや高付加価値船へのシフトにより、さらなる収益性向上の余地があります。
11. 市場リスク評価
- ベータ値による市場感応度の評価
ベータ値 (5Y Monthly): -0.71。ベータ値がマイナスであることは、一般的に市場全体の動きと逆の傾向を示すことを意味します。この銘柄が市場全体の変動から独立した独自の要因で動く、または逆相関の動きを示す可能性を示唆しています。
* 52週高値・安値のレンジと現在位置52週高値: 20,540円、52週安値: 3,670円。現在の株価16,800円は、52週安値から大幅に上昇した高値圏に位置しています。
* 決算短信に記載のリスク要因(外部環境、為替、地政学等)
* 米国の通商政策
* ウクライナ情勢の長期化
* 資機材価格の値上がりこれらの外部環境要因は、事業活動の不確実性を高め、国際物流、原価水準、新造船需要に影響を与える可能性があります。
12. バリュエーション分析
- 業種平均PER/PBRとの比較
内海造船のPER(会社予想)14.24倍、PBR(実績)2.38倍は、業界平均PER 7.3倍、PBR 0.5倍と比較して大幅に割高な水準です。
* 目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用)
* 目標株価(業種平均PER基準、過去12ヶ月EPSを使用): 7,509円
* 目標株価(業種平均PBR基準): 3,524円現在の株価は、これらの業界平均に基づく目標株価を大きく上回っています。
* 割安・割高の総合判断現在の株価は、客観的な指標である業界平均PER/PBRと比較すると大幅に割高と判断されます。ただし、直近の業績改善や将来の成長への期待が株価に織り込まれている可能性も考えられます。
13. 市場センチメント分析
- 信用取引の状況(信用買残、信用倍率、需給バランス)
信用買残が311,100株に対し、信用売残は500株で、信用倍率は622.20倍と非常に高い水準です。これは株価上昇を期待する買い方が多数いることを示しますが、将来的な信用買いの決済売りによる株価への下落圧力が懸念される需給バランスです。
* 株主構成(経営陣持株比率、安定株主の状況)筆頭株主であるカナデビア(29.62%)と自社(自己株口 24.78%)が大きな割合を占めており、安定株主比率は比較的高いと考えられます。インサイダー保有比率が34.91%を占めています。
* 大株主の動向データに具体的な大株主の売買動向は記載されていませんが、カナデビアが主要株主として経営を支えている構造です。
14. 株主還元と配当方針
- 配当利回りや配当性向の分析
1株配当(会社予想)は40.00円、配当利回り(会社予想)は0.24%と非常に低い水準です。配当性向(過去12ヶ月)も3.89%と極めて低く、利益を成長投資や内部留保に優先的に回す方針であると推測されます。
* 自社株買いなどの株主還元策データに具体的な自社株買いの情報は記載されていませんが、「自社(自己株口)」保有があり、過去に自社株買いを実施した可能性があります。
* 株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策データなし
15. 最近のトピックスと材料
- 適時開示情報の分析(大型受注、新製品、拠点展開等)
2025年3月期決算短信において、新分野であるLNG燃料フェリーや輸送船など5隻を引き渡したことが言及されています。これは、環境規制強化という市場の大きなトレンドに対応した高付加価値船への取り組みが進んでいることを示しています。
* これらが業績に与える影響の評価LNG燃料フェリーの引き渡しは、中長期的な競争力強化と収益源の多様化に貢献する可能性があります。ただし、2025年3月期の業績予想では減収減益を見込んでおり、これらの取り組みが直ちに全体の収益を大きく押し上げるには至っていない可能性も考えられます。
16. 総評
内海造船は、多様な種類の船舶建造を手掛ける老舗造船会社であり、特にフェリーやRORO船、環境規制に対応したLNG燃料船に強みを持つ企業です。
全体的な見解:
同社は2024年3月期に大幅な増収増益を達成し、特にROEは高い水準にあり資本効率の改善が見られました。環境対応船へのシフトなど、将来の成長に向けた戦略も実行されています。
しかし、2025年3月期の会社業績予想は減益を見込んでおり、財務健全性(自己資本比率、流動比率)も一般的な目安より低い水準にあります。株価は年初来で大きく上昇し、PER、PBRは業界平均を大幅に上回っており、市場からの期待値が高いと見られます。高い信用倍率は、将来的な売り圧力を示唆する可能性があります。資機材価格高騰や地政学リスクといった外部環境要因も、事業運営上のリスクとなります。
* 強み: 多様な船種建造技術と実績、環境対応船への適応実績、直近の高い資本効率(ROE)。
* 弱み: 標準を下回る財務健全性、低い株主還元方針、変動の激しい造船市況への脆弱性。
* 機会: 環境規制強化による環境対応船の需要増加、船舶の老朽化に伴う代替需要。
* 脅威: 資機材・人件費の継続的な高騰、国際競争激化、景気後退や地政学リスク。
17. 企業スコア
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成長性:C
2024年3月期は好調でしたが、2025年3月期は減収減益予想であり、中長期的な安定成長には不透明感が残ります。新分野への展開は評価できるものの、業績全体への貢献はこれからです。
* 収益性:A過去12ヶ月のROEが15.92%と非常に高く、営業利益率も改善傾向にあります。資本集約型産業としては良好な収益性を実現していると判断できます。
* 財務健全性:C自己資本比率25.6%は、財務の安定性に懸念がある水準です。流動比率も一般的な目安を下回っており、改善の余地が大きいと評価します。
* 株価バリュエーション:DPER14.24倍、PBR2.38倍は業界平均と比較して著しく割高であり、現在の株価は財務指標から見ると過熱気味であると判断されます。
企業情報
| 銘柄コード | 7018 |
| 企業名 | 内海造船 |
| URL | http://www.naikaizosen.co.jp/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 自動車・輸送機 – 輸送用機器 |
バリュー投資分析(5年予測・参考情報)
現在の指標
| 株価 | 16,800円 |
| EPS(1株利益) | 1,180.09円 |
| 年間配当 | 0.24円 |
予測の前提条件
| 予想EPS成長率 | 3.0% |
| 5年後の想定PER | 14.2倍 |
5年後の予測値
| 予想EPS | 1,368.05円 |
| 理論株価 | 19,481円 |
| 累計配当 | 1円 |
| トータル価値 | 19,482円 |
現在価格での試算リターン
| 試算年率リターン(CAGR) | 3.01% (参考:低水準) |
目標年率ごとの理論株価(参考値)
| 目標年率 | 理論株価 | 安全域価格 | 現在株価との比較 |
|---|---|---|---|
| 15% | 9,686円 | 4,843円 | × 算出価格を上回る |
| 12% | 11,055円 | 5,527円 | × 算出価格を上回る |
| 10% | 12,097円 | 6,048円 | × 算出価格を上回る |
関連情報
証券会社
このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.4)」によって自動生成されました。
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