日本ペイントホールディングス(4612)企業分析レポート
東京証券取引所プライム市場に上場する日本ペイントホールディングス(証券コード: 4612)について、個人投資家の皆様にわかりやすく分析します。
1. 企業情報
日本ペイントホールディングスは、1879年創業の総合塗料メーカーです。自動車用塗料、汎用塗料(建築用など)、工業用塗料を主力事業とし、ファインケミカル製品も手掛けています。特にグローバル展開に強みを持ち、海外売上比率は90%に達し、アジア、欧米、オーストラリアなど広範な地域で事業を展開しています。
主力製品・サービスの特徴:
- 自動車用塗料: 自動車の表面処理から電着塗装、中間塗装、仕上げ塗装まで、自動車本体およびプラスチック部品向けの幅広い塗料を提供しています。
- 汎用塗料: 戸建住宅からマンション、オフィスビル、医療施設、学校などの大型施設まで、建築物全般に使用される塗料です。
- 工業用塗料: 建設機械、農業機械、外装建材、オフィス機器、家電製品など、多岐にわたる製品に使用されています。
- 海洋用塗料: 船底防汚塗料などの特殊塗料も提供しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
日本ペイントホールディングスは、総合塗料メーカーとして世界4位のポジションを確立しています。海外事業は中国をはじめとするアジア圏を中心に、欧米豪にも積極展開しており、多国籍企業としての事業基盤が強みです。
業界内での競争優位性や課題:
グローバルネットワークと多様な用途に対応する製品ラインナップが競争優位性となっています。特に市場成長の著しいアジア地域での強固な基盤は大きなプラス要因です。一方で、原油価格や為替変動、地政学リスクなどの外部環境要因が収益に影響を与える可能性があります。
市場動向と企業の対応状況:
塗料市場は、経済成長や建築・自動車生産の動向に左右されます。同社はM&Aを積極的に活用し、事業領域の拡大と地理的プレゼンスの強化を図っています。直近では2025年3月にAOC, LLCの買収を完了し、業績に寄与しています。これにより、特定の市場変動リスクを分散し、持続的な成長を目指しています。
3. 経営戦略と重点分野
経営陣が掲げるビジョンや戦略:
詳細なビジョンや戦略に関する記載は決算短信にはありませんが、M&Aを通じたグローバル事業の拡大と強化が主要な戦略であることがうかがえます。特に海外で90%を占める売上収益構成から、グローバル市場でのリーダーシップ確立を目指していると考えられます。
中期経営計画の具体的な施策や重点分野:
中期経営計画に関する具体的な施策の記載はありません。
新製品・新サービスの展開状況:
決算短信には新製品・新サービスの具体的な展開状況に関する記載はありません。
4. 事業モデルの持続可能性
同社の事業モデルは、多様な用途(自動車、建築、工業、海洋など)と広範な地域(日本、アジア、米州、欧州、豪州)に展開されているため、特定の市場や地域のリスクに過度に依存しない持続可能性が高いものと言えます。M&Aによる事業ポートフォリオの最適化も、市場ニーズの変化への適応力を高めています。
売上計上時期の偏りとその影響:
— (データなし)
5. 技術革新と主力製品
技術開発の動向や独自性:
— (データなし)
収益を牽引している製品やサービス:
事業セグメント別情報から、NIPSEA(アジア地域を主体とした事業)が売上収益2,218億円、営業利益347億円と最も大きな貢献をしています。次いでDuluxGroup(豪州、ニュージーランドなど)が売上収益898億円、営業利益72億円となっています。製品用途別では、汎用塗料が最も大きな売上構成比(64%)を占めており、収益の主要な柱となっています。
6. 株価の評価
現在の株価1,018.0円に対し、各種指標は以下の通りです。
* PER(会社予想): 14.76倍
* PBR(実績): 1.49倍
* EPS(会社予想): 68.97円
* BPS(実績): 685.34円
現在の株価はEPSに基づくPER(1018.0円 ÷ 68.97円 ≒ 14.76倍)とBPSに基づくPBR(1018.0円 ÷ 685.34円 ≒ 1.485倍)と概ね整合しています。
業界平均PER/PBRとの比較:
- 業界平均PER: 20.4倍
- 業界平均PBR: 1.1倍
同社のPER14.76倍は業界平均20.4倍と比較して割安水準にあります。
一方、PBR1.49倍は業界平均1.1倍と比較して割高水準にあります。これは、グローバル展開やM&Aによる事業拡大への期待、あるいは無形資産やのれんにより純資産が圧縮されている可能性も考慮されるべき点です。
7. テクニカル分析
直近の株価推移:
直近10日間の株価は、11月17日の1,003.5円から上昇傾向にあり、現在1,018.0円です。50日移動平均線1,003.59円よりは上に位置していますが、200日移動平均線1,088.21円よりは下回っています。
年初来高値・安値との位置関係:
- 年初来高値: 1,352円
- 年初来安値: 919円
現在の株価1,018.0円は、年初来高値からは約24.7%低い水準にあり、年初来安値からは約10.8%高い水準に位置しています。中長期的な目線では、安値圏からやや回復しているものの、依然として過去の高値からは距離がある状況です。
出来高・売買代金から見る市場関心度:
本日出来高は2,928,800株、売買代金は2,977,599千円でした。3ヶ月平均出来高4.47M株、10日平均出来高6.39M株と比較すると、本日の出来高は平均を下回っており、市場の関心度はやや低下している可能性があります。
8. 財務諸表分析
売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価:
過去5年間の損益計算書を見ると、総売上収益、粗利益、営業利益、純利益ともに一貫して増加傾向にあります。
* 売上収益: 2021年12月期 9,982億円 → 過去12か月 1兆6,740億円(約67.7%増)
* 営業利益: 2021年12月期 876億円 → 過去12か月 2,163億円(約147.0%増)
* 純利益: 2021年12月期 675億円 → 過去12か月 1,497億円(約121.6%増)
この成長は、積極的なM&A戦略とグローバル市場での事業拡大が奏功していることを示唆しています。
ROE(過去12か月)は10.79%、ROA(過去12か月)は4.35%で、収益性も比較的健全な推移です。
四半期決算の進捗状況(通期予想との比較):
2025年12月期第1四半期決算は、売上高4,057億円(前年同期比5.6%増)、営業利益514億円(同24.7%増)、親会社所有者に帰属する四半期利益370億円(同25.7%増)と、大幅な増収増益を達成しました。
通期予想(売上収益1兆8,200億円、営業利益2,450億円、親会社所有者に帰属する当期利益1,620億円)に対する進捗率は、売上収益22.3%、営業利益21.0%、親会社所有者に帰属する当期利益22.8%であり、概ね順調なスタートと言えます。特に買収したAOC, LLCの業績寄与が貢献しています。
9. 財務健全性分析
自己資本比率、流動比率、負債比率の評価:
- 自己資本比率(実績): 51.8% – 50%以上の高い水準であり、財務基盤は安定していると言えます。
- 流動比率(直近四半期): 0.94 – 1を下回っているため、短期的な支払い能力にはやや注意が必要です。手元現預金は3,496億円と潤沢ですが、総負債1.42兆円に対しては相対的に低い可能性があります。
- 負債比率(Total Debt/Equity): 87.44% – M&Aを積極的に行っているため、一時的に負債が増加し、この比率が上昇することは考えられます。自己資本比率が高いことから、一定の範囲内でコントロールされている可能性があります。
借入金の動向と金利負担:
金利費用は過去5年間で増加傾向にあります(2021年:59億円 → 過去12か月:244億円)。これは事業拡大のための借入増加を示唆しており、今後の金利動向が業績に与える影響に留意が必要です。
10. 収益性分析
ROE、ROA、各種利益率の評価:
- ROE(過去12か月): 10.79% – 投資家の期待に応えるベンチマークとされる10%を上回っており、株主資本を効率的に活用して利益を生み出していると評価できます。
- ROA(過去12か月): 4.35% – ベンチマークとされる5%をわずかに下回りますが、大規模な資産を保有する製造業としては妥当な水準とも考えられます。
- Operating Margin(過去12か月): 14.90% – 営業利益率は高く、事業の収益性が良好であることを示しています。
- 粗利率(Gross Profit / Total Revenue): 過去12か月 687,859百万 / 1,674,005百万 = 41.1% – 比較的高い粗利率を維持しており、製品競争力があることを示唆しています。
収益性の推移と改善余地:
過去数年で売上高、各段階利益が増加しており、収益性は着実に改善しています。M&Aによるシナジー効果や各地域での効率化が、さらなる収益性向上に寄与する可能性があります。
11. 市場リスク評価
ベータ値による市場感応度の評価:
— (データなし)
52週高値・安値のレンジと現在位置:
52週高値は1,352円、52週安値は919円です。現在の株価1,018.0円は、52週高値から約24.7%下落した位置にあり、52週安値からは約10.8%上昇した位置にあります。レンジの中ではやや下限に近い水準と言えます。
決算短信に記載のリスク要因(外部環境、為替、地政学等):
決算短信には、業績に影響を与える外部要因(外部環境、為替、地政学等)に関する具体的なリスク要因の記載はありません。ただし、グローバル企業であるため、これらの要因が業績に影響を与える可能性は常にあります。
12. バリュエーション分析
業種平均PER/PBRとの比較:
- 同社PER(会社予想): 14.76倍
- 業種平均PER: 20.4倍
- 同社PBR(実績): 1.49倍
- 業種平均PBR: 1.1倍
目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用):
- 業種平均PER基準の目標株価: 68.97円(EPS)× 20.4倍(業界平均PER)= 約1,407円
- 業種平均PBR基準の目標株価: 685.34円(BPS)× 1.1倍(業界平均PBR)= 約754円
割安・割高の総合判断:
PER基準では現在の株価は業界平均より割安と判断できますが、PBR基準では割高と判断されます。これは、同社がグローバルに展開し、M&Aによる事業拡大を行っていることから、無形資産やのれんなどの影響でPBRが高くなる傾向にあるため、一概に割高とは言えない側面もあります。成長性を考慮すると、PERが割安な点は魅力的な可能性があります。
13. 市場センチメント分析
信用取引の状況(信用買残、信用倍率、需給バランス):
- 信用買残: 2,282,300株
- 信用売残: 154,600株
- 信用倍率: 14.76倍
信用倍率が10倍を超えており、信用買いが信用売りに比べて大幅に多い状況です。これは将来的な売り圧力となる可能性をはらんでおり、需給はやや悪化していると言えます。
株主構成(経営陣持株比率、安定株主の状況):
筆頭株主はニプシー・インターナショナル(香港)で54.55%を保有しており、非常に安定した大株主が存在します。これにより、経営は安定していると考えられます。経営陣持株比率は個別データが記載されていないため不明です。
大株主の動向:
— (データなし)
14. 株主還元と配当方針
配当利回りや配当性向の分析:
- 配当利回り(会社予想): 1.57%
- 1株配当(会社予想): 16.00円
- 配当性向: 25.10%
配当利回り1.57%は、特段高い水準ではありませんが、配当性向25.10%は比較的低く、利益を内部留保して成長投資に回していることがうかがえます。今後、利益成長に伴う増配の余地はあると考えられます。
自社株買いなどの株主還元策:
— (データなし)
株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策:
— (データなし)
15. 最近のトピックスと材料
2025年12月期第1四半期決算において、2025年3月に買収完了したAOC, LLCの業績寄与が主要なトピックスとして挙げられています。この買収は、既に同四半期の増収増益に貢献しており、通期業績にもポジティブな影響が予想されています。M&Aによる積極的な事業拡大戦略が着実に成果として現れている状況です。
16. 総評
日本ペイントホールディングスは、グローバルに事業を展開する総合塗料メーカーであり、積極的なM&Aを通じて継続的な成長を実現しています。
全体的な見解:
過去数年間、売上高・利益ともに着実に成長しており、直近の四半期決算も好調に推移しています。特に海外事業が大きく貢献しており、グローバル市場での競争力は高いと言えます。財務健全性は自己資本比率が高く安定していますが、流動比率や負債比率にはM&Aによる影響が見られ、今後のバランスシートの動向には注意が必要です。株価評価はPERでは割安感があるものの、PBRでは割高感もあります。
* 成長性: グローバル市場での堅調な需要とM&A戦略による継続的な成長が期待されます。
* 収益性: ROEはベンチマークを上回り、営業利益率も高く、収益力は良好です。
* 株価水準: PERは業界平均より割安であり、長期的な視点での投資妙味がある可能性があります。ただし、PBRは業界平均より割高である点も考慮が必要です。
* リスク: 原材料価格の変動、為替変動、M&Aに伴う負債増、信用買い残の多さによる需給悪化リスクには留意すべきです。
強み・弱み・機会・脅威(SWOT分析):
- 強み (Strengths):
- 世界4位の総合塗料メーカーとしての高い市場ポジション。
- 海外売上比率90%を誇るグローバル展開力と多角的な事業ポートフォリオ。
- 過去数期にわたる売上高・利益の安定した成長。
- 高い自己資本比率による財務安定性。
- M&Aによる成長戦略の実行力。
- 弱み (Weaknesses):
- 流動比率が1を下回っており、短期的な資金繰りに潜在的な懸念。
- 信用買い残が多く、将来的な売り圧力となる可能性。
- 大規模M&Aによる有利子負債の増加と金利負担の増大傾向。
- 機会 (Opportunities):
- 成長著しいアジア市場における事業拡大余地。
- M&Aによるさらなる事業領域・地域ポートフォリオの強化。
- 技術開発による高付加価値製品の創出(詳細データなし)。
- 脅威 (Threats):
- 原材料価格の変動やエネルギーコストの上昇。
- 為替変動や地政学リスクなどの外部環境要因。
- 金利上昇による借入コストの増加。
- 市場における競争激化。
17. 企業スコア
- 成長性: A (売上高、利益ともに継続的な成長。M&Aによる事業拡大も積極的。)
- 収益性: A (ROE 10.79%は良好。営業利益率も高く、利益も増加傾向。)
- 財務健全性: B (自己資本比率51.8%は優良だが、流動比率が1以下、D/Eが高い点は注意が必要。M&Aによる負債増が背景か。)
- 株価バリュエーション: B (PERは割安だが、PBRは割高。総合的に見て平均並みと評価。)
企業情報
| 銘柄コード | 4612 |
| 企業名 | 日本ペイントホールディングス |
| URL | http://www.nipponpaint-holdings.com/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 素材・化学 – 化学 |
バリュー投資分析(5年予測・参考情報)
現在の指標
| 株価 | 1,018円 |
| EPS(1株利益) | 68.97円 |
| 年間配当 | 1.57円 |
予測の前提条件
| 予想EPS成長率 | 3.0% |
| 5年後の想定PER | 14.8倍 |
5年後の予測値
| 予想EPS | 79.96円 |
| 理論株価 | 1,180円 |
| 累計配当 | 9円 |
| トータル価値 | 1,189円 |
現在価格での試算リターン
| 試算年率リターン(CAGR) | 3.15% (参考:低水準) |
目標年率ごとの理論株価(参考値)
| 目標年率 | 理論株価 | 安全域価格 | 現在株価との比較 |
|---|---|---|---|
| 15% | 591円 | 296円 | × 算出価格を上回る |
| 12% | 675円 | 337円 | × 算出価格を上回る |
| 10% | 738円 | 369円 | × 算出価格を上回る |
関連情報
証券会社
このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.4)」によって自動生成されました。
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