エストラスト(証券コード:3280)の企業分析レポートを、個人投資家の皆様向けにわかりやすく解説します。

1. 企業情報

株式会社エストラストは、山口県下関市を拠点に、主に不動産分譲、不動産管理、不動産賃貸事業を展開する企業です。主力の不動産分譲事業では、分譲マンション「Ovision Mansion」や分譲戸建住宅の企画・開発・販売を手がけています。特に山口県内ではマンション開発でトップクラスの実績を持ち、最近では福岡をはじめとする九州エリアにも事業を拡大しています。省エネ型住宅の開発に強みを持つほか、単身者向け物件への参入も進めています。同社は2017年に西部ガスホールディングスの傘下に入り、安定した経営基盤を有しています。

2. 業界のポジションと市場シェア

エストラストは山口県内においてマンション開発で首位の地位を確立しており、地域に根差した強固な顧客基盤を持っています。親会社である西部ガスホールディングスの傘下であることは、資金調達や事業連携において競争優位性をもたらす可能性があります。
市場動向としては、日本の住宅市場は住宅ローン金利の上昇が懸念される一方で、政府の住宅支援策や賃金上昇により需要は底堅く推移すると見られています。しかし、建築資材費の高騰、建設労働者の不足、円安による原材料価格の上昇といった全般的な課題に直面しており、これらコスト増をいかに販売価格に転嫁し、利益を確保していくかが課題となります。

3. 経営戦略と重点分野

決算短信には中期経営計画の具体的な内容は明示されていませんが、同社の事業展開から以下の戦略がうかがえます。

  • 事業エリアの拡大: 山口県での実績とブランド力を背景に、成長が見込まれる福岡など九州エリアへの事業展開を加速しています。
  • 商品力の強化: 省エネ型マンションの提供や、単身者向け物件への参入など、市場の多様なニーズに対応した商品ラインナップの拡充を進めています。
  • 事業ポートフォリオの安定化: 主力の不動産分譲事業に加え、ストック型ビジネスである不動産管理・賃貸事業を強化し、収益基盤の安定化を図っています。

新製品・新サービスの展開状況については、具体的な記述はありません。

4. 事業モデルの持続可能性

エストラストの収益モデルは、売上高の大部分を占める不動産分譲事業(約89%)に大きく依存しています。この事業は、物件の完成・引渡し時期に売上が計上されるため、四半期ごとの業績が大きく変動しやすい特性があります。景気変動や金利動向、建築コストの変動が直接的に収益に影響を与えるため、これらの市場ニーズや外部環境の変化への適応力が重要です。不動産管理・賃貸事業は安定収益源ですが、現在のところ全体に占める割合は小さいです。省エネ型住宅や単身者向けといった市場ニーズに応える取り組みは、事業モデルの持続可能性を高める要素となり得ます。

5. 技術革新と主力製品

技術革新に関する具体的な詳細な情報はありませんが、同社は分譲マンション開発において「省エネ型に強み」を持っていると説明されています。これは、エネルギー効率の高い設計や設備を導入することで、入居者の光熱費負担軽減や環境負荷低減に貢献するものです。
収益を牽引している主力製品は、分譲マンションブランドである「Ovision Mansion」シリーズです。

6. 株価の評価

  • 現在の株価: 1,039.0円
  • PER(会社予想): 4.83倍
  • PBR(実績): 0.60倍

現在の株価は、会社予想のEPS(一株当たり利益)に基づくPER(株価収益率)が約4.83倍、実績のBPS(一株当たり純資産)に基づくPBR(株価純資産倍率)が約0.60倍です。
不動産業界の平均PERが11.3倍、平均PBRが0.9倍であることと比較すると、エストラストのPER、PBRはいずれも業界平均を大きく下回っており、現在の株価は割安な水準にあると評価できます。

7. テクニカル分析

現在の株価1,039円は、年初来高値1,220円に対して約15%低い水準にあります。一方で、年初来安値710円からは約46%上昇しています。直近の株価推移を見ると、50日移動平均線1,095.56円を下回っていますが、200日移動平均線1,015.89円は上回っています。これは、短期的な調整局面にあるものの、中長期的には上昇トレンドを維持している可能性を示唆しています。
本日の出来高は8,100株、売買代金は8,468千円であり、過去の平均的な水準と比較して市場の関心度は低いと考えられます。

売上高・利益の推移(年度別)

  • 売上高: 直近12か月実績は29,167百万円で、前年度以前と比較して大幅に増加しています。2025年2月期の実績も19,218百万円と堅調に推移しています。
  • 営業利益: 直近12か月実績は3,374百万円で、こちらも増加傾向にあります。
  • 純利益: 直近12か月実績は2,263百万円で、同様に増加傾向です。

主要指標の評価

  • ROE(株主資本利益率): 実績15.00%(過去12か月は23.92%)。
  • ROA(総資産利益率): 過去12か月で5.75%。

これらの指標は、一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%)を上回っており、資本や資産を効率的に活用して利益を生み出している現状を示しています。

四半期決算の進捗状況(2026年2月期第2四半期)

  • 売上高: 通期予想の70.0%
  • 営業利益: 通期予想の77.4%
  • 純利益: 通期予想の80.5%

第2四半期(中間期)時点で通期予想に対して非常に順調な進捗を示しており、期末への物件引渡し集中を考慮しても、通期予想達成の可能性は高いと判断されます。

9. 財務健全性分析

  • 自己資本比率:
    • 実績: 21.7%
    • 直近四半期(中間期): 28.5%
      中間期で改善していますが、一般的な目安とされる40%を下回ります。不動産業界は固定資産や在庫への投資が大きく、借入金が多い傾向があるため、自己資本比率が低めに出ることが一般的です。
  • 流動比率: 170.3%(直近四半期)。100%を大きく超えており、短期的な債務返済能力は良好です。
  • 負債比率(Total Debt/Equity): 219.95%(直近四半期)。自己資本に対する負債の割合は高いです。
  • 借入金: 中間期で短期・長期合わせ約216.5億円の借入金があり、金利負担が存在します。親会社が西部ガスホールディングスであるため、資金調達面で一定の安定性はあると推測されます。

10. 収益性分析

  • ROE(過去12か月): 23.92%と、一般的なベンチマーク10%を大きく上回り、非常に高い収益性を示しています。
  • ROA(過去12か月): 5.75%と、一般的なベンチマーク5%を上回っており、資産の活用効率も良好です。
  • 営業利益率(過去12か月): 3.21%ですが、2026年2月期中間期の営業利益率は10.5%と大きく改善しました。不動産事業の特性上、物件引渡しのタイミングで変動が大きいため、中間期の高い利益率が通期でも維持できるか注目されます。
  • 粗利率(過去12か月): 約20.5%。

全体として、エストラストは高い収益性を有していますが、営業利益率の安定性向上が今後の課題と言えます。

11. 市場リスク評価

  • ベータ値: 0.41(5年間の月次データ)。この数値は、市場全体の変動と比較して株価の変動が小さいことを示しており、市場リスクに対する感応度が低いと評価できます。
  • 52週高値・安値のレンジ: 52週高値1,220円、52週安値679円。現在の株価1,039円は、このレンジの中間よりやや高値寄りです。
  • 決算短信に記載のリスク要因:
    • 住宅ローン金利上昇: 住宅需要の減退や販売価格に影響を与える可能性があります。
    • 建築コスト・労務費の高騰: 建築資材費の継続的な高騰や、建設労働者の不足および人件費の上昇は、開発コストを押し上げ、利益を圧迫する要因となります。
    • 為替変動: 円安が進行した場合、海外からの原材料調達コストが増加するリスクがあります。
    • プロジェクト引渡の遅延: 天候不順や資材調達難、人手不足などによるプロジェクトの遅延は、売上計上時期の大幅なズレや業績の下振れにつながる可能性があります。

12. バリュエーション分析

  • 業種平均PER: 11.3倍
  • 業種平均PBR: 0.9倍

現在のエストラストのPER(4.83倍)およびPBR(0.60倍)は、いずれも不動産業界平均と比べて低い水準にあります。
算出されている目標株価は以下の通りです。

  • 目標株価(業種平均PER基準): 4,241円
  • 目標株価(業種平均PBR基準): 1,563円

現在の株価1,039円は、これらの目標株価レンジと比較して大幅に割安であると判断されます。特に実績PBRが1倍を割り込み、純資産価値を下回る評価となっています。

13. 市場センチメント分析

  • 信用取引の状況: 信用買残が250,100株、信用売残が1,000株と、信用買残が極めて多く、信用倍率は250.10倍に達しています。これは、株価上昇を期待する買い方が多い一方で、将来的な売り圧力(需給悪化)となる可能性があります。
  • 株主構成: 筆頭株主である西部ガスホールディングスが51%を保有しており、安定株主が経営基盤を支えています。インサイダー(経営陣)の持株比率も66.19%と高く、経営陣と株主の利害一致度は高いと言えます。大株主の直近の大規模な売買動向は確認されていません。

14. 株主還元と配当方針

  • 配当利回り(会社予想): 2.69%
  • 1株配当(会社予想): 28.00円
  • 配当性向: 7.46%

現在の配当性向は低水準にあり、利益に対する配当の割合が小さいことを示しています。これは、内部留保を厚くして事業投資に充てる方針か、あるいは今後の業績安定化に伴う増配余力が大きいことを示唆しています。
自社株買いや株式報酬型ストックオプションに関する具体的な記載は確認できませんでした。

15. 最近のトピックスと材料

2026年2月期第2四半期(中間期)決算が最も重要なトピックスです。

  • 大幅な業績好転: 売上高は前年同期比で209.4%増の14,698百万円、営業利益は同799.9%増の1,547百万円、親会社株主に帰属する中間純利益は同755.0%増の1,046百万円と、各項目で大幅な増収増益を達成しました。
  • 好調な進捗率: 通期の売上高、営業利益、純利益予想に対し、中間期でそれぞれ70.0%、77.4%、80.5%と非常に高水準の進捗率を達成しました。これは、分譲マンションの引渡戸数が大幅に増加したことが主因です。
  • 中間配当の増額: 前年同期の12円から14円に中間配当を増額しました。

これらの好材料は、当面の業績にポジティブな影響を与え、通期予想達成への期待を高めるものです。ただし、通期予想は据え置きであるため、引き続き動向を注視する必要があります。

16. 総評

エストラストは、山口県での強固な地盤と西部ガスホールディングス傘下という安定性を持つ不動産会社です。
強み(Strengths):

  • 山口県内でのトップクラスのマンション開発実績とブランド力。
  • 親会社である西部ガスホールディングスの安定的な経営基盤。
  • 直近の業績(特に中間決算)が大幅に伸長し、通期予想に対する進捗が非常に良好。
  • ROE、ROAともに高水準で、資本効率と資産効率が高い。
  • 現在のPBR、PERが業界平均と比較して割安。

弱み(Weaknesses):

  • 不動産分譲事業に依存しており、物件引渡時期により業績の変動が大きい。
  • 自己資本比率が相対的に低く、借入依存度が高い財務体質(不動産業界の特性もある)。
  • 信用買残が非常に多く、株価上昇時の需給悪化要因となる可能性。

機会(Opportunities):

  • 九州エリアへの事業展開による成長市場の取り込み。
  • 少子高齢化や単身世帯増加といった社会構造の変化への対応(単身者向け物件など)。
  • 省エネ型住宅への需要増加による販売拡大。
  • 住宅ローン金利上昇への警戒感があるものの、政府の住宅支援策や賃金上昇による住宅需要の底堅さ。

脅威(Threats):

  • 住宅ローン金利のさらなる上昇や建築コスト・人件費の高騰。
  • 建設労働者不足の深刻化や為替変動による原材料費高。
  • 大規模プロジェクトの遅延や頓挫による業績への影響。
  • 経済情勢の不確実性による不動産市場の冷え込み。

エストラストは、安定した大株主の存在、高い収益性、そして現在の株価が示す割安感が魅力です。中間期の好調な業績進捗は評価できる一方、不動産分譲中心の事業モデル特有の業績変動リスク、および財務健全性(自己資本比率や借入依存度)には注意が必要です。また、信用買いが非常に多い需給状況も考慮に入れるべきです。中長期的な視点から、九州への事業拡大や安定セグメントの成長、コストコントロール能力が鍵を握ると言えるでしょう。

17. 企業スコア

  • 成長性: A (売上高の過去12ヶ月の実績および中間期の対前年比は大きく増加し、契約進捗も良好)
  • 収益性: A (ROE、ROAともにベンチマークを大きく上回り、粗利率も高い水準。中間期の営業利益率改善も評価)
  • 財務健全性: C (自己資本比率28.5%は一般的な目安40%を下回っており、借入依存度も高い)
  • 株価バリュエーション: S (PER、PBRともに業界平均と比較して大幅に割安)

企業情報

銘柄コード 3280
企業名 エストラスト
URL http://www.strust.co.jp/
市場区分 スタンダード市場
業種 不動産 – 不動産業

バリュー投資分析(5年予測・参考情報)

将来のEPS成長と配当を予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。

現在の指標

株価 1,039円
EPS(1株利益) 215.21円
年間配当 2.69円

予測の前提条件

予想EPS成長率 3.0%
5年後の想定PER 4.8倍

5年後の予測値

EPS成長率と想定PERを基に算出した5年後の理論株価と累計配当です。

予想EPS 249.49円
理論株価 1,205円
累計配当 15円
トータル価値 1,220円

現在価格での試算リターン

現在の株価で購入した場合に期待できる年率換算リターン(CAGR)の試算値です。

試算年率リターン(CAGR) 3.26% (参考:低水準)

目標年率ごとの理論株価(参考値)

目標とする年率リターンを達成するための理論上の買値と、さらに50%の安全域を確保した価格です。

目標年率 理論株価 安全域価格 現在株価との比較
15% 606円 303円 × 算出価格を上回る
10% 757円 379円 × 算出価格を上回る
5% 956円 478円 × 算出価格を上回る

関連情報

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このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.5)」によって自動生成されました。

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By ジニー

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