1. 企業情報
- オカモトは、産業用製品と生活用品の2つを事業の柱とする日本のメーカーです。コンドームのブランドとして広く知られていますが、売上の大部分はBtoB向けの産業用製品が占めています。
- 主力製品・サービスの特徴:
- 産業用製品: プラスチックフィルム、建装材(壁紙、装飾フィルム)、自動車内装材、農業用フィルム、食品包装材料、粘着テープ、フレキシブルコンテナバッグ、医療・衛生材料など多岐にわたります。高機能性フィルムや資材開発に強みを持っています。
- 生活用品: コンドーム、潤滑剤、カイロ、除湿剤、手袋(家庭用、医療用、作業用)、長靴や安全靴などのシューズ製品など、消費者の日常生活に密着した製品を提供しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
- オカモトはゴム製品業界に属し、多角的事業展開により特定の製品セグメントに限定されません。
- 業界内での競争優位性や課題について:
- 競争優位性: 多様な製品ポートフォリオにより、一部市場の変動リスクを分散できる体制を構築しています。長年の事業実績と技術基盤、一部製品における高いブランド認知も強みです。
- 課題: 直近ではグローバル経済の減速、特に中国市場の需要低迷、円高為替、アンチモンなどの原材料価格の高騰が収益を圧迫しています。また、一部の市場では価格競争も激化しています。
- 市場動向と企業の対応状況:
- 世界的な景気減速、原材料コスト上昇、為替変動(円高)といった逆風に直面しており、特に産業用製品セグメントでその影響が顕著です。企業はコスト管理や価格転嫁、堅調な製品分野での販売強化を図っていますが、全体的な収益改善には外部環境の好転が不可欠な状況です。
3. 経営戦略と重点分野
- 経営陣が掲げるビジョンや戦略: データなし
- 中期経営計画の具体的な施策や重点分野: 決算短信に具体的な数値目標の記載はありません。
- 新製品・新サービスの展開状況: 決算短信によると、生活用品で浣腸の主要小売店での定番導入やカイロの店頭導入の前倒し、産業用手袋の新規採用などが売上増加に貢献しています。一方で、コンドーム(海外・中国)や除湿剤などが不振でした。
4. 事業モデルの持続可能性
- オカモトの事業モデルは、産業用製品と生活用品という異なる顧客層と市場を持つ事業を組み合わせることで、特定の市場変動リスクに対する耐性を高めています。
- 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力: 長年の事業経験と多様な製品群により、一定の適応力はありますが、為替や原材料価格の急変動には対応が追いつかない現状が見られます。
- 売上計上時期の偏りとその影響: 直近の第2四半期決算では、通期予想に対する利益進捗率が売上高より低く、下期に利益が集中する傾向や、下期での収益改善を見込む計画であることが示唆されます。外部環境が改善しない場合、通期目標達成にリスクが生じる可能性があります。
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発の動向や独自性: 提供情報からは具体的な技術革新の動向や独自性に関する詳細な記載はありません。しかし、高機能フィルムや精密ゴム製品など、多岐にわたる製品を製造する中で、それぞれの分野で独自の技術を有していると推察されます。
- 収益を牽引している製品やサービス: 直近は一般用フィルム、工業用フィルム、多層フイルム、フレキシブルコンテナ(産業用製品)、浣腸、カイロ、滅菌器(生活用品)などが堅調でした。一方で、自動車内装材、コンドーム(海外・中国)、一部の手袋製品は苦戦しています。
6. 株価の評価
- 現在株価: 5,450.0円
- EPS(会社予想): 249.58円
- BPS(実績): 5,774.23円
- PER(会社予想): 21.84倍
- PBR(実績): 0.94倍
- 業界平均PER: 10.3倍
- 業界平均PBR: 0.9倍
- 現在株価はBPSを下回っておりPBRは1倍を割れていますが、会社予想PERは業界平均の約2倍と大きく上回っており、PER基準では割高感があります。PBR基準では業界平均とほぼ同水準からやや割高です。
7. テクニカル分析
- 直近の株価推移を参照して、現在の株価が高値圏か安値圏か: 現在株価5,450円は、直近10日間の価格帯では比較的高値寄りです。50日移動平均線(5,192.40円)および200日移動平均線(5,093.90円)を上回っており、短期・中期的に上昇トレンドにあるようです。
- 年初来高値・安値との位置関係: 年初来高値5,740円に対し約5%下、年初来安値4,450円に対し大きく上昇した位置にあり、比較的「高値圏」に寄った位置と評価できます。
- 出来高・売買代金から見る市場関心度: 本日の出来高・売買代金のデータは記載がありません。直近の取引量は比較的少ない水準です。
8. 財務諸表分析
- 売上高は過去数年増加傾向でしたが、直近の中間期決算では前年同期比2.9%減の52,899百万円となりました。
- 利益面では、特に営業利益が前年同期比49.1%減の2,503百万円と大幅な減益です。原材料高騰、為替の円高、中国市場の低迷、減損損失計上などが影響しました。
- ROE(実績7.29%)やROA(実績2.65%)は、一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%)を下回っており、収益性には課題が見られます。
- 通期予想に対する進捗率は、売上高48.6%に対し、営業利益43.9%、親会社純利益45.2%と利益面でやや遅れており、下期での回復が通期目標達成の鍵となります。
9. 財務健全性分析
- 自己資本比率(実績64.6%、中間期末65.3%)は非常に高く、強固な財務基盤を誇ります。
- 流動比率(直近四半期2.41倍)も極めて良好であり、短期的な支払い能力に全く問題ありません。
- 総負債が極めて少なく、Total Debt/Equity(3.37%)も低水準です。手元現金も潤沢で、財務安全性は非常に優れており、資金繰りに懸念はありません。借入金の金利負担も軽微です。
10. 収益性分析
- ROE(5.96%)とROA(2.65%)は、一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%)を下回っており、資本や資産の効率的な活用には改善の余地があります。
- 営業利益率は、過去12か月で6.61%でしたが、直近の中間期決算では4.7%と前年同期の9.0%から大きく低下しており、収益性の悪化が顕著です。
- 全体として、過去数年で売上は成長してきましたが、直近では外部環境の悪化により利益が大きく落ち込んでいます。コスト削減、生産性向上、高付加価値化、適切な価格転嫁を通じて収益性を回復できるかが注目されます。
11. 市場リスク評価
- ベータ値(0.13)は非常に低く、市場全体の変動に対する株価の感応度が低い、いわゆるディフェンシブな特性を持つ銘柄です。
- 52週高値(5,900円)と安値(4,450円)のレンジに対して、現在の株価5,450円はやや高値圏に位置しています。
- 決算短信に記載のリスク要因としては、為替変動(円高)、原材料価格の高騰(アンチモン等のレアメタル)、中国・北米市場の需要動向、医療用手袋等の価格競争激化、固定資産の減損リスク、天候による消費変動などが挙げられます。
12. バリュエーション分析
- PER(21.84倍)は業界平均PER(10.3倍)の約2.1倍であり、収益性から見ると割高感が強いです。
- PBR(0.94倍)は業界平均PBR(0.9倍)とほぼ同水準であり、自己資本の価値を考慮すると極端な割高感はありません。
- 算出された目標株価は、業界平均PER基準で3,351円、業界平均PBR基準で5,197円です。現在の株価5,450円と比較すると、PER基準では大幅に割高、PBR基準ではやや割高と判断されます。
13. 市場センチメント分析
- 信用買残1,400株に対し、信用売残12,300株と売り残が買残を大きく上回り、信用倍率は0.11倍と極めて低い水準です。これは、株価下落を予想する投資家が多いことを示唆しますが、同時に将来的に買い戻し(踏み上げ)の動きに転じる可能性も秘めています。
- 株主構成を見ると、明治安田生命保険、丸紅、日本マスタートラスト信託銀行など、複数の機関投資家や事業法人が大株主に名を連ねています。経営陣および機関投資家による保有比率も高く、安定株主が多い構造です。
14. 株主還元と配当方針
- 配当利回り(会社予想)は2.20%、1株配当(会社予想)は120.00円です。
- 予想配当性向は約48.1%と、利益の約半分を配当に回す積極的な株主還元姿勢を示しています。
- 2025年11月には、上限1,000百万円の自己株式取得を決議しており、配当と合わせた株主還元策を継続的に実施しています。これは株価の安定や1株当たり利益の向上に寄与する可能性があります。
15. 最近のトピックスと材料
- 2026年3月期第2四半期決算は、円高や原材料高騰、中国需要の低迷などの影響で大幅な減益となりました。通期予想は据え置かれていますが、達成には下期の回復が必要です。
- 自己株式取得の決議は、株主還元へのコミットメントを示すものであり、市場にとってはポジティブな材料です。ただし、足元の業績悪化要因を払拭するものではありません。
16. 総評
オカモトは、多角的な事業展開と極めて健全な財務体質を持つ企業です。しかし、直近の業績は外部環境の逆風(為替、原材料費、中国需要減速など)を強く受け、利益面で大幅な悪化を経験しています。
- 強み:
- 極めて健全な財務体質(高い自己資本比率、潤沢な現金、低負債)。
- 産業用と生活用品の多角化された事業ポートフォリオによるリスク分散。
- 一部製品における高いブランド認知度と市場での地位。
- 積極的な株主還元策(配当と自己株式取得)。
- 弱み:
- 外部環境(為替、原材料価格、特定地域の需要変動)に利益が左右されやすい体質。
- 足元の収益性の低下(ROE・ROAが業界平均を下回る)。
- 業界平均と比較してPERが高く、バリュエーションでの割安感に乏しい。
- 機会:
- 堅調な事業分野(フレキシブルコンテナ、特定生活用品)のさらなる強化。
- グローバル市場の変化に対応した製品開発や市場開拓。
- 健全な財務基盤を活かした成長投資やM&Aの可能性。
- 脅威:
- 為替の円高トレンド継続や原材料価格の高止まり。
- 世界経済のさらなる減速、特に中国市場の回復遅延。
- 競合他社との価格競争激化。
- 地政学的リスクの顕在化。
17. 企業スコア
- 成長性: C (直近中間期は減収、通期増収予想も微増に留まり、利益は大幅減益。外部環境要因による不確実性が高い)
- 収益性: C (粗利率、営業利益率が大幅に悪化。ROE 5.96%、ROA 2.65%は一般的なベンチマークを下回る。)
- 財務健全性: S (自己資本比率64.6%、流動比率2.41倍、Total Debt/Equity 3.37%と極めて高水準。現金も潤沢。)
- 株価バリュエーション: C (PER 21.84倍は業界平均10.3倍と比較して割高。PBR0.94倍は業界平均0.9倍とほぼ同水準からやや割高。)
企業情報
| 銘柄コード | 5122 |
| 企業名 | オカモト |
| URL | http://www.okamoto-inc.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 自動車・輸送機 – ゴム製品 |
バリュー投資分析(5年予測・参考情報)
将来のEPS成長と配当を予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。
現在の指標
| 株価 | 5,450円 |
| EPS(1株利益) | 249.58円 |
| 年間配当 | 2.20円 |
予測の前提条件
| 予想EPS成長率 | 5.0% |
| 5年後の想定PER | 15.0倍 |
5年後の予測値
EPS成長率と想定PERを基に算出した5年後の理論株価と累計配当です。
| 予想EPS | 318.53円 |
| 理論株価 | 4,778円 |
| 累計配当 | 13円 |
| トータル価値 | 4,791円 |
現在価格での試算リターン
現在の株価で購入した場合に期待できる年率換算リターン(CAGR)の試算値です。
| 試算年率リターン(CAGR) | -2.55% (参考:低水準) |
目標年率ごとの理論株価(参考値)
目標とする年率リターンを達成するための理論上の買値と、さらに50%の安全域を確保した価格です。
| 目標年率 | 理論株価 | 安全域価格 | 現在株価との比較 |
|---|---|---|---|
| 15% | 2,382円 | 1,191円 | × 算出価格を上回る |
| 10% | 2,975円 | 1,487円 | × 算出価格を上回る |
| 5% | 3,754円 | 1,877円 | × 算出価格を上回る |
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