1. 企業情報
- 事業内容などのわかりやすい説明
ライフネット生命保険は、日本におけるインターネット専業生命保険会社の草分け的存在です。主にインターネットを通じて、顧客に直接生命保険商品やサービスを提供しています。商品のわかりやすさ、シンプルな保障内容、そして割安な保険料が特徴です。KDDIと資本業務提携を行っており、シナジー効果を追求しています。 - 主力製品・サービスの特徴
主力商品は、定期死亡保険、医療保険、女性医療保険、がん保険、就業不能保険、認知症保険など、多岐にわたります。これらの商品は、インターネットを通じた直販モデルにより、手数料などを抑えた低価格での提供を実現しています。また、保険引受サービスや資産運用サービスも手掛けています。
2. 業界のポジションと市場シェア
- 業界内での競争優位性や課題について
インターネット専業生保の草分けとして、オンライン販売に特化したビジネスモデルは、従来の対面販売型保険会社と比較して、効率的な運営と低コスト化を実現しています。これにより、消費者に割安な保険料で商品を提供できる点が競争優位性となっています。KDDIとの提携は、顧客基盤の拡大やDX推進における強みとなり得ます。一方で、インターネットに不慣れな層へのアプローチや、商品ラインナップの多様化、ブランド認知度の更なる向上が課題として考えられます。 - 市場動向と企業の対応状況
生保市場全体では、人口減少や低金利環境の長期化といった構造的な課題がありますが、近年ではデジタル化の進展により、インターネットを通じた保険販売の需要は増加傾向にあります。ライフネット生命は、この市場変化に対応し、オンライン販売を軸に新契約の獲得と保有契約の堅調な増加を続けています。直近の決算では、金利上昇局面での投資有価証券からの金利収益改善もみられ、市場環境の変化に柔軟に対応している姿勢が伺えます。
3. 経営戦略と重点分野
- 経営陣が掲げるビジョンや戦略
経営陣は、中期経営計画において包括資本(会社定義)を2028年度に2,000~2,400億円へ到達させることを目標としています。この目標達成に向け、契約基盤の強化、顧客体験の向上、新規チャネル開拓などが戦略の軸となっていると推測されます。 - 中期経営計画の具体的な施策や重点分野
当中間期において、包括資本は前期比+5.1%の175,566百万円と順調に進捗しています。新契約の増加と解約失効率の改善は、契約基盤強化の成果として評価できます。引き続き、新規契約の獲得を促進しつつ、既存顧客の維持に注力することが重点分野と考えられます。 - 新製品・新サービスの展開状況(決算短信参照)
決算短信には、具体的な新製品・新サービスの展開に関する詳細な記載はありません。
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力
インターネットを通じた直接販売というシンプルな収益モデルは、コスト効率が高く、低価格志向の顧客ニーズに合致しており、持続可能性が高いと言えます。新契約年換算保険料の増加(+12.3%)と解約失効率の改善(5.8%→5.5%)は、市場の変化に対応し、契約基盤を安定的に拡大させていることを示しており、事業モデルの堅調さを裏付けています。 - 売上計上時期の偏りとその影響
決算短信には、売上計上時期の偏りに関する特段の記載はありません。通常の保険事業では、保険料収入は定常的に計上され、季節的な大きな偏りは少ない傾向にあります。
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発の動向や独自性
決算短信には、具体的な技術開発の動向や独自性に関する詳細な記載はありません。インターネット専業生保として、オンラインサービスや顧客インターフェースにおけるデジタル技術の活用は常に行われていると推測されます。 - 収益を牽引している製品やサービス
決算短信の開示情報によると、個人保険が保険収益12,854百万円を、団体信用生命保険(団信)が3,913百万円を計上しており、これらが現在の収益を牽引しています。特に団信は前期から収益寄与が増加し、保険サービス損益の改善に貢献しています。
6. 株価の評価
- EPSやBPSに基づく計算等を用いて、現在の株価との比較
会社予想EPS:85.90円
実績BPS:1,222.01円
現在の株価(前日終値):1,845円- PER(会社予想):1,845円 ÷ 85.90円 = 21.48倍
- PBR(実績):1,845円 ÷ 1,222.01円 = 1.51倍
これらの指標は会社公表値(PER 21.27倍、PBR 1.50倍)と概ね一致しています。
- 業界平均PER/PBRとの比較
金融(除く銀行)業の業界平均PERは13.7倍、業界平均PBRは1.0倍です。ライフネット生命保険のPER 21.48倍、PBR 1.51倍は、いずれも業界平均と比較して割高な水準にあります。
7. テクニカル分析
- 直近の株価推移を参照して、現在の株価が高値圏か安値圏か
直近10日間の株価は1,818円~1,944円の間で推移しており、本日終値の1,818円は直近10日間の最安値付近です。 - 年初来高値・安値との位置関係
年初来高値は2,631円、年初来安値は1,440円です。現在の株価1,818円は、年初来レンジの中央値を下回っており、安値圏寄りで推移していると言えます。年初来高値からは約31%下落、年初来安値からは約26%上昇した水準です。 - 出来高・売買代金から見る市場関心度
本日(2025-12-09)の出来高は39,600株、売買代金は72,575千円でした。直近10日間の出来高は10万株台~20万株台が中心であり、本日の出来高は平均と比較して低く、市場の関心度が一時的に低下している可能性があります。
8. 財務諸表分析
- 売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価
- 売上(Total Revenue、連結): 過去12ヶ月で31,499百万円、2025年3月期予想29,288百万円(2024年3月期実績24,996百万円から増加傾向)。
- 親会社帰属純利益(Net Income Common Stockholders、連結): 過去12ヶ月で7,319百万円、2025年3月期予想5,993百万円(2024年3月期実績5,734百万円から増加傾向)。2022年3月期の赤字からV字回復し、順調に利益を拡大させています。
- ROE(実績): 6.55%
- ROA(簡易算出): 過去12ヶ月の親会社帰属純利益7,319百万円 ÷ 直近総資産124,201百万円 ≒ 5.9%
- 過去数年分の傾向を比較
Total Revenueは2022年3月期に一時的に減少したものの、その後は明確な増加トレンドにあります。特にTotal Expensesの抑制が効き、Pretax IncomeおよびNet Incomeは堅調な伸びを示しており、2022年3月期の赤字から黒字転換後、加速度的に利益を伸ばしています。 - 四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)
2026年3月期第2四半期(中間期)の決算は、通期予想に対して良好な進捗を示しています。 - 保険収益:50.8%
- 保険サービス損益:62.1%
- 親会社帰属当期利益:64.9%
特に利益面で通期予想に対する進捗率が高く、通期目標達成の可能性は高いと判断されます。新契約の増加、解約失効率の改善、金融損益の改善が主な要因です。
9. 財務健全性分析
- 自己資本比率、流動比率、負債比率の評価
- 自己資本比率(親会社所有者に帰属する持分比率): 79.3%(実績)、直近中間期末で79.0%と非常に高水準であり、財務の安定性が極めて高いことを示しています。
- 流動比率: 短期流動負債の内訳情報が限定的であり、算出情報は不完全のためデータなし。
- 負債比率: 負債合計26,013百万円 ÷ 親会社所有者に帰属する持分98,177百万円 ≒ 26.5%と低水準であり、財務の健全性は極めて高いです。
- 財務安全性と資金繰りの状況
自己資本比率が非常に高く、負債比率も低いことから、財務安全性は極めて良好です。連結ソルベンシー・マージン比率も1,704.5%と十分に高く、支払余力も十分です。現金及び現金同等物は前期末から減少していますが、投資有価証券が増加していることから、資産運用の状況が変化していると考えられます。 - 借入金の動向と金利負担
決算短信において、大規模な借入金の動向や金利負担に関する特段の記載はありません。
10. 収益性分析
- ROE、ROA、各種利益率の評価
- ROE(実績): 6.55%。一般的なベンチマークとされる10%には届いていませんが、2022年3月期の赤字から改善傾向にあります。
- ROA(簡易算出): 5.9%。こちらも一般的なベンチマークとされる5%を上回っており、資産を効率的に活用して利益を上げていると評価できます。
- 保険サービス損益率: 36.3%(中間期)。前年同期と比較して改善傾向にあり、本業の収益性が向上していることを示唆しています。
- 一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%等)との比較
ROEはベンチマークを下回りますが、ROAはベンチマークを上回っています。これは、資本効率には改善の余地があるものの、総資産に対する収益力は良好であることを示唆します。 - 収益性の推移と改善余地
過去数年の利益水準は大きく改善しており、特に保険サービス損益率の向上や金融損益の改善が収益性向上のドライバーとなっています。新契約の堅調な増加と解約失効率の抑制が続けば、今後も収益性はさらに改善する可能性があります。
11. 市場リスク評価
- ベータ値による市場感応度の評価
ベータ値のデータは提供されていません。 - 52週高値・安値のレンジと現在位置
年初来高値2,631円、年初来安値1,440円に対し、現在の株価1,818円は年初来安値に近い水準に位置しています。 - 決算短信に記載のリスク要因(外部環境、為替、地政学等)
決算短信に記載されている主要なリスク要因は以下の通りです。 - 投資環境:金融市場(債券利回り、為替レート、株価など)の変動
- 想定を超える保険金支払いの発生
- 解約率の悪化
- 規制変更や法律改正
12. バリュエーション分析
- 業種平均PER/PBRとの比較
ライフネット生命保険の会社予想PER 21.27倍は、業界平均PER 13.7倍と比較して約1.55倍割高です。
実績PBR 1.50倍は、業界平均PBR 1.0倍と比較して約1.5倍割高です。 - 目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用)
- PER基準:業界平均PER 13.7倍 × 会社予想EPS 85.90円 = 1,176.83円
- PBR基準:業界平均PBR 1.0倍 × 実績BPS 1,222.01円 = 1,222.01円
上記から算出される目標株価レンジは1,176円~1,222円となります。 - 割安・割高の総合判断
現在の株価1,818円は、業界平均を適用した目標株価レンジと比較すると割高と判断されます。これは、同社の高い成長性や健全な財務体質、インターネット専業というビジネスモデルの将来性などが市場で評価されている可能性を示唆しますが、既存のバリュエーション指標で見ると割高感があります。
13. 市場センチメント分析
- 信用取引の状況(信用買残、信用倍率、需給バランス)
信用買残は482,300株に対し、信用売残は87,300株と、買残が売残を大きく上回っています。信用倍率は5.52倍であり、買方優勢の需給バランスとなっています。信用買残が積み上がっている状況は、将来的な売り圧力となる可能性を秘めています。 - 株主構成(経営陣持株比率、安定株主の状況)
主要株主には、ゴールドマン・サックス・インターナショナル(18.92%)、auフィナンシャルホールディングス(18.33%)、アリアケ・マスター・ファンド(ケイマン)(7.05%)、三井住友カード(5.00%)、セブン・フィナンシャルサービス(4.05%)などが名を連ね、特定の大口機関投資家が多数保有しています。これは、企業の安定性や成長性への期待を示唆する一方、大口株主の売買動向が株価に影響を与える可能性もあります。 - 大株主の動向
データなし
14. 株主還元と配当方針
- 配当利回りや配当性向の分析
会社予想1株配当は0.00円であり、配当利回りは0.00%、配当性向は0%です。現状では、株主への配当による直接的な還元は行っていません。 - 自社株買いなどの株主還元策
当中間期において、自己株式取得の実績はごく小額(期末自己株式数447株)であり、本格的な自社株買いによる株主還元策は実施していません。 - 株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策
株式報酬型ストックオプションに関する記載はありません。
15. 最近のトピックスと材料
- 適時開示情報の分析(大型受注、新製品、拠点展開等)
2026年3月期第2四半期決算短信によると、「売上」にあたる保険収益が前年同期比+17.3%と大幅な増収を達成し、親会社帰属中間利益も+42.1%と大幅な増益となっています。新契約年換算保険料は+12.3%、新契約件数は+12.9%と堅調な伸びを示しており、解約失効率も改善しています。また、投資有価証券残高の増加に伴う金利収益の改善も金融損益に寄与しました。 - これらが業績に与える影響の評価
これらのポジティブな要素は、顧客基盤の拡大、本業の収益性向上、資産運用の改善という点で、今後の業績に良い影響を与えると考えられます。通期予想に対する進捗率も良好であり、安定的な成長が期待されます。
16. 総評
ライフネット生命保険は、インターネット専業生保のパイオニアとして、効率的な事業運営と低価格な商品提供を強みとしています。KDDIとの提携によるシナジー効果も期待され、新契約の堅調な増加と解約率の改善により、収益を着実に拡大させています。財務基盤は自己資本比率が8割近くに達するなど極めて健全であり、支払余力も十分です。
直近の業績は増収増益で、通期目標に対する進捗も良好ですが、株主への配当は現状行っておらず、成長への再投資を優先する方針と見られます。株価バリュエーションは、業界平均PER/PBRと比較すると割高水準にありますが、これは同社の成長性やビジネスモデルの将来性が市場で評価されている可能性を示唆します。信用取引では買残優勢の状況が続いており、需給動向には注意が必要です。
- 強み:
- インターネット直販による効率的なビジネスモデルと低コスト構造
- 簡素でわかりやすい商品設計と割安な保険料
- KDDIとの資本業務提携によるシナジー効果と顧客基盤拡大
- 極めて健全な財務体質と高い支払余力
- 新契約件数、保有契約の堅調な伸びと解約率の改善
- 弱み:
- 伝統的な対面販売型生保と比較したブランド認知度の更なる向上
- 株主還元の限定的な方針(無配)
- バリュエーション指標が業界平均と比較して割高であること
- 機会:
- デジタル化推進によるインターネット販売市場の更なる拡大
- 提携先(KDDIなど)を通じた新規顧客獲得機会の深化
- 金利上昇局面における投資収益の改善
- 脅威:
- 想定を超える保険金支払いや解約率の悪化
- 競合他社の参入や価格競争の激化
- 金融市場の変動や規制・法律の変更
17. 企業スコア
- 成長性: A
- 保険収益は前年同期比17.3%増、新契約年換算保険料も12.3%増と高い成長率を示しているため。通期予想に対する中間期の進捗も良好。
- 収益性: B
- ROE6.55%は一般的なベンチマーク10%を下回るものの、ROAは5.9%とベンチマーク5%を上回る。保険サービス損益率も改善傾向にあり、利益成長率が高いことを考慮。
- 財務健全性: S
- 自己資本比率が約79%と非常に高く、負債比率も低水準であるため。財務安全性は極めて良好。
- 株価バリュエーション: C
- PER(21.27倍)およびPBR(1.50倍)が、業界平均PER(13.7倍)、PBR(1.0倍)と比較して割高水準にあるため。
企業情報
| 銘柄コード | 7157 |
| 企業名 | ライフネット生命保険 |
| URL | http://www.lifenet-seimei.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 金融(除く銀行) – 保険業 |
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