1. 企業情報
- 事業内容などのわかりやすい説明
シリウスビジョンは、画像検査装置および関連ソフトウェアの開発・製造・販売を主力とする企業です。かつて祖業であった熱転写装置や特殊印刷機事業からはすでに撤退しており、現在は「画像検査関連事業」に経営資源を集中しています。 - 主力製品・サービスの特徴
主力は各種印刷物の品質検査機や電子基板の外観検査装置と、これらを支えるソフトウェアです。近年では、ウェブ・クラウドサービス、AIを活用したソリューション(S-Comet、Regulusなど)の強化にも注力しています。これらの製品・サービスは、製造業における目視検査の自動化・効率化に貢献することを目指しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
- 業界内での競争優位性や課題について
画像検査装置市場は製造業の自動化ニーズを背景に成長が期待されますが、競合も多い分野です。シリウスビジョンの競争優位性は、長年の画像処理技術と、AIやクラウド技術を取り入れた新製品開発への積極的な姿勢にあります。一方で、主力市場(ラベル印刷、グラビア、紙器・パッケージ)での設備投資先送りや、中国・ASEAN市場での需要低迷が課題となっています。 - 市場動向と企業の対応状況
世界経済の不透明感や地政学リスク、設備投資サイクルの影響を受け、市場全体で設備投資が抑制される傾向にあります。これに対し、同社は抜本的な事業構造改革(SRP:シリウスリストラクチャリングプラン)を推進し、コスト削減と新製品・サービス(S-Comet、AI活用、クラウド事業)による収益基盤の強化で対応を図っています。特に、ウェブ・クラウド事業は堅調に推移しており、今後の成長ドライバーとして期待されています。
3. 経営戦略と重点分野
- 経営陣が掲げるビジョンや戦略
経営陣は「モノづくり現場の目視検査ゼロ」の実現をビジョンに掲げています。この達成のため、S-Cometなどの新製品開発やAI技術(Regulus)の活用、クラウド事業の展開を強化しています。 - 中期経営計画の具体的な施策や重点分野
抜本的な事業構造改革「SRP(シリウスリストラクチャリングプラン)」を推進しており、役員報酬の減額、事務所の移転・集約、研究開発費の凍結、希望退職優遇制度の導入など、全社的なコスト削減を実行しています。重点分野としては、新製品(S-Comet、AI活用)による収益化と、ウェブ・クラウド事業の持続的な成長です。 - 新製品・新サービスの展開状況(決算短信参照)
S-Comet(生産管理クラウドサービス)やAI検査システム「Regulus」の開発を進めており、これらを既存の強みである画像検査技術と連携させることで、高付加価値ソリューションを提供することを目指しています。ウェブ・クラウド事業では「WEB給」「Sync」「QUICK GATE」などが堅調です。
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力
従来の装置販売に加えて、クラウドサービスやAIソリューションといったサブスクリプション型の収益モデルへの転換を図っており、これにより安定的な収益確保と市場ニーズの変化への適応力を高めようとしています。ただし、現時点では装置販売の減速が収益に大きく影響しています。 - 売上計上時期の偏りとその影響
データなし
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発の動向や独自性
画像処理技術を基盤とし、AI(人工知能)技術を検査システムに統合する開発を進めています。特に、AI外観検査システム「Regulus」は、人による目視検査のバラつきをなくし、効率と精度を向上させることを目指しています。クラウド技術も積極的に取り入れ、データ連携やリモート管理を可能にするソリューションを提供しています。 - 収益を牽引している製品やサービス
現在の主力製品である画像検査装置群は、市場の設備投資抑制により販売が低迷しています。足元では、ウェブ・クラウド事業(WEB給、Sync、QUICK GATEなど)が堅調に推移していますが、会社全体の収益を牽引するほどの規模には至っていません。減収減益の状況が続いており、新たな収益源の確立が急務です。
6. 株価の評価
- EPSやBPSに基づく計算等を用いて、現在の株価との比較
- 現在の株価: 306.0円
- BPS(実績): 391.62円
- PER(会社予想): — (会社予想EPSがマイナスであるためPERの算出はできません)
- PBR(実績): 0.78倍
現在のPBRは0.78倍と、BPSを下回る水準で評価されています。将来の収益性が不透明であるため、株価は純資産価値よりも低い評価となっています。
- 業界平均PER/PBRとの比較
- 業界平均PER: 12.9倍 (比較不能)
- 業界平均PBR: 0.8倍
シリウスビジョンのPBR0.78倍は業界平均PBR0.8倍とほぼ同水準であり、PBRの観点からは割安感は限定的です。
7. テクニカル分析
- 直近の株価推移を参照して、現在の株価が高値圏か安値圏か
直近の株価は306.0円です。年初来高値が720円、年初来安値が225円であることから、年初来安値に近い水準で推移しており、安値圏にあると判断できます。 - 年初来高値・安値との位置関係
- 年初来高値: 720円
- 年初来安値: 225円
- 現在株価: 306円
現在の株価は年初来高値から約57%下落した水準であり、年初来安値からは約36%上昇した位置にあります。
- 出来高・売買代金から見る市場関心度
本日出来高は252,400株、売買代金は78,526千円です。直近10日間のデータでは、特に2025年12月3日には2,243,200株と大量の出来高を伴って株価が急騰する場面も見られましたが、その後は急落しています。最近の出来高は落ち着いていますが、市場の関心度は変動が激しいようです。
8. 財務諸表分析
- 売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価
提供された損益計算書によると、Total Revenue(売上高)は、2021年の4,138百万円から2024年12月期予想で2,314百万円、過去12か月では2,008百万円と減少傾向が続いています。
営業利益は、2023年に56百万円の黒字を計上しましたが、2022年、2024年12月期予想、過去12か月は全て営業損失を計上しており、収益性は悪化しています。
Net Income Common Stockholders(親会社株主に帰属する当期純利益)も、2023年の90百万円以外は全て赤字であり、特に過去12か月では-746百万円と大幅な損失となっています。
ROE(実績)は-6.28%、ROA(過去12か月)は-3.87%といずれもマイナスであり、資本の利用効率や総資産に対する収益性が著しく低い状態です。 - 過去数年分の傾向を比較
2021年以降、売上高は減少傾向にあり、利益も不安定で赤字が常態化しています。2021年にはわずかに黒字でしたが、2022年には大幅な赤字、2023年は一時的に黒字転換したものの、再び赤字基調に逆戻りしています。事業譲渡の影響も考慮する必要があるかもしれませんが、全体的には厳しい状況が続いています。 - 四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)
2025年12月期第3四半期累計では、売上高1,409百万円(通期予想2,180百万円に対し64.7%)、営業損失△151百万円(通期予想△80百万円を既に超過)、親会社株主に帰属する四半期純損失△613百万円(通期予想△530百万円を既に超過)となっています。
特に営業損失と純損失は、第3四半期累計時点で既に通期予想を上回っており、通期目標の達成は非常に困難な状況です。減損損失445百万円の計上が純損失を大きく押し上げています。
9. 財務健全性分析
- 自己資本比率、流動比率、負債比率の評価
- 自己資本比率(実績): (連)77.4% (直近四半期は68.6%)
- 流動比率(直近四半期): 3.64倍
- Total Debt/Equity(直近四半期): 14.86%
自己資本比率は第3四半期で68.6%と依然として高い水準を維持しており、財務基盤は比較的安定しています。流動比率も3.64倍と高水準で短期的な支払い能力も良好です。負債比率も14.86%と低く、借入金への依存度は低いと言えます。これらの指標からは、財務健全性は良好な部類に入ります。
- 財務安全性と資金繰りの状況
自己資本比率・流動比率が高く、財務安全性は高いと言えます。しかし、多額の営業損失・純損失が続いているため、純資産は減少傾向にあります。現金及び預金も前期末から減少しており、資金流出が見られます。会社は「継続企業の前提に重要な不確実性が存在しない」と判断し、当面の資金繰り懸念はないとしていますが、今後の損失拡大は財務を圧迫する可能性があります。 - 借入金の動向と金利負担
Total Debtは283百万円と比較的低水準で、Total Debt/Equityも14.86%と低いことから、借入金への依存は限定的です。Interest Expense(支払利息)も年間1,274千円(過去12か月)と、金利負担は軽微です。
10. 収益性分析
- ROE、ROA、各種利益率の評価
- ROE(実績): -6.28% (過去12か月は-30.52%)
- ROA(過去12か月): -3.87%
- Profit Margin: -35.26%
- Operating Margin(過去12か月): -16.93%
ROE、ROA、各種利益率の全てがマイナスとなっており、収益性は極めて低い状況にあります。純資産や総資産を活用して利益を生み出す力が全くないことを示しています。
- 一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%等)との比較
一般的な優良企業のベンチマークであるROE10%やROA5%と比較すると、大きく下回っており、収益性において深刻な課題を抱えていることがわかります。 - 収益性の推移と改善余地
過去数年間、収益性は不安定であり、現在は大幅な赤字に陥っています。構造改革(SRP)によるコスト削減と、AIやクラウド等の新製品・新サービスの収益化が達成されれば、収益性の改善余地はありますが、現時点ではその道筋は明確とは言えません。
11. 市場リスク評価
- ベータ値による市場感応度の評価
ベータ値(5Y Monthly)は0.19と非常に低い値です。これは市場全体の値動きに対する株価の感応度が低く、市場全体の変動に左右されにくい特性を持つことを示唆しています。 - 52週高値・安値のレンジと現在位置
- 52週高値: 720.00円
- 52週安値: 225.00円
- 現在株価: 306.0円
現在の株価は52週高値からは大きく下落しており、52週安値に近い位置にあります。これは過去1年間で株価が大きく下落したことを意味します。
- 決算短信に記載のリスク要因(外部環境、為替、地政学等)
決算短信には以下のリスク要因が挙げられています。- 主要顧客の設備投資減退
- 為替変動
- 原材料・部品価格の高騰
- 海外(特に中国)需要の長期低迷
- 固定資産等の減損リスク
- 構造改革費用の発生による一時的な業績悪化
- 資金調達環境の変化
- 地政学的リスク、パンデミック等の外部環境変化
12. バリュエーション分析
- 業種平均PER/PBRとの比較
- シリウスビジョン PBR(実績): 0.78倍
- 業界平均PBR: 0.8倍
PBRに関して、シリウスビジョンの0.78倍は業界平均の0.8倍とほぼ同水準であり、特別に割安・割高といった水準ではありません。
PERについては、EPSがマイナスであるため算出不能です。
- 目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用)
- 目標株価(業種平均PBR基準): 313円
(算出根拠: BPS 391.62円 × 業界平均PBR 0.8倍 = 313.296円)
- 目標株価(業種平均PBR基準): 313円
- 割安・割高の総合判断
PBR基準では業界平均に近く、現在の株価306円は目標株価313円と概ね同水準です。しかし、EPSが大幅なマイナスであり、収益性が極めて低いことを考慮すると、PBRだけで割安・割高を判断するのは困難です。企業は現状、大幅な赤字に直面しており、将来の利益回復が明確になるまでは、バリュエーションでの積極的な割安感を見出すことは難しいと言えます。
13. 市場センチメント分析
- 信用取引の状況(信用買残、信用倍率、需給バランス)
- 信用買残: 676,300株
- 信用売残: 4,200株
- 信用倍率: 161.02倍
信用倍率が161.02倍と非常に高く、信用買残が信用売残を大幅に上回っています。これは将来の株価上昇を期待して買い建てている投資家が多いことを示しますが、一方で将来の売却圧力となる可能性を秘めており、需給バランスは悪化していると言えます。
- 株主構成(経営陣持株比率、安定株主の状況)
- % Held by Insiders: 24.07%
- % Held by Institutions: 0.00%
大株主には自社(自己株口)が15.83%と最も多く、特定株主による安定保有がある程度見られます。経営陣の持株比率はインサイダー比率に含まれると考えられますが、詳細な内訳は不明です。機関投資家の保有比率が0.00%と低い点が特徴的です。
- 大株主の動向
主な大株主は自社(自己株口)やILホールディングス、千代田グラビヤなどの事業会社であり、安定株主が一定数存在します。しかし、最近の情報や動向については、特別に開示された情報はありません。
14. 株主還元と配当方針
- 配当利回りや配当性向の分析
- 1株配当(会社予想): 0.00円
- 配当利回り(会社予想): 0.00%
- 配当性向(4): 73.10% (ただし、直近は赤字のため算出困難)
2025年12月期は無配を予想しており、配当利回りは0.00%です。直近期が赤字であるため、配当性向の数値は参考にできません。企業の業績が改善するまでは、配当による株主還元は期待できない状況です。
- 自社株買いなどの株主還元策
自社株(自己株口)の保有はありますが、直近で大規模な自社株買いなどの発表はありません。 - 株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策
データなし
15. 最近のトピックスと材料
- 適時開示情報の分析(大型受注、新製品、拠点展開等)
2025年12月期第3四半期決算短信では、以下の重要な情報が示されています。- 減損損失の計上: 第2四半期に固定資産等の減損損失445百万円を特別損失として計上。これが純損失の大幅拡大の主因となっています。
- SRP(シリウスリストラクチャリングプラン)の推進: 抜本的な事業構造改革として、コスト削減(役員報酬減額、事務所集約、R&D凍結、人員整理)を継続中。
- 新製品・クラウド事業への注力: AI外観検査システム「Regulus」の開発、生産管理クラウドサービス「S-Comet」の展開、既存クラウド事業(WEB給、Sync、QUICK GATE)の堅調な推移。
- 業績予想の修正可能性: 第3四半期累計の損失が通期予想を既に超過しているが、通期予想は据え置き。ただし、特別退職支援金等(約70百万円)の精査後に業績予想を修正する可能性が示唆されています。
- これらが業績に与える影響の評価
減損損失の計上と構造改革費用は短期的に業績を著しく悪化させていますが、長期的な視点では事業のスリム化と収益性の改善に寄与する可能性があります。新製品やクラウド事業への注力は、将来の成長ドライバーとなることが期待されますが、現時点ではまだ収益への貢献が見られず、事業転換の途上にあります。通期予想の据え置きは、実態と乖離している可能性があり、今後の下方修正リスクがあります。
16. 総評
シリウスビジョンは、祖業から撤退し画像検査関連事業に特化している企業です。AIやクラウド技術を取り込んだ新製品・サービスの開発を強化し、事業構造改革を進めていますが、現在の業績は厳しい状況にあります。
- 全体的な見解
主力である画像検査装置の販売低迷と、過去の設備投資に対する減損損失の計上により、大幅な赤字に陥っています。事業構造改革(SRP)によるコスト削減と、AI・クラウド事業への転換に活路を見出そうとしていますが、その効果が業績に現れるまでには時間を要すると考えられます。財務健全性自体は高いものの、継続的な損失は自己資本を侵食し、株主価値を毀損するリスクがあります。- ネガティブ要因: 大幅な営業・純損失の継続、通期予想を既に上回る損失、主力市場の設備投資抑制、高い信用買残。
- ポジティブ要因: 高い自己資本比率と流動比率による財務健全性、AI・クラウド技術を取り入れた新製品・新サービスの投入、抜本的な構造改革による将来的な収益性改善への期待。
- 今後の注目点: 構造改革(SRP)の進捗と効果、ウェブ・クラウド事業および新製品(S-Comet, Regulus)の市場浸透と収益貢献、通期業績予想の修正状況。
- 強み・弱み・機会・脅威の整理
- 強み (Strengths):
- 高い自己資本比率と流動比率:財務基盤の安定性。
- 長年の画像処理技術とAI・クラウド技術への先行投資。
- 抜本的な構造改革(SRP)の実行。
- 弱み (Weaknesses):
- 装置事業の販売低迷と収益性の著しい悪化。
- 進行する構造改革に伴う一時的な費用負担と減損損失。
- PERが算出不能なほどの赤字状態。
- 信用買残が非常に高く、需給バランスが悪い。
- 機会 (Opportunities):
- 製造業におけるDX推進、AI・検査自動化ニーズの拡大。
- クラウドサービス市場の成長。
- 構造改革によるコスト競争力の向上と事業効率化。
- 脅威 (Threats):
- 主力市場における設備投資の長期的な低迷。
- 景気変動、為替変動、原材料価格高騰などの外部環境リスク。
- 競合他社との技術開発競争の激化。
- 大幅な損失継続による自己資本のさらなる減少。
17. 企業スコア
- 成長性: C
売上が減少傾向にあり、主力事業の市場も低迷。新製品・新サービスの開発は進めるが、現時点での収益貢献は限定的。 - 収益性: D
売上総利益率は良好なものの、営業利益、経常利益、純利益は全て大幅な損失を計上。ROE、ROAも大きくマイナスであり、収益性は極めて低い。 - 財務健全性: A
自己資本比率は68.6%と高水準を維持し、流動比率も3.64倍と良好。負債比率も低く、財務安全性は高い。ただし、継続的な損失による自己資本の減少傾向には注意が必要。 - 株価バリュエーション: B
PBRは0.78倍で業界平均(0.8倍)とほぼ同水準。しかし、EPSがマイナスでPERが算出できない状況のため、割安・割高の判断は難しい。現状の業績からは積極的な割安感を見出しにくい。
企業情報
| 銘柄コード | 6276 |
| 企業名 | シリウスビジョン |
| URL | https://siriusvision.jp/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 電機・精密 – 電気機器 |
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