1. 企業情報

  • 事業内容などのわかりやすい説明
    株式会社秋田銀行は、秋田県を地盤とする地方銀行です。預金、融資、為替といった銀行サービスを主要事業としており、秋田県内では預金・融資ともに5割を超える圧倒的なシェアを持っています。その他、有価証券の運用も行っています。秋田県外では福島県や北海道にも展開しています。
  • 主力製品・サービスの特徴
    地元の企業や個人に対し、預金業務で資金を預かり、中小企業向け融資(約54%)や住宅・消費者向け融資(約19%)を中心に資金を供給しています。有価証券への投資も重要な資金運用手段となっています。これらの業務を通じて利息収入を得るのが主な収益源です。

2. 業界のポジションと市場シェア

  • 業界内での競争優位性や課題について
    秋田銀行は秋田県において預金・融資で5割超のシェアを占めるなど、地域内での強固な顧客基盤とブランド力が最大の競争優位性です。また、仙台や北海道への展開も地域に限定されない収益機会を探る動きと見られます。一方、課題としては、地方銀行全体が抱える人口減少と地域経済の縮小、低金利環境(現在は金利上昇局面にあるものの)における収益性の維持・向上が挙げられます。
  • 市場動向と企業の対応状況
    現状の金利上昇局面において、貸出金利息や有価証券利息といった資金運用収益が増加しており、業績の押し上げ要因となっています。これは市場環境の変化に適応し、収益機会を捉えていると評価できます。

3. 経営戦略と重点分野

  • 経営陣が掲げるビジョンや戦略
    決算短信からは、コア業務純益の増加、貸出残高・有価証券残高の増加、与信費用(貸倒損失など)の低減が主要な経営戦略であることが読み取れます。地域の中小企業向け貸出や個人ローンを拡大し、預り資産(投資信託・保険など)の増加による手数料収益の補完も推進しています。
  • 中期経営計画の具体的な施策や重点分野
    具体的な中期経営計画の詳細は提供データにありませんが、通期業績目標(経常利益98億円、純利益65億円)は、前述の貸出残高増、有価証券残高増、与信費用低減といった施策を通じて達成を目指していると推察されます。
  • 新製品・新サービスの展開状況(決算短信参照)
    決算短信に具体的な新製品・新サービスの展開状況についての詳細な記載はありません。

4. 事業モデルの持続可能性

  • 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力
    秋田銀行の収益モデルは、伝統的な預貸業務による利ザヤ、有価証券運用益、手数料収入が柱です。足元では金利上昇を背景に資金運用収益が大幅に増加しており、市場ニーズや経済環境の変化への適応力が示されています。しかし、地域経済の動向、金利環境の変動、そして預金者の資産運用ニーズの変化への対応が、今後の持続可能性を左右します。
  • 売上計上時期の偏りとその影響
    銀行業の売上(経常収益)は一般的に四半期ごとに比較的安定して計上されますが、有価証券の売却損益や評価損益、与信費用(貸倒関連費用)は、市場環境や景気動向によって大きく変動し、決算期末に偏りを見せる可能性があります。今期はその他有価証券評価差額金が大きく改善しました。

5. 技術革新と主力製品

  • 技術開発の動向や独自性
    提供されたデータに、秋田銀行における具体的な技術開発の動向や独自性に関する記載はありません。
  • 収益を牽引している製品やサービス
    現状では、貸出金利息と有価証券利息の増加が資金運用収益を大きく伸ばし、収益を牽引しています。これらは金融市場の金利上昇トレンドの恩恵を受けています。

6. 株価の評価

  • EPSやBPSに基づく計算等を用いて、現在の株価との比較
    • 現在の株価: 3,920.0円
    • EPS(会社予想): 366.36円
    • BPS(実績): 9,791.96円
    • 会社予想PER: 10.70倍、実績PBR: 0.40倍
    • 理論株価(PER基準): EPS 366.36円 × PER 10.70倍 = 3,920.05円。現在の株価とほぼ同水準です。
    • 理論株価(PBR基準): BPS 9,791.96円 × PBR 0.40倍 = 3,916.78円。現在の株価とほぼ同水準です。
  • 業界平均PER/PBRとの比較
    • 業界平均PER: 10.7倍、業界平均PBR: 0.4倍
    • 秋田銀行のPER10.70倍、PBR0.40倍は、いずれも業界平均とほぼ同水準であり、相対的に見て現在の株価は適正な水準にあると言えます。ただし、PBRが1倍を大きく下回っている点には、割安と捉える見方もできます。

7. テクニカル分析

  • 直近の株価推移を参照して、現在の株価が高値圏か安値圏か
    直近10日間の株価は3,830円(安値)から3,985円(高値)の範囲で推移しており、現在の株価3,920円はこのレンジの中位よりやや高めの水準です。
  • 年初来高値・安値との位置関係
    年初来高値は4,005円、年初来安値は1,950円です。現在の株価3,920円は年初来高値に非常に近く、年初来安値からは大きく上昇した高値圏に位置しています。
  • 出来高・売買代金から見る市場関心度
    本日の出来高は46,800株、売買代金は182,867千円です。過去3ヶ月平均出来高7.45万株、過去10日平均出来高5.582万株と比較すると、本日の出来高は平均を下回っており、市場の関心度はやや低下している可能性があります。

8. 財務諸表分析

  • 売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価
    • 売上(Total Revenue):2022年3月期37,260百万円から2025年3月期予想46,957百万円、過去12か月47,324百万円と、増加傾向にあります。
    • 純利益(Net Income Common Stockholders):2022年3月期3,184百万円から過去12か月7,645百万円と、着実に成長しています。
    • ROE(実績):3.45%、過去12か月では4.46%です。
    • ROA(実績):0.21%、過去12か月でも0.21%です。
  • 過去数年分の傾向を比較
    売上と純利益は過去数年で堅調に成長しており、特に最新の過去12か月実績は予想を上回る水準です。一方で、ROEやROAといった資本効率を示す指標は、絶対値としては低い水準にとどまっています。
  • 四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)
    2026年3月期第2四半期(中間期)の連結経常利益は5,597百万円(通期予想9,800百万円に対し進捗率57.1%)、親会社株主に帰属する中間純利益は3,906百万円(通期予想6,500百万円に対し進捗率60.1%)と、中間時点で通期予想に対する進捗は非常に順調であり、業績の上振れあるいは通期目標達成への信頼性は高いと言えます。

9. 財務健全性分析

  • 自己資本比率、流動比率、負債比率の評価
    • 自己資本比率(実績):4.5%とありますが、決算短信にはこの比率は「自己資本比率告示」とは異なる算出方法である旨の注記があり、参考値とされています。銀行業の財務健全性を示す重要な指標である「連結・国内基準コア資本比率」は11.56%であり、これは安定した水準と評価できます。
    • 負債総額:直近四半期で3,400,218百万円と、総資産3,574,997百万円の大部分を占めますが、これは銀行の事業性質上、預金(負債)が主要な資金調達源であるためです。
    • 流動比率についての具体的なデータは提供されていません。
  • 財務安全性と資金繰りの状況
    連結・国内基準コア資本比率11.56%は銀行として安定した水準であり、総現金390.31B円を保有していることから、資金繰りに大きな懸念はないと考えられます。
  • 借入金の動向と金利負担
    データには借入金の具体的な動向や金利負担に関する詳細な記載はありません。

10. 収益性分析

  • ROE、ROA、各種利益率の評価
    • ROE(過去12か月): 4.46%
    • ROA(過去12か月): 0.21%
    • Profit Margin(純利益率): 15.27%
    • Operating Margin(営業利益率): 22.89%
  • 一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%等)との比較
    ROE 4.46%とROA 0.21%は、一般的な企業(特に製造業など)のベンチマーク(ROE 10%以上、ROA 5%以上)と比較すると低い水準です。これは、銀行の事業構造(総資産が大きく、負債が多い)に起因する部分もありますが、資本効率の改善は引き続く課題と言えます。
  • 収益性の推移と改善余地
    損益計算書を見る限り、純利益は増加傾向にあり、第2四半期決算では総資金利鞘やOHR(経費率)の改善が見られるため、収益性は向上傾向にあります。今後の金利上昇トレンドの持続や、貸出金利の上乗せ、預かり資産ビジネスの強化などが収益性改善の余地となります。

11. 市場リスク評価

  • ベータ値による市場感応度の評価
    ベータ値は0.06(5年間の月次データ)と非常に低いです。これは、市場全体(S&P 500など)の値動きに対して株価がほとんど連動しない、または感応度が非常に低いことを示しており、市場リスクの影響を受けにくい特性があると考えられます。
  • 52週高値・安値のレンジと現在位置
    52週高値は4,005円、52週安値は1,950円です。現在の株価3,920円は52週高値に非常に近い水準にあります。
  • 決算短信に記載のリスク要因(外部環境、為替、地政学等)
    決算短信には、金利の急変、有価証券評価の逆回転(含み損の発生)、地域経済の低迷に伴う取引先の信用リスク顕在化、預金や資金調達コストの上昇、そして金融規制や会計基準の変更などがリスク要因として挙げられています。

12. バリュエーション分析

  • 業種平均PER/PBRとの比較
    秋田銀行のPER(会社予想10.70倍)とPBR(実績0.40倍)は、それぞれ業界平均PER10.7倍、業界平均PBR0.4倍とほぼ同水準です。
  • 目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用)
    提供データに基づく目標株価は以下の通りです。
    • 業種平均PER基準: 4,618円
    • 業種平均PBR基準: 3,917円
  • 割安・割高の総合判断
    現在の株価3,920円は、業種平均PBR基準の目標株価3,917円とほぼ一致しています。業種平均PER基準の目標株価4,618円と比較すると、現在の株価は割安感があるとも言えます。PBRが0.40倍と1倍を大きく下回っている点も、一般的な観点から見れば割安と評価できます。

13. 市場センチメント分析

  • 信用取引の状況(信用買残、信用倍率、需給バランス)
    • 信用買残: 242,000株(前週比-5,000株)
    • 信用売残: 4,500株(前週比-100株)
    • 信用倍率: 53.78倍
      信用買残が信用売残を大きく上回っており、信用倍率も非常に高い水準です。これは一般的に、将来の売り圧力となる可能性を秘めていますが、同時に「売り枯れ」状態と見なされ、株価上昇時に買い戻しを誘発しにくい需給状況とも解釈できます。ただし、買残・売残はともに減少傾向にあります。
  • 株主構成(経営陣持株比率、安定株主の状況)
    上位株主には日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、日本カストディ銀行(信託口)、明治安田生命保険、日本生命保険などの機関投資家、および自社職員持株会が名を連ねています。これは安定株主が多く、安定した経営基盤を示唆しています。
  • 大株主の動向
    データに大株主の具体的な動向に関する記載はありません。

14. 株主還元と配当方針

  • 配当利回りや配当性向の分析
    • 配当利回り(会社予想): 3.83%
    • 1株配当(会社予想): 150.00円(前期105円から増配)
    • 配当性向: 31.28%(会社予想の連結当期純利益に対する配当性向は約40.8%)
      会社は親会社株主に帰属する当期純利益の40%以上を配当性向の目安としており、現在の配当性向と年間配当予想(150円、増配)はこの方針に合致しています。
  • 自社株買いなどの株主還元策
    自社株買いについては、機動的に実施する方針であるとされていますが、当中間期における大規模な実施は特記事項として記載されていません。
  • 株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策
    データに株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策に関する記載はありません。

15. 最近のトピックスと材料

  • 適時開示情報の分析(大型受注、新製品、拠点展開等)
    2026年3月期 第2四半期決算において、連結経常利益が前年同期比+50.5%、親会社株主に帰属する中間純利益が同+103.1%と大幅な増益を達成しました。この主な要因は、貸出金利息と有価証券利息の増加による資金運用収益の拡大と、与信関係費用(貸倒引当金)の減少です。その他有価証券評価差額金が+13,474百万円の評価益に転じるなど、包括利益も大幅に改善しました。
  • これらが業績に与える影響の評価
    中間決算の大幅増益は、現在の金利上昇局面が秋田銀行の本業収益に大きく寄与していることを示しています。通期業績予想は据え置かれているものの、中間時点での進捗が非常に順調であることから、会社予想の達成可能性は高く、市場からの期待を高める材料となります。増配方針も、収益体質の改善を背景とした株主還元姿勢の表れと言えるでしょう。

16. 総評

秋田銀行は、秋田県内で圧倒的な預貸金シェアを持つ地域密着型の地方銀行です。堅固な地域基盤を背景に、金利上昇局面では資金運用収益の改善と与信関係費用の減少が利益を大きく押し上げており、過去数年にわたり純利益を伸ばすトレンドにあります。2026年3月期第2四半期決算も非常に好調で、通期目標達成への期待感が高い状況です。

  • 地域内での強固な事業基盤と圧倒的なシェア。
  • 金利上昇局面を捉えた本業収益(資金利益)の改善。
  • 安定水準にある規制資本比率。
  • 実績PBRが0.40倍と割安感があり、増配による株主還元も積極的。
  • ベータ値が低く、市場全体の変動の影響を受けにくい特性。

強み・弱み・機会・脅威 (SWOT分析)

  • 強み (Strengths):
    • 秋田県内での圧倒的な預貸金シェアと地域内での強力なブランド力。
    • 金利上昇局面における資金運用収益の着実な増加。
    • 堅調な利益成長と増配による株主還元姿勢。
    • 安定した国内基準コア資本比率。
  • 弱み (Weaknesses):
    • ROEとROAが一般的なベンチマークと比較して低く、資本効率の改善余地が大きい。
    • 地方銀行として、地域経済のさらなる縮小や人口減少の影響を受けやすい。
  • 機会 (Opportunities):
    • 日本銀行の金融政策転換による金利上昇トレンドの継続が、今後の収益にプラス影響を与える可能性。
    • 地域の活性化支援を通じて、取引基盤をさらに強化する機会。
  • 脅威 (Threats):
    • 金利の急激な変動や、有価証券市場の悪化による評価損益の発生リスク。
    • 地域経済の深刻な低迷や取引先の信用リスク顕在化。
    • 資金調達コストの上昇圧力。

17. 企業スコア

  • 成長性: A
    • 売上・利益ともに過去数年で着実に成長しており、特に直近の中間期純利益は前年同期比103.1%と非常に高い伸びを示しています。通期予想に対しても順調に進捗しています。
  • 収益性: C
    • 営業利益率や純利益率は良好ですが、ROE(4.46%)やROA(0.21%)は一般的なベンチマークと比較して低い水準にとどまっており、資本効率の面で改善の余地があります。ただし、総資金利鞘やOHRは改善傾向にあります。
  • 財務健全性: A
    • 銀行業の規制資本である国内基準コア資本比率は11.56%と安定しており、総現金も豊富に保有しています。一時的な自己資本比率の表記(4.5%)は計算方法が異なるため注意が必要ですが、実質的な財務健全性は非常に高いと評価できます。
  • 株価バリュエーション: A
    • PER、PBRともに業界平均と同水準ですが、PBRが0.40倍と1倍を大きく下回る水準であり、業種平均PER基準の目標株価レンジも現在の株価を上回っています。ROEの低さを加味しても、割安感がある水準と判断できます。

企業情報

銘柄コード 8343
企業名 秋田銀行
URL http://www.akita-bank.co.jp/
市場区分 プライム市場
業種 銀行 – 銀行業

バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)

将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。

現在の指標

株価 3,920円
EPS(1株利益) 366.36円
年間配当 3.83円

シナリオ別5年後予測

各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。

シナリオ 成長率 将来PER 5年後株価 期待CAGR
楽観 19.3% 12.3倍 10,874円 22.7%
標準 14.8% 10.7倍 7,820円 14.9%
悲観 8.9% 9.1倍 5,100円 5.5%

目標年率別の理論株価(標準シナリオ)

標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。

現在株価: 3,920円

目標年率 理論株価 現在株価との乖離 判定
15% 3,903円 +17円 (+0%) △ 割高
10% 4,874円 -954円 (-20%) ○ 割安
5% 6,151円 -2,231円 (-36%) ○ 割安

【判定基準】○割安:現在株価≦理論株価 / △割高:現在株価>理論株価

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By ジニー

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