以下は株式会社TSIホールディングス(証券コード:3608)の企業分析レポートです。
1. 企業情報
- 事業内容などのわかりやすい説明
TSIホールディングスは、レディスアパレルを主軸とする大手企業です。東京スタイルとサンエー・インターナショナルが経営統合して設立されました。アパレル製品の企画、製造、販売を国内外で行っており、近年はEC(電子商取引)などの販路拡大に注力しています。また、ファッション関連だけでなく、カフェ事業、化粧品事業、販売代行、人材派遣、SaaS(Software as a Service)などの一般ライフスタイル事業も展開し、多角化を進めています。 - 主力製品・サービスの特徴
主力はアパレル事業で、特にゴルフウェアや「ナノ・ユニバース」などの人気ブランドを展開しています。これらのブランドは市場での認知度が高く、同社の売上を牽引しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
- 業界内での競争優位性や課題について
アパレル業界のリーディングカンパニーの一つとして、長年にわたるブランド構築と多様なポートフォリオが競争優位性となっています。しかし、国内アパレル市場は少子高齢化や消費者のライフスタイルの変化により厳しさが増しており、競争は激化しています。 - 市場動向と企業の対応状況
国内市場は、賃上げや訪日客回復といったポジティブな要因がある一方で、物価上昇、米国関税、猛暑といった外部環境要因による消費マインドの不安定さが課題です。インバウンド需要の伸び悩みも小売およびアパレル業界に影響を与えています。同社は、中期経営計画「TIP27」に基づき、ECチャネルの強化、収益構造改革(原価低減、在庫圧縮、販管費抑制)を進めることで、外部環境の変化に対応し、利益率改善を図っています。
3. 経営戦略と重点分野
- 経営陣が掲げるビジョンや戦略
経営陣は「TIP27」という中期経営計画を掲げ、収益構造の改革と事業ポートフォリオの強化を推進しています。 - 中期経営計画の具体的な施策や重点分野
具体的な施策としては、仕入原価率の低減、在庫の最適化、販売費及び一般管理費のコントロールによる収益性の改善があります。また、各ブランドの集客施策の強化や自社ECのリニューアルも実行中です。今後は、海外事業の立て直しや、M&Aにより完全子会社化した株式会社デイトナ・インターナショナルとの統合が重点分野となります。 - 新製品・新サービスの展開状況(決算短信参照)
アパレル関連事業においては、メンズブランドが堅調に推移している一方、レディスブランドは一部でコラボ企画やイベントが奏功しているものの、新規顧客獲得に苦戦しているブランドもあります。その他事業では、販売代行、人材派遣、SaaS、店舗設計、化粧品販売など多角的なサービスを展開していますが、事業譲渡の影響により売上は減少しています。
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力
アパレル事業を核としつつ、EC事業強化や化粧品、SaaS、カフェなどの新規事業を取り込むことで、収益源の多様化を図り、市場ニーズの変化への適応力を高めようとしています。収益構造改革による利益率改善は進んでいますが、売上減少は課題です。 - 売上計上時期の偏りとその影響
アパレル業界は季節変動の影響を受けやすい特性がありますが、特段、売上計上時期に大きな偏りに関する記述は見られません。しかし、下期に利益寄与を見込む通期予想から、冬商戦の動向が重要であることが伺えます。
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発の動向や独自性
具体的な衣料分野での技術革新に関する記述はありませんが、アパレル向けSaaS事業を展開していることから、ITを活用したビジネス効率化や顧客体験向上への取り組みは行われていると推測されます。 - 収益を牽引している製品やサービス
「ナノ・ユニバース」などの主要アパレルブランドやゴルフウェアが主力として収益を牽引しています。メンズブランドは堅調に推移しています。
6. 株価の評価
- EPSやBPSに基づく計算等を用いて、現在の株価との比較
現在の株価は1,026.0円です。- EPS(会社予想)62.56円、PER(会社予想)16.40倍から算出した理論株価は、62.56円 × 16.40倍 = 1,025.98円となり、現在の株価とほぼ同水準です。
- BPS(実績)1,588.32円、PBR(実績)0.65倍から算出した理論株価は、1,588.32円 × 0.65倍 = 1,032.41円となり、現在の株価とほぼ同水準です。
- 業界平均PER/PBRとの比較
- 業界平均PER: 21.7倍に対し、同社PER(会社予想)は16.40倍であり、業界平均と比較して割安感があります。
- 業界平均PBR: 1.0倍に対し、同社PBR(実績)は0.65倍であり、業界平均と比較して割安感があります。
7. テクニカル分析
- 直近の株価推移を参照して、現在の株価が高値圏か安値圏か
直近10日間の株価は983円から1,030円の範囲で推移しており、現在の株価1,026.0円は直近のレンジ内で高値圏にあります。 - 年初来高値・安値との位置関係
年初来高値は1,352円、年初来安値は939円です。現在の株価1,026.0円は、年初来安値からはやや回復しているものの、年初来高値からは大きく乖離しており、全体的には安値圏での推移と言えます。 - 出来高・売買代金から見る市場関心度
本日出来高は581,500株、売買代金は595,714千円です。直近10日間の平均出来高が257.11k株であることから、本日の出来高は平均と比較して高く、市場の関心が高まっている可能性があります。
8. 財務諸表分析
- 売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価
過去数年の売上高は増加傾向にありましたが、直近12ヶ月および中間期では事業譲渡などの影響で減少しています。営業利益は過去数年減少傾向でしたが、当中間期はコストコントロールにより前年同期の営業損失から黒字に転換しました。純利益は過去数年で増加傾向にありますが、2025年2月期および直近12ヶ月の純利益は特別利益(Total Unusual Items)が大きく寄与しており、実質的な事業収益性は別途評価が必要です。
ROE(実績)は14.86%、過去12ヶ月では18.42%と高水準で優良ですが、ROA(実績)は1.24%と低いです。 - 過去数年分の傾向を比較
- 売上高: 2022年2月期140,382百万円 → 2024年2月期155,383百万円と伸長しましたが、直近12ヶ月は147,543百万円に減少しています。
- 営業利益: 2022年2月期4,440百万円 → 2024年2月期1,761百万円と減少傾向でしたが、2025年2月期予想は1,636百万円で減少継続を予想。當中間期は黒字転換も、絶対額は低い水準です。
- 純利益: 2022年2月期1,022百万円 → 2024年2月期4,849百万円と大きく増加していますが、これは多額の特別利益による影響が大きいです。
- ROE: 過去12ヶ月の18.42%は高い効率性を示しますが、ROAの低さから、純資産に対するリターンは高いものの、総資産を十分に活用できていない可能性があります。
- 四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)
2026年2月期第2四半期(中間期)の実績は、通期予想に対して売上高39.1%、営業利益11.2%、純利益31.3%の進捗です。営業利益の進捗率が低く、下期に大幅な利益回復が計画されていることが見て取れます。純利益は比較的良好な進捗ですが、通期予想の純利益が前年比で大幅な減少を示しており、一時的な特別利益の剥落を織り込んでいると推測されます。
9. 財務健全性分析
- 自己資本比率、流動比率、負債比率の評価
自己資本比率は76.4%(実績)から期末75.4%(中間期)と非常に高い水準を維持しており、財務基盤は極めて強固です。流動比率は2.80(直近四半期)と200%を大きく超えており、短期的な支払能力も非常に良好です。Total Debt/Equity(負債比率)も9.79%と低く、借入金が少ない安定した財務状況です。 - 財務安全性と資金繰りの状況
高い自己資本比率と流動比率から、財務安全性は非常に高いと評価できます。ただし、営業キャッシュフローが過去12ヶ月で-2.75B、当中間期で-7,017百万円とマイナスに転じており、現金及び現金同等物も期首比で大幅に減少している点は資金繰りにおいて注意が必要です。これは法人税等の支払が主因と説明されていますが、今後のキャッシュフロー動向を注視する必要があります。 - 借入金の動向と金利負担
Total Debtは9.08B(直近四半期)と比較的小さく、Net Non Operating Interest Income Expenseがプラス圏にあることから、金利負担も低い水準にあると推測されます。
10. 収益性分析
- ROE、ROA、各種利益率の評価
ROE(過去12ヶ月)は18.42%と、一般的なベンチマークである10%を大幅に上回る優良な水準です。しかし、ROA(過去12ヶ月)は1.24%と、ベンチマークの5%を下回っており、総資産を効率的に活用しきれていない点が課題です。当中間期の営業利益率は0.97%と低水準ですが、前年同期の営業損失からは改善傾向にあります。純利益率は、特別利益を除くと実際には低いと推測されます。 - 一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%等)との比較
ROEはベンチマークを大幅に超える優良評価ですが、ROAはベンチマークを下回っており、資産効率の改善が求められます。 - 収益性の推移と改善余地
売上高の成長は鈍化しているものの、中期経営計画における原価低減、在庫圧縮、販管費抑制といった収益構造改革は着実に進展しており、利益率の改善に寄与しています。特に売上総利益率は前年同期比で改善しています。今後は売上回復とROA改善に向けた資産の効率的な活用が収益性向上の鍵となります。
11. 市場リスク評価
- ベータ値による市場感応度の評価
ベータ値は0.00と提示されていますが、これは市場感応度が低いことを示す一般的な数値としては不自然なため、データとして採用しません。 - 52週高値・安値のレンジと現在位置
52週高値は1,352円、安値は939円です。現在の株価1,026.0円は、このレンジの中央よりやや安値寄りに位置しています。 - 決算短信に記載のリスク要因(外部環境、為替、地政学等)
決算短信には、消費マインドの悪化、為替変動、関税、海外市況の変動、原材料価格の高騰、天候不順(猛暑等)、連結範囲の変更やM&Aに伴う統合リスク、自己株式取得による資金流出などがリスク要因として挙げられています。
12. バリュエーション分析
- 業種平均PER/PBRとの比較
現在のPER(会社予想)16.40倍は業種平均21.7倍と比較して割安です。PBR(実績)0.65倍も業種平均1.0倍と比較して割安です。 - 目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用)
- 業種平均PERを適用した場合: 21.7倍 × EPS(会社予想)62.56円 = 1,358.95円
- 業種平均PBRを適用した場合: 1.0倍 × BPS(実績)1,588.32円 = 1,588.32円
現在の株価1,026.0円と比較すると、業界平均倍率を適用した目標株価レンジは1,358.95円から1,588.32円となります。
- 割安・割高の総合判断
現在の株価は、PER、PBRともに業界平均と比較して割安な水準にあると判断できます。
13. 市場センチメント分析
- 信用取引の状況(信用買残、信用倍率、需給バランス)
信用買残は259,500株で前週比+7,900株と増加傾向にあります。信用売残は49,600株で前週比-20,800株と減少傾向です。信用倍率は5.23倍と比較的高い水準であり、信用買い残が今後の需給を悪化させる要因となる可能性があります。 - 株主構成(経営陣持株比率、安定株主の状況)
自社(自己株口)が20.26%、日本マスタートラスト信託銀行が11.14%、日本カストディ銀行が5.07%と、機関投資家や信託銀行が大株主として名を連ねています。 - 大株主の動向
データなし
14. 株主還元と配当方針
- 配当利回りや配当性向の分析
配当利回り(会社予想)は3.90%と高水準です。1株配当(会社予想)は40.00円で、これに対する配当性向は約63.9%となり、利益の多くを株主還元に充てる方針が見られます。 - 自社株買いなどの株主還元策
当中間期に自己株式を10,660,000株(約10,312百万円)取得しており、積極的な株主還元策を実施しています。 - 株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策
信託型ESOP(従業員向け株式所有制度)や株式給付信託(BBT)などの株式関連制度も運用されており、役員や従業員へのインセンティブ付与を通じて企業価値向上を図っています。
15. 最近のトピックスと材料
- 適時開示情報の分析(大型受注、新製品、拠点展開等)
- 2026年2月期第2四半期の業績が当初予想と乖離したため、10月8日に業績予想の修正を発表しました。
- 2025年9月2日付で株式会社デイトナ・インターナショナルを完全子会社化し、通期業績予想にその影響を織り込んでいます。
- 当中間期に子会社の譲渡(6社除外)を行い、事業ポートフォリオの見直しを進めています。
- 自己株式の取得を継続的に実施し、株主還元の強化と1株価値の向上を図っています。
- これらが業績に与える影響の評価
事業譲渡による売上高の減少は、利益率改善のための構造改革の一環と位置付けられます。デイトナ・インターナショナルの完全子会社化は、今後の事業展開における新たな収益源とシナジー効果が期待されます。自己株式取得は、発行済株式数の減少を通じてEPS(1株当たり利益)やROE(自己資本利益率)の向上に寄与します。
16. 総評
TSIホールディングスは、アパレル大手としての確固たるブランド力と、非常に強固な財務基盤を持つ企業です。中期経営計画「TIP27」に基づき、EC強化や収益構造改革を進め、利益率改善の兆しを見せています。また、M&Aや新規事業の推進により、事業ポートフォリオの多角化と持続可能性の強化を図っています。株主還元にも積極的で、高配当利回りと自社株買いを実施しています。現在の株価は業界平均と比較して割安感がある一方、売上高の伸び悩みやROAの低さ、営業キャッシュフローの悪化(一時的要因を含む)といった課題も抱えています。今後の焦点は、売上成長の再加速と、デイトナ・インターナショナルとの統合によるシナジー創出、そして改善された利益率を持続可能なものにできるかにあります。
- **ポジティブ要因**: 極めて健全な財務状況、積極的な株主還元、収益構造改革による利益率改善トレンド、業界平均に対する割安なバリュエーション。
- **ネガティブ要因**: 売上高の成長鈍化、一部事業の撤退、営業キャッシュフローの一時的な悪化、特別利益に依存する純利益の変動、ROAの低さ。
- 強み・弱み・機会・脅威の整理
- 強み (Strengths):
- 業界大手としてのブランド力(ゴルフウェア、ナノ・ユニバース等)。
- 非常に強固な財務基盤(自己資本比率、流動比率、負債比率が優良)。
- 積極的な株主還元策(高配当利回り、自社株買い)。
- 収益構造改革による利益率改善の進展。
- 弱み (Weaknesses):
- 売上高の成長鈍化傾向(特に直近期間)。
- 企業財務指標におけるOperating Marginのマイナス計上や、異常項目に起因する純利益の変動が大きく、実質収益性に課題。
- ROAが低く、資産効率の改善余地。
- 営業キャッシュフローの一時的な大幅悪化。
- 機会 (Opportunities):
- ECチャネルの強化による販路拡大と顧客獲得。
- M&A(デイトナ・インターナショナル子会社化)による新たな収益源と事業シナジー。
- アパレル以外のライフスタイル事業(化粧品、SaaS等)の成長可能性。
- 脅威 (Threats):
- 国内消費マインドの低迷やインバウンド需要の不安定さ。
- 激化するアパレル業界の競争環境と構造変化。
- 原材料価格の高騰、為替変動、地政学リスクなどの外部環境要因。
- 自己株式取得による潤沢な現金の減少。
17. 企業スコア
- 成長性: C
売上高は直近12ヶ月および中間期で減少傾向にあり、通期予想の増加は新規買収の影響も含むため、有機的な成長力には課題が見られます。 - 収益性: C
ROEは高いものの、ROAが低く、営業利益率も改善傾向にあるものの絶対水準はまだ低いです。特別利益を除いた実質的な純利益も高くないと判断されます。 - 財務健全性: S
自己資本比率75.4%は極めて高く、流動比率、負債比率も非常に良好な水準です。財務基盤は非常に安定しています。 - 株価バリュエーション: S
PER(会社予想)16.40倍、PBR(実績)0.65倍ともに、業界平均と比較して割安な水準にあります。
企業情報
| 銘柄コード | 3608 |
| 企業名 | TSIホールディングス |
| URL | http://www.tsi-holdings.com/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 素材・化学 – 繊維製品 |
バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)
将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。
現在の指標
| 株価 | 1,026円 |
| EPS(1株利益) | 62.56円 |
| 年間配当 | 3.90円 |
シナリオ別5年後予測
各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。
| シナリオ | 成長率 | 将来PER | 5年後株価 | 期待CAGR |
|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 20.4% | 19.8倍 | 3,126円 | 25.2% |
| 標準 | 15.7% | 17.2倍 | 2,227円 | 17.1% |
| 悲観 | 9.4% | 14.6倍 | 1,433円 | 7.3% |
目標年率別の理論株価(標準シナリオ)
標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。
現在株価: 1,026円
| 目標年率 | 理論株価 | 現在株価との乖離 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 15% | 1,123円 | -97円 (-9%) | ○ 割安 |
| 10% | 1,402円 | -376円 (-27%) | ○ 割安 |
| 5% | 1,769円 | -743円 (-42%) | ○ 割安 |
【判定基準】○割安:現在株価≦理論株価 / △割高:現在株価>理論株価
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このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.5)」によって自動生成されました。
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企業スコアは、AIによる財務・業績データの分析をもとに試験的に算出した指標です。評価方法は現在も検討・改善を重ねており、確立した標準的な指標ではありません。投資判断の唯一の基準ではなく、あくまで参考情報としてご利用ください。