株式会社アイティフォー(証券コード:4743)の個人投資家向け企業分析レポートを以下にまとめます。
1. 企業情報
- 事業内容などのわかりやすい説明
株式会社アイティフォーは独立系のソフトウェア開発会社です。全国の地域金融機関や地方自治体、百貨店などを主要顧客とし、ITソリューションの提供を通じてその業務を支援しています。具体的には、システムの開発・販売と、それらのシステムを維持・運用するための保守サービスや、業務そのものを外部から受託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを展開しています。 - 主力製品・サービスの特徴
- システム開発・販売: 特に金融機関向けの個人ローン関連パッケージや債権管理システムなど、専門性の高いソフトウェアの設計、開発、導入、関連機器の販売を手掛けています。公共分野への提供も強化しています。
- リカーリング: システムの保守・運用、クラウドサービスの提供、地方自治体などの債権回収業務といったBPOサービスで構成され、安定した収益基盤となっています。
2. 業界のポジションと市場シェア
- 業界内での競争優位性や課題について
同社は、地域に密着した金融機関や公共機関向けのITソリューションに特化し、長年にわたる実績と深耕されたノウハウを持つ点が強みです。特に債権管理システムといったニッチな分野での競争優位性を確立しています。IT業界全体としては、DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速に伴う需要の高まりがある一方で、AIなどの新技術への継続的な投資と、IT人材の獲得・育成が共通の課題です。 - 市場動向と企業の対応状況
市場では、金融機関のアナログ業務のデジタル化、キャッシュレス決済への移行、BPOによる業務効率化といったニーズが継続的に高まっています。同社は、人材への積極的な投資(採用・教育・研究開発)を強化し、これらの市場変化に対応しています。また、M&Aや協業を戦略的に活用し、事業領域の拡大と技術力の強化を図ることで、中長期的な成長を目指しています。
3. 経営戦略と重点分野
- 経営陣が掲げるビジョンや戦略
同社は、長期ビジョン「HIGH FIVE 2033」を掲げ、顧客、株主、従業員、社会との良好な関係構築を通じて持続的な発展を目指しています。現在は中期経営計画「FLY ON 2026」に基づき、事業ポートフォリオの拡大、DXの推進、地域還流型ビジネスモデルの強化を重点戦略としています。 - 中期経営計画の具体的な施策や重点分野
新規顧客獲得に加え、既存顧客のリプレイス需要や、新しい機能・システムへの移行支援を強化しています。具体的には、サービサーTCS Web版などの新ソリューションの投入、M&A(例:株式会社アイセルの連結子会社化)や協業を通じた事業領域の拡大・サービス強化、そして人的資本への積極的な先行投資(賃金改定、採用・教育・研究開発費増)を進めています。 - 新製品・新サービスの展開状況(決算短信参照)
金融機関向けソフト開発は堅調に推移し、公共分野での受注も好調です。一部の商流変更でマルチ決済端末販売は減少しましたが、新しい債権管理システム「サービサーTCS Web版」の市場投入などにより、今後の収益貢献が期待されます。
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力
同社の収益モデルは、一度システムを導入すれば継続的な保守費用などが得られる「リカーリング」事業によって裏打ちされており、安定した収益基盤を形成しています。また、金融機関や公共機関といった特定のセクターにおけるDXニーズに合致した提案を行うことで、市場ニーズの変化に柔軟に対応しています。M&Aや人材・研究開発投資を通じて、新たな技術やサービスを取り込む姿勢も見られます。 - 売上計上時期の偏りとその影響
2026年3月期の中間期決算では、株式会社アイセルの連結化タイミングが第3四半期にずれ込んだ影響で、売上高や利益の進捗率が通期予想に対して遅れる結果となりました。これにより、下半期に収益が集中する可能性があり、通期予想の達成には下期での計画通りの受注消化と連結子会社からの貢献が重要となります。
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発の動向や独自性
決算短信では、販売費及び一般管理費の増加要因として研究開発投資の増加が挙げられており、積極的に技術開発に取り組んでいることが示唆されます。特に、金融機関向け債権管理システムや地域密着型ソリューションに特化した長年の実績とノウハウが、同社の技術的な独自性を支えています。 - 収益を牽引している製品やサービス
収益の中心は、システム開発・販売事業における金融機関向け基幹システムや公共分野のソリューション、そしてそれらの保守・運用、BPOサービスを含むリカーリング事業です。これらのサービスが顧客基盤の安定性と継続的な売上を牽引しています。
6. 株価の評価
- EPSやBPSに基づく計算等を用いて、現在の株価との比較
- 現在株価: 1,645.0円
- 1株当たり利益(EPS 会社予想): 113.48円
- 1株当たり純資産(BPS 実績): 735.17円
- 株価収益率(PER 会社予想): 14.50倍
- 株価純資産倍率(PBR 実績): 2.24倍
- 業界平均PER/PBRとの比較
- 情報・通信業の業界平均PER: 23.2倍
- 情報・通信業の業界平均PBR: 2.3倍
同社のPER14.50倍は業界平均(23.2倍)と比較すると割安感があります。一方、PBR2.24倍は業界平均(2.3倍)とほぼ同水準です。
7. テクニカル分析
- 直近の株価推移を参照して、現在の株価が高値圏か安値圏か
直近10日間の株価は、12月1日の1,708円から一時的に調整局面に入り、現時点では1,645円で推移しています。これは年初来高値1,731円に比べるとやや低い水準ですが、年初来安値1,251円からは大きく上昇しており、高値圏に近い位置にあります。 - 年初来高値・安値との位置関係
- 年初来高値: 1,731円
- 年初来安値: 1,251円
現在の株価1,645円は、年間レンジの上限寄りの位置にあります。
- 出来高・売買代金から見る市場関心度
本日の出来高は42,900株、売買代金は70,416千円でした。過去3ヶ月平均出来高(約6.8万株)や過去10日平均出来高(約5.8万株)と比較すると、本日の出来高はやや低く、市場の関心度は平均を下回っている状況です。
8. 財務諸表分析
- 売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価
- 売上高(過去12か月): 20,153百万円
- 営業利益(過去12か月): 3,175百万円
- ROE(実績): 15.39%
- ROA(過去12か月): 8.51%
売上高は過去数年間増加傾向にあり、ROEとROAは一般的なベンチマークを大きく上回る高い水準を維持しており、効率的な経営を示しています。営業利益は直近12か月で前年比減少傾向にありますが、引き続き堅実な水準を維持しています。
- 過去数年分の傾向を比較
売上高と純利益は過去数年を通して着実な成長を遂げています。営業利益は2024年3月期をピークに、直近12か月および2025年3月期予想ではやや減少傾向にありますが、これは今後の成長に向けた人材投資や研究開発投資が増加しているためと考えられます。 - 四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)
2026年3月期の中間期決算は、売上高が通期予想の39.4%、営業利益が28.2%、親会社株主に帰属する当期純利益が32.9%の進捗率となりました。標準的な進捗(約50%)と比較すると、売上・利益ともに遅れが目立ちます。特に営業利益は前年同期比で23.6%減と大きく落ち込んでおり、通期予想の達成には下期での大幅な巻き返しが不可欠です。
9. 財務健全性分析
- 自己資本比率、流動比率、負債比率の評価
- 自己資本比率(実績): 79.5%(2026年3月期中間期末では81.7%)
- 流動比率(直近四半期): 4.47倍
- 負債合計/純資産比(2026年3月期中間期末): 約22.4%
自己資本比率は80%を超える極めて高い水準にあり、強固な財務基盤を有しています。流動比率も4倍を超え、短期的な支払い能力も非常に高いです。負債も純資産に対して低水準であり、財務健全性は非常に優れています。
- 財務安全性と資金繰りの状況
中間期末で9,029百万円、直近四半期で13,070百万円の潤沢な現金及び現金同等物を保有し、営業キャッシュフローも過去12か月で2,600百万円と継続的にプラスです。これは資金繰りに余裕があり、財務面での安定性が極めて高いことを示しています。 - 借入金の動向と金利負担
具体的な借入金の動向の記載はありませんが、純非営業利息収入がプラスであること、また高い自己資本比率と潤沢な現金保有状況から、借入金は抑制されており、金利負担は小さい、または投資からの収益が上回っていると推察されます。
10. 収益性分析
- ROE、ROA、各種利益率の評価
- ROE(実績): 15.39%
- ROA(過去12か月): 8.51%
- 営業利益率(過去12か月): 14.54%
- プロフィットマージン: 14.11%
これらの指標は全て高い水準にあり、同社の収益性の高さを明確に示しています。しかし、2026年3月期中間期においては、営業利益率が前年同期の約15.8%から12.5%に低下しており、短期的な収益性には圧力がかかっている状況です。
- 一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%等)との比較
同社のROE 15.39%は一般的な優良企業のベンチマークである10%を大きく上回っています。また、ROA 8.51%も5%を大きく上回る水準であり、株主資本および総資産を効率的に活用して利益を生み出す能力が高いと評価できます。 - 収益性の推移と改善余地
過去数年間の収益性は良好でしたが、直近の中間期では販管費の増加(人件費、採用費、教育費、研究開発投資)により営業利益率が低下しました。今後のM&Aによる事業拡大や、これらの投資が中長期的な成長と収益性の改善に結びつくかがポイントとなります。安定収益源であるリカーリング事業の成長を維持しつつ、システム開発・販売事業における効率化と高付加価値化が改善余地となります。
11. 市場リスク評価
- ベータ値による市場感応度の評価
ベータ値(5年モンストリー)は0.27です。これは市場全体の値動きに対する感応度が非常に低いことを示しており、市場の変動に対して比較的安定した値動きをする傾向がある銘柄と言えます。 - 52週高値・安値のレンジと現在位置
- 52週高値: 1,731.00円
- 52週安値: 1,251.00円
現在の株価1,645.00円は、52週レンジの上限に近い位置にあります。
- 決算短信に記載のリスク要因(外部環境、為替、地政学等)
決算短信には、主に以下のリスク要因が記載されています。- 連結子会社化に伴う影響: M&Aによる事業統合の成否や、のれん償却などの財務的な影響。
- 人件費等のコスト増加: 人材獲得・育成に関する投資、賃金改定による利益圧迫。
- マクロ経済環境の変化: 金利変動、為替変動、海外景気動向など外部環境の変化が事業に与える影響。
- 公共投資予算の変動: 地方自治体向け事業の性質上、公共投資予算の動向が業績に影響する可能性。
- 特定製品・チャネル依存: 特定の製品や販売チャネルに依存することで、商流変化による影響を受ける可能性。
12. バリュエーション分析
- 業種平均PER/PBRとの比較
- 業界平均PER: 23.2倍に対し、同社PER(会社予想)は14.50倍と割安水準です。
- 業界平均PBR: 2.3倍に対し、同社PBR(実績)は2.24倍とほぼ同水準です。
- 目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用)
- 目標株価(業種平均PER基準): 2,465円
- 目標株価(業種平均PBR基準): 1,691円
PER基準では割安感が強いですが、PBR基準では現在の株価と近い水準を示しています。
- 割安・割高の総合判断
PERに基づく評価では割安感がありますが、PBRは業界平均とほぼ同水準です。収益性や財務健全性の高さは評価できるものの、足元の中間期決算で利益進捗が遅れている点や、コスト増加による利益圧迫を考慮すると、バリュエーションは平均的な水準と判断できます。
13. 市場センチメント分析
- 信用取引の状況(信用買残、信用倍率、需給バランス)
- 信用買残: 92,400株(前週比+5,500株)
- 信用売残: 3,000株(前週比-3,400株)
- 信用倍率: 30.80倍
信用買残が信用売残を大きく上回っており、信用倍率も高いことから、買い方に偏った需給状況が見られます。これは、将来的な株価の上昇局面で、信用買いの決済に伴う売り圧力が強まる可能性を示唆しています。
- 株主構成(経営陣持株比率、安定株主の状況)
大株主には、日本マスタートラスト信託銀行、日本カストディ銀行といった信託銀行のほか、光通信KK投資事業有限責任組合、明治安田生命保険、横浜銀行などが名を連ねています。機関投資家や安定株主が多い構造と言え、特定の株主による株価への影響は限定的と考えられます。経営陣持株比率は15.48%です。 - 大株主の動向
14. 株主還元と配当方針
- 配当利回りや配当性向の分析
- 配当利回り(会社予想): 4.86%
- 1株配当(会社予想): 80.00円
- 配当性向(会社予想、決算短信記載のEPSに基づき計算): 約70.6%
配当利回り4.86%は非常に高く、株主還元に積極的な姿勢を示しています。配当性向も約70.6%と高い水準であり、利益の大部分を配当として株主に還元する方針です。
- 自社株買いなどの株主還元策
2026年3月期中間期においては、自社株買いの実施は小額に留まっており、配当による株主還元を重視していると考えられます。 - 株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策
15. 最近のトピックスと材料
- 適時開示情報の分析(大型受注、新製品、拠点展開等)
- 2026年3月期 第2四半期決算短信: 売上高は前年同期比で減収、営業利益も減益となりました。株式会社アイセルの連結化が第3四半期にずれ込んだことや、人件費・研究開発費などの先行投資が利益を圧迫したことが主な要因として挙げられています。
- 配当予想の修正: 2026年3月期の年間配当予想を、直近公表から80円(中間30円、期末50円)に増額修正しました。これは株主還元意欲の高さを示唆します。
- 株式会社アイセルの連結子会社化: 2025年10月1日付で株式会社アイセルを連結子会社化しました。これにより、第3四半期以降の業績に貢献し、事業領域の拡大が期待されます。
- これらが業績に与える影響の評価
中間期決算の減収減益は短期的なネガティブ要因ですが、会社は通期予想を据え置いており、下期の巻き返しとアイセル連結効果に期待を寄せています。配当増額は投資家へのポジティブなメッセージであり、株価の下支え要因となる可能性があります。ただし、先行投資が利益を圧迫する状況が続く可能性や、M&A後の統合プロセス、のれん償却などの影響についても注視が必要です。
16. 総評
株式会社アイティフォーは、金融機関や公共機関向けのITソリューションに強みを持つ独立系ソフト開発会社です。強固な財務基盤と安定的なリカーリング事業を擁し、高い収益性を誇ります。デジタル化の進展を背景に市場ニーズは旺盛であり、積極的な人材投資やM&Aを通じて事業拡大を図る経営戦略は、中長期的な成長機会に繋がり得ます。
一方で、直近の中間期決算では、先行投資の増加や連結化のずれ込みにより、売上高・営業利益の進捗率が通期予想に対して遅れる結果となりました。コスト増加による短期的な利益圧迫は懸念材料であり、下期での計画達成と投資効果の発現が今後の焦点となります。株価はPERで見て業界平均より割安感があるものの、PBRは平均水準であり、直近の株価は年初来高値圏にあります。信用買残が多い需給状況は潜在的な売り圧力となる可能性をはらんでいます。
- 強み: 極めて健全な財務体質、高い株主還元意欲、安定的なリカーリング収益、特定のニッチ市場での強み。
- 弱み: 短期的な利益率の低下、通期予想に対する中間期の進捗遅れ、信用需給の偏り。
- 機会: DX、キャッシュレス化といった市場ニーズの継続、M&Aや協業による事業拡大。
- 脅威: コスト増加の継続、M&A後の統合リスク、マクロ経済の変動。
17. 企業スコア
- 成長性: B(売上は過去数年堅調に推移し、受注残も増加しているが、中間期の売上減と通期予想進捗の遅れが見られるため)
- 収益性: A(ROE15.39%、ROA8.51%は非常に高い水準だが、中間期には営業利益率の低下が見られたため)
- 財務健全性: S(自己資本比率81.7%、流動比率4.47倍と極めて高く、現金も潤沢であるため)
- 株価バリュエーション: A(PERは業界平均より割安感がある一方、PBRはほぼ平均水準であるため)
企業情報
| 銘柄コード | 4743 |
| 企業名 | アイティフォー |
| URL | http://www.itfor.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 情報通信・サービスその他 – 情報・通信業 |
バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)
将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。
現在の指標
| 株価 | 1,645円 |
| EPS(1株利益) | 113.48円 |
| 年間配当 | 4.86円 |
シナリオ別5年後予測
各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。
| シナリオ | 成長率 | 将来PER | 5年後株価 | 期待CAGR |
|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7.5% | 16.7倍 | 2,722円 | 10.8% |
| 標準 | 5.8% | 14.5倍 | 2,182円 | 6.1% |
| 悲観 | 3.5% | 12.3倍 | 1,660円 | 0.5% |
目標年率別の理論株価(標準シナリオ)
標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。
現在株価: 1,645円
| 目標年率 | 理論株価 | 現在株価との乖離 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 15% | 1,099円 | +546円 (+50%) | △ 割高 |
| 10% | 1,373円 | +272円 (+20%) | △ 割高 |
| 5% | 1,732円 | -87円 (-5%) | ○ 割安 |
【判定基準】○割安:現在株価≦理論株価 / △割高:現在株価>理論株価
関連情報
証券会社
このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.5)」によって自動生成されました。
本レポートは、不特定多数の投資家に向けた一般的な情報提供を目的としており、個別の投資ニーズや状況に基づく助言を行うものではありません。記載されている情報は、AIによる分析や公開データに基づいて作成されたものであり、その正確性、完全性、適時性について保証するものではありません。また、これらの情報は予告なく変更または削除される場合があります。
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