分析レポート:日本石油輸送 (9074)
1. 企業情報
- 事業内容のわかりやすい説明
日本石油輸送は、ENEOSホールディングス傘下の企業で、主に石油製品や液化天然ガス(LNG)などの高圧ガス、石油化学製品、その他の一般貨物を鉄道タンク車やトラック、コンテナなどを利用して輸送する総合物流企業です。鉄道による石油・高圧ガス輸送では業界トップクラスの取扱量を誇ります。輸送事業の他に、コンテナや不動産の賃貸、太陽光発電事業などの資産運用も手掛けています。 - 主力製品・サービスの特徴
- 石油輸送事業: ガソリンや灯油などの石油製品を鉄道タンク車やトラックで効率的に輸送します。ENEOSグループを主要顧客に持ち、安定的な輸送需要があります。
- 高圧ガス輸送事業: LNGなどを鉄道コンテナやトラック、複合輸送で提供しています。環境負荷の低いエネルギー輸送として需要が拡大しています。
- 化成品・コンテナ輸送事業: 石油化学製品や各種コンテナの輸送を行います。
- 資産運用事業: 各種コンテナのリース、鉄道用保冷・冷凍コンテナのレンタル、太陽光発電、不動産賃貸事業など、多角的な収益源を持っています。
2. 業界のポジションと市場シェア
- 業界内での競争優位性や課題について
日本石油輸送は、鉄道輸送において業界首位の取扱量を誇り、特に石油・高圧ガス輸送の分野で確固たる地位を築いています。親会社であるENEOSグループとの連携により、安定した輸送需要と事業基盤を確保している点が大きな競争優位性です。また、鉄道とトラックを組み合わせた複合一貫輸送のノウハウも強みです。
課題としては、燃料価格の高騰、乗務員の高齢化による人手不足、人件費上昇といった外部環境の変化、および輸送インフラへの継続的な投資が必要となる点が挙げられます。 - 市場動向と企業の対応状況
国内の陸上輸送市場は、原燃料価格の変動や人手不足といった課題に直面しつつも、物流の安定供給への需要は根強くあります。脱炭素社会への移行に伴い、鉄道輸送はトラック輸送に比べて環境負荷が低いことから、モーダルシフト推進の追い風を受ける可能性があります。同社は、LNG輸送の新規案件獲得など、成長分野への積極的な展開を行うことで市場ニーズの変化に対応しています。運賃改定を通じて、輸送コスト上昇に対応する動きも見られます。
3. 経営戦略と重点分野
- 経営陣が掲げるビジョンや戦略
中期経営計画(2024年度~2026年度)において、安全・安定輸送の提供を基盤とし、持続的な成長と企業価値向上を目指しています。具体的には、鉄道・トラックの強みを活かした輸送インフラの強化、高圧ガス(特にLNG)輸送事業の拡大、運賃改定による収益性の改善、そして人手不足に対応するための効率化や人材育成などが重点分野として掲げられています。 - 中期経営計画の具体的な施策や重点分野
- 安全・安定輸送の徹底と顧客基盤の維持・拡大。
- 運賃改定等の実施による収益性の改善。
- 高圧ガス輸送事業(LNG等)における新規案件獲得及び事業領域の拡大。
- 設備投資と人件費増に対する効率的な経営資源の配分。
- 新製品・新サービスの展開状況(決算短信参照)
決算短信からは、高圧ガス輸送事業におけるLNGの新規案件獲得が売上増加に寄与していることが確認できます。これは、エネルギー需要の変化に対応する重要な取り組みと位置付けられます。
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力
同社の主要収益モデルは、石油製品、高圧ガス、化成品等の輸送サービスにありますが、インフラを保有・活用する事業特性から、設備投資負担は大きいものの、安定的な契約に基づく収益が期待できます。環境意識の高まりから、鉄道輸送が見直される傾向にあり、LNG輸送などへ事業を拡大している点は、市場ニーズの変化への適応力が高いと言えます。一方で、輸送ニーズの変動や燃料価格の動向が収益を左右するリスクも内包しています。 - 売上計上時期の偏りとその影響
データなし
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発の動向や独自性
具体的な技術開発の独自性に関する情報提供はありません。しかし、鉄道輸送におけるトップシェアを維持するためには、車両技術、運行管理システム、貨物コンテナの多様化などにおいて、効率性や安全性を高める技術的な取り組みが継続的に行われていると推測されます。 - 収益を牽引している製品やサービス
現在の収益を最も牽引しているのは、依然として「石油輸送事業」です。決算短信では、鉄道タンク車使用料改定や主要顧客の運賃改定が寄与し、セグメント利益の大幅改善が見られます。また、LNGを含む「高圧ガス輸送事業」も売上は増加しており、今後の成長ドライバーとして期待されます。
6. 株価の評価
- EPSやBPSに基づく計算等を用いて、現在の株価との比較
- 株価: 4,795.0円
- EPS(会社予想): 393.10円
- PER(会社予想): 4,795.0円 ÷ 393.10円 = 12.20倍
- BPS(実績): 8,176.54円
- PBR(実績): 4,795.0円 ÷ 8,176.54円 = 0.59倍
現在の株価は、会社予想のEPSに基づくPERが12.20倍、実績BPSに基づくPBRが0.59倍となっています。
- 業界平均PER/PBRとの比較
- 業界平均PER: 8.1倍
- 業界平均PBR: 0.5倍
同社のPER12.20倍は業界平均8.1倍と比較して割高であり、PBR0.59倍も業界平均0.5倍と比較してやや割高な水準です。
7. テクニカル分析
- 直近の株価推移を参照して、現在の株価が高値圏か安値圏か
現在の株価4,795円は、直近10日間の株価推移を見ると、12月15日の本日高値4,840円に非常に近い水準にあります。 - 年初来高値・安値との位置関係
年初来高値が4,840円、年初来安値が2,680円であるため、現在の株価は年初来高値に極めて近い、高値圏に位置しています。52週高値(4,840円)と52週安値(2,680円)に対しても同様です。 - 出来高・売買代金から見る市場関心度
本日の出来高は6,500株、売買代金は30,771千円と、時価総額約159億円の企業としては比較的少ない水準です。これは、特定のニュースやイベントがない限り、日常的な市場の関心度が限定的である可能性を示唆します。一方、流動性が低いことで、一度市場の注目を集めると株価が大きく動きやすい特性も持ち合わせます。
8. 財務諸表分析
- 売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価
過去12ヶ月の連結売上高は37,896百万円、純利益は1,442百万円です。ROE(過去12ヶ月)は5.54%、ROA(過去12ヶ月)は2.82%となっています。 - 過去数年分の傾向を比較
| 項目 | 過去12ヶ月 | 2025/3 | 2024/3 | 2023/3 | 2022/3 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 37,896百万円 | 37,090 | 34,985 | 35,219 | 34,262 |
| 営業利益 | 1,926百万円 | 1,555 | 1,562 | 1,579 | 1,458 |
| 純利益 | 1,442百万円 | 1,262 | 1,154 | 1,227 | 1,088 |
売上高は過去数年で緩やかな増加傾向にあり、利益も同様に増加基調が見られます。特に報告された過去12ヶ月の数値は、直近数年で最高の水準です。
- 四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)
2026年3月期第2四半期(中間期)決算では、売上高17,885百万円(前年同期比+4.7%)、営業利益630百万円(同+143.1%)と増収増益を達成しました。
通期予想(修正後)に対する進捗率は、売上高46.8%、営業利益35.0%、純利益39.0%です。売上高は半期として概ね標準的な進捗ですが、営業利益と純利益の進捗率はやや遅れており、下期での採算改善が通期目標達成の鍵となります。
9. 財務健全性分析
- 自己資本比率、流動比率、負債比率の評価
- 自己資本比率(実績): 60.0% (直近四半期 60.9%)
- 流動比率(直近四半期): 1.66
- 負債比率(Total Debt/Equity、直近四半期): 32.70%
自己資本比率は60.0%を超え、非常に高い水準にあり、財務基盤は強固です。流動比率も1.66と短期的な支払い能力も十分に高く、負債比率も低く抑えられています。
- 財務安全性と資金繰りの状況
高い自己資本比率と流動比率から、財務安全性は極めて良好と評価できます。営業キャッシュフローは過去12ヶ月で5,320百万円と堅調であり、安定した資金創出力があります。 - 借入金の動向と金利負担
総負債は直近四半期で8,840百万円ですが、高い自己資本比率に対しては相対的に低く、財務の安定性を損なうレベルではありません。Interest Expense(過去12ヶ月)129百万円に対し、EBIT2,270百万円であることから、金利負担は収益力に対し十分に管理可能な範囲にあります。
10. 収益性分析
- ROE、ROA、各種利益率の評価
- ROE(過去12ヶ月): 5.54%
- ROA(過去12ヶ月): 2.82%
- 営業利益率(過去12ヶ月): 4.49%
- 売上総利益率(過去12ヶ月、Gross Profit/Total Revenue): 約12.17%
- 一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%等)との比較
ROE(5.54%)は一般的なベンチマークである10%を下回っており、ROA(2.82%)も5%を下回っています。これは、資本効率が業界平均や優良企業と比較して低い可能性を示唆します。 - 収益性の推移と改善余地
中間決算では営業利益率が前年同期の1.52%から3.52%へと大きく改善しており、収益性向上の兆しが見られます。運賃改定やコスト削減の取り組みが寄与していると考えられます。今後、高圧ガス輸送事業の採算性改善や固定費効率化により、さらなる収益性向上が期待されます。
11. 市場リスク評価
- ベータ値による市場感応度の評価
ベータ値(5Y Monthly)は0.24と非常に低いです。これは市場全体の動きに対する株価の変動が小さいことを意味し、景気変動の影響を受けにくいディフェンシブな特性を持つ銘柄と言えます。 - 52週高値・安値のレンジと現在位置
52週高値は4,840.00円、52週安値は2,680.00円です。現在の株価4,795.0円は52週高値に非常に近く、レンジの上限に位置しています。 - 決算短信に記載のリスク要因(外部環境、為替、地政学等)
- 原燃料価格や輸送コストの高騰
- 乗務員の高齢化による人手不足および人件費上昇
- 為替・国際貿易環境の変化
- グループ再編(子会社間の吸収合併)に伴う一時的な比較可能性の低下
12. バリュエーション分析
- 業種平均PER/PBRとの比較
- 同社PER(会社予想)12.20倍に対し、業種平均PERは8.1倍。
- 同社PBR(実績)0.59倍に対し、業種平均PBRは0.5倍。
現在の株価指標は、業種平均と比較して、PERでは割高感があり、PBRでもやや割高な水準にあります。
- 目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用)
- EPS(会社予想)393.10円 × 業種平均PER 8.1倍 = 3,184円
- BPS(実績)8,176.54円 × 業種平均PBR 0.5倍 = 4,088円
これらの算出に基づくと、目標株価レンジは3,184円~4,088円となります。現在の株価4,795円は、これらの目標株価レンジを上回っています。
- 割安・割高の総合判断
業界平均との比較では、現在の株価は割高と判断されます。ただし、独自の事業基盤や安定性、今後の成長期待が織り込まれている可能性も考慮する必要があります。
13. 市場センチメント分析
- 信用取引の状況(信用買残、信用倍率、需給バランス)
信用買残が57,700株、信用売残が1,500株で、信用倍率は38.47倍と非常に高いです。これは信用買いが多い一方で、信用売りが極めて少ない状態を示しており、将来的な売り圧力となる可能性を秘めています。直近週で信用買残が減少している点は好材料です。 - 株主構成(経営陣持株比率、安定株主の状況)
ENEOSホールディングスが29.03%を保有する筆頭株主であり、安定した大株主です。Insidersの保有割合は55.41%と高く、経営陣が会社の株式を多く保有していることを示します。機関投資家の保有割合は3.19%と低く、特定の機関投資家による大規模な売買動向には影響されにくいと推測されます。 - 大株主の動向
UHPartnersや光通信KKなどの投資ファンドも上位株主に入っており、これらの動向は今後注目される可能性があります。
14. 株主還元と配当方針
- 配当利回りや配当性向の分析
配当利回り(会社予想)は2.09%(年間配当100.00円)です。Payout Ratio(配当性向)は22.92%と、利益に対する配当の割合は健全な水準にあり、企業が内部留保や成長投資も適切に行っていることが伺えます。 - 自社株買いなどの株主還元策
中間決算短信によると、中間期における自己株式取得は実質的に行われていません。安定配当を基本とする方針と見られます。 - 株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策
データなし
15. 最近のトピックスと材料
- 適時開示情報の分析(大型受注、新製品、拠点展開等)
2026年3月期第2四半期(中間期)決算短信では、通期業績予想の上方修正が発表されました。これは、石油輸送事業における鉄道タンク車使用料改定や主要顧客の運賃改定が奏功したこと、高圧ガス輸送事業でLNG輸送の新規案件が増加したこと、化成品・コンテナ輸送事業で減価償却費などの経費が減少したことなどが主な要因です。 - これらが業績に与える影響の評価
運賃改定は短期的な収益改善に直結し、LNGの新規案件は中長期的な成長に寄与すると考えられます。通期予想の上方修正はポジティブな材料であり、事業環境の変化に合わせた収益構造の改善が進んでいることを示しています。
16. 総評
日本石油輸送は、鉄道輸送業界における確固たるポジションとENEOSグループ傘下という安定した事業基盤を持つ企業です。高い自己資本比率に裏付けられた強固な財務健全性は特筆すべき点です。LNG輸送など成長分野への取り組みも見られ、中期的な事業の持続可能性は高いと考えられます。
一方で、ROEやROAといった収益性指標は業界平均や一般的なベンチマークと比較して低く、資本効率の改善は今後の課題です。現在の株価は年初来高値圏にあり、業種平均PER/PBRとの比較では割高感が見られます。市場全体の変動に左右されにくい低ベータ値は、安定志向の投資家にとっては魅力となり得ます。
強み
- 鉄道輸送における業界首位のシェアと経験。
- ENEOSグループ傘下による安定した事業基盤と顧客。
- 極めて高い自己資本比率と健全な財務状況。
- 運賃改定やLNG輸送など、収益改善に向けた具体的な施策。
- ディフェンシブな特性を持つ低いベータ値。
弱み
- ROE、ROAが業界平均やベンチマークと比較して低水準。
- 高圧ガス輸送事業の採算性改善がまだ道半ば。
- 輸送コスト高騰や人手不足といった外部環境リスク。
機会
- 脱炭素化に向けたモーダルシフトの進展による鉄道輸送需要の増加。
- LNGなどの環境配慮型エネルギー輸送の需要拡大。
- 運賃改定による収益構造の継続的な改善。
脅威
- 原燃料価格の高騰やサプライチェーンの混乱。
- 人件費上昇、インフラ維持・更新コストの増加。
- 景気変動による輸送需要の変動。
- 財務的な安定性を重視する投資家には魅力的。
- 収益性改善が継続するかどうか、特に高圧ガス事業の採算改善に注目。
- 株価は高値圏にあり、バリュエーションは割高感があるため、エントリーポイントは慎重に検討すべき。
- 安定配当を継続しており、配当利回りも一定程度確保されている。
17. 企業スコア
- 成長性: A (売上成長率の前年比+4.7%(中間期)、通期予想上方修正、LNG新規案件獲得など、成長に向けた取り組みが評価される)
- 収益性: C (ROE 5.54%、ROA 2.82%と一般的なベンチマークを下回る。営業利益率は改善傾向にあるものの、絶対値はまだ低い)
- 財務健全性: S (自己資本比率60.9%と非常に高く、流動比率、D/E比率も良好な水準)
- 株価バリュエーション: C (PER 12.20倍、PBR 0.59倍ともに業界平均と比較して割高感がある)
企業情報
| 銘柄コード | 9074 |
| 企業名 | 日本石油輸送 |
| URL | http://www.jot.co.jp/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 運輸・物流 – 陸運業 |
バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)
将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。
現在の指標
| 株価 | 4,795円 |
| EPS(1株利益) | 393.10円 |
| 年間配当 | 2.09円 |
シナリオ別5年後予測
各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。
| シナリオ | 成長率 | 将来PER | 5年後株価 | 期待CAGR |
|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5.3% | 14.0倍 | 7,125円 | 8.3% |
| 標準 | 4.0% | 12.2倍 | 5,847円 | 4.1% |
| 悲観 | 2.4% | 10.4倍 | 4,595円 | -0.8% |
目標年率別の理論株価(標準シナリオ)
標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。
現在株価: 4,795円
| 目標年率 | 理論株価 | 現在株価との乖離 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 15% | 2,913円 | +1,882円 (+65%) | △ 割高 |
| 10% | 3,638円 | +1,157円 (+32%) | △ 割高 |
| 5% | 4,590円 | +205円 (+4%) | △ 割高 |
【判定基準】○割安:現在株価≦理論株価 / △割高:現在株価>理論株価
関連情報
証券会社
このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.5)」によって自動生成されました。
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