1. 企業情報

日新商事は、ENEOS系の石油製品販売を主力とする商社です。具体的な事業は多岐にわたり、以下の3つのセグメントで構成されています。

  • 石油関連事業: 直営サービスステーションでの燃料油販売、卸売、産業用燃料、LPガス、カーケア(洗車、車検、修理、保険など)、カーリース・レンタカー、合成樹脂原料などの機能性化学品、農業用資材(光合成促進材、CO2施用コントローラーなど)の販売などを展開しています。
  • 再生可能エネルギー関連事業: バイオマス発電燃料(パームヤシ殻、空果房ペレットなど)、太陽光発電事業などを手掛けています。
  • 不動産事業: オフィスビルや住宅の賃貸、賃貸マンション「EDIAN」シリーズの企画・開発・運営、並びにプロパティマネジメントを行っています。

主力製品・サービスの特徴

主力である「石油関連事業」は、ENEOSグループとの連携を背景に、関東や中部地方を中心に広範な顧客基盤を持っています。燃料油販売に加え、カーケアサービスを強化することで、安定的な収益源となっています。また、再生可能エネルギー関連事業は、脱炭素社会への移行期において、同社の新たな成長ドライバーとなる可能性を秘めていますが、現状では採算性の課題に直面しています。不動産事業は、安定した賃料収入を確保しています。

2. 業界のポジションと市場シェア

業界内での競争優位性や課題について

日新商事はENEOSグループの一員であり、強固なサプライチェーンとブランド力を背景に、石油製品販売においては一定の競争優位性を持っています。顧客への多角的なサービス提供(燃料、カーケア、保険など)も強みです。
一方、課題としては、主要事業である石油関連事業が、国内の燃料油需要減少という構造的な逆風に直面している点が挙げられます。また、成長分野として注力する再生可能エネルギー関連事業では、原料仕入価格の高騰や設備トラブルによる損失計上など、採算性の悪化が喫緊の課題となっています。

市場動向と企業の対応状況

石油製品市場は、中東情勢による原油価格の変動や、政府の燃料油価格抑制策の影響を受ける一方、国内では夏季の需要により減少ペースが鈍化する傾向が見られます。同社は、燃料油販売量の確保とカーケアサービスの強化により、市場の変化に対応しようとしています。
再生可能エネルギー市場では、世界的な脱炭素化の流れが継続するものの、バイオマス燃料の調達コスト上昇や、太陽光発電に関する政策・環境変化が不透明要因となっています。同社は再生可能エネルギー事業を戦略的に重要視していますが、現状では採算悪化と設備リスクという課題が顕在化しており、事業ポートフォリオの見直しやリスク管理体制の強化が求められる状況です。

3. 経営戦略と重点分野

経営陣が掲げるビジョンや戦略

決算短信において、明確な中期経営計画の数値目標やビジョンの詳細は記載されていません。しかし、再生可能エネルギー関連事業を今後の成長分野として位置づけていることは示唆されています。

中期経営計画の具体的な施策や重点分野

  • データなし

新製品・新サービスの展開状況

決算短信によると、石油関連事業では、直営部門における燃料油販売数量増加とカーケア収益(洗車、レンタカーなど)の拡大が寄与しています。また、機能性化学品や農業関連資材などの多角的な製品展開も継続しています。不動産事業では、賃貸マンション「EDIAN」シリーズの堅調な稼働が報告されています。

4. 事業モデルの持続可能性

日新商事の収益モデルは、安定した石油関連事業を基盤としつつ、再生可能エネルギー関連事業や不動産事業で多角化を図るものです。
石油関連事業は、ENEOSグループとしての安定した供給力と既存顧客基盤があるため、引き続きキャッシュフローの源泉となるでしょう。しかし、国内市場の構造的な縮小トレンドの中で、いかに収益性を維持・向上させるかが課題です。
再生可能エネルギー関連事業は、市場ニーズの変化(脱炭素化の動き)に対応しようとするものですが、現時点では原燃料価格高騰や設備トラブルによる損失計上が続いており、事業モデルとしての持続性には不透明感が残ります。収益性改善に向けた具体的な施策やリスク管理の強化が急務です。

売上計上時期の偏りとその影響

  • データなし

5. 技術革新と主力製品

技術開発の動向や独自性

同社は機能性化学品や農業関連資材(光合成効率促進材、CO2施用コントローラーなど)も手掛けていますが、決算短信には具体的な技術革新や研究開発動向の詳細な記載はありません。

収益を牽引している製品やサービス

直近の四半期決算から、石油関連事業の燃料油販売とレンタカー・洗車などのカーケアサービスが収益を牽引しています。特に、石油関連事業のセグメント利益は前年同期比で44.3%増加しており、同社の中核的な収益源としての役割を強めています。

6. 株価の評価

  • EPSに基づく株価: 会社予想EPS 539.21円に基づくと、現在の株価1,194.0円に対するPERは2.21倍です。この予想EPSには約50億円の一過性の投資有価証券売却益が含まれているため、実質的な事業利益に基づくPERはこれより高くなる点に留意が必要です。
  • BPSに基づく株価: 実績BPS 3,863.73円に基づくと、現在の株価1,194.0円に対するPBRは0.31倍です。これは純資産価値に対して非常に割安な水準にあります。
  • 業界平均PER/PBRとの比較:
    • 業界平均PER: 10.1倍
    • 業界平均PBR: 0.7倍
      同社のPER 2.21倍、PBR 0.31倍は、いずれも業界平均と比べて大幅に低い水準にあり、特にPBRは顕著な割安感を示しています。PERの低さは、一過性利益がEPSを押し上げている影響が大きいと考えられます。

7. テクニカル分析

  • 直近の株価推移: 直近10日間の株価は、1,223円から1,194円の間で推移しており、やや下落傾向にあります。
  • 高値圏か安値圏か: 現在の株価1,194.0円は、年初来高値1,430円に対して約16.5%安、年初来安値821円に対して約45.4%高の水準にあります。52週高値・安値のレンジの中間やや高値寄りに位置していますが、50日移動平均線1,259.10円を下回っており、短期的な下落トレンドを示唆しています。200日移動平均線1,094.97円は上回っており、中長期的には上昇基調にあるとも見えます。
  • 出来高・売買代金から見る市場関心度: 直近の出来高は1,200株、売買代金は1,422千円と非常に少なく、市場の関心度は低い状態にあると考えられます。これは、株価の変動が小規模な取引によっても影響を受けやすいことを示しています。

8. 財務諸表分析

売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価

指標 過去12か月 2025年3月期 2024年3月期 2023年3月期 2022年3月期
売上高 (百万円) 39,811 39,034 38,732 38,897 36,466
営業利益 (百万円) 99 384 506 640 427
親会社株主に帰属する純利益 (百万円) 315 615 297 286 490
ROE (実績) 1.04% 2.73%
ROA (実績) 0.15%

過去数年分の傾向を比較

売上高は概ね360億円~390億円台で横ばいから微増傾向にあります。これは石油関連事業の堅調さと、再生可能エネルギー事業と不動産事業の貢献によるものです。
しかし、営業利益は2023年3月期の640百万円をピークに減少傾向にあり、過去12ヶ月では99百万円と大幅に減少しています。これは、再生可能エネルギー関連事業における原材料費高騰や設備損傷による損失が大きく影響しています。
純利益は年度によって変動が見られます。2025年3月期は615百万円と回復していますが、これは短信記載の特別利益(投資有価証券売却益)が大きく寄与している可能性があります。
ROE (過去12ヶ月 1.04%) およびROA (過去12ヶ月 0.15%) は低水準であり、資本効率や資産活用効率に課題があることを示しています。

四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)

2026年3月期第2四半期(中間期)の決算では、

  • 売上高は20,145百万円で、通期予想42,500百万円に対し進捗率約47.4%とほぼ順調な進捗です。
  • 営業利益は△62百万円の損失となり、通期予想100百万円に対して大幅な未達(赤字転落)となりました。主な要因は再生可能エネルギー関連事業の採算悪化と減損損失です。
  • 親会社株主に帰属する中間純利益は△261百万円の損失を計上しています。通期予想の3,600百万円は、一過性の投資有価証券売却益約5,008百万円を織り込んでいるため、中間期の損失から単純な進捗評価は困難です。

9. 財務健全性分析

  • 自己資本比率: 57.8%(実績)または58.9%(中間期計算値)と非常に高く、財務基盤は極めて安定しています。
  • 流動比率: 2.18倍(直近四半期)と良好な水準であり、短期的な支払い能力に問題はありません。
  • 負債比率: Total Debt/Equityは35.73%(直近四半期)と低く、負債は適切に管理されています。
  • 財務安全性と資金繰りの状況: 現金及び預金は中間期で減少していますが、営業キャッシュフローはプラスであり、財務安全性は高い水準にあります。
  • 借入金の動向と金利負担: 長期借入金返済等で借入金は減少傾向にあるとの記述があり、金利負担も安定していると見られます。

10. 収益性分析

  • ROE: (実績) 2.73%、(過去12ヶ月) 1.04%
  • ROA: (過去12ヶ月) 0.15%
  • 各種利益率: Profit Margin 0.79%、Operating Margin (過去12ヶ月) -0.90%
  • 一般的なベンチマークとの比較:
    • ROE: ベンチマーク10%に対し、同社は1.04%と大幅に低いです。
    • ROA: ベンチマーク5%に対し、同社は0.15%と大幅に低いです。
  • 収益性の推移と改善余地: 営業利益率は過去12ヶ月でマイナスとなっており、全体的な収益性は非常に低い状況です。特に再生可能エネルギー事業の採算悪化が収益性を圧迫しており、この分野の構造改革やコスト管理の徹底が不可欠です。石油関連事業は安定していますが、事業全体の収益性を向上させるには、不採算事業の改善が最重要課題です。

11. 市場リスク評価

  • ベータ値: 0.04(5年マンスリー)と非常に低い値であり、市場全体の動きに対する株価変動の感応度が低いことを示しています。これにより、市場全体が変動しても同社の株価は比較的安定する傾向があると考えられます。
  • 52週高値・安値のレンジと現在位置: 52週高値1,430円、52週安値821円に対し、現在の株価1,194.0円は、レンジの中間やや高値寄りの位置にあります。
  • 決算短信に記載のリスク要因:
    • PKS等の原燃料価格変動リスク
    • 太陽光発電設備等の災害リスクおよび保守コスト
    • 為替変動リスク(海外事業の収益に影響)
    • 原油価格変動リスク
    • 政策・補助金の変更リスク
    • 今期の純利益が多額の一過性特別利益に依存しているため、その計上可否や金額変動も重要なリスク要因となります。

12. バリュエーション分析

  • 業種平均PER/PBRとの比較:
    • 同社PER(予想)2.21倍に対し、業種平均PERは10.1倍であり、同社株価はPERで見ると業種平均より大幅に割安です。ただし、このPERは約50億円の一過性利益で押し上げられたEPSに基づいています。
    • 同社PBR(実績)0.31倍に対し、業種平均PBRは0.7倍であり、同社株価はPBRで見ても業種平均より大幅に割安です。純資産価値に対して極めて低い評価を受けていると言えます。
  • 目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用):
    • 目標株価(業種平均PER基準):477円
    • 目標株価(業種平均PBR基準):2,705円
      PER基準の目標株価が現在の株価(1,194円)より大幅に低いのは、EPSが特別利益により歪んでいるため、相対的にPERが低く算出されるためです。一方、PBR基準では現在の株価より大幅に高く、純資産価値から見れば割安な状況を示唆しています。この乖離は、収益性(PERのベースとなる利益)と資産価値(PBRのベースとなる純資産)に対する市場の評価が異なっていることを表します。
  • 割安・割高の総合判断: PBRが極端に低く、純資産の観点では割安と判断できます。PERは一過性利益によって計算値が低くなっている点を考慮する必要がありますが、現状の株価水準でも総じて割安と評価される可能性があります。

13. 市場センチメント分析

  • 信用取引の状況: 信用買残は54,100株、信用売残は0株となっており、信用倍率は0.00倍です。信用売りが入っておらず、買い残のみが存在する状況です。前週比で信用買残は-6,700株減少しており、買い圧力が一部緩和されている可能性があります。ただし、出来高が少ないため、信用残高は相対的に大きく、需給バランスには注意が必要です。
  • 株主構成: ENEOSホールディングス(15%)、日新(13.03%)、自社(自己株口12.15%)が主要な株主であり、安定株主による保有比率が高いです。経営陣、特に筒井氏の関係者も上位株主に入っており、インサイダー持ち株比率も39.98%と高いです。
  • 大株主の動向: 具体的な大株主の売買動向については情報がありません。

14. 株主還元と配当方針

  • 配当利回りや配当性向の分析:
    • 配当利回り(会社予想):1.76%(現在の株価1,194円、予想1株配当21円に基づく)
    • 1株配当(会社予想):21.00円
    • 配当性向(会社予想):55.05%
      2026年3月期の年間配当予想21円は、中間配当10円(実施済)と期末配当11円の合計です。この配当性向は、一過性の投資有価証券売却益を織り込んだEPSに基づいて計算されているため、特別利益を除いた実質的な事業利益で見ると、高くなる可能性があります。
  • 自社株買いなどの株主還元策: 決算短信では、通期純利益に計上される特別利益の取り扱いについて、「株主還元の拡充」を含む成長投資、財務健全化、株主還元のバランスを考慮して検討する方針が明記されています。自社株買いの可能性も示唆されています。
  • 株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策: データなし

15. 最近のトピックスと材料

適時開示情報の分析

2026年3月期中間決算短信において、通期業績予想に「関連会社株式売却益約5,008百万円」を特別利益として計上する見込みであると報告されています。

これらが業績に与える影響の評価

この投資有価証券売却益は、当期純利益を大幅に押し上げ、通期で増益基調となる最大の要因となります。通期予想における親会社株主に帰属する当期純利益3,600百万円の大部分をこの特別利益が占めることになります。しかし、これは一過性の利益であり、来期以降の収益に直接貢献するものではありません。したがって、この特別利益の計上が実現し、かつその資金がどのように活用されるか(成長投資、財務健全化、株主還元など)が、長期的な企業価値向上にとって重要となります。

16. 総評

日新商事は、ENEOS系の燃料商社として、石油関連事業を安定的な収益基盤としています。多角化戦略として、再生可能エネルギーや不動産事業にも取り組んでいます。

  • 強み:
    • ENEOS系という強固な事業基盤とサプライチェーン。
    • 石油関連事業における安定的な収益力と多角的な顧客サービス。
    • 非常に高い自己資本比率と流動比率を持つ財務健全性。
    • PBRが極めて低く、資産価値から見て割安感が強い。
  • 弱み:
    • 主要事業である石油関連事業における国内需要の構造的減少。
    • 成長分野と位置付ける再生可能エネルギー関連事業の採算性悪化と設備トラブルによる損失計上。
    • 低いROE、ROAに示されるように、全体的な利益率と資本効率の低さ。
    • 今期の純利益が多額の一過性特別利益に依存している点。
  • 機会:
    • 再生可能エネルギー市場の成長ポテンシャル。事業構造改善やリスク管理強化により、今後の収益貢献が期待される。
    • 多額の特別利益の使途によっては、成長投資や株主還元強化につながる可能性。
  • 脅威:
    • 原油価格やバイオマス燃料価格の変動、為替変動リスク。
    • 自然災害による設備損傷リスク。
    • 石油製品需要の長期的な減少傾向。

日新商事は、堅固な財務基盤と安定した基盤事業を有しているものの、収益性の改善と成長分野の確立が喫緊の課題です。今期は一過性の特別利益により純利益が大幅に押し上げられる見込みですが、本業の収益力を継続的に向上させられるかが問われます。資産価値の面では割安感がありますが、真の企業価値向上には、不採算事業の是正と新たな成長戦略の具体化が不可欠です。

17. 企業スコア

  • 成長性: B
    売上高は微増傾向にあるものの、再生可能エネルギー関連事業の損失計上が利益成長を阻害しており、本業の利益を伴う成長性に課題が見られます。
  • 収益性: D
    過去12ヶ月の営業利益率はマイナス、ROE 1.04%、ROA 0.15%とベンチマークを大きく下回ります。特に再生可能エネルギー部門の採算悪化が顕著で、全体的な収益性は非常に低い水準です。
  • 財務健全性: S
    自己資本比率が約58%と非常に高く、流動比率も2.18倍と良好です。負債比率も低く、極めて高い財務健全性を保っています。
  • 株価バリュエーション: A
    PERは一過性利益により割安に見えますが、PBRが0.31倍と業界平均(0.7倍)を大きく下回り、純資産価値から見て極めて割安な水準にあります。

企業情報

銘柄コード 7490
企業名 日新商事
URL http://www.nissin-shoji.co.jp/
市場区分 スタンダード市場
業種 商社・卸売 – 卸売業

バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)

将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。

現在の指標

株価 1,194円
EPS(1株利益) 539.21円
年間配当 1.76円

シナリオ別5年後予測

各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。

シナリオ 成長率 将来PER 5年後株価 期待CAGR
楽観 2.9% 2.5倍 1,582円 5.9%
標準 2.2% 2.2倍 1,331円 2.3%
悲観 1.3% 1.9倍 1,083円 -1.8%

目標年率別の理論株価(標準シナリオ)

標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。

現在株価: 1,194円

目標年率 理論株価 現在株価との乖離 判定
15% 667円 +527円 (+79%) △ 割高
10% 833円 +361円 (+43%) △ 割高
5% 1,051円 +143円 (+14%) △ 割高

【判定基準】○割安:現在株価≦理論株価 / △割高:現在株価>理論株価

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このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.5)」によって自動生成されました。

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By ジニー

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