1. 企業情報
- 事業内容などのわかりやすい説明
日油は油脂化学系製品の大手メーカーで、機能化成品、化薬、医薬・医療・健康(ライフサイエンス)、DDS(ドラッグデリバリーシステム)事業など多角的に事業を展開しています。油脂・石油化学品を基礎とした多様な化学品や加工油脂製品を手掛けています。 - 主力製品・サービスの特徴
- 機能化学品事業: 脂肪酸誘導体、界面活性剤、エチレンオキサイド(EO)・プロピレンオキサイド(PO)誘導体、有機過酸化物、機能性ポリマー、電子材料など、幅広い産業分野で使用される基礎化学品から高付加価値製品までを提供しています。
- 医薬・医療・健康事業: 食用加工油脂、食品機能材、健康関連製品に加え、生体適合性素材(MPCポリマー)や、狙った患部に薬物を届けるDDS製剤原料といった医療・健康分野の製品が今後の成長を牽引しています。
- 化薬事業: 産業用爆薬、宇宙関連製品(ロケット用推進薬など)、防衛関連製品といった特殊な分野の製品を提供しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
- 業界内での競争優位性や課題について
日油は長年の油脂・石油化学分野での知見と技術をベースに多角的な事業展開をしており、高機能・高付加価値製品へのシフトを進めています。特に、DDS製剤原料のようなライフサイエンス分野や、宇宙・防衛関連の化薬事業など、参入障壁の高い専門分野に強みを持っています。一方で、機能化学品事業においては、原料価格の変動や、アジア市場をはじめとする需要の低迷が課題となることがあります。 - 市場動向と企業の対応状況
機能化学品市場では、アジアでの環境・エネルギー向けやトイレタリー・樹脂向けなど、一部で需要の弱含みが見られます。これに対し、日油は医薬・医療・健康事業や化薬事業といった成長分野への経営資源配分を強化することで、事業ポートフォリオの多様化を進め、特定市場の変動リスクを分散しています。特に宇宙・防衛関連製品の需要増はポジティブな要素です。
3. 経営戦略と重点分野
- 経営陣が掲げるビジョンや戦略
中期経営計画「2025中期経営計画」(2023~2025年度)では、「ライフ・ヘルスケア」「環境・エネルギー」「電子・情報」を重点分野として掲げています。これらの分野において、新製品・技術開発を加速し、事業の多角化を通じて持続的な成長を目指しています。 - 中期経営計画の具体的な施策や重点分野
重点分野では、研究開発投資の強化や産学連携を通じて新技術・新製品の開発を推進しています。決算短信からは、エレクトロニクス分野での新規開発プログラム実施により研究開発が加速していることが示唆されます。設備投資も積極的に行われ、事業基盤の強化を図っています。 - 新製品・新サービスの展開状況(決算短信参照)
決算短信からは、医薬・医療・健康事業におけるDDS原料の底堅い需要や、化薬事業における宇宙・防衛関連製品の増加が報告されており、これらの高付加価値製品が業績に貢献しています。機能化学品事業では、特殊防錆処理剤などが堅調に推移しています。
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力
日油の収益モデルは、基礎化学品から高機能素材、さらにはDDS製剤原料、宇宙・防衛関連製品といった多岐にわたる事業展開によるポートフォリオ型にあります。これにより、特定の産業や市場の変動リスクをある程度吸収できる体制が築かれています。ライフサイエンスや宇宙・防衛といった成長性の高い分野への注力は、将来の市場ニーズの変化への適応力と持続可能性を高めると考えられます。 - 売上計上時期の偏りとその影響
決算短信からは売上計上時期に特段の大きな偏りについての具体的な記載はありません。ただし、機能化学品事業における季節的変動や顧客の生産計画による影響、化薬事業の大型プロジェクト案件による時期的な売上変動は考えられます。
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発の動向や独自性
日油は長年の化学分野での研究開発により培われた独自技術を保有しています。特にDDS製剤原料に使用される生体適合性素材(MPCポリマー)は、医療分野での高い技術力が求められる製品であり、同社の技術力の高さを示しています。また、宇宙・防衛関連製品においても、高度な製造技術と信頼性が不可欠であり、これらも同社の技術的優位性の源泉となっています。産学連携による研究開発の加速も、新たな技術革新への意欲を示すものです。 - 収益を牽引している製品やサービス
直近の決算短信では、医薬・医療・健康事業における食用加工油脂、食品機能材、健康関連製品、DDS原料、また化薬事業の産業用爆薬、ロケット向け(宇宙関連)、防衛関連製品が売上・利益を牽引し、特に化薬事業は大幅な増益を達成しています。
6. 株価の評価
- EPSやBPSに基づく計算等を用いて、現在の株価との比較
- 現在の株価: 3,226.0円
- 会社予想EPS(連結): 164.99円
- 実績BPS(連結): 1,227.63円
- 株価/EPS = 3,226.0円 / 164.99円 = 19.55倍 (会社予想PERと一致)
- 株価/BPS = 3,226.0円 / 1,227.63円 = 2.63倍 (実績PBRと一致)
現在の株価は、会社予想PER19.55倍、実績PBR2.63倍で評価されています。
- 業界平均PER/PBRとの比較
- 業界平均PER: 20.4倍
- 業界平均PBR: 1.1倍
PERは日油の19.55倍が業界平均20.4倍に対して若干割安感があります。
PBRは日油の2.63倍が業界平均1.1倍に対して割高に見えます。高いPBRは、強固な財務基盤や成長期待を反映している可能性があります。
7. テクニカル分析
- 直近の株価推移を参照して、現在の株価が高値圏か安値圏か
直近10日間の株価は3,164円から3,374円の範囲で推移しており、現在の株価3,226円はこの範囲の中間に位置しています。年初来高値が3,374円、年初来安値が1,739円であるため、現在の株価は年初来で見て高値圏にあります。 - 年初来高値・安値との位置関係
- 年初来高値: 3,374円
- 年初来安値: 1,739円
現在の株価3,226円は、年初来高値に近く、年初来安値からは大きく上昇した水準にあります。
- 出来高・売買代金から見る市場関心度
- 出来高: 1,049,100株
- 売買代金: 3,384,529千円
- 平均出来高(3ヶ月): 684,250株
- 平均出来高(10日): 617,520株
本日(2025-12-19)の出来高は1,049,100株と、3ヶ月平均および10日平均を大きく上回っており、市場の関心が高まっていることを示唆しています。
8. 財務諸表分析
- 売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価
- 売上高: 過去12ヶ月で236,971百万円、2025年3月期予想238,310百万円、過去4年間で着実に増加傾向にあります(192,642百万円(2022) → 217,709百万円(2023) → 222,252百万円(2024))。
- 営業利益: 過去12ヶ月で42,634百万円、2025年3月期予想45,308百万円。売上高と同様に増加傾向(35,595百万円(2022) → 40,625百万円(2023) → 42,142百万円(2024))。
- 純利益: 過去12ヶ月で34,900百万円、2025年3月期予想36,497百万円。こちらも増加傾向(26,690百万円(2022) → 33,973百万円(2023) → 33,990百万円(2024))。
- ROE(実績): 13.43% (過去12ヶ月: 12.48%)。健全な水準。
- ROA(実績): 7.29% (過去12ヶ月: 7.29%)。健全な水準。
- 過去数年分の傾向を比較
売上高、営業利益、純利益ともに過去数年間で堅調な成長を示しており、安定した収益基盤を築いていることがわかります。特に2022年から2023年にかけては利益が大きく伸長しています。 - 四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)
2026年3月期第2四半期(中間期)の実績は以下の通りです。- 売上高: 109,139百万円(通期予想258,400百万円に対する進捗率42.3%)
- 営業利益: 20,648百万円(通期予想46,000百万円に対する進捗率44.9%)
- 親会社株主に帰属する中間純利益: 15,419百万円(通期予想38,200百万円に対する進捗率40.4%)
通常の半期ペース(50%)と比較すると、売上高と純利益はやや遅れ気味ですが、営業利益は概ね計画通りに推移しています。機能化学品事業の需要低迷が影響しているものの、通期予想は上方修正されており、会社としては今後の回復を見込んでいると推測されます。
9. 財務健全性分析
- 自己資本比率、流動比率、負債比率の評価
- 自己資本比率(実績): 78.0% (直近四半期: 74.7%)。非常に高く、財務の安定性が極めて優れています。
- 流動比率(直近四半期): 2.98倍(298%)。流動資産が流動負債の約3倍あり、短期的な債務返済能力は非常に高いです。
- 負債比率(直近四半期): Total Debt/Equity 1.51%。負債が極めて少なく、財務リスクは非常に低い水準にあります。
- 財務安全性と資金繰りの状況
自己資本比率、流動比率、負債比率ともに極めて良好な水値を維持しており、財務安全性は非常に高いと評価できます。現金及び預金も91,733百万円と潤沢であり、資金繰りに懸念はないと考えられます。 - 借入金の動向と金利負担
Total Debt(直近四半期)は4.28B円と非常に少なく、また損益計算書におけるNet Non Operating Interest Income Expenseはプラス(358,000千円)であり、受取利息が支払利息を上回っています。これは借入金が少なく、金利負担がほぼないことを示しており、財務上の強みと言えます。
10. 収益性分析
- ROE、ROA、各種利益率の評価
- ROE(実績): 13.43% (過去12ヶ月: 12.48%)
- ROA(実績): 7.29% (過去12ヶ月: 7.29%)
- 粗利率(過去12ヶ月): Gross Profit 83.6B / Total Revenue 236.971B = 約35.3%
- 営業利益率(過去12ヶ月): 16.61%
- 純利益率(過去12ヶ月): 14.73%
利益率はすべて高い水準にあり、特に営業利益率と純利益率は、同社の高付加価値製品への転換が成功していることを示唆しています。
- 一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%等)との比較
ROE13.43%は一般的なベンチマーク10%を上回り、ROA7.29%もベンチマーク5%を上回っています。これは効率的な資本活用と資産運用ができていることを示しており、非常に良好な収益性を有していると評価できます。 - 収益性の推移と改善余地
過去数年間の利益は着実に増加しており、収益性は安定的に推移しています。ただし、直近の中間期決算では機能化学品事業の減益で営業利益率が前年同期比で低下(21.1%→18.9%)しており、景気変動や原燃料価格高騰の影響を受ける可能性はあります。今後は、高成長分野である医薬・医療・健康事業および化薬事業のさらなる拡大と、機能化学品事業における収益性の改善が収益性向上への鍵となります。
11. 市場リスク評価
- ベータ値による市場感応度の評価
ベータ値: 0.47。これは市場全体が10%変動した場合、日油の株価はおよそ4.7%変動することを示唆しています。ベータ値が1未満であるため、市場全体の変動と比較して株価の変動が小さく、守備的な(市場感応度が低い)銘柄と評価できます。 - 52週高値・安値のレンジと現在位置
- 52週高値: 3,374.00円
- 52週安値: 1,739.00円
現在の株価3,226.0円は、52週高値に非常に近く、52週のレンジ(1,635円)の上限付近に位置しています。
- 決算短信に記載のリスク要因(外部環境、為替、地政学等)
- 外部環境: 米国の通商政策による自動車産業など顧客産業の需要悪化、原燃料・原材料価格の高止まりが景気見通しの下振れリスク。
- 為替: 為替変動は原材料調達コストや海外売上・利益に影響を与える可能性があります(具体的な前提条件は記載なし)。
- 地政学リスク: ウクライナ情勢や中東情勢などの地政学リスクが、原燃料価格や国際経済に影響を及ぼす可能性があります。
12. バリュエーション分析
- 業種平均PER/PBRとの比較
- 日油 PER(会社予想): 19.55倍
- 業界平均PER: 20.4倍
- 日油 PBR(実績): 2.63倍
- 業界平均PBR: 1.1倍
PERは日油が業界平均よりやや割安、PBRは日油が業界平均より割高です。PERでは割安感があるものの、PBRの割高感は高い自己資本比率やDDS製剤原料などの成長性を示す事業を市場が評価している可能性があります。
- 目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用)
- 目標株価(業種平均PER基準): EPS 164.99円 × 業界平均PER 20.4倍 = 3,365.80円
- 目標株価(業種平均PBR基準): BPS 1,227.63円 × 業界平均PBR 1.1倍 = 1,350.39円
PER基準では現在の株価(3,226円)より若干上回る水準、PBR基準では現在の株価より大幅に低い水準となります。成長期待の高い無形資産やブランド価値がBPSに表れにくいため、PBR基準のみで判断することは難しい側面があります。
- 割安・割高の総合判断
PER基準ではやや割安ですが、PBR基準では大幅に割高に見えます。これは、日油が持つ高い自己資本比率と、DDS製薬原料や宇宙・防衛関連といった将来性のある事業への期待が株価に織り込まれている可能性を示唆しています。一概に割安・割高とは判断しにくい状況ですが、成長性への期待が株価を押し上げていると見られます。
13. 市場センチメント分析
- 信用取引の状況(信用買残、信用倍率、需給バランス)
- 信用買残: 382,600株(前週比 -4,500株)
- 信用売残: 91,600株(前週比 -4,300株)
- 信用倍率: 4.18倍
信用買残は売残を上回っており、買い方が優勢な状況です。信用売買において、買い残が売り残より約4倍多いことを示しており、需給面では売り圧力よりも潜在的な買い圧力が強い可能性がありますが、将来的な決済売りにつながる可能性もあります。
- 株主構成(経営陣持株比率、安定株主の状況)
- インサイダー保有比率: 9.96%
- 機関投資家保有比率: 43.99%
日本マスタートラスト信託銀行、日本カストディ銀行、明治安田生命保険といった大手金融機関が上位株主であり、安定した大株主が存在します。自社(自己株口)も2.78%保有しており、安定株主層は厚いと考えられます。経営陣の持株比率は公表データから直接把握できませんが、インサイダー比率に含まれると仮定できます。
- 大株主の動向
提供データからは大株主の具体的な動向(売買履歴)は不明ですが、信託銀行の保有比率が高いことから、パッシブ運用による保有が多いと推測されます。
14. 株主還元と配当方針
- 配当利回りや配当性向の分析
- 配当利回り(会社予想): 1.61%
- 1株配当(会社予想): 52.00円
- 配当性向(会社予想ベース): 約31.3%
配当利回りは市場全体と比較すると平均的ですが、配当性向31.3%は中期的な目標である総還元性向50%と比較してまだ余裕があり、今後の増配余地や追加的な株主還元策の可能性を示唆しています。
- 自社株買いなどの株主還元策
会社は2025年11月7日から2025年12月31日までの期間で、上限2,000,000株、上限金額5,000百万円の自己株式取得を決議し、実施しています。中間期には約10,001百万円の自己株式取得による純資産の減少が発生しており、積極的な株主還元姿勢が見られます。 - 株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策
提供データからは株式報酬型ストックオプション等の具体的なインセンティブ施策の有無は確認できません(–)。
15. 最近のトピックスと材料
- 適時開示情報の分析(大型受注、新製品、拠点展開等)
- 2026年3月期 第2四半期決算短信: 2025年11月6日に公表。
- 通期業績予想の修正: 2025年11月6日に、売上高、営業利益、経常利益、純利益を上方修正しました。機能化学品事業の需要変動があるものの、全体としては堅調な推移を見込んでいることが示唆されます。
- 自己株式取得の実施: 2025年11月7日に自己株式取得(上限50億円、200万株)の実施を決議。積極的な株主還元策であり、株価をサポートする材料となります。
- 中間配当の増額: 2026年3月期の中間配当を26円に増額(前年同期21円)。年間配当も52円(前期比+7円)と増配予想です。
- これらが業績に与える影響の評価
業績予想の上方修正は、通期の業績改善期待を高めます。特に機能化学品事業で一部需要の落ち込みがある中で、医薬・医療・健康事業や化薬事業が成長を牽引している構図であり、事業ポートフォリオの強みを発揮しています。自己株式取得や増配は株主還元を重視する姿勢を示し、投資家からの評価を高める要因となります。特に化薬事業における宇宙・防衛関連製品の増加は、持続的な高成長が期待できる分野での強みを示しており、今後の収益に大きく寄与すると考えられます。
16. 総評
日油は、長期にわたる化学分野での経験と多様な事業ポートフォリオを持つ、財務基盤が極めて強固な企業です。機能化学品事業が足元で需要低迷の影響を受ける一方、医薬・医療・健康事業や、特に化薬事業における宇宙・防衛関連製品が成長を牽引しており、高付加価値分野へのシフトが着実に進んでいます。経営戦略として掲げる「ライフ・ヘルスケア」「環境・エネルギー」「電子・情報」への重点投資は、将来の持続的成長への布石となっています。
- **強固な財務基盤**: 自己資本比率74.7%、流動比率298%、D/E比率1.51%と極めて健全な財務状況にある点は、企業のリスク耐性の高さを示します。
- **成長分野への注力**: DDS製剤原料や宇宙・防衛関連製品といった高成長・高付加価値分野への事業シフトが成功しており、これらの事業が今後の収益を牽引する見込みです。
- **株主還元意欲**: 積極的な自己株式取得と増配予想は、株主還元への意識の高さを示しており、株主からの評価向上に繋がります。
- **市場環境のリスク**: 機能化学品事業は景気変動や原燃料価格の影響を受けやすく、米国の通商政策や地政学リスクも留意すべき点です。
- **バリュエーション**: PBRは業界平均より割高ですが、これは同社の財務健全性や成長性への期待が織り込まれている可能性があります。PERは業界平均並みで、割高感は限定的です。
- 強み・弱み・機会・脅威の整理 (SWOT分析)
- 強み (Strengths)
- 極めて健全な財務基盤(高自己資本比率、低負債)。
- 多角的な事業ポートフォリオにより、特定市場のリスク分散が可能。
- DDS原料や宇宙・防衛関連製品に代表される高付加価値・高成長分野での技術力と競争優位性。
- 安定した収益性と高い利益率。
- 積極的な株主還元策(増配、自己株式取得)。
- 弱み (Weaknesses)
- 機能化学品事業における一部需要(アジア、トイレタリー、樹脂向け)の低迷。
- 売上高の成長率が、利益成長率と比較すると限定的。
- 機会 (Opportunities)
- ライフサイエンス、環境・エネルギー、電子・情報といった重点分野でのさらなる市場拡大。
- 宇宙・防衛関連製品における政府投資や需要増加。
- 新興国市場での高機能化学品需要の拡大。
- M&Aや戦略的提携による事業領域の拡大。
- 脅威 (Threats)
- 世界経済の減速や米国の通商政策による顧客産業の需要悪化。
- 原燃料価格の高騰および製品価格への転嫁の遅れ。
- 地政学的リスク(ウクライナ、中東情勢など)によるサプライチェーンの混乱。
- 激化する業界内競争と新技術の開発競争。
17. 企業スコア
- 成長性: A
- 売上高は過去数年堅調に増加しており、2026年3月期通期予想も前年比+8.4%と成長を見込んでいます。特に化薬事業が+26.1%と大幅増で成長を牽引しており、ライフサイエンス分野も堅調です。
- 収益性: A
- ROE 13.43%、ROA 7.29%とともにベンチマーク(ROE10%、ROA5%)を大きく超えており、営業利益率16.61%、純利益率14.73%も非常に高い水準です。利益率低下の懸念はあるものの、高収益体質を維持しています。
- 財務健全性: S
- 自己資本比率78.0%(直近74.7%)は極めて高く、財務基盤は非常に強固です。流動比率2.98倍、Total Debt/Equity 1.51%も申し分なく、借入金も少なく金利負担もほぼない状況です。
- 株価バリュエーション: B
- PER19.55倍は業界平均20.4倍と比較するとやや割安ですが、PBR2.63倍は業界平均1.1倍に対して割高です。財務健全性と成長性への期待が株価に織り込まれていると解釈でき、総合的には適正水準に近いと評価します。
企業情報
| 銘柄コード | 4403 |
| 企業名 | 日油 |
| URL | http://www.nof.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 素材・化学 – 化学 |
バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)
将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。
現在の指標
| 株価 | 3,226円 |
| EPS(1株利益) | 164.99円 |
| 年間配当 | 1.61円 |
シナリオ別5年後予測
各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。
| シナリオ | 成長率 | 将来PER | 5年後株価 | 期待CAGR |
|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5.3% | 22.6倍 | 4,839円 | 8.5% |
| 標準 | 4.1% | 19.7倍 | 3,968円 | 4.3% |
| 悲観 | 2.5% | 16.7倍 | 3,116円 | -0.6% |
目標年率別の理論株価(標準シナリオ)
標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。
現在株価: 3,226円
| 目標年率 | 理論株価 | 現在株価との乖離 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 15% | 1,977円 | +1,249円 (+63%) | △ 割高 |
| 10% | 2,470円 | +756円 (+31%) | △ 割高 |
| 5% | 3,116円 | +110円 (+4%) | △ 割高 |
【判定基準】○割安:現在株価≦理論株価 / △割高:現在株価>理論株価
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