1. 企業情報
- 事業内容などのわかりやすい説明
日機装は、産業用特殊ポンプ・システム、航空機部品、医療機器(人工腎臓・透析装置)の3つの主要な事業を展開する製造業です。特に化学プラント向けの精密ポンプや、医療分野では人工腎臓・透析装置で国内トップシェアを誇り、海外でも高い競争力を持っています。近年は航空機部品(CFRP成形品)や深紫外線LEDといった新分野にも進出しています。 - 主力製品・サービスの特徴
- 工業部門:
- インダストリアル事業: 液化ガス関連機器(LNG・水素用ポンプ等)、産業用ポンプ・システム(キャンドモータポンプ、プランジャーポンプ)、精密機器(発電所向け水処理システム、セラミック基板製造装置など)。液化ガスの輸送や製造工程で不可欠な特殊ポンプに高い技術力と実績を持ち、低・脱炭素社会に向けた次世代エネルギー分野への貢献も期待されています。
- 航空宇宙事業: 航空機向けの軽量で高強度な炭素繊維強化プラスチック(CFRP)成形品。ジェットエンジンのナセルや翼の一部など、高い信頼性が求められる部品を手掛けており、民間航空機市場の回復と共に成長が期待されます。
- 医療部門: 血液透析関連製品(血液透析装置、ダイアライザー、透析液)。国内で高いシェアを持ち、海外(特に中国、欧州)でも積極的な事業展開を進めています。
2. 業界のポジションと市場シェア
- 業界内での競争優位性や課題について
- 競争優位性:
- 高シェア製品: 化学用精密ポンプおよび人工腎臓・透析装置において国内で首位級の地位を確立しており、長年の技術蓄積と顧客との信頼関係が強みです。
- 技術力: 液化ガス関連の極低温技術、CFRP成形技術、医療機器の精密製造技術など、ニッチながらも高付加価値な分野で独自の技術を有しています。
- グローバル展開: 特に医療部門は海外(中国や欧州)での販売を拡大しており、工業部門もグローバルプロジェクトへの貢献が高いです。
- 課題:
- 海外市場での競争激化: 特に医療分野では、中国市場における国産化の進展や、米国市場での認可プロセスなど、各国特有の規制や競争環境への適応が常に求められます。
- サプライチェーンの安定性: 航空宇宙事業を中心に、部品供給遅延や人材不足が生産性や出荷に影響を与える可能性があります。
- 為替変動リスク: 海外売上比率が高いため、為替変動(特に円高)が業績に与える影響が大きいです。
- 市場動向と企業の対応状況
- 工業部門: LNGや次世代エネルギー(水素等)関連市場は中長期的な成長が見込まれており、同社は液化ガス関連機器や精密機器で需要を取り込む戦略です。好採算案件の獲得と販売価格の適正化で収益性向上を図っています。
- 航空宇宙部門: 世界的な航空機需要の回復基調にあり、同社のCFRP成形品の出荷も増加傾向にあります。部品供給網の安定化や生産効率の改善が今後の課題です。
- 医療部門: 国内では透析需要が抑制傾向ですが、中国や欧州、米国などの海外市場で積極的に事業を拡大しています。特に、米国での販売認可取得(2025年5月)は重要な進展であり、今後の成長ドライバーとなる可能性があります。
3. 経営戦略と重点分野
- 経営陣が掲げるビジョンや戦略
決算短信からは具体的な長期ビジョンに関する直接的な記述は少ないものの、各事業部門における戦略から、技術革新による高付加価値製品の提供、グローバル市場でのシェア拡大、そして収益性改善を重視していることが伺えます。低・脱炭素社会への貢献や、民間航空機市場の回復への対応が掲げられています。 - 中期経営計画の具体的な施策や重点分野
決算短信に具体的な中期経営計画の数値目標は明示されていませんが、以下の重点分野への取り組みが示されています。- 工業部門: LNG関連や次世代エネルギー分野(水素等)における技術開発と市場開拓。好採算案件の獲得を通じた収益性向上。
- 航空宇宙部門: 航空機需要回復への迅速な対応と生産体制の最適化。製品ミックス改善による利益率向上。
- 医療部門: 国内の厳しい環境下で、中国・米国・欧州を中心としたグローバル市場での事業拡大と、それに伴う製品開発および販売体制の強化。
- 新製品・新サービスの展開状況(決算短信参照)
決算短信からは新製品・新サービスについて具体的な製品名の記載はないものの、インダストリアル事業では技術革新を通じた高採算案件の獲得、医療部門では海外市場(特に米国)での販売戦略の推進が挙げられており、これが実質的な新領域開拓と解釈できます。
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力
日機装の収益モデルは、高精度・高付加価値な産業用機器の販売とメンテナンス、航空機部品の製造、および医療機器(透析関連)の販売に大別されます。- 適応力: 液化ガス関連、次世代エネルギーといった成長市場への対応、医療部門のグローバル展開加速により、市場ニーズの変化への適応を図っています。特にライフサイエンスと環境・エネルギー分野は中長期的な成長が見込まれており、同社の中核技術が貢献する領域です。
- 売上計上時期の偏りとその影響
決算短信には売上計上時期の偏りに関する具体的な記述はありませんが、第3四半期までの進捗が通期予想に対して売上高66.1%、営業利益58.7%であることから、第4四半期に一定の売上と利益が計上される傾向がある可能性があります。特に大型の産業機械やプラント関連の案件は、検収時期によって売上計上に偏りが出ることがあります。これにより、四半期ごとの業績に変動が生じる可能性があります。
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発の動向や独自性
同社の技術開発は、各事業部門のコア技術に基づいています。- 工業部門: 極低温技術を応用した液化ガスポンプや、高精度な制御技術を要する産業用ポンプで独自の地位を築いています。次世代エネルギー分野への応用も進められています。
- 航空宇宙部門: CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の成形技術は、軽量化と強度を両立させる航空機部品製造において高い独自性を持っています。
- 医療部門: 血液透析装置やダイアライザーの開発・製造において、患者負担の軽減や治療効果の向上を目指した技術革新を継続しています。
- 収益を牽引している製品やサービス
- 主力は工業部門のインダストリアル事業(液化ガス関連機器、産業用ポンプ)と医療部門の血液透析関連製品です。
- 第3四半期累計では、工業部門の売上収益が全体の6割強を占め、セグメント利益も大きく貢献しています。特にインダストリアル事業は利益構造改善を牽引しています。医療部門も利益面で大きく改善しており、海外市場が寄与しています。
6. 株価の評価
- EPSやBPSに基づく計算等を用いて、現在の株価との比較
- 現在の株価: 1,583.0円
- EPS(会社予想): 170.54円
- PER(会社予想): 9.28倍
- BPS(実績): 2,228.96円
- PBR(実績): 0.71倍
現在の株価1,583円は、会社予想EPS170.54円に対してPER9.28倍であり、実績BPS2,228.96円に対してPBR0.71倍です。PBRが1倍を大きく下回っており、企業の保有する資産価値を下回る評価を受けていると言えます。
- 業界平均PER/PBRとの比較
- 業界平均PER: 21.1倍
- 業界平均PBR: 1.8倍
日機装のPER9.28倍、PBR0.71倍は、いずれも業界平均PER21.1倍、PBR1.8倍と比較して大幅に割安な水準にあります。この数値だけを見ると、市場は同社の成長性や収益性に対して慎重な見方をしているか、あるいは何らかのディスカウント要因がある可能性を示唆しています。
7. テクニカル分析
- 直近の株価推移を参照して、現在の株価が高値圏か安値圏か
直近10日間の株価は1558円~1611円のレンジで推移しており、現在の株価1583円はこのレンジの中央付近に位置します。 - 年初来高値・安値との位置関係
- 年初来高値: 1,646円
- 年初来安値: 917円
現在の株価1,583円は、年初来安値917円からは大幅に上昇していますが、年初来高値1,646円に迫る水準であり、高値圏に近い位置にあると言えます。 - 50日移動平均線: 1534.72円
- 200日移動平均線: 1359.80円
現在の株価は50日移動平均線、200日移動平均線を上回っており、トレンドとしては上昇傾向にあると見られます。
- 出来高・売買代金から見る市場関心度
直近10日間の出来高は99,700株~197,600株で推移しており、平均出来高(3ヶ月平均242.78k株、10日平均148.7k株)と比較すると、足元の出来高はやや低調な日も見られますが、本日の出来高は 178,100株であり、平均水準です。売買代金282,800千円は、市場全体の取引規模から見ると中程度で、特に活発な商いが見られる状況ではありません。高値圏に近い位置での出来高の推移は、短期的な調整の可能性もありえます。
8. 財務諸表分析
- 売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価
- 売上高: 連結売上収益は安定的に成長しており、過去5年間で2021年の1,677億円から2024年予想2,133億円、過去12か月で2,110億円と増加傾向にあります。
- 利益:
- 営業利益は2021年31億円から2022年342億円と大きく増加した後、2023年は58億円、2024年予想63億円と変動が大きいです。2022年の数値は一過性の要因(おそらく固定資産売却益など)が含まれる可能性があり、その後の利益水準は落ち着いています。
- 親会社に帰属する当期純利益も同様に変動が大きく、2022年の136億円から2023年90億円、過去12か月では69億円となっています。
- ROE(実績): (連)6.02%。過去12か月: 7.98%。これは同業他社比較のベンチマーク10%には届かない水準ですが、Piotroski F-ScoreではHealthy operating marginではないと評価されつつも、ROE自体は前年実績から改善傾向にあります。
- ROA(実績): (連)2.17%。同業他社比較のベンチマーク5%に対し低い水準です。総資産を効率的に活用できているとは言えません。
- 過去数年分の傾向を比較
- 売上収益は増加傾向が継続しており、事業規模は拡大しています。
- 営業利益および純利益は、2022年に大幅な増加がありましたが、その後は以前の水準に戻っています。この変動は一時的な要因によるものと推測されます。
- 粗利益率は過去12か月で28.6%(60,460,000 / 211,020,000)、2024年で27.2%(57,998,000 / 213,379,000)と安定はしていますが、営業費用のコントロールが利益率改善の鍵となります。
- 四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)
2025年12月期第3四半期累計決算では、通期予想に対し、売上収益66.1%、営業利益58.7%、親会社に帰属する四半期利益64.9%の進捗でした。売上高の進捗は比較的良好ですが、営業利益の進捗はやや遅れており、第4四半期での挽回が求められます。
9. 財務健全性分析
- 自己資本比率、流動比率、負債比率の評価
- 自己資本比率(実績): (連)43.0%。第3四半期末45.0%と、一般的な安全とされる40%を上回っており、財務基盤は比較的安定しています。
- 流動比率(直近四半期): 2.36倍(236%)。短期負債に対する流動資産の比率が高く、短期的な支払能力に優れ、流動性は良好です。
- 負債比率(直近四半期、D/E): 70.26%。総負債/自己資本比率としては、許容範囲内と言えます。
- 財務安全性と資金繰りの状況
自己資本比率、流動比率ともに良好な水準を維持しており、財務健全性は高いと評価できます。営業キャッシュフローも過去12か月で132.4億円のプラス、第3四半期累計では63.5億円のプラスと、営業活動による資金創出力は改善しています。フリーキャッシュフローもプラス(64.6億円)であり、資金繰りに大きな懸念は見られません。 - 借入金の動向と金利負担
- 短期借入金(直近四半期): 56.34億円(前期比減少)
- 長期借入金(直近四半期): 720.37億円(前期比減少)
借入金は短期・長期ともに前期末から減少しており、負債圧縮に努めていることが伺えます。金利負担については、損益計算書のNet Non Operating Interest Income Expenseが過去12か月で-24.25億円とマイナスであり、金利支払いが受取利息を上回っていますが、これは全体の利益水準から見て許容範囲にあります。
10. 収益性分析
- ROE、ROA、各種利益率の評価
- ROE(過去12か月): 7.98%
- ROA(過去12か月): 2.17%
- Profit Margin(過去12か月): 5.19%
- Operating Margin(過去12か月): 4.51%
- Gross Profit(過去12か月): 620億円(粗利益率 約28.6%)
- 一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%等)との比較
- ROE7.98%は一般的なベンチマーク10%を下回っており、「普通」の評価です。
- ROA2.17%は一般的なベンチマーク5%を大きく下回っており、「低い」と評価されます。総資産に対する利益創出力には改善の余地があります。
- 営業利益率4.51%も、Piotroski F-Scoreでは「healthy_operating_margin: False」と評価されており、同業他社と比較して利益率改善が求められる水準です。
- 収益性の推移と改善余地
第3四半期累計の営業利益率が前年同期2.5%から5.4%に改善している点はポジティブです。インダストリアル事業における好採算案件の獲得や販売価格適正化、航空宇宙事業の出荷増・製品ミックス改善、医療部門の海外寄与が貢献しています。ROA/ROEの改善には、売上増に加え、一層のコスト効率化や資産の有効活用、高付加価値製品へのシフトが重要となります。
11. 市場リスク評価
- ベータ値による市場感応度の評価
- ベータ値(5Y Monthly): 0.37
ベータ値が0.37と1を下回るため、市場全体の変動と比較して株価の変動が小さいと評価されます。市場リスクに対する感応度が低い、すなわちディフェンシブな特性を持つ銘柄と言えます。
- ベータ値(5Y Monthly): 0.37
- 52週高値・安値のレンジと現在位置
- 52週高値: 1,646.00円
- 52週安値: 917.00円
現在の株価1,583円は、52週高値に非常に近い水準にあります。過去1年間の間に大きく上昇しており、短期的には過熱感がある可能性も考慮する必要があります。
- 決算短信に記載のリスク要因(外部環境、為替、地政学等)
- 為替変動リスク: 海外売上・費用が多いため、為替レートの変動が業績に大きく影響します。特に円高は収益を圧迫する要因となります(第3四半期でも為替差損計上)。
- 地政学リスク・関税: 米中関係の緊張、通商政策の変更、主要な事業領域における地政学的リスク(中国市場の国産化圧力など)は、サプライチェーンや販売戦略に影響を与える可能性があります。
- 原材料・部品供給リスク: 航空宇宙事業を中心に、原材料や部品の供給遅延・価格高騰が生産計画や収益性に影響を及ぼす可能性があります。
- 市場環境の変動: 各事業セグメント(LNG、航空機、透析医療)の需要変動や競争環境の変化。特に国内医療市場の抑制的な傾向はリスク要因です。
- 法規制・認可リスク: 医療機器事業における各国の規制変更や新製品の認可プロセスに遅延が生じるリスクがあります。
- 連結範囲の変更: 子会社の除外など、会計上の変更が比較可能性や業績に一時的な影響を与えることがあります。
12. バリュエーション分析
- 業種平均PER/PBRとの比較
- 日機装 PER(計画): 9.28倍
- 業種平均PER: 21.1倍
- 日機装 PBR(実績): 0.71倍
- 業種平均PBR: 1.8倍
PER、PBRともに業種平均と比べて大幅に低い水準にあります。これは市場が日機装を同業他社と比較して割安と評価しているか、あるいは将来の成長性や収益安定性に対して慎重な見方をしていることを示唆します。
- 目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用)
- 目標株価(業種平均PER基準): 予想EPS 170.54円 × 業種平均PER 21.1倍 = 3,599.49円
- 目標株価(業種平均PBR基準): 実績BPS 2,228.96円 × 業種平均PBR 1.8倍 = 4,012.13円
提示されたバリュエーション分析では、業種平均PER基準で2,205円、業種平均PBR基準で4,012円とありますが、EPSの数値が異なっている可能性があります。(ここでは提供された情報に基づいて再計算を試みました。分析に提示された「目標株価(業種平均PER基準): 2205円」がどう算出されたか不明なため、再計算結果を提示します。ただし、ユーザー提供の「目標株価(業種平均PER基準): 2205円」があるため、それを採用します)。 - 目標株価(業種平均PER基準): 2,205円
- 目標株価(業種平均PBR基準): 4,012円
- 割安・割高の総合判断
現在の株価1,583円は、業種平均PER、PBR基準で算出される目標株価レンジと比較して大幅に割安な水準にあります。ただし、PBR1倍割れが常態化している銘柄は市場からの評価が低い傾向にあることも示唆しており、単に割安だからと判断するだけでなく、その背景にある成長見通しや利益安定性、市場認知度などを総合的に考慮する必要があります。
13. 市場センチメント分析
- 信用取引の状況(信用買残、信用倍率、需給バランス)
- 信用買残: 191,400株
- 信用売残: 12,900株
- 信用倍率: 14.84倍
信用買残が信用売残を大きく上回っており、信用倍率が14.84倍と高い水準です。これは、株価が上昇すると利益確定売りが出やすい、潜在的な売り圧力が存在する可能性を示唆します。ただし、信用買残が前週比で-242,400株と大きく減少している点は、信用整理が進んだと見ることもできます。
- 株主構成(経営陣持株比率、安定株主の状況)
- % Held by Insiders (経営陣含): 19.75%
- % Held by Institutions (機関投資家): 40.00%
大株主には日本マスタートラスト信託銀行、日本カストディ銀行といった信託銀行のほか、みずほ銀行、三井住友海上火災保険、富国生命保険、日本生命保険などの金融機関、そして自社持株会や自己株口が名を連ねています。機関投資家が40%を占める一方で、経営陣による保有は20%弱です。安定株主が多い構造と言えます。
- 大株主の動向
上位大株主は信託銀行や金融機関が多く、安定株主としての位置付けが強いとみられます。特定の株主が株価を大きく左右するような動きは現時点では確認できません。
14. 株主還元と配当方針
- 配当利回りや配当性向の分析
- 配当利回り(会社予想): 2.27%
- 1株配当(会社予想): 36.00円
- Payout Ratio(過去12か月): 31.58%
- 2025年年間配当予想: 36.00円(中間18円、期末18円)
会社予想配当利回り2.27%は、大手企業の平均と比較すると妥当な水準です。通期予想ベースの配当性向約21.1% (36円/170.63円) は、利益の成長余力を考慮すると持続可能で無理のない水準と言えます。2025年中間配当は前期比増配(15円→18円)となっており、株主還元への意欲が見られます。
- 自社株買いなどの株主還元策
決算短信には、自社株買いに関する具体的な記載はありませんでした。 - 株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策
決算短信に株式報酬型ストックオプションに関する具体的な記載はありませんでした。
15. 最近のトピックスと材料
- 適時開示情報の分析(大型受注、新製品、拠点展開等)
- 2025年12月期第3四半期決算短信において、特筆すべき事項として以下の点があげられます。
- 業績改善: 営業利益の大幅な増益(+119.6% YoY)は主要因として、工業部門の好採算案件の獲得と販売価格適正化、航空宇宙部門の製品ミックス改善・出荷増、医療部門の海外(中国、欧州)販売寄与が挙げられます。
- 海外展開: 医療部門において、米国COMFORTシリーズに関するFDAの販売承認を取得(2025年5月)し、米国市場での本格的な販売拡大が期待されます。
- 連結範囲の変更: 子会社6社の除外があり、比較可能性に留意が必要です。関係会社株式売却による収入(5,567百万円)が投資CFに寄与しています。
- これらが業績に与える影響の評価
- 業績改善: 営業利益の大幅な増加は、同社の努力が実を結び、事業構造が改善しつつあることを示唆しており、ポジティブな影響が期待されます。ただし、前述の通り、第4四半期での利益積み上げが通期目標達成の鍵となります。
- 海外展開: 米国での販売承認は医療部門の将来的な成長ドライバーとして大きく期待でき、中長期的な業績向上に貢献する可能性があります。中国・欧州での販売も堅調に推移しており、グローバル展開が利益を牽引しています。
- 連結範囲の変更: 一時的な要因であり、来期以降の業績推移を評価する際には、この影響を考慮して比較する必要があります。売却益が一時的に利益を押し上げた可能性もあります。
16. 総評
日機装は、精密機器、航空機部品、医療機器という多岐にわたる事業を展開する企業です。各分野で独自の技術と高い市場シェアを持ち、安定した事業基盤を有しています。
全体的な見解:
同社の業績は、売上高が堅調に増加する中で、利益面では変動が見られますが、2025年第3四半期決算は営業利益の大幅な改善を示しており、事業構造の変革や収益性向上への取り組みが奏功しつつあると評価できます。特に医療部門の海外展開(米国FDA承認取得を含む)や、工業部門における高採算案件の獲得は、今後の成長ドライバーとして期待されます。一方で、為替変動リスクや、一部市場での競争激化、第4四半期の通期目標達成に向けた進捗などが今後の注目点となります。
- PBR1倍割れ: 業界平均を大きく下回るPBR0.71倍は、潜在的な割安感を提供しています。
- 利益率改善: 第3四半期における営業利益率の改善は、今後の収益性向上への期待を高めます。
- グローバル展開: 医療部門の海外市場(特に米国)での成長戦略が本格化すれば、新たな収益源となりえます。
- 為替変動リスク: 海外売上が多いため、円高局面では業績が圧迫される可能性があります。
- 信用倍率: 信用買残が多く、短期的な上値の重さや調整の可能性も考慮する必要があります。
- 過去12か月の実績と比較して、通期予想EPSが大幅に高い点: 過去12か月のEPS 104.48円に対して、会社予想EPSは170.54円と大きく乖離しており、第4四半期に大幅な利益積み増しを見込んでいる点に注意が必要です。
強み・弱み・機会・脅威の整理 (SWOT分析):
- 強み (Strengths)
- 精密ポンプ・人工腎臓分野での高い国内シェアと技術力。
- 多角的な事業ポートフォリオ(工業、航空宇宙、医療)。
- グローバル市場での展開力(中国、欧州、米国での足掛かり)。
- 安定した財務基盤(自己資本比率、流動比率)。
- 弱み (Weaknesses)
- 収益性の不安定さ(ROA、ROEが業界平均以下)。
- 営業利益率がまだ低い水準。
- 為替変動による業績への影響が大きい。
- 国内医療市場の成長鈍化。
- 機会 (Opportunities)
- 低・脱炭素社会に向けた次世代エネルギー(LNG、水素)関連需要の拡大。
- 民間航空機市場の回復とCFRP部品需要の増加。
- 新興国市場(特に中国)での医療機器需要の拡大。
- 米国市場での医療機器販売認可取得による事業拡大。
- 脅威 (Threats)
- 世界経済の減速や地政学的リスク。
- 為替変動(円高)の進行。
- 原材料価格の高騰や部品供給網の混乱。
- 各国での規制強化や国産化の動き(特に中国医療分野)。
- 業界内での競争激化。
17. 企業スコア
- 成長性: B(中立)
- 売上成長率は堅調 (+6.00% YoY 直近四半期、+8.0% 通期予想) ですが、受注高は全体で微減 (-4.7%) しており、一部の事業(医療国内)で需要抑制が見られます。新製品・新サービス展開に関するより詳細な情報がないため、大きく上振れする評価には至りません。
- 収益性: B(中立)
- 粗利率(約28.6%)は維持されていますが、営業利益率(過去12か月4.51%)やROA(2.17%)は業界ベンチマークを下回ります。ただし、直近四半期の営業利益率が前年比で大幅改善(2.5%→5.4%)しており、改善傾向は評価できます。ROEは7.98%で中程度。
- 財務健全性: A(良好)
- 自己資本比率45.0%は高く、流動比率2.36倍も良好です。D/E比率も70.26%と適正水準であり、現金保有状況も十分です。借入金も減少傾向にあります。
- 株価バリュエーション: S(非常に割安)
- PER 9.28倍、PBR 0.71倍は、業界平均PER 21.1倍、PBR 1.8倍と比較して大幅に割安です。目標株価レンジ(業界平均PER基準2,205円、業界平均PBR基準4,012円)と比較しても、現在の株価1,583円は著しく低い水準にあります。
企業情報
| 銘柄コード | 6376 |
| 企業名 | 日機装 |
| URL | http://www.nikkiso.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 電機・精密 – 精密機器 |
バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)
将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。
現在の指標
| 株価 | 1,583円 |
| EPS(1株利益) | 170.54円 |
| 年間配当 | 2.27円 |
シナリオ別5年後予測
各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。
| シナリオ | 成長率 | 将来PER | 5年後株価 | 期待CAGR |
|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 0.0% | 10.7倍 | 1,820円 | 3.0% |
| 標準 | 0.0% | 9.3倍 | 1,583円 | 0.1% |
| 悲観 | 1.0% | 7.9倍 | 1,414円 | -2.1% |
目標年率別の理論株価(標準シナリオ)
標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。
現在株価: 1,583円
| 目標年率 | 理論株価 | 現在株価との乖離 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 15% | 792円 | +791円 (+100%) | △ 割高 |
| 10% | 990円 | +593円 (+60%) | △ 割高 |
| 5% | 1,249円 | +334円 (+27%) | △ 割高 |
【判定基準】○割安:現在株価≦理論株価 / △割高:現在株価>理論株価
関連情報
証券会社
このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.5)」によって自動生成されました。
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