1. 企業情報

富山第一銀行は、富山県を拠点とする第二地方銀行です。日本国内の個人、法人、事業顧客向けに銀行および金融サービスを提供しています。

  • 事業内容などのわかりやすい説明
    主な事業は、預金、貸出、為替業務を中心とした銀行ビジネスです。その他、リース事業も手掛けています。資金の構成は定期預金46%、普通預金44%が中心であり、貸出金が資産の65%を占めています。融資は中小企業等向けが63%、住宅・消費者向けが24%と、地域の中小企業を主要顧客としています。富山県に加えて、新潟、石川、岐阜の各県にも展開しています。
  • 主力製品・サービスの特徴
    主力は預金業務と貸出業務です。個人向けには住宅ローン、自動車ローン、教育ローンなど、法人向けには中小企業向けの各種融資を提供しています。また、投資信託、資産運用、保険相談サービスなども手掛けており、顧客の多様な金融ニーズに対応しています。有価証券からの利息配当金が多い点が特徴として挙げられます。

2. 業界のポジションと市場シェア

  • 業界内での競争優位性や課題について
    富山県内の第二地方銀行として、地域に根ざした事業展開を強みとしています。中小企業向けの融資に注力しており、地元経済との繋がりが深いと考えられます。一方で、人口減少や低金利環境の長期化は、地方銀行全体の共通課題であり、利ざやの縮小や貸出先確保の競争激化に直面する可能性があります。有価証券からの利息配当金が多い点は、収益源の多様化に寄与する一方で、市場金利変動リスクを抱える側面もあります。
  • 市場動向と企業の対応状況
    日本全体の金利情勢は地方銀行の収益に大きな影響を与えます。日銀の金融政策変更(マイナス金利解除など)は、預貸金利差の改善に繋がる可能性があり、収益改善の機会となり得ます。企業の情報からは、特定の市場動向への対応に関する詳細な記述は確認できませんが、地域経済の活性化への貢献や、多岐にわたる金融サービス(投資信託、資産運用、保険相談等)の提供を通じて、顧客ニーズの変化に対応しようとしている姿勢がうかがえます。

3. 経営戦略と重点分野

  • 経営陣が掲げるビジョンや戦略
    データなし
  • 中期経営計画の具体的な施策や重点分野
    データなし
  • 新製品・新サービスの展開状況
    決算短信には新製品・新サービス展開に関する記載はありません。ウェブサイト等での情報確認が必要です。

4. 事業モデルの持続可能性

  • 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力
    富山第一銀行の収益モデルは、伝統的な預貸金業務を基盤としつつ、有価証券運用による利息配当金を重要な収益柱としています。地域の中小企業や個人を主要顧客とするため、地域経済の動向に大きく左右されます。低金利環境から金利のある世界へ移行する中で、貸出金利差の改善期待がある一方で、大規模な資金調達や運用において市場金利変動の影響を受けやすくなる可能性もあります。インターネットバンキングやアプリサービスの提供など、デジタル化への対応も進めており、顧客ニーズの変化への適応を試みていると考えられます。
  • 売上計上時期の偏りとその影響
    データなし

5. 技術革新と主力製品

  • 技術開発の動向や独自性
    データなし
  • 収益を牽引している製品やサービス
    貸出金が資産の65%を占めており、特に中小企業等向け融資が収益の柱です。また、企業概要に「有証利息配当金多い」とあることから、有価証券運用も収益を大きく牽引していると推測されます。預金業務も安定した資金源として重要です。

6. 株価の評価

  • EPSやBPSに基づく計算等を用いて、現在の株価との比較
    現在の株価は1,813.0円です。
    会社予想EPS 158.22円に基づくと、PERは11.46倍。
    実績BPS 2,795.44円に基づくと、PBRは0.65倍。
    現在の株価はPER、PBRともに過去実績や予測と比較して評価され、市場が将来の利益成長や資産価値をどのように織り込んでいるかを示します。
  • 業界平均PER/PBRとの比較
    業界平均PERが10.7倍に対し、富山第一銀行のPERは11.46倍とやや高めです。
    業界平均PBRが0.4倍に対し、富山第一銀行のPBRは0.65倍と高めです。
    業界平均と比較すると、現在の株価はPER、PBRともにやや割高な水準にあります。

7. テクニカル分析

  • 直近の株価推移を参照して、現在の株価が高値圏か安値圏か
    本日の株価は1,813.0円で、本日高値1,820円、本日安値1,775円の範囲で推移しました。直近10日間の株価は1,708円から1,820円のレンジで動いており、本日終値はレンジの上限に近い水準です。
  • 年初来高値・安値との位置関係
    年初来高値が1,823円、年初来安値が864円です。現在の株価1,813.0円は、年初来高値1,823円に非常に近い高値圏に位置しています。52週高値1,823円、52週安値864円ともほぼ一致しており、年間変動範囲の最上限に近い水準です。
  • 出来高・売買代金から見る市場関心度
    本日の出来高は83,200株、売買代金は150,395千円でした。
    過去3ヶ月平均出来高は171.05千株、過去10日平均出来高は108.86千株です。
    本日の出来高は平均出来高と比較して低く、市場の関心度は平均レベルからやや低い状態と言えます。

8. 財務諸表分析

  • 売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価
  • Total Revenue(経常収益): 2022年27,173百万円 → 2023年34,114百万円 → 2024年37,478百万円と順調に増加傾向。2025年予想は46,215百万円と大幅増収を見込んでいます。過去12ヶ月では40,585百万円を計上しています。
  • Net Income Common Stockholders(親会社株主に帰属する当期純利益): 2022年3,486百万円 → 2023年4,203百万円 → 2024年5,284百万円と増益傾向が続いています。2025年予想は13,354百万円と大幅な増益を見込んでおり、過去12ヶ月では10,149百万円を計上しました。
  • ROE(実績): (連)8.87%(直近12ヶ月では6.21%)。一般的なベンチマーク(10%)には届いていませんが、地方銀行としては妥当な水準です。
  • ROA(実績): (連)0.63%(直近12ヶ月)。一般的なベンチマーク(5%)と比較すると低いですが、総資産が大きい銀行業においては、構造的に低くなる傾向があります。
  • 過去数年分の傾向を比較
    Total RevenueとNet Incomeは過去数年間連続で増加しており、2025年3月期も大きな成長が予想されています。これは、収益力の改善を示唆しています。特に2025年3月期は大幅な増収増益を見込んでおり、業績のモメンタムは良好です。
  • 四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)
    2025年3月期の通期予想(Total Revenue 46,215百万円、Net Income 13,354百万円)に対し、過去12ヶ月の実績(Total Revenue 40,585百万円、Net Income 10,149百万円)は、それぞれ約87.8%、約76.0%の進捗となっています。直近四半期の売上高成長率が前年比-8.40%である点には留意が必要ですが、経常収益及び純利益の絶対額は堅調に推移していると言えます。

9. 財務健全性分析

  • 自己資本比率、流動比率、負債比率の評価
  • 自己資本比率(実績): (連)9.6%です。日本の銀行に対する国際決済銀行(BIS)規制における自己資本比率の基準(国内基準行は8%以上)と比較すると、健全な水準を維持していると言えます。
  • 流動比率: データなし。
  • 負債比率: Total Debt(総負債)17.95B円に対し、Total Cash(総現金)71.8B円と、現預金が負債を大きく上回っています。これは、短期的な資金繰りに健全性があることを示唆します。
  • 財務安全性と資金繰りの状況
    自己資本比率は銀行規制基準を満たし、Total CashがTotal Debtを大幅に上回ることから、基本的な財務安全性は高いと評価できます。ただし、Operating Cash Flowが過去12ヶ月で-28.59B円とマイナスである点は注視が必要です。銀行業のキャッシュフローは特性上、貸付金の変動などでマイナスになりえますが、継続的なマイナスは資金繰りに影響を与える可能性があります。
  • 借入金の動向と金利負担
    Total Debtは17.95B円と適切に管理されているように見えます。データから金利負担の具体的な動向は評価できませんが、自己資本比率、現預金残高から鑑みて、財務的な重荷にはなっていないと考えられます。

10. 収益性分析

  • ROE、ROA、各種利益率の評価
  • ROE(実績): 8.87%(過去12ヶ月 6.21%)。
  • ROA(実績): 0.63%(過去12ヶ月 0.63%)。
  • Profit Margin(純利益率): 25.73%。
  • Operating Margin(営業利益率): 38.38%。
    売上高に対する利益率は高い水準ですが、銀行業特有のビジネスモデルにより、資産全体に対する収益性(ROA)は一般事業会社より低くなる傾向があります。
  • 一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%等)との比較
    ROEは過去12ヶ月実績(6.21%)がベンチマーク(10%)を下回っています。ROA(0.63%)もベンチマーク(5%)よりかなり低い水準です。これは、銀行業の特性によるものが多いですが、収益性改善の余地はあります。
  • 収益性の推移と改善余地
    Net Incomeが継続的に増加していることから、収益性は改善傾向にあります。特に2025年3月期の純利益予想は過去と比較して大幅な伸びを見せており、これが実現すればROE・ROAも改善する可能性があります。低金利環境からの脱却は、預貸金利ざやの改善を通じて収益性をさらに押し上げる要因となり得ます。

11. 市場リスク評価

  • ベータ値による市場感応度の評価
    Beta (5Y Monthly)は0.24です。これは市場全体の値動きに対して、富山第一銀行の株価が0.24倍しか反応しないことを意味し、市場感応度が非常に低い、ディフェンシブな特性を持つ銘柄であることを示します。
  • 52週高値・安値のレンジと現在位置
    52週高値は1,823.00円、52週安値は864.00円です。現在の株価1,813.0円は52週高値に非常に近く、レンジの上限に位置しています。
  • 決算短信に記載のリスク要因(外部環境、為替、地政学等)
    具体的な記載はありませんが、銀行業には金利変動リスク、与信費用変動リスク、地域経済の動向、地政学リスク、為替変動リスク(特に有価証券運用において)などの外部環境リスクが存在します。

12. バリュエーション分析

  • 業種平均PER/PBRとの比較
    富山第一銀行のPER(会社予想)は11.46倍、PBR(実績)は0.65倍です。
    業種平均PERは10.7倍、業種平均PBRは0.4倍です。
    PER、PBRともに業種平均と比較すると割高な水準にあります。
  • 目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用)
  • 業種平均PER基準: 業種平均PER 10.7倍 × 会社予想EPS 158.22円 = 1,697.05円
  • 業種平均PBR基準: 業種平均PBR 0.4倍 × 実績BPS 2,795.44円 = 1,118.18円
    目標株価レンジはPER基準で約1,697円、PBR基準で約1,118円となります。
  • 割安・割高の総合判断
    現在の株価1,813.0円は、算出した目標株価レンジ(特にPBR基準)を大きく上回っており、直近の株価上昇を鑑みると、業種平均と比較して割高と判断されます。ただし、将来の業績期待や金利上昇局面での恩恵が織り込まれている可能性もあります。

13. 市場センチメント分析

  • 信用取引の状況(信用買残、信用倍率、需給バランス)
    信用買残は103,300株、信用売残は90,200株、信用倍率は1.15倍です。信用倍率が1倍台前半であり、売り買いの需給は比較的均衡していると言えますが、買残が売残をやや上回っています。買残が前週比で減少している一方で、売残も減少しており、需給に大きな偏りは見られません。
  • 株主構成(経営陣持株比率、安定株主の状況)
    % Held by Insiders(内部関係者保有比率)は11.10%、% Held by Institutions(機関投資家保有比率)は25.42%です。これは、一定数の内部関係者と機関投資家が株式を保有し、株価の安定に寄与している可能性があります。大株主には日本マスタートラスト信託銀行(信託口)の他、みずほ銀行、北陸銀行、福井銀行、日本生命保険など大手金融機関や地元の有力企業が名を連ねており、安定株主が多いと推測されます。
  • 大株主の動向
    データからは直近の具体的な売買動向は把握できませんが、上記の通り安定株主が多いことは株式の安定性に寄与します。

14. 株主還元と配当方針

  • 配当利回りや配当性向の分析
    配当利回り(会社予想)は3.09%(1株配当56.00円)です。
    配当性向は29.28%であり、利益の約3割を配当として株主に還元する方針です。これは一般的な水準であり、経営の安定性と成長投資のバランスを取っていると考えられます。
  • 自社株買いなどの株主還元策
    データなし
  • 株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策
    データなし

15. 最近のトピックスと材料

  • 適時開示情報の分析(大型受注、新製品、拠点展開等)
    2025年11月19日に「(訂正)「2026年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)」の一部訂正について」が開示されました。これは、2025年11月7日に公表された決算短信における与信残高の内訳表(銀行法及び金融再生法に基づく債権)の一部記載に誤りが判明したためです。特に「三月以上延滞債権」が25百万円から2百万円へ訂正されるなど、複数の項目で数値修正がありました。
  • これらが業績に与える影響の評価
    訂正された数値は、総与信残高(約1兆514億円)に対して極めて微小であり、今回の訂正自体が富山第一銀行の業績見通しや財務状況に与える影響は限定的であると考えられます。通期業績予想の修正も発表されていません。投資家としては、開示情報の正確性を確保する姿勢を評価しつつ、今後同様の表記ミスがないか開示品質を注視することが重要です。

16. 総評

富山第一銀行は、富山県を地盤とする第二地方銀行であり、中小企業向け融資と有価証券運用を主体とした安定的な事業を展開しています。過去数年間は順調に増収増益を達成しており、2025年3月期も大幅な業績向上が予想されています。

  • 全体的な見解整理
    現在の株価は年初来高値圏にあり、PER、PBRともに業界平均と比較して割高感があります。ただし、業績の成長性(特に2025年予想)、そして金利上昇局面での収益改善期待が株価に織り込まれている可能性があります。自己資本比率は健全であり、財務基盤は安定していると評価できます。一方、ROAやROEは一般的なベンチマークを下回っており、収益性向上が引き続き課題と言えます。
  • ポジティブ要素: 順調な業績成長(特に2025年3月期予想)、安定した財務健全性、地域密着型の事業基盤、有価証券運用からの安定収入、低いベータ値(市場変動に強い特性)。
  • ネガティブ要素: 現在の株価の割高感(PER/PBR)、ROA・ROEがベンチマークを下回る収益性、地方銀行に共通する地域経済の人口減少課題、決算短信の表記ミスによる開示品質への懸念。
  • 注目すべき点: 金利上昇局面における預貸金利ざやの改善度合い、有価証券運用の収益状況、Operating Cash Flowの動向。
  • 強み・弱み・機会・脅威の整理
  • 強み (Strengths)
    • 富山県をはじめとする北陸・東海地域に根ざした強固な顧客基盤。
    • 継続的な増収増益を実現している安定した収益力。
    • 高い自己資本比率と潤沢な現預金による財務の健全性。
    • 分散された収益源(預貸金、有価証券運用)。
    • 低いベータ値(0.24)に示されるディフェンシブな特性。
  • 弱み (Weaknesses)
    • 一般的なベンチマークを下回るROA、ROE。
    • 業界平均と比較したPER、PBRの割高感。
    • Operating Cash Flowが過去12ヶ月でマイナスである点。
    • 決算短信の一部訂正に見られる開示品質への懸念。
  • 機会 (Opportunities)
    • 日本銀行の金融政策正常化に伴う金利上昇が、預貸金利ざや改善に寄与する可能性。
    • 地域経済の活性化策や富山県特有の産業の成長を取り込む余地。
    • デジタル化推進によるサービス向上と効率化の余地。
  • 脅威 (Threats)
    • 地域人口の減少とそれに伴う貸出金需要の縮小。
    • 厳しい競争環境下での他金融機関との競争激化。
    • 市場金利の急激な変動が有価証券運用収益に与える影響。
    • 景気変動による与信費用の増加リスク。

17. 企業スコア

  • 成長性: C
    Total Revenueは過去数年増加傾向、2025年3月期予想も高い。しかし、直近四半期の売上成長率が前年比でマイナスであり、今後の成長持続性には不確実性があるため、中立からやや懸念。
  • 収益性: C
    ROE(6.21%)はベンチマーク10%を下回り、ROA(0.63%)はベンチマーク5%と比較してかなり低い。利益率は高いものの、資産効率が低いことを示唆。
  • 財務健全性: B
    自己資本比率9.6%は日本の銀行業の基準を満たし、Total CashがTotal Debtを上回っており、財務基盤は比較的健全。ただし、Operating Cash Flowがマイナスである点は留意。自己資本比率の絶対値は高いが、一般企業の基準ほどではないため中立。
  • 株価バリュエーション: C
    PER(11.46倍)は業界平均(10.7倍)よりやや高く、PBR(0.65倍)も業界平均(0.4倍)より割高。現在の株価水準からすると、業界平均と比べて割高感がある。

企業情報

銘柄コード 7184
企業名 富山第一銀行
URL http://www.first-bank.co.jp/
市場区分 プライム市場
業種 銀行 – 銀行業

バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)

将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。

現在の指標

株価 1,813円
EPS(1株利益) 158.22円
年間配当 3.09円

シナリオ別5年後予測

各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。

シナリオ 成長率 将来PER 5年後株価 期待CAGR
楽観 19.4% 13.2倍 5,063円 22.9%
標準 14.9% 11.5倍 3,636円 15.1%
悲観 9.0% 9.7倍 2,367円 5.7%

目標年率別の理論株価(標準シナリオ)

標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。

現在株価: 1,813円

目標年率 理論株価 現在株価との乖離 判定
15% 1,820円 -7円 (-0%) ○ 割安
10% 2,273円 -460円 (-20%) ○ 割安
5% 2,868円 -1,055円 (-37%) ○ 割安

【判定基準】○割安:現在株価≦理論株価 / △割高:現在株価>理論株価

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By ジニー

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