以下は、乃村工藝社(9716)に関する企業分析レポートです。
1. 企業情報
- 事業内容などのわかりやすい説明
乃村工藝社は、展示・商業施設向けのディスプレー業界で最大手の企業です。博物館・美術館、複合商業施設、博覧会・イベント、専門店、余暇施設など、多岐にわたる空間の企画、設計、施工、そして運営・維持管理までを一貫して手掛けています。人々に感動や体験を提供する「空間創造」のプロフェッショナルです。 - 主力製品・サービスの特徴
主力は、顧客の事業戦略やビジョンに基づいて、集客力やブランド価値を高める空間をオーダーメイドで創り出す総合的なソリューションです。具体的には、建築計画、内装・サインデザイン、コンテンツデザイン(展示・情報、映像、WEB)、特殊造形物の制作、施設運営・管理などが含まれます。顧客は多岐にわたり、各市場の特性に合わせた最適な空間を提供しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
- 業界内での競争優位性や課題について
乃村工藝社は「展示・商業施設向けディスプレー最大手」とされており、業界内での確固たる地位を確立しています。企画・設計から施工、運営まで一貫して手掛ける総合力が強みであり、長年の実績とノウハウが競争優位性となっています。
課題としては、資材費や労務費の上昇が採算を圧迫するリスクがあります。また、博覧会やイベントといったプロジェクト性の高い事業の売上比率が高まることで、業績の変動性が増す可能性があります。 - 市場動向と企業の対応状況
市場は、インバウンド観光客の回復、都市再開発の活発化、ホテル改装需要の増加、体験型消費の拡大といった追い風を受けて改善基調にあります。乃村工藝社はこうした市場ニーズの変化に対応し、多様な施設空間の創出を通じて事業機会を捉えています。中期経営計画では事業領域の拡大、人財育成、業務推進の再考を重点施策に掲げ、持続的な成長を目指しています。
3. 経営戦略と重点分野
- 経営陣が掲げるビジョンや戦略
中期経営方針において、事業領域の拡大、人財育成、業務推進の再考を重点施策としています。これは、持続的な成長と企業価値向上を目指すための戦略であり、多様化する市場ニーズに対応し、事業基盤を強化する意図が伺えます。 - 中期経営計画の具体的な施策や重点分野
決算短信には具体的なKPIの記載はありませんが、空間創造における総合力を背景に、各市場におけるソリューション提供を強化しています。足元では博覧会・イベント、複合商業施設といった大型プロジェクトの受注・消化が業績を牽引しています。 - 新製品・新サービスの展開状況(決算短信参照)
決算短信に新製品・新サービスの具体的な展開状況の記載はありません。
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力
乃村工藝社は、企画・設計から施工、運営までを一貫して提供する「空間創造」を軸とした事業モデルを確立しています。これは顧客の多様なニーズに柔軟に対応できる強みであり、安定的な収益につながる要素です。
近年のインバウンド回復や体験型消費のニーズの高まりは、同社の得意とする分野の市場拡大を意味しており、市場ニーズの変化への適応力は高いと言えます。 - 売上計上時期の偏りとその影響
博覧会・イベント市場のような大型プロジェクトは、特定の期間に売上が集中する傾向があり、業績に季節性や周期性をもたらす可能性があります。直近の決算では博覧会・イベント市場の売上が大幅増を記録していますが、同時に受注残高が前期比で減少しており、今後の受注状況によっては売上の変動リスクとなる可能性があります。
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発の動向や独自性
提供された情報には、技術開発の動向や独自性に関する具体的な記載はありません。 - 収益を牽引している製品やサービス
直近の決算短信(2026年2月期 第2四半期)によると、博覧会・イベント市場(前年同期比+229.7%)や複合商業施設市場(同+58.3%)が特に売上を大きく牽引しています。同社の強みである大規模空間の総合プロデュースが収益の柱となっています。
6. 株価の評価
- EPSやBPSに基づく計算等を用いて、現在の株価との比較
現在の株価は1,327.0円です。- PER(会社予想): 17.42倍 (EPS 76.19円 × 17.42 = 1,327.4円)
- PBR(実績): 2.68倍 (BPS 495.76円 × 2.68 = 1,328.7円)
現在の株価は、会社予想EPSに基づくPER、および実績BPSに基づくPBRとほぼ整合しています。
- 業界平均PER/PBRとの比較
- PER(会社予想)17.42倍に対し、業界平均PERは17.0倍であり、ほぼ同水準です。
- PBR(実績)2.68倍に対し、業界平均PBRは1.8倍であり、業界平均と比較して割高感があります。
7. テクニカル分析
- 直近の株価推移を参照して、現在の株価が高値圏か安値圏か
現在の株価1,327.0円は、年初来高値1,344円に非常に近い水準にあります。直近10日間の株価推移を見ても、上下動を伴いながらも緩やかな上昇トレンドにあり、高値圏で推移していると判断できます。 - 年初来高値・安値との位置関係
年初来高値:1,344円
年初来安値:704円
現在の株価は年初来高値からわずか1.2%低い位置にあり、年間レンジの上限に位置しています。 - 出来高・売買代金から見る市場関心度
直近の出来高は225,200株、売買代金は約2.99億円です。過去10日間の平均出来高が334.22千株、直近3ヶ月の平均出来高が349.37千株であることから、直近の出来高は平均を下回っており、市場の関心はやや低下している可能性があります。
8. 財務諸表分析
- 売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価
- 売上高:過去数年(2022年2月期以降)は回復基調にあり、2025年2月期は1,502.56億円と大幅増、過去12ヶ月では1,728.45億円とさらに伸長しています。
- 各利益:営業利益、経常利益、純利益も同様に回復・成長傾向にあり、特に2025年2月期および過去12ヶ月では大幅な利益改善が見られます。
- ROE(実績)12.92%(過去12ヶ月では19.93%)、ROA(実績)10.78%と、いずれも高い水準にあり、資本を効率的に活用して収益を上げていると言えます。
- 過去数年分の傾向を比較
コロナ禍の影響で一時的に落ち込んだものの、2022年2月期を底に売上・利益ともにV字回復を遂げています。特に2024年2月期以降の成長が顕著です。 - 四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)
2026年2月期第2四半期(中間期)の進捗状況は以下の通りです(通期予想は修正後)。- 売上高:80,534百万円(通期予想160,000百万円の50.3%)
- 営業利益:6,895百万円(通期予想12,000百万円の57.5%)
- 親会社株主に帰属する中間純利益:4,442百万円(通期予想8,500百万円の52.3%)
売上高は概ね計画通り、営業利益と純利益は通期予想に対し順調に進捗しており、会社計画の上振れ期待を抱かせる内容です。
9. 財務健全性分析
- 自己資本比率、流動比率、負債比率の評価
- 自己資本比率:53.0%(実績)、第2四半期末で61.9%と非常に高く、財務の安定性は極めて良好です。
- 流動比率:2.59倍(259%)(直近四半期)。一般的に150%以上が良好とされる中、非常に高い水準を維持しており、短期的な支払い能力に問題はありません。
- 負債比率:第2四半期末の負債合計34,055百万円に対し、純資産55,323百万円であり、負債/純資産比は約61.6%と低く、負債水準は保守的です。
- 財務安全性と資金繰りの状況
自己資本比率、流動比率ともに非常に良好な水準であり、財務安全性は高いと評価できます。現金及び預金も潤沢であり(第2四半期末で23,724百万円、現金同等物合計30,723百万円)、安定した資金繰りが維持されています。 - 借入金の動向と金利負担
損益計算書のNet Non Operating Interest Income Expenseが非常に低い(45百万円)ことから、借入金は少なく、金利負担も軽微であると推測されます。提供データにInterest Expenseは0と記載されており、実質的な有利子負債はほとんどないと見られます。
10. 収益性分析
- ROE、ROA、各種利益率の評価
- ROE(過去12ヶ月)19.93%、ROA(過去12ヶ月)10.78%
- 営業利益率(過去12ヶ月)5.95%、直近中間期では約8.6%に改善。
ROEとROAは、いずれも一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%)を大幅に上回る非常に優れた水準であり、資本効率が高いことを示しています。営業利益率も改善傾向にあり、収益性は着実に向上しています。
- 一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%等)との比較
上記のとおり、ROE、ROAともにベンチマークを大きく上回っており、非常に優秀な収益性を有しています。 - 収益性の推移と改善余地
コロナ禍で落ち込んだ収益性はV字回復し、高い水準で推移しています。特に直近の中間期決算では、売上高の増加に加え、採算性の良い案件の消化やコストコントロールにより営業利益率が大幅に改善しており、今後のさらなる向上が期待されます。ただし、資材費・労務費上昇という外部圧力は注視が必要です。
11. 市場リスク評価
- ベータ値による市場感応度の評価
ベータ値は0.16であり、市場全体の動きに対する株価の感応度が非常に低いことを示しています。これは、市場全体が変動する局面において、株価の変動リスクが小さいことを意味します。 - 52週高値・安値のレンジと現在位置
52週高値:1,344.00円、52週安値:704.00円
現在の株価1,327.0円は、52週高値に迫る位置にあり、年間レンジのほぼ上限に位置しています。 - 決算短信に記載のリスク要因(外部環境、為替、地政学等)
- 資材価格・労務費の上昇:プロジェクト原価を押し上げ、採算性を悪化させる可能性があります。
- 受注残の減少:直近の中間期で受注残が前年同期比で大幅に減少しており、下期以降の売上計上に影響を及ぼす可能性があります。
- 博覧会・イベントなどプロジェクト型事業の季節性・周期性:特定の事業分野への依存度が高まると、市場環境やプロジェクトの集中度によって業績が大きく変動するリスクがあります。
- 為替や景気変動:海外ブランド店舗等の海外関連需要や、全般的な景気動向の影響を受ける可能性があります。
12. バリュエーション分析
- 業種平均PER/PBRとの比較
- PER(会社予想17.42倍)は、業種平均PER17.0倍とほぼ同水準です。
- PBR(実績2.68倍)は、業種平均PBR1.8倍と比較して約1.5倍高く、割高感があります。
- 目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用)
- 業種平均PER基準:EPS 76.19円 × 17.0倍 = 約1,295円
- 業種平均PBR基準:BPS 495.76円 × 1.8倍 = 約892円
現在の株価1,327.0円は、PER基準の目標株価よりやや高い水準、PBR基準の目標株価より大幅に高い水準にあります。
- 割安・割高の総合判断
PERベースでは概ね業界平均並みですが、PBRベースでは相当の割高感があります。これは、歴史的な実績や高いブランド力、財務健全性、高い収益性が市場から評価されている可能性がありますが、純資産価値から見ると割高であると判断できます。
13. 市場センチメント分析
- 信用取引の状況(信用買残、信用倍率、需給バランス)
信用買残:250,800株、信用売残:55,600株
信用倍率:4.51倍
信用買残が信用売残を大幅に上回っており、信用倍率は高めです。これは将来的な売り圧力(株価上昇時の利益確定売り)として意識される可能性があります。 - 株主構成(経営陣持株比率、安定株主の状況)
日本マスタートラスト信託銀行が筆頭株主であり、(有)乃村、(有)蟻田といった創業家・関連企業の保有割合も大きく、安定株主が多数を占めています。インサイダー保有比率も25.86%と高く、経営陣と主要株主が強い結束を持っていると考えられます。 - 大株主の動向
提供された情報には大株主の具体的な売買動向の記載はありません。
14. 株主還元と配当方針
- 配当利回りや配当性向の分析
配当利回り(会社予想)3.01%は、現在の低金利環境下では魅力的な水準です。
1株配当(会社予想)40.00円に対し、会社予想EPSは76.19円であり、配当性向は約52.5%となります。これは一般的な企業と比較してやや高めの水準であり、株主還元への意識が高いことが伺えます。 - 自社株買いなどの株主還元策
提供された情報に自社株買いに関する公表はありません。 - 株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策
提供された情報に株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策に関する記載はありません。
15. 最近のトピックスと材料
- 適時開示情報の分析(大型受注、新製品、拠点展開等)
2025年10月9日に、2026年2月期 第2四半期決算短信と同時に、「通期連結業績予想および配当予想の修正に関するお知らせ」が公表されています。これが最も重要なトピックスです。 - これらが業績に与える影響の評価
通期業績予想は売上高160,000百万円、営業利益12,000百万円など、前回予想から上方修正されています。これは、中間期の実績が大幅に上振れたことによるもので、特に博覧会・イベント市場を中心とした売上拡大と利益率改善が要因です。この修正は、短期的には株価にとってポジティブな材料であり、市場の期待感を高めるものです。
ただし、中間期で受注残が前年同期比で大幅に減少している点は、今後の業績の持続性という観点からは注視が必要です。
16. 総評
乃村工藝社は、空間創造の最大手として確固たる地位を築き、コロナ禍からのV字回復を経て力強い成長と収益性改善を示しています。
全体的な見解:
同社はインバウンド回復や体験型消費のニーズの高まりといった市場トレンドを捉え、高い収益性を実現。財務基盤も非常に健全であり、株主還元にも積極的です。しかし、株価は年初来高値圏にあり、PBRベースでは割高感が否めません。また、プロジェクト性の高い事業特性や受注残高の減少は、今後の業績の持続性に関する懸念材料となります。
- 強み: 業界最大手の地位、盤石な財務基盤(高自己資本比率、高流動比率、潤沢な現金)、極めて高い資本効率(ROE, ROA)、回復基調にある収益性、安定した株主構成、低いベータ値による市場変動への耐性。
- 弱み: 受注残の減少(今後の事業の持続性への懸念)、特定の市場分野(博覧会・イベント)への売上偏重リスク、PBRベースでの割高感。
- 機会: インバウンド需要の本格回復、都市再開発の継続、体験型消費の拡大、ホテル改装需要の高まり。
- 脅威: 資材価格・労務費の継続的な上昇、景気変動、大型プロジェクトの周期性による業績変動。
現在の株価は短期的には高値圏にありますが、会社の成長戦略と市場の変化への対応、財務の健全性は評価に値します。今後は受注動向やコスト上昇への対応策が注目されます。
17. 企業スコア
- 成長性: B
- 過去12ヶ月の売上高、四半期売上高成長率は高く、直近の中間期決算も通期予想に対し順調に進捗。ただし、受注残高の減少は今後の成長の持続性に影響を与える可能性があり、B評価とします。
- 収益性: A
- ROE(19.93%)、ROA(10.78%)ともにベンチマークを大幅に上回る優れた水準。営業利益率も改善傾向にあり、非常に高い収益性を有しています。
- 財務健全性: A
- 自己資本比率61.9%、流動比率259%と極めて良好な水準。有利子負債がほぼなく、現金保有も潤沢であり、財務基盤は非常に安定しています。
- 株価バリュエーション: C
- PERは業界平均と同水準ですが、PBRは業界平均と比較して割高感があり、純資産価値から見ると割高と判断されます。
企業情報
| 銘柄コード | 9716 |
| 企業名 | 乃村工藝社 |
| URL | https://www.nomurakougei.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 情報通信・サービスその他 – サービス業 |
バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)
将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。
現在の指標
| 株価 | 1,327円 |
| EPS(1株利益) | 76.19円 |
| 年間配当 | 3.01円 |
シナリオ別5年後予測
各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。
| シナリオ | 成長率 | 将来PER | 5年後株価 | 期待CAGR |
|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 20.5% | 20.0倍 | 3,868円 | 24.0% |
| 標準 | 15.8% | 17.4倍 | 2,753円 | 15.9% |
| 悲観 | 9.5% | 14.8倍 | 1,767円 | 6.1% |
目標年率別の理論株価(標準シナリオ)
標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。
現在株価: 1,327円
| 目標年率 | 理論株価 | 判定 |
|---|---|---|
| 15% | 1,380円 | ○ 4%割安 |
| 10% | 1,724円 | ○ 23%割安 |
| 5% | 2,175円 | ○ 39%割安 |
【判定基準】○X%割安:現在株価が理論株価よりX%低い / △X%割高:現在株価が理論株価よりX%高い
関連情報
証券会社
このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.5)」によって自動生成されました。
本レポートは、不特定多数の投資家に向けた一般的な情報提供を目的としており、個別の投資ニーズや状況に基づく助言を行うものではありません。記載されている情報は、AIによる分析や公開データに基づいて作成されたものであり、その正確性、完全性、適時性について保証するものではありません。また、これらの情報は予告なく変更または削除される場合があります。
本レポートに含まれる内容は、過去のデータや公開情報を基にしたものであり、主観的な価値判断や将来の結果を保証するものではありません。特定の金融商品の購入、売却、保有、またはその他の投資行動を推奨する意図は一切ありません。
投資には元本割れのリスクがあり、市場状況や経済環境の変化により損失が発生する可能性があります。最終的な投資判断は、すべてご自身の責任で行ってください。当サイト運営者は、本レポートの情報を利用した結果発生したいかなる損失や損害についても一切責任を負いません。
なお、本レポートは、金融商品取引法に基づく投資助言を行うものではなく、参考資料としてのみご利用ください。特定の銘柄や投資行動についての判断は、個別の専門家や金融機関にご相談されることを強くお勧めします。
企業スコアは、AIによる財務・業績データの分析をもとに試験的に算出した指標です。評価方法は現在も検討・改善を重ねており、確立した標準的な指標ではありません。投資判断の唯一の基準ではなく、あくまで参考情報としてご利用ください。