1. 企業情報
- 事業内容などのわかりやすい説明
日東精工は、工業用精密ネジの大手企業です。事業は大きく4つのセグメントに分かれています。- ファスナー事業: 自動車やデータサーバー、ゲーム機向けの精密ネジや、異なる素材を接合する技術(AKROSE)などを手掛けています。
- 産機事業: 自動ネジ締め機や産業用自動組立機など、生産ラインの効率化に貢献する産業機械を提供しています。
- 制御事業: 流量計、水質分析装置、土質調査機器、PFAS(有機フッ素化合物)分析装置などを開発・販売しています。
- メディカル事業: 医療用照明器具や医療用ネジ、高純度マグネシウム材料などの医療関連製品の研究開発・製造を行っています。
- 主力製品・サービスの特徴
- ファスナー事業: 高度な技術が求められる精密ネジの製造が強みで、ADAS(先進運転支援システム)やデータサーバー向けなど、成長分野での需要を取り込んでいます。
- 産機事業: 自動ねじ締め機は、高品質な組み立て作業を効率化し、製造業の生産性向上に貢献しています。
- 制御事業: 流量計は多岐にわたる産業分野で利用され、特にPFAS分析装置は環境規制強化の流れの中で注目されています。
- メディカル事業: 独自技術を用いた医療用材料の開発を進めており、今後の成長が期待されます。
2. 業界のポジションと市場シェア
- 業界内での競争優位性や課題について
工業用精密ネジ分野では大手であり、長年培った技術力と品質で高い競争力を持っています。特に自動車、電子機器などの精密分野で強みを発揮しています。
競争優位性としては、- 高機能・高品質な製品開発力(例:ADAS向けネジ、異種金属接合技術)。
- 国内外での幅広い事業展開と販売ネットワーク(インド子会社化など)。
- 多角的な事業ポートフォリオ(ファスナー、産機、制御、メディカル)により、特定の市場変動リスクを分散しています。
課題としては、 - 産機事業におけるEV市場の伸び悩みや関税政策、資源価格高騰による価格競争の激化。
- 為替変動や原材料費の高騰が利益を圧迫するリスク。
- メディカル事業は依然として先行投資段階であり、赤字が継続している点。
- 市場動向と企業の対応状況
世界的に自動車やデータセンター関連の需要は堅調に推移しています。同社は、ADAS向けネジやデータサーバー向け蓄電池用ネジの需要増に対応し、ファスナー事業を大きく伸ばしています。また、インドのVulcanグループの子会社化を通じて、成長市場であるインドでの事業展開を強化しています。
一方、EV市場の停滞は自動ねじ締め機などの産機事業に影響を与えていますが、CE規格対応製品の拡充や海外販路強化で対応を図っています。制御事業ではPFAS関連装置の需要が高まっており、この分野での技術開発と拡販に注力しています。
3. 経営戦略と重点分野
- 経営陣が掲げるビジョンや戦略
中期経営計画「Mission G‑second(2023–2025)」を推進しており、グローバル展開と新たな価値創造を重視しています。 - 中期経営計画の具体的な施策や重点分野
- グローバル展開: 成長国であるインドへの販路拡大を積極的に進めており、Vulcanグループの子会社化はその具体的な施策です。
- 技術革新と新分野開拓: PFAS分析装置の共同研究や溶剤リサイクル装置の展開、メディカル分野における高純度マグネシウム材料の早期製品化準備など、環境・医療分野での新しい技術や製品の開発に注力しています。
- 事業ポートフォリオの強化: 各セグメントの強みを活かしつつ、市場の変化に対応した製品開発と販売戦略を進めています。
- 新製品・新サービスの展開状況(決算短信参照)
- ファスナー事業: ADAS向け、データサーバー向け蓄電池、ゲーム機向け精密ねじなどが需要増に貢献。
- 産機事業: CE規格対応製品拡充、海外市場での新製品販売キャンペーン。
- 制御事業: PFAS関連装置の欧州での高需要に対応、PFAS分解技術共同研究、溶剤リサイクル装置の展示・拡販。
- メディカル事業: ISO13485 (医療機器の品質マネジメントシステム規格) 取得、高純度マグネシウム材料などの早期製品化準備。
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力
日東精工は、幅広い産業分野にわたる多様な製品・サービスを提供しており、特定の市場に依存しない分散型の収益モデルを構築しています。- ファスナー事業: 自動車の電装化やデータセンターの需要拡大など、成長市場のニーズを取り込むことで、安定した収益基盤を維持しています。異種金属接合技術「AKROSE」などの独自技術は、新たなニーズへの対応力を示しています。
- 産機事業: EV市場の変動には影響を受けるものの、海外販路強化やCE規格対応製品拡充で市場変化に適応しようとしています。
- 制御事業: 環境規制強化に伴うPFAS分析装置の需要増など、社会課題解決型の製品開発で新たな市場を創出しています。
- メディカル事業: 長期的視点での研究開発投資を継続しており、将来的な収益源となる可能性があります。
- 売上計上時期の偏りとその影響
第3四半期までの通期予想に対する進捗率は、売上高が約71.8%と順調な水準です。これは、特定の時期に売上が集中するというよりは、年間を通じて安定的に売上を計上する事業モデルであることを示唆しています。ただし、営業利益および純利益の進捗率は約62.9%と約57.5%であり、売上高に比べて遅れが見られます。これは、年末にかけてコスト削減や高採算製品の販売強化、為替変動の抑制など、利益を押し上げる要因がなければ、通期利益目標の達成が難しくなる可能性を示唆しています。
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発の動向や独自性
- ファスナー事業: ADASやデータセンター向けの高精度・高機能ねじ、異種金属接合技術「AKROSE」など、市場の最先端ニーズに対応する技術開発を進めています。購買先の見直しや金型改善によるコストダウンも技術的な取り組みと言えます。
- 制御事業: PFAS分析装置は、世界的課題である環境汚染対策に貢献する独自の技術であり、欧州での高需要が示唆されています。PFAS分解技術の共同研究も進行中です。
- メディカル事業: ISO13485取得や高純度マグネシウム材料の開発など、医療分野における安全性と機能性を追求した独自技術の開発に注力しています。
- 収益を牽引している製品やサービス
現在の収益を最も牽引しているのは、ファスナー事業です。精密ねじの需要増とコスト改善により、売上高、営業利益ともに大幅な伸長を見せています。特にADAS向け、データサーバー向け蓄電池、ゲーム機向け精密ねじが好調です。
6. 株価の評価
- EPSやBPSに基づく計算等を用いて、現在の株価との比較
- 現在の株価: 711.0円
- EPS(会社予想): 63.43円
- PER(会社予想): 11.21倍 (711.0円 ÷ 63.43円)
- BPS(実績): 953.56円
- PBR(実績): 0.75倍 (711.0円 ÷ 953.56円)
市場全体と比較するとPERは低く、PBRは1倍を下回っています。これは、企業価値に対して株価が割安である可能性を示唆しています。
- 業界平均PER/PBRとの比較
- 日東精工 PER(会社予想): 11.21倍
- 業界平均PER: 17.5倍
- 日東精工 PBR(実績): 0.75倍
- 業界平均PBR: 0.7倍
日東精工のPERは業界平均より大幅に低い水準にあり、PBRは業界平均と同程度です。PERから見ると、同社は業界平均と比較して割安であると評価できます。
7. テクニカル分析
- 直近の株価推移を参照して、現在の株価が高値圏か安値圏か
直近10日間の株価は700円から717円の範囲で推移しており、700円台を維持しています。年初来高値(750円)と年初来安値(512円)の中間よりは高値圏に位置していますが、年初来高値に迫る水準ではありません。 - 年初来高値・安値との位置関係
- 年初来高値: 750円
- 年初来安値: 512円
- 現在の株価: 711円
現在の株価は、年初来安値から約38.9%上昇していますが、年初来高値からは約5.2%下落した水準です。年間レンジで見ると、上昇トレンドの中で高値圏に近い位置にありますが、ブレイクアウトしたわけではありません。
- 出来高・売買代金から見る市場関心度
直近の出来高は298,200株、売買代金は212,678千円でした。平均出来高(3ヶ月平均150.85千株、10日平均153.84千株)と比較すると、直近の出来高は大幅に増加しており、市場の関心が高まっている可能性があります。この出来高増が株価の上昇トレンドを伴う場合は、買い圧力が強い可能性があります。
8. 財務諸表分析
- 売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価
- 売上高: 過去12ヶ月で約485億円、2021年から継続して増加傾向にあります。特に2024年12月期は470億円と前年比で増収を記録しており、第3四半期累計も前年同期比+5.8%と堅調です。
- 営業利益: 過去12ヶ月で約33億円。2021年の32億円から2022年29億円、2023年26億円と一度減少しましたが、2024年12月期は33億円と回復基調にあります。第3四半期累計は前年同期比+0.2%と微増に留まっています。
- 純利益: 過去12ヶ月で約20億円。2021年22億円から減少した後、再度回復傾向にありましたが、第3四半期累計では前年同期比△9.9%と減少しています。
- ROE(実績): 6.60% (過去12ヶ月実績 6.00%)
- ROA(実績): 3.89% (過去12ヶ月実績 3.89%)
売上は順調に成長していますが、利益面は為替差損や支払利息の増加により、特に純利益で伸び悩んでいます。
- 過去数年分の傾向を比較
連結売上高は着実に増加傾向にあり、事業の安定性を示しています。営業利益は一時的に変動しましたが、最新の過去12ヶ月では回復を見せています。しかし経常利益と純利益は支払利息や為替差損の影響を受けやすく、変動が大きくなっています。収益性指標のROEとROAは、ベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%)を下回っており、改善の余地があります。 - 四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)
2025年12月期第3四半期累計の進捗は以下の通りです。- 売上高: 35,998百万円(通期予想50,100百万円に対し進捗率 約71.8%) – 概ね順調
- 営業利益: 2,264百万円(通期予想3,600百万円に対し進捗率 約62.9%) – やや遅れ
- 親会社株主に帰属する四半期純利益: 1,322百万円(通期予想2,300百万円に対し進捗率 約57.5%) – やや遅れ
売上は順調な進捗ですが、利益面は特に最終四半期での挽回が必要となる状況です。為替や資材価格の動向が通期目標達成の鍵を握ります。
9. 財務健全性分析
- 自己資本比率、流動比率、負債比率の評価
- 自己資本比率(実績): 61.5% (直近四半期 62.5%) – 非常に高い水準であり、財務の安定性を示します。
- 流動比率(直近四半期): 2.70 = 270% – 短期的な支払能力が非常に良好であることを示します。
- 負債比率(Total Debt/Equity、直近四半期): 6.75% – 負債が純資産に対して非常に低い水準であり、財務リスクが極めて小さいことを示します。
- 財務安全性と資金繰りの状況
自己資本比率が60%を超え、流動比率も200%を大幅に上回っていることから、極めて健全な財務状態にあると言えます。総現金及び預金も9,334百万円あり、手元資金も潤沢です。借入金も総資産に対して非常に少ないため、財務安全性は非常に高いと評価できます。 - 借入金の動向と金利負担
総負債は減少傾向にありますが、決算短信によると支払利息の増加が見られます。これは、金利環境の変化による影響もあると考えられます。インドVulcanグループの子会社化に伴うのれん計上や買収関連費用が発生しましたが、全体の財務健全性を著しく損なう水準ではありません。
10. 収益性分析
- ROE、ROA、各種利益率の評価
- ROE(過去12か月): 6.00%
- ROA(過去12か月): 3.89%
- 粗利率(過去12か月): Gross Profit 11,665,662千円 / Total Revenue 48,534,478千円 = 24.03%
- 営業利益率(過去12か月): Operating Income 3,337,945千円 / Total Revenue 48,534,478千円 = 6.87%
収益性指標は、売上成長に比べて利益率の伸びが限定的であり、ROE、ROAともに改善の余地があります。特に営業利益率は過去数年で低下傾向にあり、コスト管理や高収益製品の拡販が重要です。
- 一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%等)との比較
日東精工のROE (6.00%) は一般的なベンチマークである10%を下回っており、ROA (3.89%) も5%を下回っています。これは、資本や資産を効率的に活用して利益を生み出す能力において、業界平均や優良企業と比較して改善の余地があることを示します。 - 収益性の推移と改善余地
売上高は増加しているものの、営業利益率や純利益率は為替差損や部品価格高騰、EV市場の伸び悩みといった外部要因の影響を受け、伸び悩む傾向が見られます。ファスナー事業は好調ですが、産機・制御事業の利益率改善が全体の収益性向上に不可欠です。コスト削減、高付加価値製品・サービスの展開、M&Aによるシナジー創出などが改善余地として挙げられます。
11. 市場リスク評価
- ベータ値による市場感応度の評価
- ベータ(5Y Monthly): 0.35
ベータ値が0.35と1を下回っており、市場全体の動きに対して株価の変動が小さい、すなわち市場感応度が低い特性を持つ銘柄と言えます。これは、比較的安定した投資対象と見なせる可能性があります。
- ベータ(5Y Monthly): 0.35
- 52週高値・安値のレンジと現在位置
- 52週高値: 750.00円
- 52週安値: 512.00円
現在の株価711.0円は、52週高値から約5.2%下落した水準であり、高値圏に近い位置にあります。
- 決算短信に記載のリスク要因(外部環境、為替、地政学等)
決算短信には以下のリスク要因が挙げられています。- 為替変動: 為替差損が発生しており、今後の為替動向が業績に影響を与える可能性があります。
- 原材料・資源価格の高騰: 資材費高騰が特に産機・制御事業の利益を圧迫しています。
- 関税・貿易政策: グローバル事業展開を行っているため、各国の関税政策や貿易摩擦が需要減速につながる可能性があります。
- EV市場の停滞: EV市場の伸び悩みは産機事業の需要にマイナス影響を与えています。
- M&Aによるのれん償却リスク・統合作業の遅延: インドVulcan子会社化に伴うのれんの将来的な償却負担、および子会社との統合作業の遅延が業績に与えるリスク。
12. バリュエーション分析
- 業種平均PER/PBRとの比較
- 日東精工 PER(会社予想): 11.21倍 (業界平均: 17.5倍)
- 日東精工 PBR(実績): 0.75倍 (業界平均: 0.7倍)
PERは業界平均と比較して約36%低い水準であり、割安感があります。PBRは業界平均と同程度です。
- 目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用)
- 目標株価(業種平均PER基準): EPS 63.43円 × 業界平均PER 17.5倍 = 1,110.025円
- 目標株価(業種平均PBR基準): BPS 953.56円 × 業界平均PBR 0.7倍 = 667.492円
現在株価711.0円は、PER基準では大幅な上値余地を示唆していますが、PBR基準ではほぼフェアバリューかやや割高な水準を示唆しています。
- 割安・割高の総合判断
PER基準では割安感が強い一方、PBR基準ではフェアバリュー近辺にあります。これは、同社の資本効率(ROE)が業界平均をやや下回るため、PBRがPERほど割安感を示さない要因と考えられます。全体としては、利益成長性が市場に十分に評価されていない分、PERには割安感があり、割安寄りと判断できます。
13. 市場センチメント分析
- 信用取引の状況(信用買残、信用倍率、需給バランス)
- 信用買残: 81,600株
- 信用売残: 1,477,400株
- 信用倍率: 0.06倍
信用買残が少なく、信用売残が非常に多い状況です。信用倍率が0.06倍と極めて低い水準にあるため、需給バランスは売り長(ショートカバーが期待できる状況)であり、株価にはポジティブに働く可能性があります。
- 株主構成(経営陣持株比率、安定株主の状況)
- 内部関係者持株比率: 18.92% (大株主リストの自社協友会、従業員持株会、自社(自己株口)などを合計すると29.43%にもなる)
- 機関投資家持株比率: 34.92%
日本マスタートラスト信託銀行や日本カストディ銀行といった信託銀行が上位株主であり、安定株主の割合が高いと推測されます。また、自社協友会や従業員持株会など、企業との関係が深い株主も多く、経営の安定性が高いと言えます。
- 大株主の動向
大株主の顔ぶれは大きく変わっていませんが、信託銀行の信託口が増加傾向にある場合、機関投資家による買いが入っている可能性があります。現状、特段の売買動向を示すデータはありません。
14. 株主還元と配当方針
- 配当利回りや配当性向の分析
- 配当利回り(会社予想): 2.81% (株価711円、1株配当20.00円で計算)
- 配当性向(Payout Ratio): 35.27%
配当利回りは2.81%と、現在の低金利環境下では魅力的な水準です。配当性向は35.27%と適切な範囲にあり、企業が事業への再投資と株主還元をバランス良く行っている姿勢がうかがえます。
- 自社株買いなどの株主還元策
決算短信には自社株買いに関する特記事項の記載はありませんでした。 - 株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策
提供データに記載はありませんでした。
15. 最近のトピックスと材料
- 適時開示情報の分析(大型受注、新製品、拠点展開等)
- インドVulcanグループの子会社化: ファスナー事業の成長戦略の一環として、インド市場での展開を強化するための重要なステップです。これにより、グローバル市場での競争力強化と販路拡大が期待されます。のれんの発生を伴うため、今後の統合効果の実現が注目されます。
- PFAS関連事業の進展: 制御事業において、PFAS分析装置の欧州での高需要やPFAS分解技術の共同研究は、環境規制強化の流れの中で将来の成長ドライバーとなる可能性を秘めています。
- メディカル事業の再編とISO13485取得: 製品ポートフォリオの再編や品質マネジメントシステム規格の取得は、メディカル事業の本格的な事業化に向けた基盤固めであり、高純度マグネシウム材料などの新製品開発への期待が高まります。
- これらが業績に与える影響の評価
インド子会社化は、ファスナー事業のグローバル成長を加速させる材料です。中長期的には売上・利益への貢献が期待されますが、短期的な取得関連費用やのれん償却が利益を圧迫する可能性もあります。PFAS関連事業の進展は、環境関連市場という成長分野での新たな収益源となる可能性がありますが、売上貢献には時間を要するでしょう。メディカル事業はまだ損益分岐点を超えていませんが、将来的なポテンシャルを秘めています。全体として、成長に向けた投資が積極的になされており、長期的な視点での事業拡大が期待されます。
16. 総評
日東精工は、精密ネジを主力とする安定した事業基盤を持つ企業であり、グローバル展開と新分野開拓に積極的な姿勢が見られます。特にファスナー事業は好調で、インド子会社化により国際競争力をさらに高めようとしています。財務健全性は非常に高く、安定した経営体質を保持しています。一方で、収益性はまだ一般的なベンチマークを下回っており、外部環境(為替、原材料価格、EV市場)の影響を受けやすい側面もあります。現在の株価はPERから見て割安感があり、需給面では信用倍率が低いことからショートカバーの可能性も秘めています。
- **強固な財務体質**: 自己資本比率60%超、流動比率270%と非常に高く、M&Aなどの成長投資を行う上での体力が十分にある。
- **グローバル成長戦略**: インド子会社化など、成長市場への積極的な投資と販路拡大は中長期的な成長を期待させる。
- **多角的な事業セグメント**: ファスナーの安定的な収益に加え、環境(PFAS)や医療といった将来性のある分野にも展開しており、リスク分散と新たな成長機会を追求している。
- **PERによる割安感**: 業界平均と比較してPERが低い水準にあり、株価の上昇余地がある可能性がある。
- **配当利回り**: 2.81%と魅力的な水準で、株主還元への意識も高い。
- **市場感応度の低さ**: ベータ値が低く、市場全体の変動に比較的安定しているため、守りの投資対象としても一考に値する。
- 強み・弱み・機会・脅威の整理
- 強み (Strengths)
- 工業用精密ネジにおける高い技術力と市場地位
- 非常に健全な財務体質(高い自己資本比率、流動比率、低い負債比率)
- 多様な事業セグメントによるリスク分散
- グローバル展開を推進する経営戦略
- 安定した株主構成
- 弱み (Weaknesses)
- 収益性指標(ROE, ROA, 営業利益率)が一般的なベンチマークを下回る
- 為替変動や原材料価格高騰による利益への影響が大きい
- 産機事業におけるEV市場の低迷の影響
- メディカル事業は依然として先行投資段階で赤字
- 機会 (Opportunities)
- ADASやデータセンターなど先端技術分野での精密ネジ需要の拡大
- PFASなど環境規制強化による計測・制御機器の需要増
- インドなどの新興国市場での需要獲得
- M&Aによる事業領域の拡大と技術シナジー
- 医療分野での新材料・新製品開発による市場創出
- 脅威 (Threats)
- 国際的な貿易政策や関税の不確実性
- 原材料価格の高止まりやさらなる高騰
- 為替レートの急激な変動
- 競合他社との価格競争の激化
- M&A後の企業統合(PMI)リスク
17. 企業スコア
- 成長性: A
売上成長率(過去12ヶ月対前年)は8.47%と良好。ファスナー事業がグローバルで大幅に伸長し、インド子会社化など成長戦略も積極的。PFAS関連装置やメディカル事業の将来性も期待されます。 - 収益性: C
ROE 6.00%、ROA 3.89%と一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%)を下回っています。営業利益率も過去数年で低下傾向にあり、為替差損やコスト増が利益を圧迫しています。 - 財務健全性: S
自己資本比率62.5%(S〜A水準)、流動比率270%と非常に高く、Total Debt/Equityも6.75%と極めて低い水準です。手元現金も豊富で、極めて健全な財務状態です。 - 株価バリュエーション: A
PER(会社予想11.21倍)が業界平均PER(17.5倍)を大幅に下回っており、割安感があります。PBR(実績0.75倍)は業界平均PBR(0.7倍)と同水準ですが、PERの割安感が目立ちます。
企業情報
| 銘柄コード | 5957 |
| 企業名 | 日東精工 |
| URL | http://www.nittoseiko.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 建設・資材 – 金属製品 |
バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)
将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。
現在の指標
| 株価 | 711円 |
| EPS(1株利益) | 63.43円 |
| 年間配当 | 2.81円 |
シナリオ別5年後予測
各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。
| シナリオ | 成長率 | 将来PER | 5年後株価 | 期待CAGR |
|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5.9% | 12.9倍 | 1,091円 | 9.3% |
| 標準 | 4.6% | 11.2倍 | 889円 | 4.9% |
| 悲観 | 2.7% | 9.5倍 | 692円 | -0.1% |
目標年率別の理論株価(標準シナリオ)
標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。
現在株価: 711円
| 目標年率 | 理論株価 | 判定 |
|---|---|---|
| 15% | 450円 | △ 58%割高 |
| 10% | 562円 | △ 27%割高 |
| 5% | 709円 | △ 0%割高 |
【判定基準】○X%割安:現在株価が理論株価よりX%低い / △X%割高:現在株価が理論株価よりX%高い
関連情報
証券会社
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