1. 企業情報
ヤマシンフィルタは、主に建設機械用の油圧フィルターを製造・開発・販売している総合フィルターメーカーです。建設機械向け油圧フィルターにおいては世界トップシェアを誇ります。
- 主力製品・サービスの特徴
- 建設機械用フィルター:シリンダーなどの油圧機器を保護する油圧フィルター、エンジンオイルフィルター、燃料フィルター、トランスミッションフィルターなど、建設機械や農業機械向けに幅広く提供しています。
- 産業用フィルター:油圧油や潤滑油、その他液体の濾過に用いる産業機械用フィルター、電子部品製造や食品製造プロセスで利用されるプロセスフィルターを取り扱っています。
- エアフィルター:オフィスビル、工場、設備、車両など多様な環境向けの空気フィルターを提供しています。
- ナノフィルター製品:独自の「YAMASHIN NANO FILTER」技術を応用した医療用マスクや交換用インナーシートなどを開発しています。また、このナノファイバー技術はアパレル、断熱材、スマートテキスタイルなどの新規事業分野への展開も視野に入れています。
2. 業界のポジションと市場シェア
- 業界内での競争優位性や課題について
- 競争優位性:建設機械向け油圧フィルター分野で世界トップシェアを確立していることが最大の強みです。長年培ってきた高い技術力と開発力により、幅広い用途に対応するフィルター製品を提供しています。ナノファイバー技術を核とした新たな領域への展開も進めています。
- 課題:エアフィルタ事業において、基幹システムの入れ替えに伴う生産・出荷遅延及びシステム運用費の増加が発生しており、足元の収益に一時的な悪影響を及ぼしています。
- 市場動向と企業の対応状況
- 建設機械用フィルター市場では、新車需要の回復とアフターマーケットでの交換需要が堅調に推移しています。同社はナノファイバー製品の採用拡大や北米市場を重点地域とした海外展開により、この成長機会を捉えようとしています。
- エアフィルター市場においては、基幹システム入れ替えによる一時的な混乱が見られますが、第3四半期以降のオペレーション安定化を目指しています。
3. 経営戦略と重点分野
- 経営陣が掲げるビジョンや戦略
- 同社は中期経営計画「Fly to the next stage!」(2025〜2028年度)を推進しており、2025年12月には「YAMASHIN FILTER VISION 2030」の公表を予定しています。
- 中期経営計画の具体的な施策や重点分野
- 新たな価値創造:特にナノファイバー技術を応用した製品開発に注力し、高機能フィルターだけでなく、アパレル、断熱材、スマートテキスタイルなどの新規事業分野を探索しています。
- 資本コストを意識した経営。
- ESG(環境、社会、ガバナンス)推進。
- 新製品・新サービスの展開状況(決算短信参照)
- ナノファイバー製品「NanoWHELP」の直販強化を進めており、建機用フィルタ事業においてもこの技術の採用を拡大しています。
- 欧州市場を含めた海外市場の開拓に力を入れています。
- 耐熱性や導電性を持つナノファイバー素材の新規用途開発に挑戦しています。
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力
- 連結売上高の87%を占める建機用フィルタ事業が主要な収益源です。世界トップシェアの地位と高い技術力を基盤としています。
- ナノファイバー技術を応用することで、医療、アパレル、高機能素材といった新たな市場ニーズに対応しようとしており、収益源の多角化と変化への適応を図る戦略です。
- 売上計上時期の偏りとその影響
- 決算短信からは特定の売上計上時期の偏に関する具体的な記載はありませんでした。
- しかし、建機用フィルター事業は建設景気や設備投資の時期によって売上が変動する可能性があります。また、エアフィルタ事業における基幹システム入れ替えによる生産・出荷遅延は、一時的に売上計上時期の偏りを生じさせる可能性があります。
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発の動向や独自性
- 独自のナノファイバー技術が最大の強みであり、これを高機能フィルター製品だけでなく、多岐にわたる産業分野や新規事業へ展開しようとしています。開発力は医療用製品にも活かされています。
- 主力の建機用フィルターにおいても、高い濾過性能と耐久性を実現する技術開発を継続し、世界トップシェアを維持しています。
- 収益を牽引している製品やサービス
- 主力の建機用フィルター事業が連結売上高の大部分(87%)を占め、収益の大部分を牽引しています。特に、建設機械の油圧回路に用いられる油圧フィルターが中心です。
- ナノファイバー製品の採用拡大は、将来的な新たな収益ドライバーとして期待されています。
6. 株価の評価
- PER(株価収益率)は21.61倍(会社予想)で、業界平均PER 16.6倍と比較すると割高な水準です。
- PBR(株価純資産倍率)は1.89倍(実績)で、業界平均PBR 1.4倍と比較すると割高な水準です。
- 現在の株価609.0円は、EPS(会社予想)28.14円、BPS(実績)321.09円に対して、PERおよびPBRが業界平均を上回っています。
7. テクニカル分析
- 直近の株価推移を参照して、現在の株価は609.0円です。年初来高値849円、年初来安値413円に対して、52週レンジ内位置は75.2%となっており、高値圏に近い位置にあります。
- 直近1ヶ月のリターンは-3.21%と軟調ですが、3ヶ月リターンは+17.77%、6ヶ月リターンは+43.70%、1年リターンは+101.74%と、中長期では大幅な上昇トレンドにあります。
- 本日の出来高は148,100株、売買代金は89,647千円で、3ヶ月平均出来高495.15千株と比較すると、市場の関心度は低下している可能性があります。
- 移動平均線(MA)との位置関係:
- 現在株価609.0円は、5日MA(624.00円)と25日MA(639.36円)を下回っており、短期的な調整局面または下落傾向を示唆しています。
- しかし、75日MA(558.23円)と200日MA(470.11円)を上回っており、中長期的な上昇トレンドは継続中です。
- サポート・レジスタンスレベル: 1ヶ月レンジ592.00円~705.00円の中で、現在の株価は下限に近い位置にあります。
- ゴールデンクロス/デッドクロス: 5日MAが25日MAを下回っていることから、短期的なデッドクロスが発生している可能性があります。中長期のゴールデンクロスは継続しているとみられます。
8. 財務諸表分析
- 売上、利益、ROE、ROAなどの指標
- 売上高は過去12ヶ月で20,485百万円と、過去数年で増加傾向にあります。直近四半期の売上高成長率は前年比+2.00%。
- 営業利益は過去12ヶ月で2,625百万円、純利益は1,762百万円と、過去数年にわたり大きく改善しており、特に直近年度は大幅な増益となっています。
- ROE(過去12ヶ月)は7.95%で、一般的なベンチマーク10%には届きませんが、改善傾向にあります。
- ROA(過去12ヶ月)は6.19%で、一般的なベンチマーク5%を上回っており、資産効率は良好です。
- 営業利益率は過去12ヶ月で13.71%と高い水準です。
- 過去数年分の傾向: 2022年3月期以降、売上高は安定傾向にありながら、特に利益面(営業利益、純利益)は顕著な改善を見せています。
- 四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)
- 2026年3月期第2四半期(中間期)実績は、売上高が通期予想の49.4%、営業利益が47.7%、純利益が46.2%の進捗でした。
- エアフィルタ事業のシステム入れ替えによる影響で営業利益の進捗がわずかに遅れていますが、通期では増収増益を見込んでおり、特に建機用フィルターの堅調な推移が全体を支える見通しです。
9. 財務健全性分析
- 自己資本比率は84.9%(実績)、直近中間期末も82.8%と極めて高い水準を維持しており、財務基盤は非常に安定しています。
- 流動比率は3.58倍(直近四半期)であり、流動資産が流動負債を大幅に上回ることから、短期的な支払能力に問題はなく、流動性は非常に良好です。
- 負債比率もTotal Debt/Equityが4.55%と非常に低く、負債依存度が低いことを示しています。
- 現金及び現金同等物は50億円以上を保有しており、資金繰りに余裕があります。
- 借入金は直近四半期で短期借入金900百万円を含め、総額1.02B円と低い水準です。金利負担も過去12ヶ月の純支払利息は軽微です。
10. 収益性分析
- ROE(7.95%)はベンチマーク10%を下回りますが、ROA(6.19%)はベンチマーク5%を上回っています。
- 営業利益率(13.71%)は高く、収益性の改善傾向が見られます。エアフィルタ事業のシステム問題が解消されれば、さらに収益性が向上する余地があります。
- 利益の質分析
- 営業キャッシュフロー(2.02B円)が純利益(1.76B円)を上回っており、営業CF/純利益比率は1.15です。
- これは、利益がキャッシュフローによってしっかりと裏付けられていることを示しており、「A(良好)」な利益の質と評価できます。
11. 市場リスク評価
- ベータ値(5年月次)は0.77と1.0を下回っており、市場全体の動きに比べて株価の変動が比較的穏やかで、市場感応度が低い特性を持つ可能性があります。
- 52週高値849.00円、安値413.00円に対し、現在の株価609.0円は52週レンジの75.2%(高値圏に近い)に位置しています。
- 決算短信に記載のリスク要因:
- 内部要因:エアフィルタ事業の基幹システム入れ替えに伴うオペレーション混乱の長期化および、新規事業(ナノファイバー等)の採用進捗が計画通りに進まない可能性。
- 外部要因:為替変動による影響(当期は為替差損が増加)、原材料価格・供給網の変動。
- 地政学リスク:海外展開しているため、各国の政治経済情勢の影響を受ける可能性があります。
12. バリュエーション分析
- 現在のPER 21.61倍、PBR 1.89倍は、それぞれ業界平均PER 16.6倍、業界平均PBR 1.4倍と比較して高い水準にあります。
- 業種平均PER基準で算出した目標株価は415円、業種平均PBR基準で算出した目標株価は450円となります。
- これらの目標株価は現在の株価609.0円を下回っており、業界平均との比較では現在の株価は割高であると判断されます。
13. 市場センチメント分析
- 信用取引の状況:信用買残が1,025,300株と多く、信用売残246,900株に対して信用倍率は4.15倍です。買残が売残を大きく上回っており、需給は売り方が有利であり、今後の株価上昇を抑制する要因となる可能性があります。
- 株主構成:筆頭株主のあさまホールディングスをはじめ、複数のホールディングスや創業家関係者(山崎敦彦氏を含む)が大株主に名を連ねています。インサイダー保有比率が49.68%と高く、安定株主が多く、経営の安定性が高いと見られます。機関投資家保有比率は14.54%です。
- 大株主の動向:特定の売買動向については情報がありません。
14. 株主還元と配当方針
- 配当利回り(会社予想)は2.96%、1株配当は18.00円です。
- 配当性向(会社予想ベース)は約60%と高めの水準であり、利益を積極的に株主へ還元する方針が見られます。過去5年平均配当利回り1.40%と比較して、現在の予想利回りは大幅に高いです。
- 株主還元策として、自己株式の取得を継続的に実施しています。期中にも自己株式の取得、株式報酬としての譲渡、消却を行っており、資本効率の向上にも取り組んでいます。
- 長期的な株主還元方針については、2025年12月に公表予定の「YAMASHIN FILTER VISION 2030」で示される見込みです。
15. 最近のトピックスと材料
- 2026年3月期第2四半期決算において、会社は通期業績予想を修正しました。主力の建機用フィルタ事業が堅調に推移し上振れる一方、エアフィルタ事業は基幹システム入れ替えに伴う混乱により下振れています。
- 連結としては、創業以来の過去最高業績を更新する見込みで、通期売上高20,840百万円(前期比+3.7%)、営業利益2,870百万円(同+9.1%)を見込んでいます。
- 年間配当も18.00円(前期比+6.00円)に増額修正されており、株主還元への意欲が示されています。
- 主力の建機用フィルタ事業の成長と、ナノファイバー製品の採用拡大は中長期的な業績ドライバーとして期待されます。一方で、エアフィルタ事業のシステム移行問題の早期解決が今後の業績安定化の鍵となります。
16. 総評
ヤマシンフィルタは、建設機械用油圧フィルターで世界トップシェアを誇り、高い技術力と財務健全性を有する企業です。
- 強み:
- 建機用油圧フィルターにおける圧倒的な市場ポジションと技術力。
- ナノファイバー技術を核とした新規事業展開の可能性。
- 極めて高い自己資本比率と潤沢な流動性による強固な財務基盤。
- 営業キャッシュフローが純利益を上回る利益の質。
- 安定的な株主構成と活発な株主還元策。
- 弱み:
- エアフィルタ事業における基幹システム移行による一時的な混乱及び収益悪化。
- 業界平均と比較して割高なバリュエーション水準。
- 短期信用取引における信用買残の多さ(需給の偏り)。
- 機会:
- 建機需要の回復とナノファイバー製品のさらなる採用拡大。
- 中期経営計画に基づく新規事業および海外展開の進展。
- 「YAMASHIN FILTER VISION 2030」公表による長期的な成長戦略への期待。
- 脅威:
- 為替変動、原材料価格の高騰、供給網の混乱などの外部環境リスク。
- エアフィルタ事業のシステム問題解決の長期化。
- 景気変動による建設機械市場の変化。
全体として、主力の事業が好調で利益も回復基調にあり、財務も極めて健全です。ナノファイバー技術を活用した中長期的な成長戦略も魅力的ですが、足元ではエアフィルタ事業の問題や市場平均と比較した株価の割高感が指摘されます。
17. 企業スコア
- 成長性: A
- 売上は堅調に増加しており、特に建機用フィルタ事業が好調。ナノファイバー製品の採用拡大や海外展開も進展し、中長期的な成長戦略が明確であるため。
- 収益性: B
- 粗利率、営業利益率は高い水準を維持し、ROAもベンチマークを上回る。ただし、ROEはベンチマーク10%を下回る水準であり、エアフィルタ事業の一時的な営業損失も影響しているため。
- 財務健全性: S
- 自己資本比率が82.8%と非常に高く、流動比率も3.58倍と極めて良好。有利子負債も少ないため、財務安全性は最高レベルと評価できるため。
- 株価バリュエーション: C
- PER(21.61倍)およびPBR(1.89倍)が業界平均(PER 16.6倍、PBR 1.4倍)を大きく上回っており、現在の株価は割高感があるため。
企業情報
| 銘柄コード | 6240 |
| 企業名 | ヤマシンフィルタ |
| URL | http://www.yamashin-filter.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 機械 – 機械 |
バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)
将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。
現在の指標
| 株価 | 609円 |
| EPS(1株利益) | 28.14円 |
| 年間配当 | 2.96円 |
シナリオ別5年後予測
各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。
| シナリオ | 成長率 | 将来PER | 5年後株価 | 期待CAGR |
|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 21.2% | 24.0倍 | 1,764円 | 24.1% |
| 標準 | 16.3% | 20.9倍 | 1,248円 | 15.9% |
| 悲観 | 9.8% | 17.7倍 | 795円 | 6.0% |
目標年率別の理論株価(標準シナリオ)
標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。
現在株価: 609円
| 目標年率 | 理論株価 | 判定 |
|---|---|---|
| 15% | 633円 | ○ 4%割安 |
| 10% | 790円 | ○ 23%割安 |
| 5% | 997円 | ○ 39%割安 |
【判定基準】○X%割安:現在株価が理論株価よりX%低い / △X%割高:現在株価が理論株価よりX%高い
関連情報
証券会社
このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.6)」によって自動生成されました。
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