以下はトヨタ自動車(証券コード: 7203)に関する企業分析レポートです。

1. 企業情報

  • 事業内容などのわかりやすい説明
    世界首位級の自動車メーカーであり、乗用車、ミニバン、商用車、および関連部品・用品の設計、製造、販売をグローバルに展開しています。国内市場でも高いシェアを誇ります。自動車事業が売上高の約9割を占める主力事業で、その他に金融サービスや情報通信事業なども手掛けています。傘下に日野自動車、ダイハツ工業を擁し、SUBARU、マツダ、スズキとも提携するなど、広範なアライアンス戦略を進めています。
  • 主力製品・サービスの特徴
    「Toyota」と「Lexus」の2つのブランドを展開し、サブコンパクトからコンパクトカー、ミニカー、ミッドサイズ、ラグジュアリーカー、スポーツカー、SUV、ピックアップトラック、ミニバン、トラック、バスなど多岐にわたる車両を提供しています。環境技術に優位性を持つとされ、近年はバッテリーEV(電気自動車)の開発・販売にも注力しています。金融サービスは自動車販売を補完する形で、販売金融や車両リースなどを提供しています。

2. 業界のポジションと市場シェア

  • 業界内での競争優位性や課題について
    トヨタ自動車は世界首位級の自動車メーカーとして、ブランド力、グローバルな販売・生産ネットワーク、そして高い品質と信頼性に裏打ちされた競争優位性を持っています。特に環境技術やコスト競争力で強みを発揮してきました。一方で、近年はバッテリーEV市場への本格参入を加速させており、電動化技術の進化やソフトウェア開発の強化が重要な課題となっています。世界的なサプライチェーンの変動、原材料価格の高騰、人件費の上昇なども継続的な課題です。
  • 市場動向と企業の対応状況
    世界市場では電動化へのシフトが加速しており、各国政府の環境規制強化、消費者のEVへの関心が高まっています。トヨタは多様な電動車戦略(HEV、PHEV、BEV、FCEV)を展開し、異なる市場ニーズに対応しています。米国関税政策などの地政学的リスクや為替変動、原材料・部品の供給制約といった外部環境の変化が業績に大きく影響しており、同社は通期業績予想に米国関税政策による減益影響を織り込むなど、外部リスクへの対応を強化しています。

3. 経営戦略と重点分野

  • 経営陣が掲げるビジョンや戦略
    企業概要から「環境技術で優位。提携を加速。」との記載があり、環境技術を強みとし、他社との連携を通じて事業を強化する姿勢が見られます。佐藤恒治社長のもと、多様な電動化技術を軸に、より良いモビリティ社会の実現を目指すビジョンが掲げられていると考えられます。
  • 中期経営計画の具体的な施策や重点分野
    決算短信には具体的な中期経営計画の数値目標や詳細な施策についての記載はありませんでしたが、通期業績予想に「米国関税政策による営業利益への減益影響1兆4,500億円」を織り込んでいることから、外部環境変化への迅速な対応と収益構造の安定化が喫緊の重点分野であると推察されます。
  • 新製品・新サービスの展開状況(決算短信参照)
    決算短信には新製品・新サービスの具体的な展開状況についての詳細な記載はありませんでした。ただし、企業概要にバッテリーEVの開発・販売に言及があるため、電動車分野での製品投入は継続的に行われているとみられます。

4. 事業モデルの持続可能性

  • 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力
    トヨタの収益モデルは、自動車の製造・販売を核とし、それに付随する金融サービスで構成されています。世界トップクラスの生産・販売規模を誇り、スケールメリットを活かしたコスト競争力が強みです。市場ニーズの変化への適応力として、ハイブリッド車で培った電動化技術の優位性があり、これをバッテリーEVなど次世代技術に応用することで、持続的な成長を目指しています。
  • 売上計上時期の偏りとその影響
    中間期決算の売上進捗率は50.3%と、通期予想に対して概ね半期分を達成しており、売上計上時期に大きな偏りがあるとは言えません。しかし、米国関税の影響が通期で1.45兆円と大きく、中間期で既に0.9兆円を計上済みであるため、この外部要因が通期業績の変動要因となる可能性があります。

5. 技術革新と主力製品

  • 技術開発の動向や独自性
    トヨタは長年にわたりハイブリッド技術を牽引し、環境性能に優れた車両を市場に投入してきました。現在もバッテリーEV、燃料電池車(FCEV)など多様なパワートレイン技術の開発に力を入れています。独自の「TPS(トヨタ生産方式)」に代表される生産技術は、高品質・高効率を実現する強みです。
  • 収益を牽引している製品やサービス
    連結事業構成で自動車事業が売上高の90%を占めており、主要な乗用車(例:カローラ、プリウス、RAV4、カムリ、Lexusブランド車)や商用車が収益を牽引しています。金融事業も売上高の9%を占め、自動車販売の補完と収益源として重要な役割を担っています。

6. 株価の評価

  • EPSやBPSに基づく計算等を用いて、現在の株価との比較
    現在の株価は3364.0円です。
  • PER(会社予想):株価3364.0円 ÷ EPS(会社予想)224.81 = 14.96倍
  • PBR(実績):株価3364.0円 ÷ BPS(実績)2,876.62 = 1.17倍
    これらの数値は提供されているPER(会社予想)14.96倍、PBR(実績)1.17倍と一致しています。
  • 業界平均PER/PBRとの比較
  • 業界平均PER: 13.3倍
  • 業界平均PBR: 0.8倍
    トヨタ自動車のPER 14.96倍は業界平均PER 13.3倍と比較してやや割高な水準です。
    PBR 1.17倍も業界平均PBR 0.8倍と比較して割高な水準にあります。

7. テクニカル分析

注意:提示株価3364.0円と、移動平均線等の前提株価2694.50円に乖離があるため、それぞれを分けて記述します。

  • 直近の株価推移を参照して、現在の株価が高値圏か安値圏か
    提示された現在の株価3364.0円は、直近10日間の株価履歴では2025-12-29の終値3364円と一致しています。直近10日間の高値が3495円、安値が3312円であり、現在の株価は直近のレンジの中央よりやや下方に位置しています。
  • 年初来高値・安値との位置関係
    年初来高値は3495円、年初来安値は2226円です。現在の株価3364.0円は、年初来安値から約89.7%の水準にあり、年初来高値に近い高値圏に位置していると言えます。
  • 出来高・売買代金から見る市場関心度
    本日の出来高は12,099,700株、売買代金は40,746,356千円です。平均出来高のデータがないため一概には評価できませんが、大型株としては一般的な水準であり、比較的活発な取引が行われていると判断できます。
  • 長期トレンド分析
  • 1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年の株価リターンを評価
  • 1ヶ月リターン: +2.82%
  • 3ヶ月リターン: +0.28%
  • 6ヶ月リターン: -21.60%
  • 1年リターン: -3.87%
    直近1〜3ヶ月はプラスリターンですが、6ヶ月および1年の長期ではマイナスリターンとなっており、中長期的には下落トレンドにあることが示唆されます。(ただし、このリターンは提示された「現在株価: 2,694.50円」を前提としている可能性があります。実際の株価3364.0円では異なる結果となる可能性があります。)
  • 日経平均・TOPIXとの相対パフォーマンス(上回る/下回る)
    データなし
  • 移動平均線(5日、25日、75日、200日)との位置関係(上回り/下回り)

    現在株価が2,694.50円という前提の情報に基づきます。

  • 5日MA: 2,692.50円(現在株価が上回る 0.07%)

  • 25日MA: 2,662.06円(現在株価が上回る 1.22%)
  • 75日MA: 2,616.81円(現在株価が上回る 2.97%)
  • 200日MA: 3,109.31円(現在株価が下回る 13.34%)
    この前提では、短期および中期移動平均線を上回っていますが、長期の200日移動平均線は下回っており、短期的な回復基調と長期的な下降トレンドが混在する状況を示唆しています。(ただし、冒頭の現在株価3364.0円を基準とする場合、全ての移動平均線を上回ることになり、異なる見解となります。)
  • サポート・レジスタンスレベルと現在株価の位置

    現在株価が2,694.50円という前提の情報に基づきます。

  • 1ヶ月レンジ: 2,554.00円 – 2,813.00円

  • 3ヶ月レンジ: 2,367.50円 – 2,821.50円
    この前提では、現在の株価2,694.50円は1ヶ月および3ヶ月のレンジ内で推移しており、レンジの中間に位置しています。
  • ゴールデンクロス/デッドクロスのシグナル確認

    現在株価が2,694.50円という前提の情報に基づきます。

    5日MA、25日MA、75日MAの関係から、短期の移動平均線が中期・長期の移動平均線を上回るゴールデンクロスが発生している可能性が考えられますが、200日MAを下回っている点は依然として注意が必要です。

    8. 財務諸表分析

  • 売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価

  • 売上(Total Revenue):過去4年間で一貫して増加傾向(31.3兆円→37.1兆円→45.0兆円→48.0兆円)。過去12か月で49.3兆円とさらに増加しており、成長は持続しています。
  • 営業利益(Operating Income):2023年3月期に一時的に減少したものの、2024年3月期には5.3兆円まで回復。過去12か月では4.3兆円と、やや減少傾向が見られます。
  • 純利益(Net Income Common Stockholders):2023年3月期に2.4兆円まで減少しましたが、2024年3月期に4.9兆円と大きく回復。過去12か月では4.6兆円。
  • EPS:過去12か月では325.13円。2024年3月期の365.94円からは減少傾向にあります。
  • ROE(実績):13.59%(過去12か月では12.94%)
  • ROA(実績):2.90%(過去12か月では2.90%)
  • 過去数年分の傾向を比較
    売上高は着実に成長しており、世界的な販売台数増の恩恵を受けています。一方、利益面では外部環境(原材料費、為替、関税など)の影響を受けやすく、変動が見られます。特に2026年3月期中間期では、売上は増加したものの、営業利益は前年同期比で大きく減少しており、収益性に課題が生じています。
  • 四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)
    2026年3月期第2四半期(中間期)の通期予想に対する進捗率は以下の通りです。
  • 売上高:50.3%(通期予想49兆円に対し、実績24.63兆円)- 概ね順調
  • 営業利益:59.0%(通期予想3.4兆円に対し、実績2.01兆円)- 上半期で既に多くの利益を確保しており、下半期に想定される費用増や外部要因がなければ、通期予想を上振れる可能性もありますが、外部リスク(特に米国関税)が大きく影響するため、慎重な見方が必要です。
  • 親会社帰属当期利益:60.6%(通期予想2.93兆円に対し、実績1.77兆円)- 同様に高い進捗率です。

9. 財務健全性分析

  • 自己資本比率、流動比率、負債比率の評価
  • 自己資本比率(実績):38.4%
  • 一般的に40%以上が望ましいとされる中で、やや下回る水準ですが、貸借対照表の負債側に金融事業の預かり金など流動性の高い負債が多く含まれることを考慮すると、大企業としては一定の健全性は保たれていると言えます。
  • 流動比率(直近四半期):1.25(125.5%)
  • 100%以上で短期的な支払い能力があると判断され、1.25は健全な水準です。
  • 負債比率(Total Debt/Equity、直近四半期):103.66%
  • 総負債を自己資本で割った比率が1倍程度であり、過度に高い水準ではありませんが、有利子負債は39.86兆円と多額です。これは金融事業が抱える債務が大部分を占めるため、自動車事業単体で見た場合の健全性とは異なる評価となることもあります。
  • 財務安全性と資金繰りの状況
    現金及び現金同等物は直近四半期で8.11兆円あり、潤沢な現預金を保有しています。流動比率も125.5%と短期的な支払い能力は確保されており、財務安全性は一定水準で維持されていると評価できます。
  • 借入金の動向と金利負担
    総負債39.86兆円のうち、有利子負債が大部分を占めると思われます。インタレストインカム386,429百万円に対し、インタレストエクスプレス55,422百万円であり、純受取利息がプラスで推移しているため、現時点での金利負担は経営を圧迫するレベルではないと見られます(金融事業の性質上、借入と貸付の両方が大きい)。

10. 収益性分析

  • ROE、ROA、各種利益率の評価
  • ROE(過去12か月):12.94% → ベンチマーク10%と比較して良好です。
  • ROA(過去12か月):2.90% → ベンチマーク5%と比較して低い水準です。総資産が大きいこと、金融事業の資産構成が影響している可能性があります。
  • Profit Margin(過去12か月):9.38%
  • Operating Margin(過去12か月):6.78%
    利益率は一定水準を維持していますが、自動車事業の営業利益率が中間期で低下している点に注意が必要です。
  • 一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%等)との比較
    ROEはベンチマークを上回っており、株主資本を効率的に活用して利益を生み出していると言えます。しかし、ROAはベンチマークを下回っており、総資産に対する利益効率に改善の余地があるかもしれません。
  • 収益性の推移と改善余地
    売上高は増加基調にあるものの、営業利益は外部環境要因(原材料高騰、為替変動、関税)や諸経費増により変動が大きく、特に中間期では大幅な減益となりました。今後、これらの外部要因が落ち着き、コスト削減や生産効率向上、高付加価値製品の販売が実現すれば、収益性の改善余地はあります。
  • 利益の質分析
  • 営業キャッシュフロー(OCF):4.82兆円
  • 純利益(Net Income Avi to Common):4.63兆円
  • 営業CF/純利益比率:1.04
  • 利益の質評価:A(良好)
    営業キャッシュフローが純利益を上回っており、利益が実態を伴うキャッシュとして生み出されていることを示しています。これは利益の質が良好であると評価できます。

11. 市場リスク評価

  • ベータ値による市場感応度の評価
    ベータ値(5Y Monthly):0.23
    ベータ値が0.23と非常に低い水準であり、市場全体の変動と比較して株価の変動が小さい、市場感応度の低い銘柄であることが示唆されます。これは、景気変動の影響を受けにくい、または大型安定株としての特性を表している可能性があります。
  • 52週高値・安値のレンジと現在位置
    52週高値: 3,495.00円
    52週安値: 2,226.50円
    現在の株価3364.0円は、52週高値に近い水準(レンジの約89.7%)に位置しており、高値圏にあると言えます。
  • 決算短信に記載のリスク要因(外部環境、為替、地政学等)
  • 米国を含む各国の関税政策・貿易政策:特に米国関税政策による営業利益への減益影響は通期で1兆4,500億円と試算され、業績に大きな影響を与えています。
  • 為替変動(円・ドル・ユーロ等)の影響
  • 原材料・部品価格の上昇、供給障害
  • 各国の規制(安全・環境)やリコール等の対応コスト
  • 世界経済・販売市場の需要変動
    これらのリスク要因に加え、半導体不足や地政学的な緊張も事業に影響を及ぼす可能性があります。

12. バリュエーション分析

  • 業種平均PER/PBRとの比較
  • トヨタ自動車 PER 14.96倍 vs 業界平均PER 13.3倍
  • トヨタ自動車 PBR 1.17倍 vs 業界平均PBR 0.8倍
    PER、PBRともに業界平均を上回っており、相対的に割高な評価を受けていると言えます。これは、トヨタの高いブランド力、安定した収益性、将来の成長期待などが織り込まれている可能性があります。
  • 目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用)
  • 目標株価(業種平均PER基準):EPS(会社予想)224.81円 × 業界平均PER 13.3倍 = 2990.07円
  • 目標株価(業種平均PBR基準):BPS(実績)2,876.62円 × 業界平均PBR 0.8倍 = 2301.30円

注意:これらの目標株価はあくまで業界平均倍率を機械的に適用したものであり、個別の企業の特性や成長性を考慮していません。

  • 割安・割高の総合判断
    現在の株価3364.0円は、業界平均PERおよびPBRを適用した目標株価を上回っています。この数値指標から見ると、現在の株価は割高と評価できます。ただし、世界のリーディングカンパニーとしての優位性や技術力、将来の成長戦略への期待が、市場で積極的に評価されている可能性があります。

13. 市場センチメント分析

  • 信用取引の状況(信用買残、信用倍率、需給バランス)
  • 信用買残: 7,434,600株(前週比 -766,300株)
  • 信用売残: 3,536,700株(前週比 -694,900株)
  • 信用倍率: 2.10倍
    信用買残が信用売残の約2倍であり、信用買いが信用売りを上回っています。信用買残は前週比で減少しているものの、今後の需給バランスの変化に注意が必要です。
  • 株主構成(経営陣持株比率、安定株主の状況)
  • 自社(自己株口)が17.48%と最大の株主です。
  • 日本マスタートラスト信託銀行 (11.02%)、豊田自動織機 (7.55%)、日本カストディ銀行 (5.16%)、日本生命保険 (4.01%) など、機関投資家やグループ企業が上位株主を占めています。
  • 大株主上位10社の合計で約60%超の株式を保有しており、比較的安定した株主構成であると言えます。
  • 大株主の動向
    株主構成のリストから個別の動向を読み取ることはできませんが、多数の機関投資家やグループ企業が長期保有していることから、安定株主が多いと推測されます。

14. 株主還元と配当方針

  • 配当利回りや配当性向の分析
  • 配当利回り(会社予想):2.82%
  • 1株配当(会社予想):95.00円(中間配当45円、期末配当予想50円)
  • Payout Ratio(配当性向):26.88%
    配当利回りは約2.8%と安定しており、配当性向も26.88%と比較的小さく、利益の再投資余地を多く残しているか、将来的な増配余力があると考えられます。
  • 自社株買いなどの株主還元策
    当中間期に399.59億円規模の自己株式の取得を実施しており、積極的な株主還元策の一つとして活用しています。
  • 株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策
    提供データに株式報酬型ストックオプションに関する直接的な記載はありません。

15. 最近のトピックスと材料

  • 適時開示情報の分析(大型受注、新製品、拠点展開等)
    2026年3月期 第2四半期決算短信では、主要なポイントとして以下の点が挙げられます。
  • 営業収益の増加(+5.8%)は、販売台数増(+5.0%)によるものであり、市場からの需要は堅調です。
  • 営業利益は大きく減少(△18.6%)。特に自動車事業で△28.2%の減益が顕著であり、諸経費増と米国関税政策の影響が主因です。
  • 金融事業は金利スワップ評価益等により増益となりました(+35.5%)。
  • 通期業績予想には米国関税政策による減益影響1兆4,500億円を織り込んでおり、これが今後の業績を大きく左右する要因となります。中間期で9,000億円が計上済みです。
  • これらが業績に与える影響の評価
    堅調な販売台数による増収は好材料ですが、米国関税という外部要因が利益を大きく圧迫しており、通期利益予想の下方修正要因となっています。この関税の影響が今後も継続するか、また為替や原材料価格の動向が、今後の業績達成の鍵となります。金融事業の好調は一部相殺する効果がありますが、主力である自動車事業の収益性改善が望まれます。

16. 総評

トヨタ自動車は、世界トップクラスの自動車メーカーであり、強固なブランド力、グローバルな事業展開、多様な電動化技術を強みとしています。売上は堅実な成長を続けていますが、原材料価格の高騰、為替変動、特に米国関税政策といった外部要因が収益性を圧迫し、直近の中間期決算では減益となりました。
財務面では、潤沢な現預金を保有し、流動比率も健全な水準です。自己資本比率は40%をやや下回りますが、大規模な金融事業を抱える特性上、一定の財務安定性は維持されています。ROEは良好な水準にある一方で、ROAは総資産の規模から見て改善の余地があるかもしれません。利益の質は営業キャッシュフローが純利益を上回っており、良好と評価できます。
株価は年初来高値圏に位置し、PER、PBRともに業界平均を上回っており、バリュエーションからは割高との見方もできます。しかし、これは業界を牽引する企業の優位性や将来性への期待が株価に織り込まれている可能性があります。ベータ値が低いことから、市場全体の変動には比較的敏感ではない銘柄と言えます。

投資判断の参考となるポイント:

  • 強み: グローバルな市場プレゼンス、多様な製品ラインナップ、高いブランド力、電動化技術への取り組み、潤沢なキャッシュポジション、安定した株主還元方針。
  • 弱み: 外部環境(関税、為替、原材料価格)に利益が左右されやすい点、BEV市場での競争激化への対応。
  • 機会: 世界的な電動化シフトへの対応、新興国市場での需要拡大、新しいモビリティサービスへの展開。
  • 脅威: 主要市場での競争激化、保護主義的な貿易政策の台頭、サプライチェーンの混乱、原材料調達コストの変動。

今後の焦点は、外部要因による減益をいかに克服し、足元の販売台数増収を利益につなげられるか、そして電動化戦略をどれだけ迅速かつ効率的に進められるかにあると言えるでしょう。

17. 企業スコア

  • 成長性:A
    売上高は過去数年にわたり持続的に増加しており、直近の中間期も販売台数が増加しています。米国関税の影響は利益を圧迫していますが、事業規模の拡大は続いており、成長性は高いと評価できます。
  • 収益性:B
    ROEは12.94%と良好な水準ですが、ROAは2.90%とベンチマークを下回っています。営業利益率は外部要因の影響で直近中間期に低下しており、収益性に課題が見られます。
  • 財務健全性:B
    自己資本比率は38.4%で、目安の40%をやや下回るものの、流動比率125.5%は健全であり、潤沢な現金及び現金同等物を保有しています。有利子負債は大きいですが、金融事業の特性を考慮すると、全体としては一定の健全性が保たれています。
  • 株価バリュエーション:C
    PER 14.96倍、PBR 1.17倍は、それぞれ業界平均PER 13.3倍、PBR 0.8倍と比較して割高な水準にあります。数値指標のみで判断すると、割高と評価されます。

企業情報

銘柄コード 7203
企業名 トヨタ自動車
URL http://www.toyota.co.jp/
市場区分 プライム市場
業種 自動車・輸送機 – 輸送用機器

バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)

将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。

現在の指標

株価 3,364円
EPS(1株利益) 224.81円
年間配当 2.82円

シナリオ別5年後予測

各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。

シナリオ 成長率 将来PER 5年後株価 期待CAGR
楽観 15.4% 17.2倍 7,918円 18.7%
標準 11.9% 15.0倍 5,888円 11.9%
悲観 7.1% 12.7倍 4,030円 3.8%

目標年率別の理論株価(標準シナリオ)

標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。

現在株価: 3,364円

目標年率 理論株価 判定
15% 2,937円 △ 15%割高
10% 3,668円 ○ 8%割安
5% 4,629円 ○ 27%割安

【判定基準】○X%割安:現在株価が理論株価よりX%低い / △X%割高:現在株価が理論株価よりX%高い

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このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.6)」によって自動生成されました。

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By ジニー

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